2012/11/30

フォーダイト


フォーダイト Fordite
Ford Rouge Plant, Detroit, Michigan, USA



フォーダイト、またの名をデトロイト・アゲート。
キラキラ輝くラメ状の細かな粒子、鮮やかな色合い、独特の模様が楽しめる。
アゲート(めのう)でないのは一目瞭然。
その正体は、米国はフォード社の自動車工場で塗装に用いられたラッカーだという。
しかしながら自動車には全く興味のない自分には、フォードが一体何なのかわからない。
アメリカの歴史に深く関わり、単なる民間企業の枠を超えた伝説的存在のようだ。
必死で調べたことをまとめたのが以下。



米・デトロイトに本社を置くフォード社は、ヘンリー・フォードという人物により1903年に創業された自動車メーカー。
100年以上に渡って世界の業界をリードしてきた会社で、戦争や不況といった困難を乗り越え、現在も存続しているという。
いわゆる「流れ作業」を最初に取り入れたのもフォードであったとのこと。


流れ作業といえば、子供の頃に観たチャップリンの映画。
あまり良いイメージではないのだが…
それはさておき、この不思議な宝石の産地は、工場での塗装部門。
1940年~80年代にデトロイトの工場から出た副産物をリサイクルして出来たのが、フォーダイトということになるようだ。
フォード社では、長い間ラッカーを用いた車体の塗装を行ってきた。
流れ作業において飛び散ったラッカーが積もり積もって、フォーダイトの原形(→写真はこちら)が完成した。
たまたまカットしたところ見事な宝石になったため、噂が噂を呼んで、広まっていったようである。

現在工場は閉鎖され、国外へ移転している。
80年代を最後に塗装の方法も変更になった。
今後中国以外から出てくることは無い。
あるときを境に消えたという神秘性や、カットして初めてわかったその美しさと偶然性こそが、フォーダイトの魅力といえよう。
こんなものを宝石にカットしようと思った人がいたのは驚きである。

工場からの副産物といえば、ジンカイトやスウェデッシュブルーが有名である。
スウェデッシュブルーと異なるのは、産出場所や埋蔵量(?)が特定できるため、いつ市場から消えるかもはっきりしているということ。
1940年代の古い素材を用いたフォーダイトは、モノクロに近いシックな印象で、数が少ないために希少価値が付くのだそう。
写真のフォーダイトはサイケデリックな色彩が好まれた70年代のフォーダイトのカット品で、同じ塊からカットされたものと伺っている。
最末期の80年代のカット品は、時代を反映した派手な色合いが特徴で、市場に出回っているものの大半がこれにあたるらしい。

こんな個性的な色を自動車に使っていたというのは、考えてみれば不思議なこと。
国産車は高級品になるほど白や黒、シルバーといった無難な色になる。
60~70年代のベンツなど、欧米の車に見られる、芸術性の高いカラーリングやデザインには、車に興味のない私でさえ感動を覚える。
ヴィンテージの車を愛する知人が多い私は恵まれている。
国産車にそういった美意識が皆無なのは、自家用車における歴史が浅いこと、個性より効率を重視した結果といえるかもしれない。

思うに多くの日本人は、車に芸術性など求めないのであろう。
空調やカーナビゲーション、イミテーションの毛皮などは、自動車には本来必要のないものである。
ましてや安全確認のおそろかになるテレビ、他車の走行を妨げる過剰なイルミネーション、騒音を奏でるオーディオなどを積むのは、不幸な事故につながる危険行為に他ならない。
車は人の命を一瞬にして奪う。
不幸な事故を極力避け、通行人に不快感を与えないよう、芸術性にこだわるべきである。
それができない者には軽トラの利用が適している。

話が逸れてしまった。
フォーダイトには自動車文化を彩ってきた遊び心が詰め込まれている。
米国ではアクセサリーとして人気も高い。
今後ヴィクトリアストーン同様、中国からの模造品が出回ることが危惧されるから、興味のある方はお早めに手にしていただきたい。


40×25×5mm, 31×30×5mm  計10.25g


この度は多くの皆さまにオークションにご参加いただきました。
本当にありがとうございました。
皆さまの温かいメッセージに涙し、励まされ…
オークションも最終段階に入りました(なんと、まだ終わっていなかったんですね!)

最後まで全力で頑張ります。
この場を借りて、皆さまにお礼申し上げます。
次回は池袋にてお会いしましょう(フォーダイトも参ります)!

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