2012/11/04

コロンビアレムリアン


コロンビアレムリアン
Colombian Lemurian
Peñas Blancas, Boyaca, Colombia



毎度のことながら、鉱物で世界を一周している。
今日は、危険な噂の絶えない南米・コロンビアを訪問する。
世界最高級と称される鉱物がピンポイントで産出するコロンビアの魅力を探ってみたい。

コロンビアといえばなんといっても、エメラルド。
世界で最も質の高いエメラルドはコロンビアから採掘されている。
それに伴って発見されたユークレースもまた、世界中で高い評価を受けている。
数あるコロンビアのエメラルド鉱山の中でも、かのムゾー鉱山からは、トップクオリティのエメラルドが産出している。
そんなムゾー鉱山から50kmほど離れた山中より発見されたのが、このコロンビア・レムリアン。
ブラジルの元祖レムリアンシード、ウラルのロシアンレムリアン(ロシレム)に続く新たなレムリアン水晶として話題になったのは、少なくとも4年以上前のこと。
地球温暖化に伴って溶け出した氷河の下から発見された、という話題性も手伝って、広く流通した。

上記のふれこみについては諸説ある。
同時期に話題になったヒマラヤアイスクリスタルのキャッチコピーにそっくりなのは明らか。
現地の産状が誤って伝えられたとする向きもある。
コロンビア・レムリアンの産出する鉱山は、有名なエメラルド鉱山でもある。
鉱山からはもともと見事なトラピッチェ・エメラルドが多数産出している。
勇敢にも高所の氷河跡を目指した人々により新たに発見されたということだろうか?(→鉱山の写真はこちら
いったいその氷河がいつ溶け、発見されたのかについては謎が多い。

コロンビア・レムリアンの特徴である、圧倒的な透明感。
表面には細く小さな水晶が二つ、潜りこんでいる。
コロンビア・レムリアンには、通常6面あるトップのファセット部分のうち3面が六角形、あとの3面が三角形に結晶していることがあり、ムゾー・ハビットと呼ばれて、クリスタルヒーラーの間で珍重されている。
このコロンビア・レムリアンにはムゾー・ハビットはみられないが、大きな3面のうちひとつが◇の形をしているのが面白い。
その左には見事なレコードキーパーが浮かんでいる(いずれも本文下の写真右)。
さらに、表面に皮膜のような虹が出る。
或いは、レムリアンといえば水晶の側面にバーコードのように刻まれた模様。
この標本も例外ではない。

水晶というのはほんとうにややこしくて、ちょっと変わった形をしていると付加価値がついてしまうため、物覚えの悪い自分には把握しきれていない。
水晶に価値を置く傾向は特に日本において顕著で、欧米の比ではない。
さきほどの◇にも特殊なネーミングが与えられ、高額で流通している。
端正な正五角形のファセット面はイシスクリスタルという。
イシスの出ている水晶は好きで、わりと手に取るのだが、四角形はなんだったか思い出せない。

そんな訳で、調べてみた。
水晶の先端に現れる◇はウインドウ、もしくはタイムリンクのいずれかのよう。
ただ、ウインドウは7つ目のファセット面限定(!)だとか、タイムリンクは長方形だといった議論に発展している。
だとしたら、6つ目のファセット面に菱形に出ているコレは、どちらにも該当しないということか。
どうも日本においては、こうした特殊なクリスタルにこだわり、価値を付けすぎるきらいがある。
欧米ではコロンビアレムリアンのムゾー・ハビットが強調されるにとどまっている。
ウインドウやタイムリンクで検索して引っかかるのは、国内サイトが大半で、コロンビアレムリアンに関してはその豊富な特殊要素をもって、マスタークリスタルの名を与えられていることも多い。
中にはマスタークリスタルと言えないものも含まれる。
ウインドウやタイムリンクの名を考案したのは欧米のクリスタルヒーラーのはず。
なぜ日本でここまで広まってしまったのか。
販売目的で多用されたのであれば、またもや注意を喚起しておかねばなるまい。

なお、レムリアン水晶は、地球上に5種類(6種類説もあり)眠っているという。
ブラジル、ロシア、コロンビアに続き、あと2ヶ所から発見される予定だという。
一面置きに現れるはずだったレムリアンシードの定義が、曖昧になってきている今、果たして5ヶ所で済むかどうか、甚だ疑問である。
レムリアンシードと呼ぶことの可能なバーコード付き水晶は、アーカンソー州ホットスプリング産の水晶などに顕著であり、そうした水晶を数えだしたらきりがない。
またブラジルでは、他の産地からも続々と新型レムリアンが登場していて、もはや6種類を超えている。
レムリアの記憶は謎に満ちている。
実に奥が深い。




37×10×9mm  4.65g

2012/11/02

ファイヤーオブシディアン/玲瓏


ファイヤーオブシディアン
Fire Obsidian
Kyzyl Kum, Armenia



黒耀石をこよなく愛するうさこふのもとに、岩石岩男(がんせき・いわお)を名乗る人物から、珍情報が入った。
ファイヤーオブシディアンが北海道から産出する黒耀石、十勝石の中にごく稀に存在し、国産鉱物ハンターの間で伝説になっている…
その名も玲瓏(れいろう)。

ファイヤーオブシディアンといえば、オレゴン産の70年代のコレクションを、知人のご厚意で入手したばかり。
ピンクやレッドのファイヤが蛍のように飛び回るさまは、ピンクファイヤークォーツを圧倒していた。
ピンクファイヤークォーツは所詮、幻のオブシディアンの輝きに対する憧憬に過ぎなかった。
そう、思い込んでいた。
しかしながら、玲瓏の写真を見て思った。
私はファイヤーオブシディアンを誤解していたかもしれない、と。

岩石岩男氏に送っていただいた玲瓏(れいろう)の写真。
あたかもダイクロイックグラス(→特殊な技術を用いて作られた人工ガラス/写真はこちら)の如く輝く、メタリックな虹色のオブシディアンの姿がそこにあった。
レインボーオブシディアンにおける、ホログラムのように浮かぶ幻想的な虹とは異なる、力強い輝きである。
私の手持ちのファイヤーオブシディアンとは様子が異なっていて、蛍のように飛び交う赤いファイヤは見えないようであった。

そもそも玲瓏とは一体なんのことだろう。
辞書には、"透き通るように美しいさま、珠のように輝くさま" とある。
漢字が難しくて読めず、当初は中国産の黒耀石のことと思い込んでしまった。
玲瓏は古くから存在する日本語であり、「美しさ」を表現するにあたっては最も褒むべき表現のひとつにあたるものとみられる。
情けない限りである。
ただし現在、玲瓏という言葉は日常的には用いられてはいない。
十勝石にごく稀に現れるという幻の玲瓏。
この言葉を石に与えられるとしたら、古き良き日本の美意識を知る人物ということになろう(岩男情報:1968年に十勝の識者によって瞬時に命名されたとのこと。鉱物の専門家ではないという。私には言葉がみつからない)。

では、十勝石に稀にみられる玲瓏とは、一体なんだろう。
十勝石はマホガニーオブシディアン(黒地にブラウンの模様の入った黒耀石)様の外観で知られる国産鉱物の代表格。
岩石岩男の話では、国内では多彩なシーンの見える黒耀石は、すべて玲瓏に分類されているとのこと。
つまり玲瓏には、ファイヤーオブシディアンとは呼べないものが含まれる。
おそらく、生きているうちに国産ファイヤーオブシディアンに出会えたなら、その幸運な人生を喜ぶべきである。
玲瓏という言葉すら知らなかった自分にはまだ早い。
未知の鉱物が気になって仕方がない私には珍しく、あっさり諦めた。

謎の人物・岩石岩男とはその後も交流が続いていた。
幻の国産ファイヤーオブシディアン、玲瓏(れいろう)。
私には、知人から譲っていただいた見事なファイヤーオブシディアンがある。
出会ってしまってから、考えよう。
などと、暢気に構えていた。

幻の玲瓏を知ってから十日余り、私は仕入れのためにお世話になっている鉱物店を訪れていた。
遅刻のため、持ち時間はたった一時間。
お願いしていた石を手にし、お疲れの店長と苦労話などをしながら、鉱物を見て周っていた。
そのとき私の目に、例の如く(?)見覚えのある光が飛び込んできたのである。




ブツはアルメニア産の黒曜石の塊。
写真の通り、メタリックな虹があちこちに浮かんでいる。
レインボーオブシディアンとは明らかに異なるこの虹、写真で見た玲瓏にそっくりである。

こんなにも早く遭遇するとは思っていなかったため、心の準備ができていない。
情けないことに、メタリックなレインボーを目前にして、玲瓏という単語が出てこない。
ひととおり在庫を見せていただいた。
虹が広範囲に入っているのは2つのみ。
2つとも譲っていただけることになった。
ちなみに、写真は小さいほうになる(→大きく虹の多いほうはオークションにて発表中です)。

気になって海外サイトを調べてみた。
ファイヤーオブシディアンとして流通しているのは、手元のアルメニアの黒耀石と同じもののようだった。
ファイヤーアゲートのようなメタリックな輝きがその特徴とみられる。
一般にはスモーキーオブシディアンに起きる現象で、米・オレゴン州から比較的産出がある。
私がアメリカ人に譲っていただいたファイヤーオブシディアンの産地に同じ。

思うにファイヤーオブシディアンには、こうしたレインボータイプと、蛍のようなファイアが飛び出すほたるタイプ、以上の2種類があるのではないだろうか。
私の持っているほたるタイプは、ゴールド/シルバーシーンオブシディアン・ベース。
メタリックな虹の見えるものだけが、ファイヤーオブシディアンと呼ばれているわけではない。
その定義については曖昧な点が多い。
振り返れば、私はレインボーに彩られた最高級のファイヤーオブシディアンの写真を見ていた。
写真で見た極上の玲瓏は、知人のコレクションに大量に含まれていた。
初めて玲瓏の写真を見たとき驚かなかったのは、地球上に同じものが存在することを知っていたから。
とっさに情報として出てこなかったのは、私が心の余裕を失っていたためだ。

