2012/06/19

オーラライト23


オーラライト Auralite-23
North of Lake Superior, Ontario, Canada



カナダ北部の聖なる土地より採取されるというAURALITE-23/オーラライト23クリスタル。
今年のツーソンショーで発表されたばかりの新しいヒーリングストーンで、シェブロンアメジストに似た模様を持ち、ポイント状に加工されている。
トップがヘマタイトに覆われていることもあるようだ。
その名の示す通り最大で23種類、少なくとも17種類の鉱物を含むとされる。
内部に含まれる鉱物の詳細はもちろんのこと、およそ15億年前に形成された太古のクリスタルであることが科学的に証明されたとのこと。

オーラライトのインクルージョンとされている23の鉱物は以下。

1) チタナイト/スフェーン Titanite
2) カコクセナイト Cacoxenite
3) レピドクロサイト Lepidocrosite
4) アホー石/アジョイト Ajoite
5) ヘマタイト Hematite
6) マグネタイト Magnetite
7) パイライト Pyrite
8) ゲーサイト Goethite
9) 軟マンガン鉱 Pyrolusite
10) 自然金 Gold
11) 自然銀 Silver
12) プラチナ Platinum
13) ニッケル Nickel
14) 銅 Copper
15) 鉄 Iron
16) リモナイト Limonite
17) スファレライト Sphalerite
18) コヴェライト/コベリン Covellite
19) カルコパイライト Chalcopyrite
20) 不明鉱物 Gialite
21) エピドート Epidote
22) ボーナイト Bornite
23) ルチル Rutile

伝説のアホー石、そして金やプラチナまで入っているとは豪華絢爛、恐れ入る。
まさに今が買い時、旬の味。
世界的に有名なクリスタルヒーラーたちが推薦者として名乗りを上げる目下話題のヒーリングストーンである。
産地はカナダ、スペリオル湖の北にある "Cave of Wonder" と呼ばれるネイティヴアメリカンの聖地だという。
よく発見されたものだ。
疑惑のコヴェライト、カルコパイライトが入っているというのは奇妙な印象(→詳細:ピンクファイヤークォーツ)だが、研究で解明されたということだから、どのような輝きが見られるか確認できる絶好のチャンスである。

疑問としては、

1) 鉱物として関連性の高いものを23に分けて表記していること
2) 産地がネイティヴアメリカンの聖地であるのが自慢なのに、ネイティヴアメリカンが発見することなく、昨年ようやく見つかったこと
3) これまでに売れたヒーリングストーンの要素を網羅していること
  • 複数の鉱物インクルージョン - スーパーセブン
  • 世界中のクリスタルヒーラーが絶賛 - 多数
  • 太古の鉱物 - シャーマナイト他
  • 計画された販売戦略 - プレセリブルーストーン
  • コヴェライト入り - ピンクファイヤークォーツ
  • 研究者により科学的に立証済み - 多数
  • ネイティヴアメリカンの聖地から出現 - 多数
  • 金プラチナ - 買取強化中 ほか
4) 研究機関、研究目的、論文の所在などが不明(スイス人研究者のよう)
5) 海外・国内ともに、解説文の23種類の内包物一覧にGialite(ギラライトとのスペルミス?もしくはありそうでなかった新鉱物ガイアライト?)という、現時点では謎の鉱物名が記載されており、そのことに対して言及がなされていない
6) 肉眼で確認できるのは鉄の関連鉱物のみ、詳細は以下に記/サンプルが少ないため断定は困難
7) 原石の加工における規格が統一されていること
8) なんか、どっかで見た気がする

さっそくオーラライトの内部の様子を観察してみた。
クリアなアメジスト…だと私は感じた。
ルチルやゲーサイト、エピドートは、鉱物中の針状インクルージョンとして広く知られている。
幾らか見えてもおかしくないのだが、私には確認できなかった。
困ったことになった。

アヴェンチュレッセンスを示す鉱物が多く含まれているとあるから、光に反応するはず。
それを確かめるべく、太陽光での撮影を決行したのが写真。
ピンクや赤、パープル~ブルーの輝きが結晶の3箇所に確認できる。
ただ、手元にある5つのオーラライトのうち、アヴェンチュレッセンスが確認できたのは写真の1点だけ。
残りは肉眼では認められなかった。
鉄や銅に関係する鉱物が入っているならば、タンザニアのサンストーン、ロシアのサンムーンストーンのような輝きが出てもおかしくない。
また、アホー石(アジョイト)は一般に、水晶内部のグリーンのインクルージョンとして認められなければ価値がないとされている。

批判的な内容になってしまったが、この石はきらいではない。
きっと、私の目に狂いが生じているのだ。
聖なるクリスタルに疑問を抱くような私の目に真実など映らないのである。
収集家に根強い人気を誇る希少鉱物の宝庫、モンサンチレールを有し、どちらかというと堅い印象だったカナダの石が、今ヒーリングの世界で注目を浴びている。
これからさらなるヒーリングストーンが登場するかもしれない。
オーラライトを手にした感想は、非常に爽快で初々しく、輝かしい印象かな。
まるで、かの有名なサンダーベイ・アメジストのよう。

あれ?
突然、サンダーベイ・アメジストに見えてきた。
カナダの名産品として古くから知られる、サンダーベイ・アメジスト/レッドアメジスト。
表面が酸化鉄などに覆われ、赤く染まったアメジストのことを指し、鉱物標本として人気は高い。
カナダ北部・サンダーベイ近くの鉱山がその産地とされる(→地図、☆印)。
奇しくもスペリオル湖の北、☆印の真上付近にオーラライトの産地 "Cave of Wonder" があるものと考えられる。
詳細な場所が明かされていないため、この付近の鉱山の一箇所としかわからない。

サンダーベイ・アメジストに、ゲーサイトやヘマタイト、レピドクロサイトのインクルージョンが入ることは珍しくない。
表面が鉄分で赤く染まっているという点でも、実によく似ている。
何らかの関連があるのかもしれないが、カナダは広く地質学的なことについては無知であるため、鉱脈など専門的な事柄について言及するのは控えたい。
鉱山の様子を記録した動画を文末に示した。




オーラライト23クリスタルの全貌と、産地である神秘の洞窟の魅力を伝えるドラマティックな動画。
このように豊富なインクルージョンが見られるかどうかについては、依然として確認できていない。
心が綺麗な人でないと見えないものは古くからある。
なお "Cave of Wonder" は海外で人気のゲームの一種とみられる。



見た感じは普通の鉱山と動物及びスーパーセブンに似たレッドアメジスト


※注意が入ることは絶対にないはずですが、重大な誤認が認められた場合、市販商品に対しての真偽や違法性を問うものと誤解を受けた場合は、訂正します。ワクワクしながら愛を込め、素直に記したものであることをここに明記します。

なお、23種類の鉱物中、唯一の謎だったGialiteについては、デヴィッド・ガイガー氏により、新鉱物ガイアライトであることが明らかになりました。


56×25×10mm  13.40g

2012/06/17

ユーディアライト


ユーディアライト Eudialyte
Lovozero, Kola Peninsular, Russia



確か、一番最初に買った希少石がユーディアライト(ユージアル石)だった。
恩師の店で見つけたビーズがきっかけだったと記憶している。
お店の人に聞いても正体がわからない。
ありました、と見せていただいた本には、今でも忘れられない衝撃の一節があった。

無意識のうちに宇宙の秩序や法則が理解できるようになり、自然の流れに身をゆだねることが一番良いことが認識できるよう導く力があるといわれています(「パワーストーン百科全書」八川シズエ著)

間違いなく個人差はある。
私には宇宙の秩序など理解できそうにないからだ。
それでも気に入って500円程度の標本を幾つか購入した。
原産地であるグリーンランド産の、まるで岩のような標本が先日出てきたときには仰天した。
単に安かったから買うという初心者に有りがちな動機で、このような通好みの標本を購入していたというのは興味深い。
その後、幾つかユーディアライトを紹介させていただく機会に恵まれたが、どちらかというと収集家向けの鉱物標本という扱いだった。

ユーディアライトの主要な産地はロシアとカナダ。
一般に赤、白、黒の3色で構成されていることが多い。
白はネフェリーン、黒はエジリン。
赤い部分がユーディアライトで、それ以外はおまけである。
過去には紅赤色の透明石もカットされたという。
ロシア・コラ半島産ユーディアライトの醍醐味でもあった、ガラス光沢の煌きを伴うダークラズベリーカラー。
産出の激減に伴い、見かけなくなった。
写真のカットストーンは先日出てきたもの。
宝石質と言うのは憚られるが、不純物の少ない素朴な一品。
ロシア産ならではの色合いが出ている。
当時は千円もしなかったのだけれど、ざっと見た感じ、私にはもう買えないみたいだ。

先日、ユーディアライトのオールドストックを紹介させていただく機会があった。
思いのほか好評で、人々の鉱物への関心が深化しているものと、嬉しくてたまらなかった。
リクエストまで頂戴した。
さっそく探したのだが、イメージ通りのものが無い。
取り扱いはむしろ増えている。
しかし、赤い部分がほとんど見られない。
ユーディアライトの入っていないユーディアライトっておかしいと思うのだが、軒並み一万を越えている。
ヒーリングストーンとしての扱いも急増している。
3つの鉱物の相乗効果というやつなのかもしれないが、この石の場合はそうとはいいきれない難しさがある。
以前は殆ど見かけなかった赤みの強いカナダ産ユーディアライトも見かける。
ブレスにまでなっている。
限られた土地からしか産出しないこの希少石に何が起きたのか。

以下は、素人のたわ言と軽く流していただけたらと思う。
もしお読みになって、強い不快感を覚えられたかたがおられたら、深くお詫び申し上げる。

日本人の特徴というものについて考える機会をいただいた。
アメリカの価値観に倣って、自己主張さえしていれば間違いないと思い込む。
少なくとも私の周囲のアメリカ人は、それが愚かなことと知っている。
或いは、社会的に良いとされるものに憧れ、自らもそうありたいと努力する傾向。
裏をかえせば、誰かに良いといわれなければ、関心を持つことも持たれることもない、ということ。
その崖っぷちを突っ走った結果、私の珍コレクションが存在している。

