ラベル ザギマウンテンクォーツ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ザギマウンテンクォーツ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2012/08/27

ゼノタイム(ザギマウンテン産)


ゼノタイム Xenotime
Zagi Mountain, Mulla Ghori, Khyber Agency, FATA, Pakistan



イットリウムを含む希少石、ゼノタイム。
アプリコットのような優しい色合いが印象的だが、立派な放射性鉱物である。
ゼノタイムは一般に、不透明なダークブラウンの結晶となって産出する。
パキスタンから近年発見されたオレンジやレッドに輝くゼノタイムは、世界中の愛好家たちを熱狂させた。

写真はゼノタイムをラベルに載せて撮影した。
出処は米国、表記はアフガニスタン。
当初、この標本はアフガニスタン産として流通したらしいのだ。
再調査の結果、パキスタンのザギマウンテン産であることが判明、業者側で産地を訂正したという。
セイクリッドシャーマン、ザギマウンテンクォーツで有名になった聖なる山、ザギマウンテンからは、多くの資源、魅力的な希少石の数々が発見されている。
中でも、この産地からのゼノタイムの美しさには定評がある。
アフガンの鉱物が、諸般の事情からパキスタン産として流通していることを不審に思われている方もおられることと思う(→詳細はパライバじゃなかったパライバトルマリンに記、主にアメリカ)。

パキスタンの鉱物の産地が曖昧にされることは多い。
理由のひとつは、掘る人と売る人とが同じではないこと。
隣接した国々からパキスタンに運ばれてきた鉱物を、現地のディーラーが扱うこともある。
特にアフガニスタンの鉱物の場合、同時多発テロの恐怖が売り上げに影響するのを危惧し、パキスタン産と言い換えることも考え得る。
また、複雑な事情のある地域では、実際に採掘に入れる人を限定し、詳細を伏せることがあるとみている。
売り手にもどこから来た石なのかわからないことがある。
それを責めるわけにはいかない。
この標本の産地が訂正された理由についても、想像することは可能である。
つまり、産地には厳しいこだわりを示す欧米諸国の収集家でさえ、ザギマウンテンを特定できたのはごく最近のことだったのだ。
十年以上経った現在も、世界中がザギの謎に当惑している状態ということになる。
産地で何が起きているかわからないといえば、中国も同じ。
ただ、中国であれば専門家が入ることもある。
調査の結果、素晴らしい鉱物の存在が認められ、詳細な産地や産状が明らかになることも多い。
余程の事情がない限り。

パキスタン北部、アフガン国境に位置するザギマウンテン。
レアアースの宝庫として近年注目を浴びる土地である。
ゼノタイム以外にも、稀にみる品質を誇る稀産鉱物が多く発見され、研究者や収集家たちを驚かせた。
宝の山なのは明らか。
だが、国外の専門家が現地入りすることは、固く禁じられているそうだ。
鉱物研究の進んだ国の専門家にしかわからないことはある。
いまだ存在の明らかにされていない希少石も少なくないとみられる。
おそらく、誰もがザギに入りたくてたまらないはずだ。

もし、どうしてもザギへ入るつもりなら、少し荒業を使う必要がある。
あのテロリストの息の根を止めたカラシニコフくらいは用意したほうがいい。
宝の山が意味するところ、それは戦争である。
我々が世界中の美しい鉱物を手に出来るのは、日本が平和だからである。
我が国の資源はほぼ枯渇している。
それがいかに幸運なことか、戦地を旅した人々は知っている。
世界には、いまだ眠ったままになっている資源は数知れず、それらが必ずしも平和的な目的で採掘されるとは限らない。
戦争が人を狂わせるのは、今に始まったことではない。

鉱物資源は、戦争の資金源として重要な役目を担う。
鉱物だけとは限らない。
外国人に見られてはならないことがザギで行われている…
そう考えることも、可能だ。
レアアースはヘロインに並ぶ利益をもたらす、とは面妖な。
パキスタン全土が危険なわけではない。
ただし、ザギのあるパキスタン・アフガン国境を目指すことは、現実的とは言えない。

参考)アフガンの鉱物資源に関する記事だが、パキスタン国境付近の状況についても言及がある:
http://www.asyura2.com/10/warb4/msg/886.html

鉱物をこよなく愛する人々にとって、曖昧な産地は悩みの種となる。
情報が欠けていることによって、石の評価は下がってしまう。
コレクションの分類に頭を抱えるはめにもなる。
しかし、真実を追求したがために不幸な事件に巻き込まれ、命を落すことがあるのもまた、現実だ。
過酷な状況を耐え抜いて届けられたザギの鉱物に、何をみるかということだと思う。
この初初しいゼノタイムの伝えるもの、それは美しさや希少価値、神秘性だけだろうか。
世界には、平和を叫べない土地がある。





18×12×10mm  4.15g

2011/10/08

ザギマウンテンクォーツ


ザギマウンテンクォーツ
Zagi Mountain Quartz
Zagi Mountain, Mulla Ghori, Khyber Agency, FATA, Pakistan