かつて十勝から産出したというかの黒耀石(文末にリンクあり)は、世界に誇るべきファイヤーオブシディアンに相違ない。
ただし、ネットで画像を見た限りでは、国産の玲瓏の大半はレインボーオブシディアンに同じ。
玲瓏が必ずしもファイヤーオブシディアンを指すわけではない。
ファイヤーオブシディアンは世界的に稀産であり、価値としてはレインボーオブシディアンの比ではないから、見分けられるようにしておいたほうがいいかも。
また玲瓏の呼称は、国産の黒耀石に限定するのが妥当であろう。




この標本には少なくとも6箇所、メタリックな虹の浮かぶ箇所がある。
シーンが途中で内部に潜り込み、見えなくなっているから、カットすれば見事な宝石ができるはずだ。
また、下の写真にあるように、よく見ると所々に赤系のフラッシュ(ファイヤ)も出ている。
アルメニア産の黒曜石にファイヤーオブシディアンがあるとは聞いていない(前述の通り、オレゴン・十勝産は60年代には確認されている)が、未研磨でこの状態なのだから、研磨したのちの姿も想像できるというものだ。


参考)見事なコレクションを拝むことが出来る黒耀石ハンターさんのブログ。
これが問題の国産ファイヤーオブシディアンで、動画を拝見した限りでは、アルメニア産に同じ:
http://www.geocities.jp/blood_obsidian/tokachi_fire_obsidian.html

※動画の視聴にはダウンロードが必要なので要注意。




75×63×41mm  125g


岩石岩男さま、あなたとのご縁がなければ、この出会いはありませんでした。
貴重な情報及びアドバイスをありがとうございました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

2012/10/26

レピドクロサイト入りアメジスト


レピドクロサイト入りアメジスト
Amethyst/w Lepidocrocite Inclusions
Rio Grande do Sul, Brazil



鉱物を集め始めたばかりの頃購入したアメジスト。
実家のお宝箱の中から出てきたので、なんとなしに撮影した。
フラワーアメジストが産することで有名な、ブラジルのリオグランデ・ド・スル州からやってきた。
母岩のない、全体が結晶した色濃いアメジストのクラスターのあちこちに、ゴールドのレピドクロサイトが輝いている。
詳しいことはわからないが、まるで宙に浮いた状態で成長したかのよう。
ブラジル産のアメジストは久しく買っていない。
スーパーセブンはともかく、真っ先に浮かぶのは処分コーナーに投げ込まれている凡庸な紫のクラスターくらいだ。
メモがなければマダガスカル産インド産と勘違いしていたかもしれない。
実際、今ではほとんど見かけない。
まるで、咲き誇る花のよう。

先日、鉱物に詳しい方のお話を伺う機会があった。
フラワーアメジストの話題が出た。
レースのように薄く繊細な結晶が放射状に広がった、独特の姿をしたアメジストを、フラワーアメジストと呼んでいる。
一度撮影中に落して割ったこともある程デリケートなので、取扱いには注意が必要である。
その時のショックで、フラワーアメジストを頑なに避けていた私のハートも、けっこうデリケートだと自分では思っている。

会話の合間にふと思い出したのが、こちらのレピドクロサイト入りアメジスト。
フラワーアメジストとは呼ばないが、まるで花のように見える。
鉱物に関しては全くの無知だった私がこの標本を購入した理由に他ならない。
当時は鉱物に金をかけるという発想などなかったから、手頃な価格だったはず。
ガラスのような透明感、濃厚な色合い、見事な形状。
さらに、茶色のゲーサイトではなくゴールドのレピドクロサイト・インクルージョンなど、今となっては得がたい貴重な標本である。
当時はフラワーアメジストなんて知らなかった。
今なら割れてしまったものも含め、いくつか手持ちがある。
だけど、私にとってのフラワーアメジストは多分、これなんだと思う。
人の数だけフラワーアメジストがあっていい。

水晶には滅多に興味を示さないアメリカのミネラルハンターたちにこの写真を見せたら、思わぬ反響があった。
アメリカではクリスタルヒーラーを中心に好まれ、収集家には人気の無い水晶。
予想外だった。
日本では、水晶はひとつのジャンルとして確立している。
いっぽうで、水晶をメインに集めているアメリカ人にはまだ出会っていない。
そんな彼らにも、国境を超えて伝わった想いがある。




51×32×24mm  34.70g

2012/10/23

スコロライト


スコロライト
Scorolite Quartz
Aracuai, Minas Gerias, Brazil



秋の京都ミネラルショー初日。
私は宝石ブースで、想定外の事態に頭を抱えていた。
その日買い物をする予定はなく、財布には交通費しか入っていなかった。
にも関わらず、かねてから気になっていた石が目の前に輝いているのである。

ピンクファイヤーアメジストとされるその石は、以前ネットで見かけて気になっていたスコロライトそのものであった。
写真で見ると、オパライト(オパレッセンスの現れるアクリル製ビーズ)そっくり。
人工石を疑ってしまう。
しかし、現物を見た限り、天然のクォーツに間違いない。
なめらかで神秘的なミルキーパープルの色合い。
角度を変えるとピンクやオレンジのファイアが煌くさまは、ピンクファイヤークォーツとはまた違った、新たな宝石の可能性を感じさせた。
ただ、その場でスコロライトの名が出てこなかった。
新しい宝石の名称が安定するには時間がかかる。
両者が同じものかどうか訊ねようにも、スリランカ人である店主に日本の宝石事情を伝えるのは不可能であった。

店主の話では、産地はブラジルのミナス・ジェライス州。
ブルートパーズの産地として知られるアラスアイから、わずかに発見されたという(追記あり)。
ファイアがよく見えるよう大きめにカットしてあるとのお話であった。
写真では到底味わえない驚きが詰まっている。
特に水晶を集めているわけではないが、これは外せない。
しかしながら、財布には千円札と、両替できないまま残っていた100ドル札がそれぞれ一枚のみ。
祝日でATMは閉まっている。
店主さんはドル札でも構わないと仰り、おつりは日本円で出してくださった。
熱心な仏教徒である彼の温かな心に触れ、美しい宝石以上に価値ある時間を過ごせたことに、心から感謝している。

帰宅後、調べてみた。
ピンクファイヤーアメジストとスコロライトは、同じものであると思われる。
同じように宝石にカットされたものが高額で販売されている。
いっぽう、小さなビーズとなって流通しているケースも数多くみられた。
ルースや原石であれば外観や重みでその真偽はある程度わかるが、小さなビーズの場合、それがオパライト等の人工物であっても判別できない。
事実、海外ではスコロライトに対する激しい論争も起きているようである。
人工石だと明言しているところさえある。
かつてヒマラヤブルームーンクォーツを知ったとき、私が真っ先に原石を探したのは、そうした理由からだった。

採れる量はわずかだというから、スコロライトの名にあやかって人工石を流したところもあったのだろうと推測している。
このルースに関しては、天然水晶に間違いない。
ただし、ヒーリングストーンとして流通しているビーズについては、リスクが伴うといわざるを得ない。
本来見えるはずのファイヤを確認するのも難しいだろう。
ブルーやパープル、ピンク、オレンジなどさまざまな色合いを楽しめる興味深い宝石、スコロライト。
実際に手にとって、その美しさを確認してからの購入をお薦めしたい。
自分で言うのもなんだが、写真ではオパライトにしか見えない。


16×12mm  8.46ct


追記:この石が、2度にわたるアメジストの加熱によって得られるものであるとの貴重な情報をいただきました。確かに、一見ローズクォーツ。アメジストに分類されるのは奇妙です。人工石ではありませんが、処理石を前提に購入し、その美しさを楽しむべきものといえます。こちらのカット石は3,500円での購入ですが、販売価格がこれを大幅に上回る場合は注意が必要です。また、不透明な白は失敗作とのこと。

以上、石をこよなく愛するKさまからアドバイスいただきました。本文に訂正を加えず、ここで注意を喚起したいと思います。また、海外で問題になっている人工石についても、混在の可能性が考えられますので、十分に警戒なさってください。Kさま、いつもありがとうございます!



2012/10/21

ヌーマイト


ヌーマイト Nuummite
Godthabsfjnord, Nuuk, Greenland



今回オークションに参加させていただいて、奇妙な印象を受けた石がいくつかある。
思わぬ事故で作業が遅れてしまっているので、簡潔にまとめたい。
その石のひとつがヌーマイト。
「グリーランドから発見された、地球上で最も古い石」として各方面で話題になり、人気のある鉱物のひとつである。
クリスタルヒーリングにおいては特に重視され、強い保護の石として知られている。
ある方へ石を贈ろうと、偶然手に取ったジュディ・ホール氏の著書。
開いたページにヌーマイトがあった。
早速この石について調べたところ、ある疑問が浮かび上がったので報告したい。

本来ヌーマイトは滅多に輝かず、一部がキラリと光るもの。
ところが、このところ流通しているヌーマイトは、全体が豪華絢爛に輝いている。
また、華やかさに反して、冷たい印象を受ける。
ヌーマイトの放つ光は温かなイメージだったはず。
画像から検索してみたところ、明らかに二つのパターンがみられた。
ひとつはゴールデンレッド~イエローの輝き。
もうひとつはシルバーブルー~グリーンの輝き。

以前、暖色系と寒色系の違いについて記した(→詳細はこちら)が、そのトリックがここでも用いられていた様子。
なんとWikipediaにもこの件が取り上げられており、簡潔にまとめられているので引用させていただく。

黒い地に、パラパラと散らばる玉虫色の細い破片(研磨したアルベゾン閃石に見られる針の集合のようなものではない)が光る。光り方が似ているところから、アルベゾン閃石と間違えられやすい。」(以上wikipediaより引用)

新しく発見されたという中国・内モンゴル産ヌーマイト。
シルバーブルーの輝きが放射状に広がっている。
外観や特徴は内モンゴル産アルベゾン閃石に同じである。
どちらも珍しいが、ヌーマイトはかなりの希少石であり、決して身近な存在ではなかったはずだ。
また、色相から受けるインスピレーションは全く異なるはずなのに、なぜ両者が混同されているのだろう。
アルベゾン閃石をヌーマイトとして取り入れ、流通を増やしたのだとしたら、高級品だけに衝撃は大きい。
中には画像を編集して石をむりやり赤く見せているところまであるが、大丈夫なのか。