以前から気になっていた、鉱物標本を「子」と呼ぶ習慣。
「この子はちょっとクセのある子でね」「この子は凄く人を選ぶ子で…」という言い回しは、今に始まったことではない。
ショップの店員さんも使うようになった。
愛着からそう呼ぶのは決して悪いことではないし、石を愛する気持ちが伝わってくるから、きらいではない。
いっぽうで、さまざまな側面において、日本人的な考え方だと感じる。

極端かもしれないが「子は親に尽くすもの」という価値観もひとつ。
経済的自立と精神的自立は違うと思っている。
物理的に親元、或いは保護者のもとを離れるのは容易なこと。
かれらを一人の人間として受け入れられるようになったとき、それが精神的自立だと思うのだ。
自立しろと言いたいのではない。
私自身できているとは考えていない。

人はいつか死ぬ。
生みの親や育ての親を、一人の人間として見送ることができなかったとき、自我に混乱が起きる。
逆であったなら事態はさらに深刻で、遺された親が日常生活に支障をきたし、危機的状況に陥ることもある。
それを見るたび、悲しくてならないのだ。
家族を一人の人間として受け入れられないために起きる問題のひとつに、境界性人格障害がある。
愛情を求めながらも孤独で満たされることのない心は、当事者だけでなく親にもあって、その孤独と渇望の連鎖から抜け出すことは容易ではない。
子は親の所有物ではないと、わかっていても。

話が飛躍してしまった。
全く別の場所で感じたことを、こうしてひとつにまとめてしまったことを、お許しいただきたい。
一生を親に尽くし捧げるのと、一生親に反発して生きることは似ている。
石を「子」と呼べない自分は何か歪んでいるのかと悩むときがある。
投影もひとつの業。
私の手持ちの石は、いずれ然るべき持ち主のもとへ導かれることが多くあるから、自分の所有物になることはない…そんな、ひがみなのかもしれぬ。
霊的な感性は皆無ゆえ。



右が有名なロシアのダークラズベリーカラー。
左が近年主流になっているカナダ産で、やや赤みが強いのが特徴(いずれも夕日で撮影)。
スウェーデンからはピンク系、グリーンランドからはダークレッド、
米からはオレンジなど、産地によって色合いが違っている。
所構わずロシア産ユーディアライトとして販売されていることがある。


20×14×7mm

2012/06/15

ハウライト(本物)


ハウライト Howlite
Tick Canyon, Lang, Los Angeles Co., California, USA



今となってはほとんど産出のない希少石、ハウライト(ハウ石)。
手に入るのはコレクターからの流出品が殆ど。
写真は鉱物学者ヘンリー・ハウ氏が、1868年に発見した土地(原産地)から届けられた貴重なハウライトで、一面が研磨されている。
ハウライトの有名な産地、カリフォルニア付近では、コレクションの流出が少なからずある。
"本物" とされるハウライトをいくつか見る機会に恵まれたが、正直なところマグネサイトと全く見分けがつかない。

高価なパワーストーンの偽物とされ、きらわれるハウライト。
しかしながら、染色加工したハウライトとみなされ嫌悪されていたのは、マグネサイト(菱苦土石)という鉱物である。
本物のハウライトをイミテーションに用いようものなら、大損益となりかねない。(→詳細はハウライト/マグネサイトに記しました)。
つまりハウライトは、戦後ターコイズのイミテーションとして用いられる程度の産出はあったが、現在はターコイズよりも手に入れ難い高級品となってしまった。

前回のハウライト/マグネサイトにかんする記事は、この標本との出会いがきっかけだった。
馴染みのハウライトが希少石に分類されている。
確認したところ、事実であった。
ハウライトとは全く別の鉱物にハウライトの名が与えられ、流通しているのではないか。
ふと目に留まったパワーストーンの一覧表。
美しいビーズの一覧に混じって「ハウライト:別名マグネサイト」なる商品がある。
つまり、ハウライトとマグネサイトが混同されていたことに、業界はとっくに気づいていた(中には本当に別名であるものと信じている販売者もいる)。
ビーズには疎いから、盲点だった。
昨年秋の時点で、この問題が明らかになってから、かなりの時間が経っているという印象を受けた。

ビーズやアクセサリーなど、品揃えを加工製品に頼る業者は、ハウライトの名を外すことが出来なかったのかもしれない。
知名度の関係で、ハウライトの名をマグネサイトに変更するのは極めて困難。
ハウライト・トルコ、ハウライト・ラピスなどはパワーストーンの定番商品。
消費者のほうがむしろそれを知り、受け入れる必要がある。

純粋、崇高、目覚めを意味するとされるハウライト。
なんて気高く麗しい響きだろう。
私自身、ごく初期にたいそう気に入って、周囲にプレゼントしてまわった石だっただけに、衝撃的だった。
ハウライトのほうがマグネサイトよりも僅かに半透明、表面の網目模様が黒い(マグネサイトは茶系)という説明は見かけた。
それをもってしてもわからない。

人気のパワーストーンは、中国や香港などのアジア諸国に持ち込まれ、加工されている。
出荷され日本に届く頃には、詳細な産地はおろか、産出国も不明となってしまうケースが往々にしてある。
不可抗力である。
そのため、販売者は製品の入荷後、消費者に馴染みある無難な産出国を決定のうえ、販売を行っているという。

マグネサイトはアフリカや中国など世界中から産出し、加工は容易で色もよく載る。
今後も天然石ビーズの素材として活躍するものと考えられる。
なお、北朝鮮には36億トンものマグネサイト資源が眠っているらしい。

参考:韓国の情報サイト(日本語):
http://japanese.joins.com/article/079/145079.html

例外として、ブラジルから産出する宝石質のマグネサイト・クラスターがある。
非常に美しく透明感に富み、各方面での評価も高い。
マグネサイトに興味のある方は、是非探していただきたい。
パワーストーンブームが盛り上がりをみせる中、よくもわるくも知名度を上げたハウライト。
「パワーストーンの偽物」としてのハウライトは、おそらく存在しなかった。
純粋、崇高、目覚めを意味する鉱物に間違いは無かった。
おそるべし、ハウライト。


ブラジルからは出ないはずのハウライトだが、もしかすると?

90×57×15mm  60.0g

2012/06/11

イットリウムフローライト


イットリウムフローライト
Yttrium Fluorite
Little Patsy Quarry, Jefferson Co., Colorado, USA



ラベンダーカラーのなめらかなフローライト。
透明感のあるピンキッシュパープルが光を包み込むさまは、まだ見ぬ天上の楽園を思わせる。
イットリウムフローライトは、フローライトのカルシウム成分がイットリウムに置き換わることによって生まれる、希少石のひとつ。
不透明~半透明の珍しいフローライトで、癒しや平和、開放をキーワードとする人気のヒーリングストーンでもある。
イットリウムフローライトは一般に、ブドウの房のような塊状で産するらしい。
そのため、原石の流通は少なく、研磨品やスライスなどの加工品を中心に流通している。
美しく魅力的、しかし謎だらけ。
私にとってはそんな存在。

かねてから好きな石だった。
確か、最初に興味を持ったフローライトはこれだった。
イットリウムという響きは神秘的な魅力にあふれている。
しかしながら謎が多い石である。
限られた人しか手に出来ない希少石とのことであるが、比較的入手は容易であり、現在もコンスタントな産出、及び流通がある。
イットリウムを含む鉱物の多くは放射性鉱物。
このフローライトもかなりのイットリウムを含んでいるという。
果たして安全なのか。
そのあたりについては、全くわからない。
もっぱら霊的存在としての扱いを受け、鉱物としての明確な定義は定かでない。
つまり、好きなのに正体がわからない。
記事も保留になっていた。

イットリウムフローライトの産地とされるエリアは、メキシコ及び北米に集中している。
これまでは硬く不透明なパープルのスライスであることが大半だった。
今回入手したのは、半透明のミルキー・パープル。
コロラド産とある。
アメリカ随所から産出があるにも関わらず、世界的に珍しいというのは不自然に思えてくる。
淡い紫のフローライトを総称してそう呼んでいるようにもみえる。
結晶質の原石も僅かに流通があるが、まるでカルセドニーのようである。
カルセドニーとごっちゃになってない?

ヒーリングストーンの詳細な産地が明らかにされることは珍しい。
今回は幸いにも産地がわかった。
石の正体を探るにあたって、産地は重大な手がかりとなる。
表記の産地、リトル・パッツィは、コロラドの有名なペグマタイト。
イットリウムフローライトと思しき鉱物も出ている。
この石の正式名称は "Yttrofluorite" 若しくは "Yttrocererite" にあたるものと思われる。
鉱物として確かに存在する。
やっとわかったイットリウムフローライトの正体。

以下、イットリウムフローライトの概要。
最初の発見は1911年、ノルウェー。
その判断基準は豊富に含まれたイットリウム成分。
紫以外の色もあるが、社会通念上は紫色の蛍石を指し、色合いがその基準となっているという。
産地はコロラドの他にニューメキシコ、ノースカロライナ、テキサス、米以外ではカナダ、中国、エジプト、ロシア、ウクライナ、ナミビアなど。
なんと、日本からも発見されている。
記載は福島県川俣町!
日本三大ペグマタイトにして放射性鉱物の宝庫、福島からもイットリウムフローライトの産出があった。
いっぽう、メキシコから産したという記録は無い。

ヒーリング関係の資料では、イットリウムフローライトの産地はメキシコのみ、色は紫のみと記されている。
しかしながらそれは、必ずしも鉱物としてのイットリウムフローライトであるとは限らない。
また、健康被害については不明との描写も。
大丈夫なのか。
フローライトの発色にイットリウムが関与することは珍しくないようなので、ヒーリングを旨とするものに関しては、色合いを基準にイットリウムフローライトと呼んでいる可能性も考えられる。
パープル・カルセドニーと混同されているケースもあるかもしれない。
このタンブルに関しては、クラックなどを見る限りではフローライトに相違ない。

