2012/05/16

ベリル(ピンクファイヤー)


サンベリル/ヘマタイト in ベリル
Beryl/w Hematite Inclusions
Gairo, Dodoma, Tanzania



ベリル(緑柱石)とは鉱物のグループ名。
濃厚な緑はエメラルド、淡いブルーやグリーンはアクアマリン、ピンクはモルガナイト、赤はビクスバイトと呼ばれ、宝石として親しまれている。
無色透明のベリルはゴシェナイトといい、コレクション用にカットされることが多い。
イエローについてはイエローベリル、ヘリオドールの二種類があり、発色の原因物質によって区別している。
いずれも透明石が好まれ、内包物はあまり歓迎されない。
成分にベリリウムを含むだけに、原子力の研究開発に消えたベリルも多かったろう。

クリアな淡いブルーグリーンのベリルにヘマタイトの入った珍しい標本。
ヘマタイトの混入によりオレンジのアベンチュレッセンス(輝き)を示す。
正式にはヘマタイト・イン・べリルだが、サンストーンに似ているせいか、サンベリル、サンストーンベリル、インクルージョンベリルなどと呼ばれ、流通している。
多くはイエローベリルにヘマタイトが内包された状態。

春のミネラルショーで見つけた、ブルーグリーンベースの興味深い標本。
アクアマリンともいえそうなクリアなブルーベリルに浮かぶピンクのフラッシュは、ピンクファイヤーの浮かぶサンストーンそっくり。
共通点は、結晶に内包されたヘマタイト由来のアベンチュレッセンス。
なんとなく勘づいた方もおられることと思う。
アイスブルーのベリルから飛び出すピンクのファイアは、ピンクファイヤークォーツの煌きそのもの。

昨年の冬の池袋ミネラルショーで、ピンクファイヤーの浮かぶサンストーンを偶然見つけた(→サンストーン/ピンクファイヤー)。
直後にこの石の存在を知った。
もしかしたらベリルにもピンクファイヤーの類いがあるんじゃないか。
そう思って購入したが、世の中はそう甘くない。
浮かぶのはオレンジの煌きばかり。
ペンライトをあててもピンクの閃光は確認できなかった。
ヘマタイトを含むベリルを取り扱うお店は少なく、ネット上で買うほかなかった。
不可抗力だった。
現物を見て選ぶチャンスのないまま、月日は過ぎていった。
出会いは例の如く、突然にやって来た。

先日開催された、春の大阪ショー。
私はペンライトとルーペを手に参戦していた。
完全にネタのつもりだった。
友人がたまたまカラーチェンジトルマリン(ウサンバラ効果を示すトルマリン)とおぼしき石を手にとった。
ツッコミ狙いですかさずペンライトを取り出したそのとき、どこかでピンクのファイヤーが炎を上げたのである。

サンベリルだった。
私が以前ネットで見かけて購入したお店だった(注:ウサンバラもこのお店で購入したのですぐわかった)。
長年お世話になっている店長さんとお話する機会までいただいた。
あの店長さんでさえ気づかなかったとのこと。
ただ、ピンクのファイアが浮かぶサンベリルはこれひとつ。
他はすべてオレンジ。
タンザニア産のサンストーンにそっくりなのもひっかかる。
その区別の根拠として、素人の私には表記名と詳細な産地の違い、としか答えられぬ。

写真は屋外の自然光にて撮影した。
ピンクファイヤークォーツがあるならば、ピンクファイヤーサンストーンもあるからして、ピンクファイヤーベリルも有り得る。
か、どうかはわからない。
そんな単純なものではないとわかっている。
しかしながら、このベリルを知ったとき、ピンクファイヤークォーツの中身の正体はまだ謎であった。
私がなぜこれに目をつけたのか、それは素人だから。
実際に存在した。
ヘマタイトのインクルージョンならば、つじつまが合う。

水色だから、いっそアクアマリンと呼んでしまうのもいいかもしれない。
ピンクファイヤー・アクアマリン。
アクアマリンは、結婚指輪に好んで用いられる鉱物。
指輪からピンクのファイアが浮かぶなんて、粋な演出じゃないか。
アクアマリンから飛び出す愛の炎は、宇宙のふしぎに起因している。




※無事にPCが戻ってきました。詳細は前回の記事に追記してあります。なお、サンベリルとタンザニア産オリゴクレースとの類似については、引き続き調べていきたいと思います。お譲りいただいたのは長年お世話になっている信頼の置ける業者様であること、また今回に限っては、いわば顔のみえる買い物であったことから、ベリルであるとの判断のもと、記しました。新しい事実がわかれば追記します。


22×20×9mm  4.36g

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