ヌーマイトに関して、私の手持ちにアルベゾン閃石は無かった。(→あったが若干異なっていた。こちら
私が最初に手に入れたヌーマイトが「本物」であったからこそ違和感を覚えたのは確か。
尊敬する大先輩であり、お世話になっている日本のディーラーさんがツーソンで仕入れられたものだった。
過去にその方から譲っていただいた思い出のヌーマイトの写真を下に掲載した。
氏には心から感謝し、今後のご活躍をお祈り申し上げる。



左はヌーマイトの原石、右は初めて手にした思い出のヌーマイト


14×10×8mm

2012/10/19

ザギマウンテンクォーツ/消えたアイスデビル


ザギマウンテンクォーツ
Zagi Mountain Quartz
Zagi Mountain, Mulla Ghori, Khyber Agency, FATA, Pakistan



本当ならここで、美しいアイスデビル(→考察はこちら)をご紹介できるはずだった。
ある方のご厚意で手元にやってきたアイスデビル。
透明度の高い塊状の水晶で、悪魔的なイメージは全く感じられなかった。
切断面が著しいため、鉱物標本としての価値はないが、癒しには成りうるだろう。
ただ、約3000円という市販価格はやや高額であり、300~500円程度が妥当なのではないかというのが素直な感想だった。
想像するに、加工した水晶の残りであろう。
ヒーリングストーンとしては、同じマダガスカル産出のジラソルのほうが美しいと感じる。

天然石に同じものは存在しない。
お返しするさいに何かあってはと、封筒に入れて倉庫の奥にしまった。
翌日、撮影のため封筒を手に取ったら、中身は空っぽになっていた。
その間たった一日。
家族は旅行中で留守だった。
ご厚意を裏切るようなかたちになってしまったことを情けなく、恥ずかしく思う。

ここ数日、強い違和感が続いていた。
一週間前、二階の窓めがけて飛んできた漆黒の虫事件(前回の記事参照)以降、有り得ないようなトラブルが次々に起きていた。
最も衝撃的だったのは肋骨損傷で、あと一秒遅ければ死んでいたかもしれない。
実は肋骨損傷に関わるPTSDが、私が障害者として生きることになるきっかけだった。
まだ治っていないことをつきつけられた。
今回は事故に過ぎないのに、精神的ダメージは思ったより大きかった。
あまりに災難が続くため、遺書まで書いたほどである。

翌朝、アイスデビルは消えてしまった。
むりやりで申し訳ないのだが、どことなく外観の似たこの石をご紹介させていただこうと思う。
ザギマウンテンから産出したという、ゴールドに輝く水晶。
実に美しい。
鉄分による発色だろうか。
こんなものが眠っていたとは、ザギの魅力は計り知れない。

ザギマウンテンクォーツの流通は急激に増え、さまざまなバリエーションを見かけるようになった。
このゴールドの他にも、青い針の入ったザギマウンテンクォーツが見つかっている(→せっかくなので出品しました)。
いわゆるブルールチルにそっくり。
インディゴライト入りと紹介しているところもある。
ザギからはショール(ブラックトルマリン)の産出記録があるが、インディゴライトについては記録がない。
可能性があるとしたらアクチノライトではないかと思うのだが、見た目から判別するのは困難であった。

参考)ザギマウンテンは聖地ではなかった?

http://usakoff.blogspot.com/2012/08/27.html


ザギマウンテンは広い。
こんな珍品があったことに驚かされる。
私を助けてくれたのかもしれない。
或いはアイスデビルは、無意識に眠る心の闇を明らかにするクリスタルなのかもしれない。
そう思いながら、消えてしまったアイスデビルを必死で探している。


43×32×25mm  31.57g

2012/10/12

バライト(&セレスタイト)


ブルーバライト
Blue Baryte
Sterling, Weld Co., Colorado, USA



昨夜、自室2階の窓から、世界中で恐れられているとされる漆黒の虫が飛来した。
ゴキブリというやつである。
私は半ばパニックになり、その後の記憶がない。
朝になったら消えていたから、夢だったのかもしれない。
その直前、久しく連絡を取っていない知人から電話が入り喜んだのもつかの間、私が関連した極めて深刻なトラブルが起きていることがわかった。
前回の記事と関係があるのだとしたら、今日は天使の話題で反省する必要がある。

写真は見事に結晶した青いバライト(重晶石)。
まるでセレスタイト(天青石)のようだが、セレスタイトではない。
バライトは砂漠の薔薇/デザートローズ(※注)を形成する鉱物である。
砂漠の薔薇の赤褐色の色合いは、砂漠の砂に由来する。

※注)砂漠の薔薇には二種類ある。赤褐色の場合はバライト由来。デリケートなホワイトの結晶であれば、セレナイト由来。バライトとセレナイト、セレスタイトは混同される傾向にある。

バライトの結晶は珍しい。
なかなか見かける機会がなかったが、先日の春のミネラルショーでブルーバライトが販売されているのをみかけたので、いくらか流出があったのかもしれない。
色はブルーのほか、無色透明~白、イエロー、オレンジ、ブラウンなど。
冒頭にあげたセレスタイトは、バライトの成分バリウムがストロンチウムに置き換わったもの。
両者はしばしば混在し、混同されることも多いという。
また、バライトの青い色合いは、セレスタイトから生じる放射線に由来するといわれている。
つまり、処理石が作れてしまう。
現時点では需要と供給のバランスが取れているから、さほど問題にはなっていない。
私は未見であるが、グリーンのバライトは処理のおそれがあるという。

バライトは世界各地から発見され、工業用の素材として広く利用されている。
白い○○○が出ることで有名な検査用のバリウムは、バライトの粉末から出来ている。
いっぽう、結晶化したバライトの透明石は、その多彩な造形美に魅せられた収集家たちに古くから愛されてきた。
そのためオールドコレクションが数多く存在し、骨董品のような扱いを受けている。
この標本も、アメリカの有名なコレクターからの流出品で、運よく入手できた。
出処はスイス産/究極のエッチングクォーツを激安でお譲りいただいた世界的に有名な鉱物店。
代金を払っていないにも関わらず、ある日私のもとにやってきた。
驚いて問い合わせたが、どちらでもいいようなことを言われ、支払い方法を告げられることなく今に至る。
毎度のことながら、世界規模の鉱物店は太っ腹だ。
こんな見事なものに対価を支払わないというのは心が痛む。
かの収集家が天国から託してくださったのだろうと私は考えている。
非常に都合の良い解釈である。

バライトは見た目に反し、脆く破損しやすい。
そのため、加工には向かないとされている。
透明石はコレクション用にカットされることもあるが、数は少なく貴重品である。
パワーストーンとしての知名度がないのはそのためかもしれない。
このところ世界的に注目を集めている、水晶に載った美しいイエローバライト(中国産/写真1/写真2)。
春のオークションで紹介させていただいたところ、カルサイトやアパタイトとの混乱がおきている方が少なからずおられた。
知名度のなさも原因と思われるため、ここに改めて記させていただこうと思い立った。

バライトの仲間であるセレスタイトのほうは、パワーストーンとして広く認知されている。
硬度は3と、加工される鉱物の中では最ももろい部類に入る。
60年代にマダガスカルから大量に発見されてのち、高価だったセレスタイトの価値は下落、多くが加工にまわされたとみられる。

蛇足になるが、セレスタイトには硬度以外にも、様々な危険要素が含まれている。
アクセサリーとしてはおすすめできない。
当初はビーズなど考えられないという声も聞かれただけに、加工技術の進歩に危機感を抱いている。
セレスタイトのブレス愛用者のかたには、以下の要注意事項をお伝えしておかねばなるまい。
天使の石、セレスタイト。
トイレ掃除のさい天使がみえるようなことがあれば、それはあなたが天国に導かれているという警告のメッセージであるからして、すみやかに避難のうえ、換気を行っていただきたい。
セレスタイトは、天使のメッセージを運ぶ天国のクリスタルであるといわれている。




65×30×23mm  35.61g

2012/10/08

アイスデビル


キャッツアイ
Synthetic Cats Eye
産地/年代不明



アンティークの重厚感あふれるペンダント。
ムーンストーン・キャッツアイを模して、ヨーロッパで製作されたものと伺っている。
戦後すぐ、或いはそれ以前の作品ともみえる華やかで煌びやかなデザイン。
時代遅れの感はあるが、美しい。

キャッツアイといえば、人工キャッツアイの開発者である飯盛里安博士。
ヴィクトリアストーンという宝石を世に遺した偉大なる研究者である。
驚くべきことに、ヴィクトリアストーンと銘打って、廉価な赤いキャッツアイにこのブログの解説を添え、オークションで販売された人物が現れた(プライバシーの観点から、記事へのリンクは控える)。
ソースを明示してくださったおかげで、その事実がわかった。
心から感謝申し上げる。
ただ、偽物に自分の解説を使われては、悲しくてやりきれない。

今回は写真のペンダントではなく、ヴィクトリアストーンがきっかけでその存在を知ったばかりの、ある石の謎に迫ってみたい。

富を幸福と位置づけるアジア諸国においては、コンテンツの流用は半ば当然のこと。
中国の擬似ミッキーマウスに代表されるように、著作権に金銭が発生する以上、幸福の妨げになるような権利は避ける必要がある。
貧しい東南アジアの国々においては、事実上、著作権は存在しない。
それを経済的な貧しさとみるか、心の貧しさとみるかは、人それぞれだ。

表現の自由という権利も存在する。
権利のみを主張し義務を怠るのは、誤りとされている。
いっぽうで、両者が相容れない関係なのもまた、現実である。
著作権や肖像権、或いは人権を、自由や幸福追求の権利をもって否定する行為を、正義とみなす向きもある。
そんな世の中にあって、氏がソースを明示してくださったことについて、同じ日本人であることを誇りに思う。
ただ、私は納得していない。
その後、多くの方から貴重な情報やご感想をいただいた。
心ある方から、氏がどうも不審なビジネスに関わっておられるのではないか、というお話を伺った。
事実関係や今回の記事の如何について確認するため、ご本人には何度もお電話を試みた。
現在も連絡は取れずじまいゆえ、私なりに記させていただこうかと思う。

氷の悪魔と呼ばれる水晶があることはご存知であろうか。
欧米のヒーリングストーンを中心に集めておられる方にとっては初耳かもしれない。
氷の悪魔の化身、マダガスカル産アイスデビル。
恥ずかしながら、私自身初耳であって、手持ちはない。
欧米のクリスタルヒーラーを経由して入ってきたなら噂になってもよさそうなものだが、ごく一部で知られるのみだという。
ずいぶん前、マダガスカル産 "アイスクォーツ" という氷のように美しいローズクォーツが流通したが、アイスデビルの価格はその十倍以上。
ごく普通の透明水晶の塊が、軒並み一万円を越えている。
さらに奇妙なことに、このアイスデビル、先の人物が流通、普及に関わっているというのである。

キリスト教の影響下にある欧米で、倫理的にシリアスな意味合いを持つデビル(悪魔)。
善悪を厳しく二分するキリスト教的価値観において、神の対極をなす悪魔が神聖視されるとは、奇妙である。
魔女の名を与えられたウィッチズフィンガークォーツに関しては、クリスタルヒーリングにおける神秘主義的な観点から、高い支持を得ているものと聞く。
アイスデビルもその延長なのだろうか?