石にまつわる謎や神秘性がヒーリングストーンのウリとなっているのは事実。
この記事を見てがっかりされた方もおられるかもしれない。
神秘性が石の本質ではないと信じたい。
鉱物としては、相当量のイットリウムを含む。
砕いて服用することのなきよう。
個人的には大好きな石だが、念のため。


28×23×15mm  15.33g

2012/06/09

テルル


テルル
Tellurite, Quartz
Bambolla Mine, Moctezuma, Sonora, Mexico



Terraという言葉をご存知だろうか。
そうです、地球です。
もともとはラテン語のTellusから。
地球のどこかには、地球という名の鉱物があるという。
天体に因んで命名された鉱物は多いが、地球がその命名の由来となった鉱物の存在については、あまり知られていない。

鉱物に興味を持って間もなく、テルルという鉱物を知った。
最初に手に入れた八川シズエ氏のガイドブックにあった、テルル。
なんて可愛らしい名前だろう。
「地球」に因んで命名された鉱物だという。
探したのだが、誰も知らない。
稀産ゆえなかなか手にする機会はなく、先日ようやく入手した。

テルルは元素の名で、鉱物として一般的なのはテルライト/テルル石(Tellurite)。
自然テルル(Tellurium)の産出も稀にあり、元素鉱物として知られている。
テルル、またテルル鉱物は希産だが、日本からもかつて産出があった。
現在は採取禁止となっている。

写真は、テルル鉱物の宝庫とされるメキシコの鉱山から産したオールドコレクション。
中央に見える、黄色い束のような結晶がテルライトで、ガラス光沢と数センチに及ぶ大きさは、非常に見応えがある。
このような大ぶりの結晶は珍しいそうなのだが、驚くほど安価だったので、上には上があるのだろう。
結晶全体が黄色く見えるのは、石英に内包されたテルルに因る。
水晶をイエローに染める鉱物としては、前回取り上げたサルファーなど。

本文下、左に掲載した写真はテルルの原産地、Moctezuma Mineからの貴重な自然テルル。
銀色の部分がそれにあたる。
自然テルルとテルライトの区別がつかない段階で、両方購入したのは単に安くて綺麗だったからなのだが、あやうく後悔するところだった。
テルルの化学変化により生じるとされるテルル鉱物は多岐にわたり、表面に付着した粉末状の黄色の物質も、そのひとつだそうだ。

テルルについて調べたところ、不穏な記事にたどり着いた。
昨年起きた東京電力福島第一原発事故において、翌日にテルルの同位体が検出されたらしい。
ゆえに、テルルと聞いて、得体の知れない恐怖を連想する方も多いかもしれない。
詳しくは下記の資料を参照していただきたい。

参考:テルル132検出に関して
http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/06/06/tanemaki-jun6/

ちょうど去年の今頃、この問題が発覚し、何も知らない人たちの間で騒ぎになっていたとある。
全く知らなかった。
私の長年の憧れだったテルルが、大衆の恐怖を煽っていたのか。
ご存知の通り、ヨウ素と同様(たぶん)、テルルそのものは放射性鉱物ではない。
毒性はあるが、レアメタルとして工業用に用いられる貴重な資源である。

テルルが発見されたのは1782年。
1798年、新元素として確認されたさい、地球の名を意味するラテン語から名づけられたという。
このような希な元素に対し、我々にとってかけがえのない地球の名を与えたのはどういうことだろう。

一説では、直前に発見されたウランに対する皮肉を交えて名付けられたという。
ウランは海王星に因んで命名された。
前回ムーンストーンを取り上げたさい、ムーンストーンがもともと黒に近い鉱物であったなら、「冥王星」などと命名されていてもおかしくないのでは、と記した。
冥王星に、冥界の王を連想したからである。
追記したのは、テルルについて調べるうちに、冥王星に因んで名づけられた元素がプルトニウムであることを知り、その偶然に恐怖を感じたせい。
地球から遠く離れた闇に位置する2つの天体に、ウランやプルトニウムの名が冠せられたことはなかなかに興味深い。
研究者たちはウランやプルトニウムに、人類が侵されるであろう狂気と、その結果我々が直面する不吉な予兆を垣間見たのではないかとすら思えてくる。

海外では、テルルのヒーリングストーンとしての扱いも少なからずある様子。
サードアイに働きかけ、真実を見極める力と、異次元の旅をサポートするらしい。
妙に説得力を感じてしまう。
Terraという言葉が大好きだった。
人類の罪は私たちの罪。
誰かを悪者にするのみならず、自然にすら罪をなすりつけるのは人として正しいか。
地球に恐れを抱くのはおそらく、間違っていない。
私たちは試されている。

参考:History of the Ancient Stars and the Origins of A Rare Element:
http://peacefulearthangel.wordpress.com/

参考:Whispering Woods Crystal Grimoire:
http://www.peacefulmind.com/stones2.htm




61×45×23mm  57.65g

2012/06/07

サルファー(阿蘇山)


サルファー Sulphur
熊本県阿蘇市阿蘇山



お菓子のような可愛い結晶。
サクサクと噛めばとろけてしまいそう。
しかし、絶対に食べてはならない。
この結晶には、毒性がある。
日本を代表する鉱物のひとつ、サルファー(自然硫黄)である。

サルファーは、単一の元素のみで構成される元素鉱物のひとつ。
火山列島である日本では、多くの産出があった。
古くから工業用、産業用に用いられ、その名残りを硫黄島などの名にみることができる(参考:硫黄島の鉱物 - うずら石)。
サルファーといえば温泉。
世界的にみると通好みの鉱物だが、日本では癒しや健康の象徴として、わりと人気がある。

鉱物に興味を持ち始めた頃、天然レモンクォーツなるものと出合った。
サルファーが内包されることによって、淡いレモンイエローに染まった水晶だった。
強くこすると硫黄のにおいがする…
じゃあ、硫黄の原石ってどんなものだろう?
それがきっかけで出会ったのが、この阿蘇山のサルファーだった。
一目見て気に入った。

サルファーは世界中から産出し、産地により形状や質感は異なっている。
ボリビア産の大きなクラスター、ロシアの透明結晶、イタリアの鮮やかなレモンイエローの結晶などが有名。
資源としては枯渇しているが、国産標本も流通はある。
私の大好きな阿蘇山のサルファーは、半透明の塊状で産し、軽くほどよい大きさ、独特の質感を特徴とする。
常に側に置いておきたくなる。

※サルファーの管理にはくれぐれもご注意を。人体への毒性の他にも、鉱物や金属類が変質することがある(あった)。魔を除けるパワーは半端ないらしい。聖書では、神が人を罰するための道具として登場し、中国においては世界最初の火薬を作るための原料となったという(ジュディ・ホール)。

地獄谷という場所をご存知だろうか。
小学生の頃、富山県は立山の地獄谷を訪れた。
地獄の名にふさわしい荒涼とした土地に道は続いていた。

吹き出すサルファー!
地獄からなんか出る前に走れ!

立ち込める硫黄の臭いに呼吸を我慢しながら、必死で岩を駆け下りた。
地獄から脱出したときの安堵を、今でも覚えている。
立山の地獄谷は古くから信仰の場とされ、なんと136もの地獄があるらしい。

月日は過ぎ、私も大人になった。
今でも地獄谷のことは忘れられない。
いっぽうで、サルファーは私のお気に入りの鉱物のひとつとなった。
遥かな子供時代を想起させる、冒険と安らぎの石。
温泉はご褒美。
そういえば、北海道の登別温泉にも地獄谷があった。
以前ヒッチハイクの旅で訪れたさい、遠くから見物した。
硫黄のかおりは、旅の思い出とともに。


未測定

2012/06/05

ムーンストーン


ムーンストーン Moon Stone
Tamil Nadu, India



昨夜、月蝕の話題が出たばかりなので、今日は月にまつわるパワーストーンを取り上げようと思う。
ムーンクォーツではなく本家・ムーンストーン。
ムーンストーンの中でも、ブルーのシラー(輝き)が浮かび上がるものはブルームーンストーンと呼ばれ、価値が高いとされる。
多くはカットされ、宝石やビーズとなって流通している。
写真は、意外に珍しい、ブルームーンストーンの原石。

この原石をいつどこで購入したのかについては覚えていない。
産地と名前のメモが入っていなかったら、見落としていたかもしれない。
ムーンストーンのシラーを楽しむには、研磨加工が必要。
この標本も、結晶の一面がカットされている…はずだったのだが、どうも天然結晶のまま加工を免れている。
母岩のうえに付いた原石が薄いため、光を透しやすいのが原因だろうか。
オレンジを帯びたブルーの炎が結晶全体を包むさまを昼間から拝めるとは思わなかった。
実際の月と同様、原石の場合、太陽光でそれを見ることはなかなか難しい。

ロイヤルブルームーンストーン、レインボームーンストーン。
鉱物としては非常にわかりにくい。
ムーンストーンの呼び名は、特定の鉱物を指す言葉ではない。
うっすらとブルーの浮かぶ鉱物名を挙げていくと、きりがないほどにその種類は多く、特定が難しいために混乱を招いている。
ムーンストーンと呼ばれる石の正体は、サニディン、アノーソクレース、ラブラドライト
いずれも長石に類するが、その中のどれか一つを指定せよといわれると、専門家も言葉に詰まってしまうようである。

ムーンストーンの偽物 "ペリステライト" という鉱物も存在する。
どこからか、それはムーンストーンじゃなくてペリステライトだ!という声があがり、大騒ぎになったのも懐かしい。
俗にいわれる「戦慄のムーンストーン・えちごや騒動」である(無い)。
しかしながらペリステライトもまた、長石の一種である。
詳細について記すと長文になってしまうため、専門書を参照していただきたい。

パワーストーンは大衆文化、鉱物標本は学問に近いものと捉えている。
議論は堂々巡りで、建設的とはいえぬ。
子供が鉱物名を誤解していたとして、それを教えたところでなんになろう。
元来、ムーンストーンは白かったと思っている。
もしそれが黒ければ、「冥王星(※追記)」「ブラックホール」等、別の名前で定着していたはずだ。
月にまつわる、神秘的な伝説が数多く存在するように。

