2011/11/27

ヒマラヤアイスクリスタル


ヒマラヤアイスクリスタル
Himalayan Ice Etched Crystal
Kullu Valley, Himachal Pradesh, India



全体が淡いフロストピンク。
ふんわりと光を包み込むような不思議な質感。
絹のような光沢とその特異な形状は、見る者を惹きつけてやまない魅力に溢れている。

2006年にインドで発見された触像水晶の一種。
ヒマラヤアイスクリスタル(アイスクリスタル)、ニルヴァーナクォーツ、ヒマラヤエッチドクリスタル、ピンクエッチドクォーツなど、さまざまな呼び名がある。
ヒマラヤ山脈の標高6000m級の氷河地帯で、地球温暖化の影響で溶けた氷の下から姿を現したことから、人類へのメッセージではないかと騒がれた。
地球温暖化の影響で氷河から発見された例としては、他に南米コロンビア産の水晶など。

初期は細長い柱状で、トップもボトムもフラット(C面)、上下のわからないアイスクリスタルが流通し、誰もが仰天した。
色はピンクとホワイトの2種類。
「地中からこのままの形で一本一本発見される」という表現が使われた。
まるでスーパーで売っている12本入りのアイスのようだから、アイスクリスタル?
そんなことは決して思わなかったけれど、冷凍庫の中から一本ずつ色違いで発見されるイメージだ。

世界的に入手困難であったが、2009年頃から状況は一変する。
当初一万円近くしたアイスクリスタルは、市場に溢れ、数百円程度まで下落した。
同時に小型化、形の多様化、質の低下が進んだ。
酸化鉄に覆われた茶色いアイスクリスタルもみかけるようになった。
多くは塊状の標本であり、「一本一本発見される」という表現はもはや使われなくなった。
いっぽう、欧米では100ドル以上が相場のようであった。
相場の下落は日本人業者による買い占めが原因かと思われたが、つい先ほど海外の相場を見たところ、日本と同程度にまで下落していた。
共通するのは、表面の酸化鉄。
内部が無色透明であることがわかるのは、表面のダメージゆえか。

アイスクリスタルを語る上で、①蝕像水晶であること、②C面が発達していること、③トライゴーニック(先端方向に対して▽の刻印、レコードキーパーの逆バージョン)が浮かび上がること、以上3点は欠かせない。
どちらも意識したことがなかったので、今更調べた。
C面とは鉱物の結晶構造に関する専門用語。
アイスクリスタルに関しては、トップもボトムも平らであるという特徴を指して使われた模様。
トライゴーニックについては未確認(本文下の写真左、下の方にいくつか小さく光る箇所?)だが、そもそもアイスクリスタルに上下はあるのかという疑問が生じる。

最も不思議なのは、過去のアイスクリスタルと現在主流となっているアイスクリスタルとの明らかな違いについてである。
相場は再び上昇している。
アイスクリスタルの発見されたヒマラヤの氷河は、さらに標高の高いところまで溶解が進んでいるらしい。
しかしながら、期待された蝕像水晶は、ある時を境に、いっさい発見されなくなってしまったという。

人類へのメッセージのオチがこれ?
光の歌が奏でる結末とは、これいかに。




41×17×16mm  12.82g

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