宗教的倫理観は、我々が思うほど曖昧なものではない。
私たちは欧米人を真似て「ゴッドブレスユー!」「オーマイゴット!」などと叫んだりする。
ここで用いられる「ゴッド」は神、つまりイエス・キリストのことを指している。
一般に、人に対して「ゴッド」という表現は使わない。
マダガスカルにキリスト教徒が存在し、アイスデビルが現地名であるならば、なにか特別な理由があるはずだ。
しかし、アイスデビルの名の由来に関する、具体的な記述はどこにも見当たらない。

マダガスカルではどのような信仰が一般的なのか、調べてみた。
Wikipediaによると、マダガスカルにおいては、アニミズム信仰(自然等を崇拝する、土着的な信仰)が最も親しまれている様子。
いっぽう、国民の49%がキリスト教徒であるとのこと。
マダガスカルもキリスト教圏に含まれると考えるなら、アイスデビルはおそらく現地名ではない。

キリスト教圏で "デビル" が徹底的に忌み嫌われるわけではない。
子供たちはデビルが大好きだという。
実際、欧米の子供向けテレビゲームに "アイスデビル" という敵キャラクターが登場する。
ただ、アイスデビルの名の由来になったとは考えにくい。

思うにアイスデビルはアジアを経由し、ビジネス目的で日本に大量に輸入された…
ならば、アンダラクリスタル並みの価値を与えられている現状、またその不透明な(或いは呪われた)存在を、放置しておくわけにはいくまい。
ただし、アイスデビルが、かの人物の考案した高波動クリスタルであったとしたら、これ以上の言及は控えなければならない。
多少なりとも関わりを持った人間を責めようなら、憎しみや悲しみが生まれる。
私はアイスデビルの正体を知りたい。
ただ、それだけだ。

実は私は過去に、その人物からいくつか鉱物を購入していた。
ご本人はおそらく、それをたどってこのブログをご覧になったのだろう。
私が氏から購入した鉱物は、全て加熱処理や放射線処理が施されており、切断面が顕著で、コレクションとしての価値は皆無であった。
また、奈良県産として購入したレインボーガーネットは光らなかった。
市町村の規定に従い、処分した。
ご指摘を受けるまで忘れていた。

もしあの赤黒いキャッツアイが飯盛博士の作品であったなら、博士に詫びなければならない。
飯盛博士のご遺族のお名前を出されては、ただうつむくしかない。
私にはあのキャッツアイが時代を超えて輝き続けるとは思えない。
血も滴るアイルデビル。
なんて恐ろしい響きだろう。
あまりの恐怖に、私は空を飛びたい気分である。
氷の悪魔が、暗闇の淵から密やかに微笑んでいる。




出品者様が飯盛博士のご遺族から受け継いだキャッツアイ。
商品解説にはなぜか私のヴィクトリアストーンの記事が。


25×25×7mm(チェーン40cm )144.40g



アイスデビルの正体がわかりました。詳細はこちらからどうぞ。

2012/10/07

フローライト(ワインレッド&オリーブ)


フローライト Fluorite
Pine Canyon Deposit, Westboro Mts., Grant Co., New Mexico, USA



秋のミネラルショーが始まった。
今回は、以前アップした記事を。
フローライトは私がこのところ特に気に入って集めているのだけれど、ショーでもたくさんの素晴らしい標本に出会った。
色合いやその混在の様子、模様、質感、存在感など、それぞれが個性豊かでひとつとして同じものはない。
フローライトで世界一周がしてみたい今日この頃。

花のように結晶した可憐なフローライト(蛍石)。
ワインレッド・カラーの下にはオリーブグリーンが隠れていて、額縁のように枠を成している。
これをゾーニングと呼んでいる。
専門用語はなるべく使いたくない。
なぜなら私にもよくわからないからである。

ゾーニング。
大雑把に言えば、額縁。
結晶内部の色の境目を指して、そう呼んでいる。
写真のようにくっきり色合いが分かれていることもあるし、どちらかというとファントムに近い、ぼんやりとした色彩の帯であったりもする(→同じニューメキシコ産のフローライトにみられるゾーニングの顕著な例)。
蛍石のゾーニングの定義は曖昧で、感覚的に使っている人も多いという印象を受ける。
ファントムとはまた違う。
この標本を語る上でゾーニングの美意識を外すことはできないので、是非とも押さえておきたい。

産地からは、赤紫と黄緑の色合いを基調とするフローライトが発見されている。
多くはクラスター状に成長しており、無数の八面体結晶が発達した刺々しい姿をしている。
この標本とは逆に、オリーブグリーン・カラーが表面を覆っているために、色味に濁りを感じることもある。
赤紫と黄緑は色相環において正反対の位置、補色にあたる。
色の相性としては最も難しい。
補色同士が混ざり合うと、暗く濁った色合いになる。
いっぽう、補色関係にある赤紫と黄緑を並べると、互いの色がより鮮やかに見えるという相乗効果がある。
フローライトだから実現するゾーニングの魔法。
お手持ちのフローライトにも確認できるはずなので、見つけていただきたい。

華やかなフローライトの花が咲いている。
いったい何の花に喩えればよいだろう。
日本の家庭環境に優しいサムネイル・サイズの標本から広がる無限の宇宙。
私はこれを盆栽と名づけたい。


31×22×19mm  12.71g

2012/10/03

アメジストエレスチャル


アメジストエレスチャル
Amethyst Elestial Quartz
Karur, Tamil Nadu, India



以前カボションカットされたものをアップしたが、今回は原石を。
南インド・カルール産出のエレスチャルアメジストである。
スーパーセブンの全盛期、その発色が本来のそれより美しいために、南インド産スーパーセブンとして出回ったことは前回にも記した。
日本に入ってくる段階でほとんどは研磨加工され、ルースや六角柱の置物になってしまっていた。
原石の魅力について語られる機会は、少なかった。

写真は現在も僅かに流通のあるカルール産アメジスト。
世界中から産出するアメジストの中でも、紫の絶妙な色合いにおいては、メキシコのベラクレスアメジストに匹敵する美しさ。
魅力はその色だけではない。
クラスター、エレスチャル、セプタークォーツ、フラワーアメジストに近いもの等々、様々な形態がある。
この標本には白いしっぽのようなものが付いている。
私の手持ちのカルールのアメジストには、なぜかすべてしっぽがついている。
白いしっぽの飛び出した水晶には、他にも見覚えがある。
いずれご紹介したい。

南インドにヒマラヤ山脈があると思っている方は多いようだ。
インドの話題が続き申し訳ないのだが、南インドと北インドでは、気候や街並み、人々の様子、食事の味や言語に至るまで、全く異なっている。
インドの公用語は、英語である。
州によって言語や文字が異なるから、インド人同士でも言葉が通じないことがある。
古くは英国の統治下にあったインド。
年配の方々は、イギリス訛りの英語を使われることが多い。
フェイスブックに "Indian English" というカテゴリがあるように、現在インドで用いられている英語は、インドに独自のアレンジがなされている。
英語を母国語とする英米とは異なり、許容範囲は広い。

先日、南インドとは何ぞや、というお話が出た。
中には南インド=サチャロカ、と認識しておられる方もいらっしゃるご様子。
南インドは私たちが考える以上に広大なのである。
情報としては不十分であるが、いったいどんなところだったか、少しだけ書かせていただこうと思う。

私が一人、南インドに上陸したさい、日本人旅行者は皆無であった。
日本でストーカーに追われ、命の危険を感じた。
インドに行くときは、おそらく生死の選択を迫られたとき。
幼い頃からそう思っていたが、遂にその時が来てしまった。
折りしも一年で最もチケットの取りづらい時期、突然出発を決めたにも関わらず、格安チケットにキャンセルが出たとの知らせを受けた。
十分な用意をする間もなく、私は日本を発つことになった。
インドに到着してすぐムンバイ空港で野宿したのは、そうした事情あってのこと。
安全なはずの日本で死ぬことが、周囲の人々を絶望させ、私は死後もその罪を背負うことになる。
それだけは、避けたかった。
インドに対しては、幼少期から非常に複雑な思いがあった。
私がインドに行くとすれば、人生が終わるときだという予感は、現実になった。

南インドに日本人はいなかった。
ただ、ネパールで知り合ったある日本人が、現在南インドのゴアという土地にいるはず。
その人物に会うことができれば、この絶望的な状況が好転するという一心で、私はゴアへ向かった。
一ヶ月以上に渡って、日本語が全く使えないという状況が続いた。
当初の目的地であったゴアに滞在する白人たちの多くは、開放的すぎて倫理的に無理があった。
ゴアでは性的に厳格なイスラムグループ、社交辞令に終わらない深い内容について話すことのできる地元のインド人と行動した。
あとで知ったのだが、日本人旅行者の集まる場所は、そこから少し離れた場所にあり、閉鎖的コミュニティになってしまっていたようだ。
それがかえって幸いし、私はインドが世界で一番好きになった。
私は長い呪縛から開放されたのだ。

南インドのリゾート地・ゴアには、無数のビーチが存在している。
ガイドの三郎(北島三郎に似ていたので勝手にそう呼んでいた)と友達になり、バイクのガソリン代を出し合って、ゴアにあるあらゆるビーチへ冒険に出かけたのを思い出す。
海沿いを走り、森を抜け、フェリーで川を渡り、椰子の木をかすめてどこまでも走る。
一般の旅行者が訪れない遠いビーチでは、高齢のヒッピーがウロウロしている。
一目でアブナイと感じたので、話しかけなかった。