※追記:冥王星の名を冠した元素はプルトニウムである(→詳細:テルル)。

日本では、月はたいそう縁起のよいものとして、好まれてきた歴史がある。
サンストーンよりムーンストーンのほうが人気が高いのも、そのせいかもしれない。
例えば、月にはうさぎが棲んでいるという伝説がある。
満月には白うさぎが餅をつく、ということになっている。
月にうさぎのいる国は、意外に多いようだ。
直接聞いただけなので、文化的には異なるのかもしれないが、少なくともインド、西ドイツの方から直接「自分の国も月にうさぎがいる」と聞いたことがある。


ここではジャータカ(仏教説話)に出てくるうさぎの物語が起源となって、月にうさぎがいるという伝説が生まれた旨、記されている。
ジャータカは私が物心ついたとき、既に私の心の中にあった。
兎本生と呼ばれるその物語は、私がうさぎに興味を持ち、インドに行くきっかけともなった思い入れのある説話。
インド、日本については、ジャータカが月のうさぎの言い伝えの由来になったとしている。
いっぽうで、世界には月光が狂気をもたらすとされ、忌み嫌う土地があると聞く。
月の影響で恐ろしい狼に変身する人もいた気がする。
一般に、欧米人は月を好まないとされている。
調べてみると発祥はどうも、ドイツ。
月は悪魔や魔女の象徴として描かれているという(ドイツは魔女狩りがもっとも盛んだった国)。
実際、欧米ではムーンストーンに対し、邪悪で背徳的な意味合いを与えることも少なくないようである。
うさぎがいるんじゃなかったのか。
ドイツの夜空にうさぎがいると教えてくれたのは、西ドイツの学者の息子。
父の跡を追い研究者を目指していた青年だ。
彼の性格や風貌は、オカルト的寓話とは全く結びつかないし、とくに仏教徒というわけでもなかったから、不思議なのだ。
欧州のオカルトは根が深い。
なぜドイツに両極端な二つの月のイメージが並存するのかについて、これ以上の言及は控える。

話を戻そう。
ムーンストーンは鉱物名ではない。
サニディンだったりアノーソクレースだったり、時々ラブラドライトやペリステライトであったりもする。

参考:ペリステライトとムーンストーン、ラブラドライト
http://www.cgl.co.jp/latest_jewel/gemmy/128/index.html

上記の3つの鉱物は、いずれも長石の一種。
宝石の場合は区別をするべきだが、大量生産が常であり、また消耗品でもあるパワーストーンの場合、かえって混乱の原因になりそう。
写真の石はインド産だから、ラブラドライトの可能性が高い。
しかしながら、産地からはペリステライトも出ている。
ムーンストーンより先は、鑑定するしかない。
そこまでして何になろう。
正式なムーンストーンとされるサニディンのすべてが、月の輝きを想わせるとは限らないのだから。

論争に決着が着いたかどうかはわからない。
ペリステライトはブルームーンストーンの偽物というのは言いすぎであろう。
ムーンストーンと呼ばれるのはひとつの鉱物ではない。
鉱物が違えば問題も起きるから、パワーストーンにもある程度の定義は必要だ。
ただ、宝石の場合はともかく、産地すら明らかにされない消耗品としてのパワーストーンに、細かな決め事が必要だろうか。

以下、素人の意見。
パワーストーンに限っては、青白いシラーの出る長石類をムーンストーンに統一してしまおう。
成分でなく外観や質を基準にし、規定の範囲内でムーンストーンの呼称を使ってしまおう。
いっぽう、お馴染みのオレンジムーン、ダークグレームーンなどについては、ムーンストーンとしての扱いは甚だ疑問であり、月のビジュアルとして考えると、どうにも不吉であり、不気味である。
ムーンストーンを邪悪な石にしてはいけない。
別途、名称の考案を望む。


47×30×12mm  19.15g

2012/05/30

モリオン/スモーキークォーツ(ポーランド産黒水晶)


モリオン/スモーキークォーツ
Morion/Smoky Quartz
Strzegom, Dolnośląskie, Poland



珍しいものを見かけた。
ポーランド産モリオン。
なんだろう、こんなの聞いたことが無い。
そう思って問い合わせてみたところ、在庫を見せていただけるというお話になった。
産地はデータベースにも掲載されている、ポーランドの有名なペグマタイト。
歴史に残る鉱物を数多く産したが、採り尽くされてしまったようだ。
現在は古いコレクションが、ヨーロッパの愛好家たちの間でささやかに取引されているという。

私の対応に不備があり、話が消えそうになりながらも、なんとか日本まで送っていただけることに。
被災地から戻って間もなく、ポーランドの黒い水晶と対面することになった。
ひとつひとつ、チェックする。
個性豊かな黒水晶が次々に現れる。
クローライトのまりも状インクルージョンが入ったモリオン(!)まで出てきた(そのことに気づかれた、お世話になっている社長にプレゼント)。
漆黒のモリオンから透明に近いスモーキークォーツまで、色合いの幅は広い。
資料にあるとおり、モリオンの上にさらにスモーキークォーツが成長している標本が最も多い。
そのため結晶表面に光沢があり、優美な印象を受ける。
気になるのは、エピドートと共生している確率が極めて高いということ。
結晶内部から表面に至るまで、もじゃもじゃのエピドートで埋め尽くされている(本文下、左の石)。
ダークスモーキークォーツに幽かに浮かぶ風景。
モリオンの場合は中が見えないから、はみ出したものを見て思いを馳せるしかない。
なんて贅沢な悩みであろう。

被災地への旅の前日、私は大阪ミネラルショーに来ていた。
いつもながら師匠とともに。
彼はいつも気の利いたプレゼントを用意してくださる趣味人にして、あらゆる分野における大先輩。
その日プレゼントしてくださったのは、切手だった。
祖父(石の収集家でないほう)が切手の収集家だったこともあり懐かしかった。

大好きなうさぎの切手に混じって、鉱物の切手が数枚ある。
その中に、明らかに見覚えのある水晶の切手があった。


旧東ドイツ(DDR)発行の切手。左はエピドートがはみ出している?

茶色の水晶からはみ出した黄緑色の何か。
これって、ポーランドのモリオンにそっくりじゃないか。
実際に届けられた標本を見て、確信した。
社長にお話を伺った。
水晶とエピドートの共生は、特に珍しいことではないそうだ。
同じものとは限らないとのご意見であった。

確かにそうだ。
しかし、わざわざ切手にするからには、それなりの歴史的評価と産出量があったはず。
切手にはその国の誇りや美意識、歴史が刻まれている。
モリオンは真っ黒な単結晶、或いは長石と共生したものが好まれる。
よりによって、もじゃもじゃしている標本を切手にするというのは、奇妙である。
何を記念して発行された切手なのだろう。
譲ってくださった方もわからないとのこと。
古い切手だから当然だろう(書いてある文字についてもコメントはなかった)。
ドイツでは鉱物収集が盛んだから、ヨーロッパ各地から出ているモリオンを取り上げたものなのかもしれない。
ヨーロッパにおいては、イタリアやルーマニアから発見されるモリオンが有名で、現在も多くの流通がある。
いずれも外観は異なっている。
大さといい、態度といい、もじゃもじゃといい、この絵柄はまるでポーランドのそれ。

旧東ドイツから歴史的なモリオンが産したという話は聞いている。
この水晶の産地に同じである。
つまり現地は戦前、東ドイツ領だった。

写真は私が一番気に入っている標本。
半分は完全に黒、上部はダークスモーキーとなっており、太陽光の下で内部の様子を観察することができる。
両端が結晶し、この地に原産の鉱物Strzegomiteが内包されているという。
インクルージョンの実に多彩なこと。
真っ黒で中身など見えないはずなのに、親切にはみだしているというのも、興味深い。
モリオンの一面にびっしり付着したエピドートは、ふさふさと生い茂った芝生のよう。
付着物といえばフィンランド産モリオンだが、ここまで派手ではない。
こんなものが世界各地から産出しているのか。
なにより不思議なのは、友人がなぜこのタイミングで切手をプレゼントしてくださったか、ということ。
私の趣味はだいたいご存知だ。
黒水晶にはさほど興味のないことだって、知っている。
ただ、私が子供時代、切手に興味があったことは伝えていなかった。
数枚あった鉱物の切手のうち3枚に、モリオンの絵柄が入っている。
偶然にしては出来すぎている。
ご協力いただいたすべての方に感謝し、美しい黒水晶を生んだ遠き彼の地に思いを馳せる。




いくつかストックがございますので、興味のあるかたはお問い合わせください(詳細ページ)。夕日で撮影したので、エピドートが黄色っぽく写っている点、お許しを。


60×33×30mm  78.04g

2012/05/28

フェナカイト/アクアマリン/フローライト


フェナカイト×アクアマリン×フローライト
Phenacite/w Aquamarine, Fluorite
Siyany Mountains, Deposit Snowy, Buryatia, Russia



フェナカイト(フェナサイト/フェナス石)の大きな結晶に、水色のアクアマリンが見え隠れし、紫のフローライトが華を添えている。
ホワイト~クリーム色のフェナカイトは、主役ながら素朴で地味。
何も言われなかったら脇役に見えてしまうかもしれない。
もともと、産出そのものが少ないため、希少価値・相場ともに年々上昇を続けている。
多くは1グラムに満たない欠片で、10gを超える標本は貴重品となっている。
フェナカイト、アクアマリン、フローライト。
この類い稀なる組み合わせは、ロシアから近年、僅かに発見されたものだという。
数年前に、欧米のヒーラーの間で流れていたものを運よく入手した。
現在も流通はある。
産出があるかどうかについてはわからない。

ロシア産のフェナカイトは貴重品で、なかなか拝む機会がなかった。
確かに、表面には土が付着していて、あまり綺麗とは言えない。
しかし、当時の私にこの大きさは衝撃であった。
洗う気になれず、そのまま保管してあった。
先日、たまたま見つけて、手に取った。
私の撮影技術ではその魅力を存分に引き出せなかったことが悔やまれる。

