2012/04/23

ダークスモーキー/エッチングクォーツ(アルプス)


ダークスモーキークォーツ/蝕像水晶
Dark Smoky Quartz
Bristenstock Mountain 3450m, Uri, Switzerland



鉱物に詳しい方なら、なぜ?と思われるかもしれない。
一般人は持つことの許されない、水晶の頂点。
それが、スイス・アルプス山脈から産する水晶である。
フランス側から出たものは比較的流通があるが、いずれもジャンクに近いものがいい値段で販売されている。
アルプスといわれただけで購入してしまうのが日本人。
そう思われても仕方ない。

外観は、モリオンのよう。
しかし、内部は極めてクリア、内包物は見られない。
太陽の下ではこれでもかといわんばかりに輝く。
私でも知っている、あるコレクターの所蔵品で、世界的に有名な鉱物店で販売されていたものを、運よく入手した。
どこから見ても、美しく、言葉にできない。
アイスクリスタルを思わせる変形ぶりや侵食の跡、平らな面(C面でいいのだろうか)などに、アルプス水晶ならではの透明感が加わった、美意識満載の豪華標本。

驚きのあまり夢中で写真を撮ったため、2回ほど床に落した。
若干欠けてしまったが、意外に頑丈であった。
オールドコレクションを破損してしまったショックは大きい。
現地からは他にもこうしたエッチングクォーツのほか、見事なポイントやクラスター、フローター/ファーデンクォーツなども出ている。
ただし、いずれも高度は異なるとみられる。
色合いは無色透明、内包物でグリーンになったものなどさまざまで、黒に近いスモーキークォーツが他にあるかどうか、この標本がどういった状況下で発見されたかについては謎である。
また、この地に由来する水晶は歴史的コレクションばかり。
半世紀以上前に得られたものも少なくない。
今世紀に入ってから産出があったかどうかについてはわからない。

見た限りでは、この産地の水晶は数が限られ、趣味人が資産を投じて購入するものであり、一般人は手出し無用。
大自然と闘うミネラルハンターの、まさかの根性を垣間見ることが出来る歴史的珍品たち。
価格はとんでもないことになっている。
欧州のコレクターは層が厚く、気合いからして違うため、流動層の多い日本に良品が流れてくることは少ない。

なぜこんなものを私が入手できたか。
それは、日本円にして500円にも満たない処分価格で、大放出されていたからである。
本当に、謎である。
撮影者の腕前がまずかったとしか、解釈のしようが無い。
まるでベツモノであるから、検索してそれとわかった方がおられたら、自信を持っていただきたい。

先人への感謝を込め、私が2回も落下させてしまったこの美しい標本の写真をもって、しめくくりたいと思う。
商品画像は相当まずかった。
だが、ウリマウンテンの名に負け、決断した。

ウリウリウリ!
予想を遥かに超えた美しさに、驚いてコケた。
感動をありがとう。






色合いは右下の写真が最も近いです。あとはすべて直射日光にあてて撮影しています。モリオンという言い方は適切ではありませんが、ケアンゴームとはいえると思います。カテゴリではスモーキークォーツとしました。


48×34×30mm  37.15g

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