2012/05/06

チャロアイト


チャロアイト Charoite
Murunskii Massif, Aldan Shield, Saha Republic, Eastern-Siberian Region, Russia



世界3大ヒーリングストーン。
これまでにスギライトラリマーに思いを馳せて参ったが、最後の一つがまだであった。
ロシアから産する希少石、チャロアイト(チャロ石)である。
色はスギライトと同じ紫色。
独特のマーブル模様は同じロシア産出のセラフィナイトに似ている。
産出はセラフィナイトとは比較にならぬほどに少ない。
もともと特殊な環境下で生成される、産地限定の貴重品であった。
乱獲のため、絶産の危機に晒されているという。
スギライトやラリマー同様、謎の多かったこの石に、先日強い違和感を感じたため、旅先でこれを書いている。

先日、ネットでみかけたチャロアイトのタンブル(写真)。
このところ見かける機会が減っていたため、気になって購入したが、届けられたのは、かつてのチャロアイトとは違う何かだった。
淡い紫に半透明のグリーンが混在したこの石は、今年のツーソンショーで出回ったものらしい。
本文下のビーズは、3年ほど前に入手したもの。
ジャンクとして別途保管してあった黒やゴールドの入ったチャロアイトで、うち一つに半透明のグリーンが混在している。

チャロアイトは黒いエジリンやゴールドのティナクサイト、イエローのカナサイト、ステッシーアイト、白または半透明のカリ長石などから成る混合石。
前述のビーズにみられるゴールドのインクルージョンは、ティナクサイトかもしれない。
ティナクサイトはチャロアイトを新鉱物として世に送り出したロシアの鉱物学者・ベーラ・ロゴワが、チャロアイトの研究の過程で発見したとされる希少石。
一見ルチルのようだが、ルチルより珍しい。

チャロアイトはベーラ・ロゴワによって見出され、1978年新鉱物に認定された。
発見は1949年と古いが、絹状の外観から角閃石の一種とみなされていたらしい。
チャロアイトに魅了されたロゴアが研究を重ね、30年ののちに新鉱物であることをつきとめたという。
共生のティナクサイトの発見のほうが先だったということだから、チャロアイトの正体を見極めるのは容易なことではなかったのだろう。

チャロアイトの名は "魅惑する" というロシア語に因むという。
ロゴアにとって、この神秘的なマーブル模様の鉱物は、計り知れない可能性を秘めた特別な存在だったのだろう。
研究の対象を超えた魅力がそこにあったとするならば、前回のスギライト(原産)に記した冗談みたいな奇跡もあるんじゃないだろうか。
彼女はそれを現実にしてしまったんじゃないかとすら、思える。

では半透明のグリーンのインクルージョンの正体は何か。
ざっと調べたが、具体的な資料は見当たらない。
チャロアイトを構成する鉱物のひとつと仮定するなら、カリ長石が無難だろうか。
エジリンも疑わしいが、ブラックライトで赤く蛍光する(=カリ長石)ことからその可能性は低いものと考える。

チャロアイトの一連の変化は世界的に起きており、ニュータイプ・チャロアイトの名で呼ばれることもあるようだ。
微かなパープルに、グリーンに透ける穴が混在した姿に、私は強い違和感を覚える。
ロゴアが魅了されたチャロアイトではない。
そう感じてしまうのは、私の勝手な思い込みに過ぎないのかもしれないけれど。




25×20×10mm  8.50g

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