ロシア産フェナカイトは、クリスタルヒーリングを嗜む人々に特に人気が高い。
透明感においてはミャンマー産のほうが優れているし、形状のバリエーションにおいてはブラジル産が群を抜いている。
しかしながらロシアンフェナカイトの波動は、それらとは比較にならないということである。
ヒーリングストーンの頂点は、フェナカイトとアゼツライト。
次いでモルダバイト、ダンビュライト、ブルッカイト、水晶やニューエイジストーン各種が並ぶということになっている。
選ばれし人々のみが手にする石、フェナカイト。
そんな扱い。

驚く方もおられるかもしれないので、補足しておく。
波動はともかく、石が人を選ぶのには理由がある。
流通の少なく相場の高い石は、タイミングや予算などが違えば入手できないのが常。
また、入手ルートが限られることもある。
サチャロカアゼツライトはその典型的な例だろう。
フェナカイトはれっきとした鉱物で、専門家が見ないとそれとわからない、という曖昧さはない。
それどころか、一目でロシア産とわかってしまうような、独特の魅力を放っている。
クリスタルヒーラーのみならず、鉱物収集家にも好まれる希少品であるがゆえに、入手が難しいのだ。
一生モノを手にするためには、最低限の購入資金と、鋭いアンテナが必要となる。

さて、昨年Heaven&Earth社から、セラフィナイト入りフェナカイトなるものが登場し、話題を呼んでいる。
産地はウラルのエメラルド鉱山とのことだから、マリシェボからの産出ということになるのだろう。
フェナカイトとしては大きく見応えがあり、清らかで颯爽とした印象が心地よい。
気に入って大切にしている。
石としては文句のつけようがない。
ただ、違和感は拭えない。
当初は金雲母とセラフィナイト、フェナカイトが共生した状態で発見されたという。

ピンときた方もおられるかもしれない。
以前、ゴールデンセラフィナイトという鉱物を取り上げた。
セラフィナイトの産地は本来、ロシアのバイカル湖付近に限定されるということだった。
この "セラフィナイト入りフェナカイト" の産地と推測される、ウラル・マリシェボ鉱山からはかなりの距離がある。
手持ちの石に関しては、何らかの鉱物が共生していることがわかる程度。
セラフィナイト(もしくは鉱物名:クリノクロア)なのかどうかについては、肉眼での判断は困難であった。
天使の羽根という喩えの由来となった、独特の模様や深いグリーンの色合い、柔らかな質感などはみられない。
出処はモスクワ、地質博物館の学芸員とのこと。

白くてふんわりしたものが好きだ。
ロシアンフェナカイトの特徴でもある、雪のように白く、まるみをおびた姿。
結晶中に時折みられる透明な窓は、光を受けて虹色に煌く。
波動については素人ゆえ判らぬが、可愛らしくてたまらない。
数あるフェナカイトの中でもひときわユニークな「アクアマリン・フローライトの結晶を伴うフェナカイト」を私はおすすめしたい。
残念なことに、私のもとにはこれひとつ。
どうかあなたのもとにも、届きますように。


35×32×23mm  26.02g

2012/05/26

ハックマナイト(結晶化)


ハックマナイト Hackmanite
Sar-e-Sang, Koksha Valley, Badakhshan Province, Afghanistan



アメジスト?
フローライト?
いいえ、うさこふさんです。
春のミネラルショーで見つけて、何の石か訊ねようと店主を探していると、どこからか私の名を呼ぶ声がした。
いつも興味深い鉱物を届けてくださる馴染みの業者さんだった。
覚えていてくださって、うれしい。
しかし、いつもながら難解なものを届けてくださる。

一見しただけではわからなかった。
優しいラベンダーカラーと絹状光沢、結晶形から、フローライトやレピドライトを連想した。
価格は1,000円。
いつもながらの良心価格。
ハックマナイト、とのことだった。
紫の透明石は初めて見る。
よくハックマナイトとわかったものだ。
ブラックライトでオレンジに蛍光するさまは、まさにハックマナイトのそれ(本文下に写真を掲載、共生の青紫は不明
)。

結晶し、さらに侵食を受けた姿が興味深い、宝石質のこの標本は、ラピスラズリが採取されることで有名なアフガニスタン某所(※注1)からやってきた。
過去にソーダライトの考察において、ハックマナイトとラピスラズリとの混同が見受けられるとした(→ソーダライト/ハックマナイト及びアフガナイトに記)。
現在もこの件については意見がわかれる模様。
宝石として流通しているアフガンからのハックマナイトの多くはブルーの透明石。
ソーダライトと呼ぶほうが自然なのでは。
ハックマナイトはソーダライトの変種にあたる。

※注1)この標本の産地について、鉱山までは確認できていない。有名な産地は以下:Lajur Madan; Lapis-lazuli Mine, Sar-e-Sang District, Koksha Valley, Badakhshan Province, Afghanistan.


参考:さまざまな産地のハックマナイト
http://www.cgl.co.jp/latest_jewel/gemmy/135/02.html

ここではハックマナイトを産地別に分け、産地に拠って異なる特徴を示す原因について報告されている。
ミャンマー・パキスタン・アフガニスタン・ロシア・カナダ・グリーンランドからそれぞれ採取されたサンプルを用いている。
私がセットと思い込んでいたミャンマー産とアフガニスタン産だが、それらが異なるグループに属するという部分は非常に興味深い。
またパキスタンからは、どのハックマナイトとも違う特徴を示す石が出ているらしい。

さて、パキスタンのハックマナイトを探す旅が始まった。
しかしながら、アフガニスタン産のスキャポライト(マリアライトに分類されることが多い模様)にたどりついてしまった。
紫の色といい、質感といい、そっくりである。
カットしてしまうと全く見分けがつかない。
表記の産地は同じ(注1)。
無色透明~アクアブルー、濃紫色に至るまで、さまざまな色合いの結晶が出ているようだ。
いずれも蛍光し、イエローまたはブルー、レッド、ピンクなど、テネブレッセンスの色は石によって異なっている。
興味深いのは、ラピスラズリやアフガナイト同様、ピンクに蛍光する場合があるということ(→アフガナイト参照。アフガナイトはレッド~ピンク、ソーダライトやハックマナイトはオレンジ~レッドに蛍光するようだが、それらは持ち主によって異なるとみられる)。
同じ産地の同じ鉱物であっても、石によってテネブレッセンスの色合いが異なる、という現象は起こり得るのだろうか。
成分が著しく異なるのでないなら、違和感を感じずにいられぬ。
そんな素人がここにいる。

まとめよう。
同地からは無色透明~アクアブルー~濃紫色を示す蛍光鉱物が多数発見されている。
つまり、アフガニスタンのラピスラズリ鉱山からは、アフガナイト、ソーダライト、ハックマナイト、スキャポライト(マリアライト)、またダイオプサイドが産出し、しばしば混同されている?

蛍光鉱物について研究されている方に詳しく伺いたい。
何処におられるだろうか。
なお、異例の特徴を示すとされるパキスタン産ハックマナイトについては、入手できる可能性は極めて低い(Balochistanから産した例が一件のみ。以下ソース省略)。
またパキスタンに隣接する中国某所から、紫のスキャポライトが産出、産地を偽って市場に流れているということであった。




30×22×19mm  9.35g

2012/05/25

ブルートパーズ(川流れ)


ブルートパーズ Blue Topaz
Aracuai River, Aracuai, Minas Gerias, Brazil



ガラスのようなブルーの石ころ。
一見すると、川流れ水晶のように見える。
青い色の水晶は無いはずだから、何事かと思ってしまう。

二年前の秋のミネラルショー、ブラジル産鉱物専門ブースの500円コーナーにあったもの。
上流に有名なブルートパーズの産地があり、そこから流れ出たものだろうとのことだった。
川流れトパーズ。
半分に割って、中を見てみたい衝動にかられる(川流れ水晶は半分に割って、内部が観察できるような状態で流通している)。

天然のブルートパーズというのは珍しい。
天然石志向がピークにあった頃、天然ブルートパーズのブレスを30万で購入した人がいたほど。
一般に知られているブルートパーズの多くは、熱処理・放射線処理によって青い色合いに変化させたもの。
もともとは宝石として使えない色だった。
スイスブルートパーズ、ロンドンブルートパーズなどと呼ばれる処理石は、大きいものでも千円以下で入手できる。

処理により色合いを変えることが可能なトパーズをFタイプという。
ブルートパーズはFタイプにあたる。
現在はシェリートパーズやピンクトパーズ、パープルトパーズなどに人気が集中している。
それらはOHタイプと呼ばれ、その希少性、色合いの珍しさ、美しさなどから高い評価を得ている。
いっとき希少品とされた天然のブルートパーズは、それらとは比べ物にならないほど流通した。
天然ブルートパーズは意外に珍しくないもの、として定着してしまった。
ゆえに、人気は下降気味。
このブルートパーズもまた、時代の流れに取り残され、処分されていたのだろう。

調べてみた。
"川流れトパーズ" という流通名は実際にあるようだ。
7月24日の誕生日石にも指定されている。
ただし見た目はこれとは別モノ。
大半は欠片のような状態で、まんまるなタイプはみかけなかった。

しかし、よくトパーズとわかったものだ。
レアな青い川流れ水晶だと言われたら、信じてしまうかも。


30×24×18mm  24.89g


2012/05/22

グリーンファーデンクォーツ


ファーデンクォーツ
Green Faden Quartz
Kharan, Baluchistan, Pakistan



ファーデンとはドイツ語で「糸」の意味。
うすい板状の結晶の中心に、糸のようなつなぎ目がみえる水晶をさして、ファーデンクォーツと呼んでいる。
以前はアルプス産出の高級品が中心だったが、近年パキスタンから比較的安価な標本が流通するようになり、一気に身近な存在となった。
クリスタルヒーリングにおいては、再生、復活、魂のパートナーとの繋がりを意味するとされ、人気は高い。
ファーデンクォーツの奇妙な形状とその生成過程については諸説ある。