ゴアの最も奥地にあるビーチ。
誰もいない砂浜。
清流を上っていくと、木陰からたくさんの人の集まっている様子が見えた。
ハレクリシュナ、と歌が聴こえる。
俗にいう、コミューンである。
ゴアにもまだあった。
参加してくる!と三郎に告げ、突入しようとしたら、「ここのは●●●●るから絶対に行くな!」と引き止められた。
三郎が世界的倫理観の持ち主であったことを、今でも不思議に思っている。
三郎は、しばしば左手で食事をしていたからである。

しかしながら、三郎には、地元のマフィア風の男に売り飛ばされそうになった。
ボスの間(?)に閉じ込められ、私が必死で助けを求めているというのに、三郎が新聞を読むふりをし、ニヤニヤしながらこちらを観察していたことについては、許しがたい。
マフィア風の男に激しい怒りを表明し、振り返ったときの彼の心底嬉しそうな表情を、今でも覚えている。
ブラックマネーなるものを初めて手にしたのも、三郎の仕業であった。
彼が仕事を休んで私を冒険に連れて行ってくれたことには、深く感謝している。
数々の悪巧みについても、当時だからお互い受け入れられたのかもしれない。
三郎が私を売り飛ばす気などなかったことはわかっている。
今では彼も立派な大人になり、家庭を築いていることだろう。
少なくとも十年ほど前、南インドとはそうした土地であった。




そろそろ石の話に戻ろうと思う。
左の写真を見ると、このアメジストがセプタークォーツの要素を持っていることがわかる。
その後さらに成長し、起伏に富んだ形状になっていったとするなら、しっぽはその名残りなのかもしれない。
もうひとつ、カルール産アメジストに特徴的なのが、ゲーサイトやレピドクロサイト、カコクセナイトなどのインクルージョン。
右の写真では、サンストーンのような煌きに混じって、お馴染みのピンクのファイアが確認できる。

本来、スーパーセブンはブラジルのエスピリトサントから産するものを指すということになっている。
ビーズに関して、エスピリトサント産のスーパーセブンを使うことは、ほぼ無いようだ。
過去には流通があったが、同様の水晶が世界中から産するとわかってからは、原価の安い途上国からのアメジストが用いられるようになった。
インド産もおそらくもう無いはず。
また、万が一サチャロカ産と明記されていた場合は、必ず事前にお店の方に確認されることをお薦めする。

下の写真においては、一箇所の面に雲母が挟まるように入り込み、緑を帯びて見えるほか、シトリンの色合いも入っているのがわかる。
しっぽのついたかわいい姿を楽しみながら、その内部に広がる宇宙を味わいたい。
スーパーセブンの七つの要素+雲母+シトリン+しっぽ=?




41×20×16mm

2012/09/25

アプリコットルチル(鉄カーフォル石入り水晶)


鉄カーフォル石入り水晶
Ferrocarpholite in Quartz
Diamantina, Minas Gerais, Brazil



クリアな水晶に、流れるように詰め込まれたアプリコット・カラーの針。
夕日で撮影したため、オレンジが強く写っているのだけれど、針水晶においては、ありそうでなかった色。
表記のとおり、内部の針はルチルまたは角閃石ではない。
ザギマウンテンクォーツっぽいけど、アストロフィライトでもない。
赤いルチルにコッパールチルなる石があった気がするが、銅でもない。
稀産鉱物、鉄カーフォル石(鉄カーフォライト、鉄麦わら石)の針状インクルージョンで、アプリコットに染まった水晶である。

最初にお断りしておきたい。
カーフォル石の産出はごく稀で、話題に上ることはまずない。
その仲間にあたる鉄カーフォル石はさらに珍しく、さらに、水晶に内包されたものについては、少なくとも世界に3つあることくらいしかわからない。
私のような素人が手を出すようなシロモノではない。
しかしながら、親しみを持っていただくため、私はこれをアプリコットルチルと名づける(→ルチルについての効能はこちらにございます!)。

長い間謎の存在だった鉄カーフォル石入り水晶。
先日、内部に無数の赤い針が詰まっていることに気づいた。
倉庫で作業をしていたさいに、偶然わかった。
それまで全く気づかなかった。
大慌てで撮影したため、夕日での撮影となってしまった。

購入は確か5年くらい前。
東京にいた頃だったか、ミネラルショーで白人ディーラーから購入したもの。
眉間の皺が印象的な頑固そうなオッサンが、厳かに販売されていた。
なんともいえない、近寄りがたい雰囲気だったのをはっきり覚えている。
ブースにならぶ鉱物は、聞いたことのない名前ばかり。
決して綺麗とはいえない通好みの鉱物の中にあって、ひときわ鮮やかな赤い水晶を見つけ、手に取った。
聞いたことのない名前の石。
理由はそれだけだった。
水晶は安くあるべきという素人にありがちな考えに囚われ、5000円という価格に一日悩んだ末、購入。

翌日、私は友人と、文京区にある老舗の鉱物標本専門店へ来ていた。
国産鉱物の品揃えでは国内でも定評のあるそのお店に初心者が入店するには、侍のかまえが必要である。
地元在住の友人と一緒だったため、引き下がれなかった。
店内に入ると、これまた頑固そうな年配の男女が3人、作業中であった。
当然、私たちには見向きもされない。
趣味人の集うところ、長い歴史が作り上げた暗黙の了解と、厳しい上下関係がある。
苦し紛れに、当時話題になりつつあったモリオンについて尋ねたら、蛭川の黒水晶以外はケアンゴームであると、お叱りを受けてしまった。
当時の私には蛭川(※注)が何だかわからなかった。

※注:蛭川(ひるかわ)の黒水晶:

岐阜県中津川市蛭川からは、かつて見事な黒水晶が産出した。現在流通している蛭川産モリオンと呼ばれる石の大半はスモーキークォーツ。蛭川産以外の世界中の黒水晶をすべてケアンゴームとみるならば、モリオンは既に絶産したということになる。記事はこちら

ふと、前日に購入したばかりの "Ferrocarpholite in Quartz" が浮かんだ。
折角専門家がいらっしゃるのだから、この石の正体を聞いてみようと思い立った。
そうして、最も頑固そうな初老の男性(ボス)にこの石を見ていただいたのだけど、不思議そうな顔をなさっている。
5000円したのだが相場だろうかと尋ねると、ボスはこう言った。

「それ位は、しますね」

びっくりした。
最後はお店の方々と色々なお話をし、後には特別な注文に応じてくださるなど、たいへんお世話になった。
ただ、当時は "Ferrocarpholite" の和名が鉄カーフォル石である、ということ位しか判らなかった。
ボスの言葉を胸に、謎の水晶として大切にしていた。

その後、私のミスで、透明だったこの標本はクラック(ダメージ)でいっぱいになってしまった。
初心者の自分が背伸びして購入した標本を傷つけてしまった罪悪感。
遠くから眺めるのが精一杯だった。
つい先日、この水晶の発色原因が赤い針によるものだと、偶然にわかるまで。

今思うこと。
それは、この石にまた巡り合うことは、極めて難しいだろうということ。
標本をよく見ると、私の過失以外にもダメージがあって、相当の年数が経過していることが推測できる。
過去のコレクターの流出品ではないかと考えている。
産地は水晶の名産地。
ひとつ見つかったということは、他にも幾つか見つかっている。
しかし、国内外ともに販売はない。

改めて鉄カーフォル石について調べてみた。
鉄カーフォル石は鉄、アルミニウム、チタン、マンガンなどから成る、きわめて稀な鉱物。
1951年にインドネシアで発見されたが、現在は絶産状態。
同じく絶産状態といわれるカーフォル石とは連続性がある。
原石は、葉ろう石に似た放射状の結晶の集合体で、絹状光沢をなし、オリーブ~イエローゴールド~ブラウンの色合いを示すという。

なお、産地の同じディアマンティーナから、鉄カーフォル石の針状インクルージョンを内包した透明水晶が産出した例が2件あった。
ただ、同地から鉄カーフォル石が産出した記録がないため、さらなる調査が必要として、それ以上の言及はなされていなかった。
サンプルが少ないために調査のしようがないということかもしれない。
いずれも拡大写真のみで形状は不明、針の色はどちらかというとシルバー。
いっぽう、手持ちの標本はセプターともいえそうなユニークな形状で、切断面のない完全な結晶体、流れるような針状結晶が水晶全体を赤く染めるさまなど、希少性以外にも見どころは多い。
私はただこのアプリコットカラーに惹かれて入手しただけ。
希少価値などどうでもいいではないか。

別名としてたまに出てくる「鉄麦わら石」。
確かに原石の色は、麦わら帽子に似ている。
水晶に含まれたらこんな色合いになるなんて、誰も予想しないだろう。
現時点では、この石は永遠の謎である。
いや、意外にあるのだけど、まだ誰も気づいていない?
そんなささやかな希望をもたらしてくれる、よどみのない光の束が、水晶の内部に輝いている。




45×28×27mm

2012/09/22

シルバーシーンオブシディアン


シルバーシーンオブシディアン
Silver Sheen Obsidian
Chihuahua, México



いつの間にか姿を消していたシルバーシーンオブシディアン。
そしてモサモサゴールドオブシディアン
おおっと違いますゴールデンシャインオブシディアンです。
3年前にはすでに切り替えられていたとみられる謎の黒耀石。
今回、詳しいことが明らかになりつつあるので、ご報告したい。

写真はかつてメキシコから産出した、幻のシルバーシーンオブシディアン。
ゴールドシーンオブシディアンのほうは代替品に切り替えられ、モサモサと安価で流通している(→詳細はこちらに記しました)が、シルバーについては忘れられたも同じ。
メキシコからの産出は減り、絶産はもはや時間の問題とみられる。
あれだけ身近だったこれらの石に、一体何が起きたのだろう。
わからないまま月日は過ぎていった。

先日、なにげなく眺めていた海外サイトで、私はモッサモサなゴールドのオブシディアンを見かけた。
日本だけじゃなかったのか。
表記はゴールドシーンオブシディアン。
ふと、真横にシルバーシーンオブシディアンもあることに気づいた。
一見すると見慣れたメキシコ産、だった。
目を疑った。
中国産と書いてあるではないか。

