2011/11/11

アゼツライト/ローゾフィア


アゼツライト/ローゾフィア
Azeztulite & Rosophia
From Mr.Robert Simmons



アゼツライト、名も無き光。
鉱物というよりは、形而上の概念である。
ニューエイジストーンの発掘・普及に貢献してきたHeaven&Earth社の代表作。
既存の鉱物に独自のネーミングを与えることで知られる。
その反響の大きさゆえ、著名人からの反発の声も聞かれるほどであった。

今でこそ人気は安定した感があるが、業界のリーダー的存在であり、一部の人々にとっては神であり、パワーストーンブームを支えた偉大なる存在である。
代表でクリスタルヒーラーでもあるロバート・シモンズ氏の写真を掲げ、アゼツライトを販売するショップが後を絶たない。

今回はアゼツライトと、ロバート・シモンズ氏にまつわるエピソード。
2009年2月、米アリゾナ、ツーソンミネラルショーにて。

***

ツーソンショーも終わりに近づき、安宿に滞在する不幸な女たちは、博物館へ出かけていった。
私も誘われたが、どうせ女性の自立やらDVやらの話になるだろうから、一人で会場をまわることにした。
IDカードは台湾人に借りた。
これで業者割引が効く。

まだ見ていない会場は一つだけ。
リムジンバスから降りると、なにやら怪しい香りがする。
肌の黒い少年が、ジョイントを片手に、カゴを売っている。
「マリファナか?」と聞いてみる。
「そうだ。お前もどうだ」と少年。
荷物を持ち帰るのに丁度いいカゴだった。
一番大きなものを購入した。

あたりを散策していると、同じ宿の女性に遭遇。
なにやってんの、と言われたので、石を見ていると答えた。
彼女はアクセサリーを売っていた。
私のベッドの下に、持ち主のわからないダンボールが乱暴に積まれていて、足の踏み場がなかった。
中身はアレだったのか、と納得。
投げやりな荷物の扱いが、常にヒステリックな彼女らしくて、可笑しかった。

奥の建物には、ニューエイジ系のショップが集まっていた。
セージの束に、怪しげなお香。
いかにもなお姉さんがいろいろ説明してくれるのだが、石の産地などについて尋ねると、○○の近くなどといった曖昧な返答。

H&Eのブース。
たくさんのお客で賑わっている。
お馴染みのワイヤー・ペンダントもズラリ。
足元には、しゃがみこんで必死にそれをカゴに入れている日本人バイヤー2人組。
うっかり踏むところだった。
ツーソンで日本人と出会ったのは初めて。
向こうも気づいたので、挨拶した。
「今日の2時で終わりですよ。私たち急いでいるので!」と、素っ気ない。
時計は11時過ぎ。
私は奇跡的に、H&E社のショーに間に合ったのだった。

フロアで色とりどりの石を眺めていると、女性が親しげに近づいてきた。
ロバート・シモンズ氏の奥様だった。
シモンズも後で来るかもしれないとおっしゃる。

ほどなくして、シモンズ氏が登場。
当時の日記には、石の聖地に君臨した神、とある。
それくらいの衝撃だった。
喩えるなら、日展で天皇陛下に会った時、もしくはインドのマハ・クンブメーラにて、目下話題になっていた尊師と食堂で会った時くらいのインパクト。

アメリカ人のオバチャン達がサインをねだりに群がる。
日本人にしかウケないと揶揄する人もいるが、現地でもかなり人気があるようだ。
ボーっとながめていると、シモンズ氏がこちらにやってきた。
親日家であることは知っていた。
台湾人のIDカードを付けているにも関わらず、私を日本人だと思ってくれたようである。

いろんな話をした。
私にはどんな石が必要かという問いに、シモンズ氏が出してきてくれたのが、ローゾフィア(赤いほうの石)。
氏が最初に発見し、インスピレーションを受けたという、大きな塊状の原石だった。
触るよう言われ、目を閉じて手を当ててみる。

H&E社から先月発表されたばかりのローゾフィア。
いくつか紹介された新商品の中では、私の一番のお気に入りだった。
フェルドスパーとクォーツから成るありふれた石ではあるのだけれど、アゼツライトを初めて手にしたときくらいの高揚感があった。
その最初のインパクトが目の前にある。
愛に関連する石だと思っていた。
それはおそらく他者の存在しない孤独な愛。
愛を知らず、生まれ、育ってきた人生。
彼らは人を愛せないばかりか、自分自身を愛することも知らない。
1から覚えるのではない、0から考えるのだ。
他人が理解させることではない。
本人がそれに気づくまで、旅は続く。
「君にはハートに欠けている部分がある。この石を持つといいだろう」とシモンズ氏は私に言った。

愛を知ったとき、人は普遍的な真実に一歩近づく。
心の奥に眠っていた無限の可能性が次々に開花し、別人のように輝くのである。
もちろんそれで終わりじゃない。
人生の最後の瞬間まで、その歩みは続くのである。

シモンズ氏からアゼツライトとローゾフィアのさざれを一連ずつ、奥様からはハートのモチーフをプレゼントしていただいた。
これをリーディングして送るようにと、メールアドレスまで受け取った。
石のリーディングなどやったことがない。
後日、仕方ないので感想を送った。

さきほどの日本人バイヤー2人。
引き続き血眼になりながら、カゴに商品を詰め込んでいる。
ローゾフィアも入ってる。
目の前にシモンズ氏がいるのに、どうして見えないんだろう。
そんなことを思ったショー最終日。
明日はいよいよクライマックス、ツーソン・ミネラルショーだ。



夫妻と一緒に証明写真

ハートのモチーフ 25×7mm  32.7g~34.1g

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What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?