最も一般的な説としては、もともと二つあった結晶が、地殻変動などによって割れ、再結晶した、というもの。
中央を貫く糸はつまり、修復された跡というわけ。
いっぽう、糸はいわば芯で、それを中心に結晶が成長していったという説もある。
また、上記の二つの過程が順番に起きたという説もあるようだ。
水晶は何億年の時を経て私たちのもとに届けられる。
その過程において何が起きたかについては、推測の域を出ない。
実験室で短期間のうちに合成水晶を作ることはできる。
しかし、自然界で起きている様々な出来事を、何億年もかけて実証してみせることは、事実上不可能であろう。

緑に染まったファーデンクォーツ。
結晶表面から内部に至るまで、ふりかけのように点在している緑の鉱物は、クローライト(アクチノライトとの説も)とのこと。
ファーデンクォーツの成長過程において、クローライトが取り込まれ、表面にびっしり付着するほどに、両者は密接した状態であったものと考えられる。
長期間にわたって同じ環境下で成長したということである。
ゆえに、地殻変動などが原因で結晶が二つに割れるほどの大規模な環境の変化が起きたという説には、違和感を覚える。
仮に地殻変動との関係があるとするなら、この結晶が形成されるごく初期の段階での出来事ではないだろうか。
「修復」後に起きることも、ファーデンクォーツの正体に迫るうえで重要な手がかりになるという推測が可能だ。

さて、このグリーンファーデンクォーツには、一般的なそれとは異なる特徴がみられる。
一見して興味を惹かれるのは、20本余りのダブルポイントの水晶が束になっていること。
やや板状ではあるが、一つ一つのポイントが生々しくその姿をとどめている。
ファーデンクォーツの多くは、再結晶を繰り返すうちに、本来の形は崩れていく。
極めて薄い板状の連晶となって発見され、そこにかつての面影は無い。
結晶の本数が数えられるほどに形を留めていて、そのすべてがダブルポイント(両錐水晶)となっているのは興味深い。

水晶には普通、上下がある。
両錐水晶は、どちらかの先端が先に形成され、その後反対方向に結晶が成長していくことにより出来るといわれている(写真)。
一つの水晶に二つ以上のトップ(先端)が見られる場合、それらは別途形成されたものと解釈する。
よく観察すると、あとから出来たトップはどちらかわかることが多い。
しかし、この標本の場合、二つのトップがほぼ同時に出来たように見えるのである。
それらが押し固められて、束になった状態。
いったいどうして、こんなことになってしまったのだろう。

ファーデンクォーツについて、調べてみた。
誰もが異なる意見を主張をしている。
専門家(?)の意見がこうも食い違うということは、実際のところよくわかっていないってことだろう。
クリスタルヒーリングで多用される、修復という推論は、こじつけの感がある。
かつて2つあったものが折れ、修復されただけなのであれば、日本式双晶のようなシンプルな形になるんじゃなかろうか(本文下の写真右)。
一部にはそうしたシンプルなファーデンクォーツも存在する。
ただし、先輩方のご意見をまとめると、その生成過程は、時と場合により異なるものと考えるのが妥当だろう。

では、このグリーンファーデンの場合はどうか。
一本の白く太い糸が、結晶の中央を貫ぬくからには、ファーデンクォーツだろう。
いっぽうで、フロータークォーツ(大雑把に説明すると、特殊環境で宙に浮かんだ状態で成長したために、上下がない水晶のこと)のようにも見える。
ただし、フロータークォーツが自由奔放に成長し、方向性が定まらないのとは異なり、この標本は左右対称である。
水晶の束は、中央の糸を境に同じ方向を向いて成長している(本文下の写真左)。
ふりかけのようにちりばめられた、緑のクローライトが謎を加速させる。
以下は、あくまで想像である。

このファーデンクォーツはきっと、始まったばかり。
実はこの先にはまだ、続きがあったのだ。
それを誰かが見つけて、持ち帰ってしまった。
中央を貫く太くまっすぐな糸が、この結晶をより複雑で神秘的な姿に導くはずだった。
ゆえに、このファーデンクォーツは、無限の可能性を秘めている。
私にはそう感じられてならないのである。





左は裏からみたところ。やや板状となった結晶の中心に、糸がみえる。右はマダガスカル産の日本式双晶。こちらも中央に「糸」がみえるが、その定義や生成過程は異なる。マダガスカルからファーデンクォーツが産するという話は聞かない。


40×38×12mm  16.48g

2012/05/21

ポリクロームジャスパー


ポリクロームジャスパー
Polychrome Jasper
Near Analalava, Tulear province, Madagascar



まるで砂漠に建つ城のよう。
2006年にマダガスカルで発見されたジャスパーの一種である。
多彩で変化に富む絵画のような模様は、塊状の原石を研磨することにより自然に現れたもの。
ポリクロームの名は、その幅広い色合いに因む。
その名の示すとおり、赤からイエロー、ブルーやパープルなど、あらゆる色がこの石に現れるのは非常に興味深い。
砂漠から産することから、デザートジャスパーとも呼ばれている。

ジャスパーは日本では人気がない。
国内の天然石の需要の多くはビーズ。
模様を楽しむには小さすぎる。
ゆえに、国内で流通しているジャスパーの多くは、中国で染色された岩石である。
ジャスパーの類いはすべて偽物だと割り切っている人々もいる(詳細はアゲートに記しました)。

欧米ではジャスパーの評価は高く、専門のコレクターもいるほど。
中でも研磨により風景の浮かぶジャスパーは、ランドスケープジャスパーとして、高額で取引されている。
しかしジャスパーに現れる風景を楽しむ日本人はごく一部。
多くは偽物扱いされ、二束三文の価値とみなされる。
例外はある。
マダガスカル産のオーシャンジャスパー、オーストラリアのムーカイトなど、ヒーリングストーンとして評価を受けたジャスパーの人気は高い。

このポリクロームジャスパーもヒーリングストーンとして注目されつつある。
それに伴い、国内での人気も上昇している。
なんでもこのポリクロームジャスパーを用いて瞑想すると、高次の世界へ導かれるのだとか。
癒しの石というのも、絵画療法に使えそうだからわかる気がする。
アセンションストーンという呼び方もある模様(参考:パワーで選んでしまった好例)。
ジャスパーに価値が与えられるのは大変嬉しいこと。
ただ、パワーだけで選ぶと二束三文のジャンクを掴むことになる(参考:日本人がいかに舐められているか実感できる好例2)。
できるなら、パワーと併せ、自然が作り出した美しい情景を楽しみたい。

イメージはバビロンの空中庭園かな。
砂漠を彷徨った旅人がようやく見つけた楽園。
バグダッドの遥か南。


55×12mm  50.95g

2012/05/18

ダイヤモンド



ダイヤモンド Diamond
産地不明



宝石の頂点、ダイヤモンド。
古代より人類を惹きつけてやまぬ石。
何千年が経ってもその価値は失われることなく輝く。

ダイヤモンドは贅沢品。
天然に存在する鉱物の中では最も硬度が高い。
4月の誕生石。
結婚指輪。
イメージとしてはそんな感じだろうか。
決して安いものではないが、驚くほど高いものではない。

鉱物としては炭素の一種。
一応のランクはあるが、店によってはテキトウな印象を受けることも少なくない。
透明感に乏しいダイヤモンドは数千円で入手できる。
ただ、資産価値がある石は1ctを超えるものに限られるそうだ。
資産として所有する場合、鑑定書が必要となる。
宝石については、鑑定料(意外に高額)込みであると思っていいかも。
いっぽう、ピンクダイヤなど、産地が限られ枯渇の危機に瀕しているものを探す場合は、非常に高い買い物になる。

宝石についてはまだ勉強中の身である。
宝石の世界は非常に難解。
専門の教育を受けた人間の活躍する場と聞いている。
鉱物標本としてのダイヤモンドは少なく、大半はカットされ宝飾業界に流れている。
ダイヤモンドの原石の多くは双晶を成しており、標本としての面白さや産地の確かさから信頼性は高いものの、カットすることでかえってランクが下がることが多いという。
複雑構造を持つ結晶からは小さな石しかカットできず、高い技術が必要だ。
カットされることでよりいっそう輝くのがダイヤモンド。
私が持っているのもすべてカット石。
長い歴史において、イミテーションが数多く存在したのも、呪われたダイヤが存在したのも、この石の美しさに人を狂わせる力があったためだろう。

※ダイヤモンドについての詳細をお調べの方、ご購入を検討中の方は、下記リンクをご参考にどうぞ。これより先はうさこふ個人のエピソードです。
http://usakoff.blogspot.com/2013/02/blog-post_6632.html

神戸宝飾展のお仕事をいただいた。
以前お世話になったスリランカの宝石商様の紹介だった。
宝石の世界を垣間見る絶好の機会である。
本当に嬉しかった。

私に仕事を下さったのは、VIPブースの出店者。
建前上、この展示会は特権階級の人間しか入れないということになっている。

VIP会場は、昨今のミネラルショーでは相手にされない中国人業者のビーズショップや、売れ残りの宝飾品を法外な値段で並べている店ばかり。
客層は東南アジア系が大半。
一人だけ白人女性を見かけたが、不機嫌そうな顔で足早に立ち去っていった。
あちこちで中国語が飛び交うさまは、ツーソンどころか国内のミネラルショーでさえ見たことのない光景だった。

私が知りたかったのはダイヤモンドやパライバトルマリンなど、資産価値のある宝石に関する知識。
加熱シトリンや放射能処理されたトパーズについて学びに来たのではない。
こうしたビジネスに関わり、人々を騙してジャンクを売りつける度胸は私には無い。
もちろん高級宝石は若い方には手が出ない価格帯だから、少しでも興味を持っていただけるかどうかは今後の宝石業界を左右する。
しかし、高齢社会を迎えるにあたって、眠っている宝石を発掘することができなければ、やがて没落を見ることになるだろう。