お世話になっている海外のディーラーさんがいる。
今回の事情を伝え、シルバーシーンオブシディアンをまとめてお願いした。
彼はベストクオリティのタンブルを私にわけて下さった。
まだメキシコからの産出は十分にある、なのに日本では、欧米を通すよりも安く上がる中国経由での仕入れが妥当とみなされている…
私はそう推測し、彼に伝えた。
少し間を置いて彼は、静かな口調で私に言った。

「もうメキシコからは(どちらの入手も)難しくなってきている。私も近いうちに(中国産に)切り替えることになるよ。」

驚いた。
彼はとっくに、そのことを知っていたのだ。
私などが勘づくとは思ってもみなかった…
そんなふうに、みえた。

現在国内で主流になっている、ゴールデンシャインオブシディアン。
主にビーズとして流通している。
これらが中国産であると明記しているところは、まだ見ていない。
中国からそっくりな黒耀石が出るなど、想像できようか。
広い国土を有する中国が、いかに豊富な資源に恵まれているかを示す重要な例だと思う。
現在は流通のないシルバーシーンオブシディアンのほうも、いずれ製品化されて流通するとみられる。

シルバーシーンオブシディアンを中国経由で買ってみた。
写真ではわからなかったのだが、現物を手に取り奇妙な印象を受けた。
輝きがうまく出ないのである。
価格はメキシコ産よりむしろ高額だった。
黒い黒耀石に銀のラメがまばらに載ったそれは、ゴールデンシャインオブシディアンより衝撃的だったのである。
質の悪いメキシコ産と言われたら最後、判断がつかないほど似ている。
ゴールドのほうはもともと石全体が金色に染まっているから、写真である程度判別できる。
シルバーが衝撃的なのは、その違いを言葉で説明するのが極めて難しいということ。
撮影技術があれば、全体にシーンが出ているように演出できてしまう。
つまりシルバーのほうは、実際に手にしてみないと、わからない。

今後、ゴールド・シルバーシーンオブシディアンのいずれも、メキシコ産から中国産に切り替えられると私はみている。
従来のシルバーシーンオブシディアンは黒く、光を浴びてシルバーに輝き、時にキャッツアイも見ることができた。
中国から全く同じ石が出ているなら、私は喜んで購入するだろう。
中国産鉱物を否定したいわけではない。
代替品とする行為そのものを疑問視している。
オブシディアンが主にヒーリングストーンとして流通している現状を考慮すると、これは日本だけの問題ではないかもしれない。
私が恐れているのは、産地を伏せ、メキシコ産として希少価値をつけて販売する人間が世界中に現れることだ。

先日入手した、シルバーシーンオブシディアン。
気軽に扱えるタンブルは、これが最後になると考えている。
何度も私を絶望から救ってくれた石だった。
最後に私の心を照らし、希望へと導いてくれたことに、深く感謝している。
このままでは、ゴールドやシルバーのシーンの耀う黒耀石は、市場から消える。
少なくとも私は、その姿に希望を見出せない。


27×23×23mm  20.11g

2012/09/20

マカバのペンダント


マカバ Merkabah
Heaven & Earth LLC



このところ霊的な方々とのご縁が続いたので、霊的クリスタルについて、真面目に考察してみたい。
写真のペンダントに見覚えのある方はおられるだろうか。
Heaven&Earth社プロデュース、目的別に厳選された数種類のクリスタル入りのミックスペンダントである。
輪を描くような魅力的なデザインと、ガラスケースに入ったカラフルなクリスタルの欠片。
それらの組み合わせによる大いなる力の目指すところが、その人の魂の目的というわけ。

写真は訳あって入手した「マカバ」。
アゼツライトモルダバイトブルッカイト、ヘルデライト、フェナカイト、メルカバイト・カルサイトという特殊なカルサイト、以上6種類の鉱物が入っているらしい。
なお私自身は、スピ系に対しては肯定・否定のどちらでもないという立場を貫いている。
不思議な出来事に遭遇しやすいのは事実だが、偶然であるものと考えている。

2009年2月、私はアメリカのツーソンショーで、Heaven&Earth社代表のロバートシモンズ氏にお会いした(→その時のことはこちらにまとめました)。
その直前、私はシモンズ夫人やスタッフの方とお話しながら、ふと自分に合うミックスペンダントは何だろう?と思い立った。

カタログには、目的によって様々な種類のミックスペンダントが用意されている。
「チャクラ・ハーモニー」「チャネリング」「トランスフォーメーション」「シャーマニック・ジャーニー」「エンジェリック・レルム」「リカバリー」「アセンション」、そしてシモンズ氏お得意のシナジー・シリーズ等々、ニューエイジャーさん御用達のキーワードが目白押し。
しかし、自らの魂の目的を、自分で勝手に決めてよいのか?という疑問が残る。
凡人ゆえ背伸びは避けたいものである。
だが、気になる。
折角プロのスタッフが対応してくださるのだ。
話の種にひとつ選んでいただこうと思い立った。

ミックスストーンペンダントの種類は非常に多い。
大まかには3種類に分けられる。

1)霊的上昇 ー サードアイ/アカシックレコード/ライトボディなど
2)愛と癒し ー ハートチャクラ/ポジティヴ思考/幸運など
3)保護 ー プロテクション/浄化/オーラ・リペアーなど

私に必要なのは、どれなんだろう。
おそらくは、ハート関連だろうと考えていた(その後シモンズ氏に見事言い当てられてしまう)。
ハートチャクラやエンジェル関連のペンダントを幾つも選び、シモンズ夫人やスタッフの方々に、私に適切なのはどれかと伺ってみた。

「どっちかっていうとマカバだよ」

全員が私にそう言った。
統計的に信憑性があるのではないかと、単純な私は考えた。
なんだか凄そうである。
で、マカバってなんだろう。
石に携わってのち、比較的よく聞く言葉のひとつなのに、わからないまま現在に至る。
困ったことになった。
マカバの正体をつきとめなければ、私の魂の正体もわからぬままである。

よくわかるマカバの世界(英語サイト):
http://www.crystalinks.com/merkaba.html

ここでは、マカバの概念と実践について、写真や図を用いてわかりやすく述べられている。
ユダヤ神秘主義に由来するマカバの概念は、専門家によって近年特に語られることの多い、非常に重要なキーワードだという。
マカバはつまり、高次元へ到達するための祝福の光。
「マ」は光、「カ」は精神、「バ」はボディを表す。
マカバは車輪のように光速回転し、次元を超えた光の領域へ意識を運び…
え?
回転するの?
いったい、どこまで行けば?

ああ、見落としがあった。
具体的に書いてあるではないか。
なるほど、自分でいうのも変だが「マカバ」は私にぴったりのペンダントである。
ツーソンの宿で知り合ったアーティストで、ヒーリングの知識もあるインディアンの末裔の青年。
彼が描いてくれた私の絵にも、マカバが登場した。
ご本人もそれがマカバであることを私に伝えてくださったから、間違いない。
その根拠は、上記サイトにあるイラストと解説にすべて集約されているため、以下に引用させていただく。

The Merkabah is a UFO.

50×8mm

2012/09/16

プラチナルチル(ブルッカイト)


ブルッカイト入り水晶
Quartz with Brookite
Kharan Mountains, Baluchistan, Pakistan



パキスタン・カハラン産出の有名な水晶。
希少石ブルッカイトを伴って発見されるこの輝かしい標本は、世界中でその価値を認められ、高い評価を得ている。
日本では特にブルッカイトのインクルージョンに価値が置かれている。
レアストーンブレスの定番商品としてご存知の方も多いはず。
プラチナルチル、ブルッカイトルチル、またプラチナクォーツとも呼ばれ、高額で取引されているという。
水晶内部に広がるブルッカイトのシルバーの強い輝きがプラチナを思わせるため、誰が呼んだかプラチナの愛称で定着した。
ブルッカイトは、厳密にはルチルとは異なる鉱物なのだが、両者には連続性がある。
この標本においても、ブルッカイト及びルチルの針状インクルージョンが同時に認められる。

ブルッカイトはルチル、アナテースとともに重要な酸化チタン鉱物に数えられ、幅広い需要がある。
いずれも関連性が認められ、しばしば共生して発見される。
現地からはブルッカイトだけでなく、ルチル、アナテースの産出もある。
ブルッカイトの和名は板チタン石(そのまんまですね)とされるが、もはやプラチナルチルに変更になったかのような勢い。
残念なことに、プラチナは入っていない。
初期には水晶にプラチナが入っているものと思い、買い求めた人々も多かった。
プラチナルチルは和名であり、愛称である。
海外で使うと誤解を招くおそれがあるので要注意。
また、シルバーの針のみえる水晶のすべてがブルッカイト入りであるとは限らない(例:希少石アンカンガイトを内包する水晶のルース)。

ルチルクォーツやトルマリン入り水晶を「プラチナルチル」としているケースが目立つ。
ルチルクォーツのブレスを、プラチナルチルとして高額で購入された方も少なくないようだ。
写真の標本のように、ルチルとブルッカイトの両方が入っている場合は差し支えないと考える。
しかし、ブルッカイト入り水晶に太いゴールドの針が見えるとは聞かない。
鑑別書は肝心の鉱物名が隠れていて、見えない。
以下に参考資料を引用させていただく。

ブルッカイトではなくルチル入りのおそれがあるケース:
例1)http://store.shopping.yahoo.co.jp/ashiya-rutile/13mm24rt-0206-54-kyo.html
例2)http://store.shopping.yahoo.co.jp/luz/0241pur54.html

私には、インクルージョンを外観から判断できるほどの知識や経験はない。
ただ、プラチナルチルはシルバーグレーのブルッカイトの極細の針状インクルージョンを指して使われていた言葉だった。
写真の原石についても、インクルージョンとしてはルチルの割合が高いとみられる。
しかしながら有り難いことに、堂々たるブルッカイトが共生している(ピンボケしたので写真を二枚に分けました。後日撮り直します!)。
ブルッカイトの大きな板状原石(→本文下の写真及び結晶先端の拡大写真)が水晶の隙間に確認できる。
ワインレッドを帯びた強い光沢を伴うシャープな結晶は、まさに世界中の収集家を魅了し続けるパキスタン産ブルッカイトの醍醐味。
この産地からのブルッカイト、またアナテースは欧米では異常とも言える人気ぶり。
水晶と共生したブルッカイトの標本は、ダメージがない場合、概ね100ドルを超える貴重品となる。

