2012/01/01

ルチル(原石)


ルチル Rutile
Diamantina, Minas Gerais, Brazil



ルチルクォーツを見たことのない人っているのだろうか。
全盛期には、手のひらサイズのスフィアが400万という、破格の値段を付けるほどに大流行した。
いっぽうで問題を起こし、論争を巻き起こし、善からぬ人々を招きいれ、それらが現在も解決していないという奇妙な存在。
なぜ、未だに解決しないのか。
正月だけに、縁起のよさそうなルチルで新年を祝いつつ、考察をしてみたい。

ことのなりゆきはブルールチルで取り上げた。
要は、ルチルクォーツには様々な色合いがあり、人々はもはや、水晶に入ってる針=「ルチル」であるものと認識していた。
鉱物をこよなく愛する人々にとって、その誤認の定着は、不愉快極まりない出来事であった。
ルチルはあくまで鉱物のひとつでなければならない。
俗に言われる『阿鼻叫喚のルチル闘争』がそれである(無い)。

ふと、思った。
ルチルの原石を見たこのある人ってどれくらいいるのだろうか。
あれからかなり経つのに、現在もあちこちで論争を見かける。
以前は、誤認ゆえの成功と記したが、ルチルの原石にも原因があるように思える。
ルチルクォーツのゴールドの針のイメージとはかけ離れた姿、と説明することはできる。
色合いは?結晶の形は?
そう聞かれても、一言では説明できない。
じゃあ結局、ルチルの原石ってどんな石?

写真の標本はルチルクォーツの全盛期に、ひっそりと棚に並んでいた、ルチル(金紅石)の原石。
「網状双晶を示すルチル」と書いてあった。
小さいながらも、メタリックでキラキラしていて、形もカワイイ。
当時ルチルクォーツのブレスは、安いところでもこれを10個、通常は100個近く買ってようやっと手に入る高級品だった。
幾つも並んでいたから、私のルチル原石のイメージは長い間コレだったのだ。

この手のルチルはその後、見かけていない。
大抵は他の鉱物と共生している。
ルチルクォーツならばいくら掘っても出てくる。
しかし、ルチルの原石はやはり、少ない。
ルチルは鉱物だといわれても、具体的なイメージが出てこないのは致命的。

ルチルクォーツのご利益が凝縮されて出来た、半端なく凄い石のはずなのに、どうして誰も探さないんだろう。
トルマリンやアクチノライトより珍しくて、こんなに美しいのに。
わかってる。
大半の人は、そんなことどうでもいいのだ。
客層をみればわかる。
ルチルクォーツをご購入されたお客様の声は、たぶんこんな感じだろう。

「スロットで負け続け、ますます借金が増えていきます」(Aさん/千葉県)
「ロレックスより高かったのに質屋が取らんぞゴラ」(Bさん/大阪府)
「幸せになれないのは浄化の仕方に問題があるのでしょうか」(Cさん/福岡県)
「ブラックルチルって偽物なんですか?」(Dさん/北海道)
「ヒーラーになれないんですけど!」(Eさん/東京都)
「買いすぎて自己破産しました」(Fさん/愛知県)


パワーストーン・ルチルクォーツの効能は、以上である。


約10mm  数点

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?