石をこよなく愛する誠実な宝石ディーラーさんから購入したダイヤモンド。
私の宝物。
確かに、大粒の素晴らしいダイヤモンドを販売している店はあった。
だけど、これを超えるダイヤを身につけている客を見ていない。
未だバブル気分の人々がいるのは知っていた。
お金がなくなれば哀れな抜け殻である。
重要なのは、後世に残るミュージアムピースを客に提供することではないか。
使い捨ての石を売るようでは、やがて客も離れていくだろう。

宝石は時に人を狂わせる。
歴史がそれを物語っている。
だからこそ誠実な販売が必要な時に来ていると思えてならない。

0.41ct

2012/05/16

ベリル(ピンクファイヤー)


サンベリル/ヘマタイト in ベリル
Beryl/w Hematite Inclusions
Gairo, Dodoma, Tanzania



ベリル(緑柱石)とは鉱物のグループ名。
濃厚な緑はエメラルド、淡いブルーやグリーンはアクアマリン、ピンクはモルガナイト、赤はビクスバイトと呼ばれ、宝石として親しまれている。
無色透明のベリルはゴシェナイトといい、コレクション用にカットされることが多い。
イエローについてはイエローベリル、ヘリオドールの二種類があり、発色の原因物質によって区別している。
いずれも透明石が好まれ、内包物はあまり歓迎されない。
成分にベリリウムを含むだけに、原子力の研究開発に消えたベリルも多かったろう。

クリアな淡いブルーグリーンのベリルにヘマタイトの入った珍しい標本。
ヘマタイトの混入によりオレンジのアベンチュレッセンス(輝き)を示す。
正式にはヘマタイト・イン・べリルだが、サンストーンに似ているせいか、サンベリル、サンストーンベリル、インクルージョンベリルなどと呼ばれ、流通している。
多くはイエローベリルにヘマタイトが内包された状態。

春のミネラルショーで見つけた、ブルーグリーンベースの興味深い標本。
アクアマリンともいえそうなクリアなブルーベリルに浮かぶピンクのフラッシュは、ピンクファイヤーの浮かぶサンストーンそっくり。
共通点は、結晶に内包されたヘマタイト由来のアベンチュレッセンス。
なんとなく勘づいた方もおられることと思う。
アイスブルーのベリルから飛び出すピンクのファイアは、ピンクファイヤークォーツの煌きそのもの。

昨年の冬の池袋ミネラルショーで、ピンクファイヤーの浮かぶサンストーンを偶然見つけた(→サンストーン/ピンクファイヤー)。
直後にこの石の存在を知った。
もしかしたらベリルにもピンクファイヤーの類いがあるんじゃないか。
そう思って購入したが、世の中はそう甘くない。
浮かぶのはオレンジの煌きばかり。
ペンライトをあててもピンクの閃光は確認できなかった。
ヘマタイトを含むベリルを取り扱うお店は少なく、ネット上で買うほかなかった。
不可抗力だった。
現物を見て選ぶチャンスのないまま、月日は過ぎていった。
出会いは例の如く、突然にやって来た。

先日開催された、春の大阪ショー。
私はペンライトとルーペを手に参戦していた。
完全にネタのつもりだった。
友人がたまたまカラーチェンジトルマリン(ウサンバラ効果を示すトルマリン)とおぼしき石を手にとった。
ツッコミ狙いですかさずペンライトを取り出したそのとき、どこかでピンクのファイヤーが炎を上げたのである。

サンベリルだった。
私が以前ネットで見かけて購入したお店だった(注:ウサンバラもこのお店で購入したのですぐわかった)。
長年お世話になっている店長さんとお話する機会までいただいた。
あの店長さんでさえ気づかなかったとのこと。
ただ、ピンクのファイアが浮かぶサンベリルはこれひとつ。
他はすべてオレンジ。
タンザニア産のサンストーンにそっくりなのもひっかかる。
その区別の根拠として、素人の私には表記名と詳細な産地の違い、としか答えられぬ。

写真は屋外の自然光にて撮影した。
ピンクファイヤークォーツがあるならば、ピンクファイヤーサンストーンもあるからして、ピンクファイヤーベリルも有り得る。
か、どうかはわからない。
そんな単純なものではないとわかっている。
しかしながら、このベリルを知ったとき、ピンクファイヤークォーツの中身の正体はまだ謎であった。
私がなぜこれに目をつけたのか、それは素人だから。
実際に存在した。
ヘマタイトのインクルージョンならば、つじつまが合う。

水色だから、いっそアクアマリンと呼んでしまうのもいいかもしれない。
ピンクファイヤー・アクアマリン。
アクアマリンは、結婚指輪に好んで用いられる鉱物。
指輪からピンクのファイアが浮かぶなんて、粋な演出じゃないか。
アクアマリンから飛び出す愛の炎は、宇宙のふしぎに起因している。




※無事にPCが戻ってきました。詳細は前回の記事に追記してあります。なお、サンベリルとタンザニア産オリゴクレースとの類似については、引き続き調べていきたいと思います。お譲りいただいたのは長年お世話になっている信頼の置ける業者様であること、また今回に限っては、いわば顔のみえる買い物であったことから、ベリルであるとの判断のもと、記しました。新しい事実がわかれば追記します。


22×20×9mm  4.36g

2012/05/11

【ご報告】更新について

昨日、旅を終え帰宅しました。
うっかりしており、最終日にパソコンを東京にて紛失しました。
現在、データや写真等が手元になく、更新ができない状態です。
そこで、ささやかではありますが旅の報告をさせていただこうと思いました。

パソコンは無事に見つかりましたが、ブログを更新できるのは最短で来週、万一破損していた場合は休止となります。
大変申し訳ありません。

動画は鉱物とは直接関係のない内容です。
被災地の一年後を、公共交通機関と徒歩とデジカメのみで記録した、素人の撮影になります。
テレビをほとんど見ないので、撮影中まるで無人島から来た人のようですが、私です。
お見苦しい点お許しいただけましたら幸いです。




After the Earthquake



One year after the great Earthquake in Japan.

-Yamamoto Town, Miyagi prefecture, Tohoku
-Haranomachi Station, Fukushima prefecture, Tohoku
-Minami Soma City, Fukushima prefecture, Tohoku

To every thing there is a season,
and a time to every purpose under the heaven.
My personal view of human nature is;

http://youtu.be/r6-IddJEjXk





宮城県及び福島県住民の皆様、JR関係者様、ご通行中の皆様
またこのような私の旅を支えてくださったうちゅうのおともだち(※注)に心より感謝申し上げます。


【後日談】

パソコンは無事に戻ってきました。
この悪運の強さに頼らずに強く生きられるようになりたいと願わずにいられません。
どうかこれからもよろしくお願いします。
ささやかですが更新しました。

2012/05/08

ブルークンツァイト


ブルー クンツァイト
Spodumene var. Blue Kunzite
Paprok, Kamdesh, Nuristan Province, Afghanistan



クンツ博士が最初に発見したカリフォルニア・アイリスを覚えておられる方はおられるだろうか。
もともとクンツァイトは、クンツ博士が副顧問を務めた米・ティファニー社から世界に紹介された鉱物。
パワーストーンとして絶大な人気を誇るこのライラックピンクの宝石は、将来を約束された輝ける存在だった。
残念ながら、良質のクンツァイトの産出は減るいっぽう。
多くは放射線処理を施され、お馴染みのライラックピンクの色合いに改良されているという。
産出の激減に伴い、その出処はカリフォルニアからブラジル、ブラジルからアフガニスタンへと移行している。

より見事な研磨品を、心ある方からお譲りいただいた。
感謝の気持ちを込め、新しくわかったことなども含めて、改めて紹介させていただこうと思う。
この石を譲ってくださったパキスタン人ディーラーには大変お世話になった。
彼らの置かれている状況を考慮し、ご迷惑にならぬよう心掛けたい。

まずは前回記したクンツァイトの概要から。
鉱物としてはスポデューメン(リチア輝石)の一種になる。
名称は色合いにより異なっている。
発見年代順に並べると以下のようになる。

スポデューメン Spodumen ー 無色または白 1800年/スウェーデン
トリフェーン Triphane ー イエロー 1877年/ブラジル
ヒデナイト Hiddenite ー グリーン 1879年/ノースカロライナ州
クンツァイト Kunzite ー ピンク~バイオレット 1902年/カリフォルニア州

ブルークンツァイトが登場したのはごく最近。
それまではヒデナイトとして扱われていたようで、正式な名前はなかった。
いつどこで誰が目をつけたのかわからないが、2009年頃からブルークンツァイトの名で頻繁に見かけるようになった。
本来ならブルー・スポデューメンと呼ぶべきところ。
その呼び名について問題視する声はあったが、新しい呼称が確定することなく、ブルークンツァイトの名で定着している。
確かに、新しく名前がつくとややこしい。
上記のように、クンツァイトの発見は1902年と最も新しい。
しかし、知名度、人気ともにずば抜けて高い。
ブレスなどの販売にあたっては、誰もがわかるようクンツァイトの呼称を用いる。
スポデューメンはホワイト・クンツァイト、トリフェーンはイエロー・クンツァイトといった具合に、クンツァイトの変種として扱われているのが現状。
宝石の場合は正式な名称での販売が一般的だが、いずれ何らかの動きはあるかも。

流通名を、最も親しまれているクンツァイトで統一したのは、賢明な判断であったかもしれない。
以前も記したが、この石には多色性という性質がある。
同じ石でも角度によって色が変わって見えることがあり、その色変化の幅が大きい場合は混乱の原因となる(例:バイカラークンツァイト)。
クンツァイトの名をピンク・スポデューメンに変更するのは事実上不可能。

ここ数年、よく見かけるようになった青いスポデューメン。
当初はルース/カット石として、ごくたまに見かける程度だった。
鉱物に再び関わるようになって、ブルークンツァイトが以前よりもずっと身近なものとなっていることを知る。
池袋ショーでは、巨大な水色の結晶を、自慢げに披露してくださるベテラン収集家の男性も。
もはやヒデナイトではなくなった。
ブルークンツァイトは業界を超えて注目され、高い評価を得ている。
以前から産出があったのか、アフガニスタンから特に産出が目立つのか、それとも改良技術が格段に進歩したためなのか。