いっぽう、クリスタルヒーリングにおいては、高次のチャクラを活性化させ、人々を高みに導くクリスタルとして、アゼツライトやフェナカイトに並ぶ最も重要なヒーリングストーンのひとつに数えられている。
このような希少石が分野を超えて愛されたのは、パキスタンから数多くのブルッカイトが届けられたからに他ならない。
欧米を経由するととんでもない金額になってしまうブルッカイト。
私たちがそうした希少石を良心価格で入手できるのは、日本に活躍する多くのパキスタン人ディーラーのおかげであることを忘れてはならない。

金、銀、銅のグラデーションに彩られたインクルージョン。
流れるような繊細な糸が輝くさまは、誰も入ることの無い秘境で見た奇跡の光のような、純粋な感動を与えてくれる。
なお、この産地の水晶には、アンハイドライト(エンジェライト)のチューブ・インクルージョンが入ることがあるらしい。
よく見ると、空洞のような針もみえるので、もし原石をお持ちの方がおられたら、お宝チェックをしていただきたい。
見どころは満載である。

プラチナルチルはあらゆる奇跡と富をもたらすパワーストーンとされている。
何十万もするプラチナルチルのブレスレット。
富がもたらされるならば何としてでも買わねばならぬ。
しかしながら既に、プラチナルチルのブレスにキラキラとレインボーが輝き始めた方は多いことだろう。
そのレインボーは、次のプラチナルチル・ブレスへの買い替え時を意味している。




45×37×25mm  30.48g

2012/09/14

ウィッチズフィンガークォーツ


ウィッチズフィンガークォーツ
Witches Finger Quartz
Kitwe, Copperbelt Province, Zambia



ルチル、マイカ(雲母)、ヘマタイトなどを含む珍しい水晶。
時に赤いヘマタイトに覆われていることもある。
本来は細長いポイント状で産出したものを指すが、こちらは塊状の原石を磨いたタンブル。
このウィッチズフィンガークォーツ、欧米ではヒーリングストーンとして安定した人気がある。
アフリカのザンビアから産出するというのも面白い。
ただ、日本での人気はいまひとつ。

ウィッチズフィンガークォーツを直訳すると、魔女の指の水晶。
魔女の指というと、鋭く伸びた爪がギラリと光る、それはそれは不気味なイメージ。
魔女、特に年老いた魔女は、必ずと言っていいほど悪役として登場する。
クリスタルヒーリングの盛んな英米では、魔女はさほど恐ろしい存在ではないようである。
世界は広い。
ある時、ドイツ人女性に「アナタは魔女?」と真顔で聞かれたことがある。
ドイツは確か、魔女狩りが最も盛んだった国。
生粋の日本人ゆえ、いまだその真意についてはわからない。

ウィッチズフィンガークォーツのポイントは、いかにも指、である。
それも、ゴツゴツした老婆の白い指を想起させる。
抵抗を覚える人も多いだろうからと、タンブルを中心に揃えた。
「魔女の指」を「魔法の指」と言い換えるなど、試行錯誤してもみた。
しかしながら現在も、私の中のレアストーンリストに残ってしまっている。

世界を放浪していた頃、たまたま東京のゲストハウスで働くことになった。
新店長の名前は「魔女」と定められた。
最終学歴は魔法学校ということになっていた。
どういういきさつだったか忘れたが、勝手にそうなっていた。
"魔女的な人" として扱われるのは今に始まったことではない(子供の頃は宇宙人だったが、成長に伴い魔女になったような気がする)。
私が知らぬ間に人々を脅えさせているのではないかと悩んだ。
或いは、どこか浮いているだろう、と。
この石を大切にしているのは、ウィッチズフィンガークォーツとの出会いがきっかけで、魔女のイメージが変わったからだ。

ウィッチズフィンガークォーツには、二面性があるといわれている。
煽るかのような強力なエネルギーを引き出す一方、持ち主に深い安らぎへと導くという。
また、波瀾万丈な運命に苦しむひとを癒し、自らの生まれ持った使命を悟らせる力もあるそうだ。
これから歩んでいく、まだ見ぬ道を照らすというこの石が、どうして怖いだろう。
そう、日本にあっても、魔女は必ずしも悪い意味とは限らないのだ。

何事も、頼りすぎはよくない。
だけど、石に少なからず関心を持つあなたなら、パワーストーンの魔法に憧れたことだって、一度はあるはず。
私も同じ。
理由はなんだっていい。
教科書に載っているパワーストーンの意味とは、少し違っていたとしても。


34×28×12mm  15.21g

2012/09/12

マグネサイト


マグネサイト Magnesite
Serra das Éguas, Brumado, Bahia, Brazil



カルサイト?フローライト?
いいえ。ハウライト 別名 マグネサイトです。
イミテーションの素材としてきらわれたハウライト(→詳細は本物のハウライトに記)の、さらなる偽物として知名度を上げ続けるマグネサイトに、鉱物標本として高い評価が与えられることが稀にある。
写真はブラジル名物のマグネサイト・クラスター。
この産地からの透明結晶は、世界で最も美しいとされ、各方面での評価は高い。
宝石にカットされることもある。

通常、マグネサイトは白く粗い塊状で産出する。
色合いや質感、網目のような模様はハウライトに非常によく似ている。
そのため、両者はしばしば混同されるが、全く別の鉱物である。
マグネサイトは重要なマグネシウム資源に位置づけられ、その用途は幅広い。
世界各地から産出があり、現在も膨大なマグネサイトが地中に眠っているといわれている。

この立派なクラスターは4年ほど前、お世話になっている社長から譲っていただいたもの。
マグネサイトの安価なイメージからは想像も出来ない高級品である。
この美しいキューブ状のマグネサイトがヒーリングストーンとして注目を集めたのも、ちょうどその頃。
ひとつひとつの結晶から放たれるやわらかな光は高い霊性を宿し、特に瞑想に向いているとされ、高値で取引された。
瞑想を趣味とする私が殊更大事にしているレアストーンのひとつなのだけれど、既に過去のものとなってしまった印象を受ける。

マグネサイト(ハウライト)若しくはハウライト(マグネサイト)というややこしい表記が常識となった今、かつての輝きは忘れられつつあるようだ。
ウバイト・トルマリンと共生した小さな結晶は僅かに流通があるようだが、もはや廉価な白い研磨品が主流となっている。
パワーストーンとしてのマグネサイトの位置づけは、危ういものとなっている。
ハウライトだと思っている人もいらっしゃるかもしれない。
マグネサイトの本質は、"厄介な偽物" だけではなかったはず。
やわらかな光に満ちたこの至極の輝きこそ、マグネサイトの醍醐味であり、本来評価の対象となるべき姿であると私は考えている。




60×43×38mm  85.92g

2012/09/09

【速報】うさこふがアメリカのヒーラーに?

!被害拡大中!
その石も偽物です。




西暦2012年9月9日午前11時。
パワーストーンにまつわる極めて深刻な犯行が明らかになりました。
今後、さらなる被害が拡大することが懸念されます。
大手の業者さまも被害に遭われていることをご存知ありません。

ここで発表し、注意を喚起するのは危険です。
しかしながらうさこふはここで無実を主張しておく必要があります。
私は知らぬ間にこの事件に巻き込まれていたのです。

事件の発端となったのは、過去に私が気に入って、夢と希望と想像力を駆使してその魅力に言及した、グランドキャニオンワンダーストーンという美しい岩石です。

グランドキャニオンワンダーストーン
http://usakoff.blogspot.com/2012/03/blog-post_10.html


次に、被害に遭われた業者様の具体例を挙げながら考察していきましょう。




暖色系の石のもつ温かみには、うさこふが勝手に魅力を感じ、素直に書き留めたものです。
このビーズにはブルーやグリーンなど、暖色系以外の色合いが含まれていますので、説明とは一致しません。
また、実はアメリカのヒーラーの間では、ほとんど知られていないのです。
卸元からの資料をご参考にされたとのこと、詳細をお伝えしたところ衝撃を受けておられたご様子でした。
アリゾナといえば、ウラン鉱物も有名です。
ヒロシマ・ナガサキに投下された原爆の原産地であり、パワースポットであることだけを強調するのは危険といえるでしょう。





この石のもつ温かみの虜になったのはうさこふであり、アメリカのヒーラーではありません。
巧妙に言い換えられていたので、デジャヴを疑いました。
自分のブログを読み返してようやく思い出しました。
此方の小売業者様も、悪徳業者が送りつけた資料をご参考にされたとのこと、当ブログはご存知ありません。


グランドキャニオンワンダーストーンの流通は、少なくとも三年以上前からあったとみられます。

ジャスパーやライオライトの模様を楽しむ習慣のない日本では、ヒーリングストーンとして特別にパワーを与える必要がありました。
そのため、グランドキャニオンの名前とイメージのみが一人歩きし、謎の存在と成り果てていました。
本国アメリカでは評価はジャスパーの一種にとどまり、価値はあってないようなものでした。

ところが、全く異なる岩石を製品化し、金儲けを目論む卸業者が出現しました!