ザギマウンテンクォーツ。
パキスタンのザギ・マウンテンから産出する水晶である。
さまざまな呼び名があるようだが、ここではザギマウンテンクォーツと呼ぶことにする。
ヒーリングストーンとして名高い石で、その存在は以前から知っていた。
ピンと来ないというのが正直な感想だった。

ザギマウンテンクォーツの特徴は、その多彩な内包物。
エジリン、アストロフィライトのほか、トルマリン(ブラックトルマリンなど)、アンフィボール類(アクチノライト、リーベカイトなど)を含む。
ベースはクリアクォーツ。
内包物によって、赤やオレンジ、グリーン、ブラウン~ダークブラウン、黒などの色合いを示す。
初期は大小さまざまな、シンプルなポイントが中心だった(本文下右側の写真)。
現在はエレスチャル状、ポイント状、塊状など、多様化が進んでいる。
スモーキークォーツやミルキークォーツ・ベースのザギマウンテンクォーツも見かけるようになった。
今やその存在の不透明さは加速するいっぽう。

写真の石は、プレゼントとして偶然に付けていただいたもの。
うわ、なんじゃこりゃと思った。
よくわからんが、すごい。
後日、ザギマウンテンクォーツであることが判明。
小粒にしてこの存在感、本物だ。

大好きな西アジア。
これは絶対にザギマウンテンに登らねばならない。
標高175メートルなら余裕だ

今はほとんど使っていない、バックパックの出番が来たようである

※聖地ザギマウンテン付近の様子はこちらからどうぞ

現実は甘くない。
調べてみると、そう簡単には行けない土地であることがわかった。
聖地により外国人立入禁止説、乱獲により規制が入った説、タリバン出現につき国際的に入山不可能説、などが推測されたが、いずれにせよ外国人が入るのは容易いことではないと感じた。
ネットショップでは、聖地である旨説明されていることが大半。
もし最後の説が本当だったとしたら、命を覚悟しなければならない。
パキスタンの情勢が極めて不安定なのは、ご存知の通り。

聖地に関しては思うところある。
外国人、特に日本人の海外での評判は、悪い。
現地の人々の感覚に合わせることをしないからだ。
意図的に遠ざけられた可能性はある。
パキスタンのように信仰が根付いている国においては、外国人が現地の人に打撃を与えることも少なくない。

パキスタンには好戦的な人が多いと思っている人が多いが、そうではない。
飾ることなく誠実で、温かな心をお持ちの方々だ。
宗教の異なる日本人に対しても、親切に接してくれることが多い。
我々日本人は、宗教と聞いただけで抵抗感を持ってしまいがちだが、現地での信仰心は、日本でいう法律であり、道徳であり、生活の一部でもある。
例外はある。
たとえば、戦争のあった地域で生まれ育った人々。
家や家族を失い、心に深い傷を負った彼らが、やむなく道を外れることもある。
詐欺や麻薬取引などの犯罪に関わっていたのは、私の知る限りでは、戦地など複雑な環境に育った人間だ。

ザギマウンテンについて、この石を譲ってくださった方に伺ってみた。
情勢が悪いというのは現実のよう。
ザギに登るのは厳しいと感じた。
私のような外国人が間違いを犯す(犯した)可能性も十分に考えられる。

ザギマウンテンからはバストネサイトのほか、ゼノタイム、イルメナイト、モナズ石などの希少石が産出することで知られている。
現地がレアアースの宝庫であることが判明したのは、ごく最近。
2001年頃だといわれている。
これも不思議な偶然で、近年においては最も危険だった時期である。
殺害されたテロリストが、アフガニスタンからパキスタンに逃亡したのは有名な話。
私がパキスタンを旅したのは11年前。
テロ発生の前年だが、空港は厳戒態勢が敷かれており、税関で厳しい検査があったのを鮮明に覚えている。

話を戻そう。
ザギマウンテンクォーツは、多彩な内包物を持つことで知られる。
中でも、アストロフィライト、エジリンが入ったものは人気があるようだ。
本文下、左は、手持ちのザギマウンテンクォーツの拡大写真。
最近入手したもので、アストロフィライトが内包されているということだった。

結晶中の太く黒い針がエジリンだという(→拡大写真)。
一本だけ確認できる太いオレンジの針は、なにか。
実は、過去のザギマウンテンクォーツに、このオレンジの針が高い確率で含まれていた(本文下の写真参照)。
エジリンではないし、ルチルにしては色が濃く太すぎる。

一般的に、アストロフィライトは繊細な繊維状のインクルージョンとなって、結晶全体をレッド~オレンジに染めるといわれているが、私にはオレンジの針が本来のそれではないかと思えてならならないのだ。
アストロフィライトとされる、オレンジの微細な毛状のインクルージョンは、私にはどうも、アンフィボール(角閃石)の類いにみえる。
マダガスカル産のアンフィボール入り水晶に、このような色合いを頻繁に見かける。
アストロフィライトのインクルージョンというのは他では聞かないから、相当珍しいはずだ。

なんとなく、気になる。
まあ、いいや。
この石にはきっと、危険を承知でザギへ入っていったパキスタンの人々の勇気、そして温かな心が、あふれんばかりに詰め込まれている。




14×11×6mm  7.78ct

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?