写真の研磨品は、どこから見てもブルーそのもの。
お世話になっているパキスタン人ディーラーが、奥からわざわざ出してきてくださったもの。
クラックはあるものの、クンツァイトに特有の条線(チューブ状インクルージョン)のみられないクリアな結晶。
宝石質にしてこの大きさ。
直射日光下での撮影にも関わらず、色濃いブルーのままである。
こんなもの、見たことが無い。
一瞬処理を疑ったが、これを譲ってくださった方を私は知っている。
良心価格で譲っていただいたことを今でも申し訳なく思うほど、お世話になっている。

以前ご紹介したのは、ほんのりブルーなスポデューメン。
特定の角度から見るとブルーをおびて見える程度だった。
また、不透明なブルークンツァイトのビーズについては、アクアマリンもしくはアクアマリンカラーの何かであろう。
クンツァイトの処理の如何については、現段階では判定できないそうである。
この石の発色の原因が、マンガンやクロムといった着色成分だけではないためで、それゆえに退色が起きるということらしい。
ビーズなど格安で入手できるクンツァイトは、特別な理由がない限り、処理石だという。
このブルークンツァイトについても、一瞬処理を疑ったが、今のところ色合いに変化は無い。
譲ってくださったのは信頼のおける数少ないパキスタン人ディーラー。
のどかにみえて実はシリアスなパキスタンの鉱物業界。
ルートや間に入る人間は限られている。
狭い世界だから苦労も多いことだろう。

私がこれを手に取った瞬間、彼の表情が青ざめたのは、奥様には内緒である。
まさにブルークンツァイト。
先日のミネラルショーではお会いできなかった。
いつか、謝りにいこう。


※2011年6月13日付けでアップした記事に加筆、訂正し、画像を入れ替えて再度アップしたものです。産地も確認の上、訂正しました。信憑性のある産地の一つですが、確証するものではありません。
なお、近年マダガスカルからの産出が急増しているという記事を見かけました。流通はあるようですが、加工品が中心です。品質は両極端、色合いの不自然さも気になるところです(中国産の白~灰色のスポデューメン同様、工業用に採掘された原石の一部を処理したものかも)。国内で原石標本として流通しているのを見たことが無いため、詳細はわかりません。現時点ではアフガニスタン産、ブラジル産の流通がメインであると考えられます。
また、オーストラリア産のマットな質感のクンツァイトがHEAVEN&EARTH社から発売され人気を博しましたが、こちらも宝石、原石標本としては一般的ではないようです。


58×34×5mm  20.1g

2012/05/06

チャロアイト


チャロアイト Charoite
Murunskii Massif, Aldan Shield, Saha Republic, Eastern-Siberian Region, Russia



世界3大ヒーリングストーン。
これまでにスギライトラリマーに思いを馳せて参ったが、最後の一つがまだであった。
ロシアから産する希少石、チャロアイト(チャロ石)である。
色はスギライトと同じ紫色。
独特のマーブル模様は同じロシア産出のセラフィナイトに似ている。
産出はセラフィナイトとは比較にならぬほどに少ない。
もともと特殊な環境下で生成される、産地限定の貴重品であった。
乱獲のため、絶産の危機に晒されているという。
スギライトやラリマー同様、謎の多かったこの石に、先日強い違和感を感じたため、旅先でこれを書いている。

先日、ネットでみかけたチャロアイトのタンブル(写真)。
このところ見かける機会が減っていたため、気になって購入したが、届けられたのは、かつてのチャロアイトとは違う何かだった。
淡い紫に半透明のグリーンが混在したこの石は、今年のツーソンショーで出回ったものらしい。
本文下のビーズは、3年ほど前に入手したもの。
ジャンクとして別途保管してあった黒やゴールドの入ったチャロアイトで、うち一つに半透明のグリーンが混在している。

チャロアイトは黒いエジリンやゴールドのティナクサイト、イエローのカナサイト、ステッシーアイト、白または半透明のカリ長石などから成る混合石。
前述のビーズにみられるゴールドのインクルージョンは、ティナクサイトかもしれない。
ティナクサイトはチャロアイトを新鉱物として世に送り出したロシアの鉱物学者・ベーラ・ロゴワが、チャロアイトの研究の過程で発見したとされる希少石。
一見ルチルのようだが、ルチルより珍しい。

チャロアイトはベーラ・ロゴワによって見出され、1978年新鉱物に認定された。
発見は1949年と古いが、絹状の外観から角閃石の一種とみなされていたらしい。
チャロアイトに魅了されたロゴアが研究を重ね、30年ののちに新鉱物であることをつきとめたという。
共生のティナクサイトの発見のほうが先だったということだから、チャロアイトの正体を見極めるのは容易なことではなかったのだろう。

チャロアイトの名は "魅惑する" というロシア語に因むという。
ロゴアにとって、この神秘的なマーブル模様の鉱物は、計り知れない可能性を秘めた特別な存在だったのだろう。
研究の対象を超えた魅力がそこにあったとするならば、前回のスギライト(原産)に記した冗談みたいな奇跡もあるんじゃないだろうか。
彼女はそれを現実にしてしまったんじゃないかとすら、思える。

では半透明のグリーンのインクルージョンの正体は何か。
ざっと調べたが、具体的な資料は見当たらない。
チャロアイトを構成する鉱物のひとつと仮定するなら、カリ長石が無難だろうか。
エジリンも疑わしいが、ブラックライトで赤く蛍光する(=カリ長石)ことからその可能性は低いものと考える。

チャロアイトの一連の変化は世界的に起きており、ニュータイプ・チャロアイトの名で呼ばれることもあるようだ。
微かなパープルに、グリーンに透ける穴が混在した姿に、私は強い違和感を覚える。
ロゴアが魅了されたチャロアイトではない。
そう感じてしまうのは、私の勝手な思い込みに過ぎないのかもしれないけれど。




25×20×10mm  8.50g

2012/05/04

フローライト(ニューメキシコ)


フローライト Fluorite
Hansonburg, Socorro Co., New Mexico, USA



春のミネラルショー終了後、被災地に来ている。
以前から行ってみたいと思っていた。
一年が過ぎ、ようやくたどり着いたのだけれど、連日の雨で動けずにいる。

ある程度復興していると思っていた。
しかし、私でも知っている土地でさえ、電車が途中までしか動いていない。
予想以上に深刻な状況なんだろう。
どこまで行けるかわからない。
行ける所まで行ってみたいと思っている。

春のミネラルショーでの購入品。
ニューメキシコのフローライトというと、色濃いインディゴ・ブルーが有名。
バイカラーの標本は初めて見た。
エッチングの入ったすりガラス状の結晶に、ブルーのゾーニングが際立っている。
濃厚なブルーに淡い水色が混じるのも面白い。

ニューメキシコからは他にもさまざまな色合いのフローライトが産出している。
この色合いはあまり流通がないようだ。
ざっと見た感じ、かなりの高額で取引されていたと思われる。
今年のツーソンで出回ったものが格安で販売されていた。
お店の人の話では最近発見されたとのことだったが、同じ外観のフローライトが2008年に発見されたという記録が残っているので、その時のものかもしれない。

このフローライトのイメージを訊ねたら、あじさいという答えが返ってきた。
なるほど。
この色合いはあじさいそのもの。
雨はやむだろうか。
私はここから先、どこまで行くのだろう。




51×46×35mm(重量未測定)


2012/04/27

クォーツ(フローライト仮晶)


クォーツ(フローライト仮晶)
Quartz after Fluorite
Derwentwater, Lake District, England



フローライトが長いときを経て石英に変化した珍しい標本。
もともとの姿については、ナミビアのフローライトを見ていただくとわかりやすいかもしれない。
むしろ、あまりのわかりやすさに、当初見かけたときは仰天した。
形状はフローライトそのもの。
フローライトの面影だけを残して、石英に変わってしまった。

このように、元々の鉱物が他の鉱物に変化、若しくは入れ替わったものを仮晶と呼んでいる(参考:仮晶について素人なりにまとめたクリソコラの例)。
仮晶には、必然的に生成される大量生産ラインと、偶然に生成された限定ラインの二種類がある。
どんな世界においても、ファンに好まれるのは限定品。
過去に紹介したエジプトの星プロフェシーストーン、ノルウェーのアイオライトなどは後者にあたる。
これらは限定品ではあるが、いっとき頻繁に見かけたので、お持ちの方も多いと思う。

この標本も偶然の産物で、一度きりの産出であったものと思われる。
他に見かけたことは無いので、詳しいことはわからない。
産地は英国、湖水地方。
ピーターラビットの物語が生まれたことでも知られる湖水地方は、その作者であるビアトリクス・ポターが愛し、生涯をかけて守った土地である。
現在、このエリアの大半は、日本でいう国立公園に該当し、政府により保護されている。
この地に眠る貴重な資源の持ち出しは許されない。
鉱物の産地としては一般的ではなく、詳しいことはわからない。

鉱山から出た標本だが、鉱山の資料が見当たらないため、記載は避ける(※興味のある方はお問い合わせください)。
なお、ピーターラビットは、100年ほど前に実在したうさぎである。
彼女が飼っていたこのうさぎが、後に絵本の主人公となって世に出たのは偶然らしい。
ポターが家庭教師として教えていた身体の弱い子供のために作った絵本がその始まりと聞いている。
ビアトリクス・ポターの植物のスケッチはそれは見事なもので、素人の見解で申し訳ないのだが、絵本作家の領域を超えている。
以上はすべて私が中学生のときの記憶に基づく記述である。
間違っていたらツッコミをお願いしたい。

彼女の植物についての研究は、論文として紹介されるほどの内容にも関わらず、女性であるという理由で公にされることはなかった。
高校生の頃だったか、ナショナルトラストに興味を持ったのは、彼女がこの土地を守ろうとした理由がうわべだけのものではないと感じたから。
古いコレクションであるこの標本は、その事実を垣間見ることができる貴重な資料だと考える。
なお、私が幼い頃最も好んだポターの絵本は、「こわいわるいうさぎのはなし」であったという。


52×35×16mm  22.62g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?