商品解説書に、想像にすぎないはずの私のブログの記述を転写し、あちこちの業者様に卸してまわったとみられています。
偶然の一致でない根拠としては、私がグランドキャニオンワンダーストーンを知ったとき、国内でこの石を取り上げている商業サイトさまは皆無、個人的なブログも2件のみ、具体的な言及はなされていませんでした。
うさこふはこの石の魅力をなんとか皆さまにご紹介したいと考え、独自の考察と想像によって文章を創り上げ、ブログにおいて愛情をアピールしました。
つまり、出典はうさこふの脳内であり、ワンダーストーンという築材の資料を参照しただけのアバウトな情報で、販売に用いるには不適切な内容といえます。

また、実際に販売されている岩石は、私の知っているグランドキャニオンワンダーストーンとは異なるものです。

というのも、商品と解説に矛盾が数多く認められるのです。
特に、私の文章と重複している箇所については、他所からの引用であることが読み取れてしまう不可解な内容となっています。
手持ちのグランドキャニオンワンダーストーン、また同等の意味(パワー)を有するといえるグランドキャニオンジャスパー(写真は下)は、いずれも暖色系の色合いのみで構成されていました。

色彩心理学をかじった人ならもうお分かりかと思います。
暖色系とは、黄色~オレンジ~赤~ブラウンの色合いを指し、見る人にあたたかさ、親しみや活力を与えるといわれます。
うさこふはこの暖色系のみの模様に注目したのです。


写真にあるビーズには、寒色系のブルーやグレー、また暖色系・寒色系に分類できない中性色のグリーン、黄緑が入っています。
寒色系は見る人に正確さ、涼しさを感じさせ、中性色は見る人に公平さ、安全性などを訴えかけます。
この原理を使って人の心理を操作することは、意外に多いんです。
それはともかく写真のビーズから、"暖色系" や "あたたかみ" というキーワードが出てくるのはきわめて不自然ですよね。
異なる種類の石について解説していることは、明らかです。
おそらく商品解説を見てもピンと来ない人が大半だったことでしょう。

いっぽう、グランドキャニオン付近から産出したライオライト、ジャスパーにこの種の模様をもつ岩石があるかどうかについて、検討する必要があります。



Think, Care, Believe
http://thinkcarebelieve.blogspot.com/2012/02/more-rock-cutting-therapy-in-quartzsite.html

加工前のグランドキャニオンワンダーストーンの原石を紹介されているサイトがあります(写真はリンクより)。見事ですね。

少なくとも、グランドキャニオンワンダーストーンの名前を与えられた石に、上記以外の模様、色合いは見たことがありません。
下の写真は、グランドキャニオンジャスパーと呼ばれる石で、同様にグランドキャニオン付近から産出するそうです。
模様は似ていますが、こちらも暖色系の色合いで構成されており、日本で流通しているものとは違うようです。

グランドキャニオンジャスパー


このビーズのダークサイドを垣間見ることのできる、重要な情報をいただいています。
初出は今年の6月頃。
ビーズに加工され、日本市場に入ってきたものとみられています。
加工は中国及びインド、ターゲットはおそらく日本のみです。
欧米の鉱物が、専ら日本向けに加工にまわされるケースというのは滅多になかったはずです。
似たようなことはありましたね。
昨年、日本だけをターゲットにした正体不明のパワーストーンが市場を圧倒したことがあったんです。
そうです、パキスタン産ブルームーンクォーツの謎と非常によく似ています。
中国やインド、タイなどの闇の住人どもが複雑に絡んだあの事件が、再び起きてしまったのだとしたら…

おおっと!これ以上は危険です!

いずれの業者様からもサンプルの提供はかないませんでしたので、現在も確認はとれていませんが、鑑定で産地が明らかにならないことを鑑みると、アリゾナ産でない可能性が極めて濃厚です。

以上の考察から、現在流通しているグランドキャニオンワンダーストーンのビーズ及びブレスとなったのは、グランドキャニオンの名を語るパキスタンなど欧米以外から産出した岩石と大胆に推測することができます。

※天然石をこよなく愛するL様からの資料を参照させていただきました。貴重な情報のご提供をありがとうございます!

鉱物資源に恵まれた中国では、中国から産出した類似の石を人気のパワーストーンと関連付け、産地を明らかにせず日本に流すことがあります。
この件に関しては、残念ながら多くの事例を確認しています。
また、最近ではインド加工も増えています。

もはや謎の団体による計画的な犯行が疑われ、事態は絶望的に深刻です。

うさこふとしましては、この度の事件を重く受け止め、今回被害に遭われた小売業者様及びお客様への返金、また私の夢と希望を無料でお金に替えられた代償として、利益の一部を還元していただくかまえでした。
しかしながら調査の結果、組織的犯罪や外国人グループの暗躍が予想されましたため、個人での追及は打ち切ることとします。
大手業者様の姿勢や知識不足がこのたびの不幸を招いたこと、不確かな卸元からの仕入れが認められたことは、非常に残念です。
被害例として紹介した業者様に問い合わせた上での問題提起でしたが、私の記した原文の存在がわかった今も、業者様は私の解説とは異なる商品の販売を続けています。
不確かなパワーストーンの購入は、世界的犯罪組織やブラックマーケットへの拡大につながります。
こうした組織の撲滅は、事実上不可能です。
返品をお薦めしたいところですが、どうしても必要である場合、霊的代償を考慮のうえでのご使用を検討ください。


パワーストーンが夢と希望で出来ているとは限りません。
効果にとらわれず、その石の価値を見極めましょう。
被害に遭われた業者様には、謹んで哀悼の意を表明したいと思います。


買わないことが
犯罪組織の撲滅につながります!


2012/09/08

青水晶(ブラジル産)


青水晶 Blue Quartz
Jenipapo, Itinga, Minas Gerais, Brazil



先日、鉱物のインクルージョンに対する自分の認識の甘さを痛感した。
そこで、前々から気になっていた、インクルージョンの不思議に迫ってみたい。

写真は、過去にブラジルから産出した青水晶、ブルークォーツ。
この青は水晶に内包されたインディゴライト・トルマリンに由来するとされ、インディゴライト・イン・クォーツとして絶大な人気を誇った。
俗にブルールチルと呼ばれる青い針の満載された水晶。
これも同様の原理に因るとされている(ルチルの詳細と意味、効果はこちらにございます!)。

私が鉱物に興味を持った頃、青水晶・ブルークォーツといえば専らこれだった。
スペイン・マラガからの青水晶の流通もまたあったが、多くの人々は「ブルークォーツ=インディゴライト」と受け止めていた。
私が初めて手にした青水晶も、2005年頃流通したこのブラジル産になる。

水晶のインクルージョンというのは非常に難しい。
特に青水晶の場合、発色の原因となる鉱物は多岐に渡り、すべてのインクルージョンを特定することは不可能に近い。
例としては、トルマリンのほか、リーベカイト、クロシドライト、アクチノライト、デュモルチェライト、ラズライト、アエリナイト、シャッタカイト、プーランジェ鉱、パパゴアイト、ギラライトなど。
私自身、水晶や水晶の内包物については勉強不足であり、物足りなさを感じている。

写真にあるのは、過去のブルークォーツ。
当時はインディゴライト・イン・クォーツ、ブルーファントムクォーツなどと呼ばれていた。
出始めの頃は細長いポイント状に結晶し、写真のようにショール(ブラックトルマリン)の柱状結晶と共生するのが常であった。
二つのポイントが交差し、さらにショールを伴うという点で、現在主流となっている青水晶とは異なるものと考える。
内包されたインディゴライトは、ここでは針状というよりむしろ毛状というべきか。
非常に繊細なトルマリンがブルーの濃淡となって、幻想的な光景を創り出している(本文下の写真)。

インディゴライト・イン・クォーツに対しては、かねてから疑問があった。
インディゴライトは純粋な青ではない。
ブルーとグリーンとの絶妙なバランスが求められる。
仮にインディゴライト・イン・クォーツが存在するとすれば、文字通りインディゴカラーになるのではあるまいか。
写真の標本はブルーグレーである。

内包物というのは本当に難しい。
一般に、外観からの特定は困難である。
インクルージョンが何であるかは、同じ鉱脈から採れた標本を参考に推測することが多いが、複数の鉱物のインクルージョンによる発色であることも少なくない。
この難解さゆえに、収集家を魅了してやまないともいえるだろう。
さらに、日本においては、インクルージョンのみられる透明水晶の人気は極めて高い。
産地や内包物に関する情報の混乱が、人々を困惑させるのは想像に難くない。
水晶の中身を特定しておくことは、国内においては重要である。

反省を込め、ブラジル産青水晶のインクルージョンは、本当にインディゴライトなのか、考察してみたい。
まず、大雑把に説明すると、インディゴライトは以下のように位置づけられる。

インディゴライト<ブルートルマリン<エルバイト<トルマリン

定義上、インディゴライトはブルートルマリンの一種ということになる。
また、ブルートルマリンとインディゴライトには連続性がある。
全米宝石学会(GIA)では混乱を防ぐために、ブルートルマリンとの表記を推奨しているそうだ。
つまり一般には、インディゴライトの色合いは純粋な青ではなく、グリーンとの絶妙なバランスが求められる。
"ブルーグリーンルチル" にしか見えないブレスも実在するいっぽうで、純粋なブルーの針が確認できることがあるのもまた、事実である。

過去に流通したブルークォーツの特徴は、灰青色の濃淡のみならず、美しいショールの結晶を伴うこと。
以前インディゴライトの原石を紹介した(→記事はこちら)。
写真で確認できるように、エルバイト・トルマリンにはブルー、グリーン、イエロー、またピンクがある。
ブラックトルマリンとブルートルマリンは異なるグループに属する。
ショールも水晶のインクルージョンとして珍しくはないのだから、二色の針が認められてもおかしくないはずなのだが、この標本に関しては、青と黒が混在している様子はない。
いっぽう、柱状に結晶したショールは鉱物標本としても価値があり、キロ売りで販売中の岩のようなブラックトルマリンとは別格とされている。

さて、インディゴライト・イン・クォーツに関して海外サイトを検索したところ、日本のサイト以外出てこない。
海外では、ブラジルの青水晶は、オレナイト(オーレン電気石)のインクルージョンに因るものと説明されている(→参考写真)。
なんじゃそりゃ、知らなかった。
オレナイトとは、ピンクまたはブルーを示す珍しいトルマリンで、エルバイトやショールとは異なるグループに属するようである。
希少石オレナイトを華麗にフューチャーし、その価値をアピールしているところもある。
なお、同じブラジル産水晶に、ブルーターラクォーツがある。
こちらもリーベカイト及びオレナイト由来の発色といわれているが、リーベカイトのインクルージョンとするのが妥当であろう。
パキスタンのザギマウンテンからもリーベカイト由来の青水晶が発見されている。

オレナイトは産出そのものが少ないから、まだ確定というわけではない。
気になるのは、過去のブルークォーツと共生するブラックトルマリンが、直射日光下で赤紫に見えること(→参考写真)。
他所からはインディゴライトとショールの針が同時に入った水晶も発見されているようである。
現時点ではブルートルマリンとするのが無難であると考えている。
水晶の内包物というのは、難しい。




35×24×22mm  14.11g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?