2011/10/16

日本式三連双晶


日本式三連双晶
Japan Law Twin "Triple"
群馬県甘楽郡南牧村三ッ岩岳



二つの結晶が84゜33'の角度で接合し、ハート型になった水晶を日本式双晶と呼んでいる。
日本式三連双晶は、一つのポイントを軸に、二つの水晶がそれぞれ84゜33'に結合したもので、なかなか見かけない。
先日の秋のミネラルショーにて購入したもの。
平板状の結晶が左右対称に飛び出しているのがわかると思う。

日本式双晶は、たぶん、最も好きな鉱物。
ハート型は避ける性格なのだけれど、初めてこの水晶を見たときは、素直に感動した。
このような結晶が自然にできること。
日本が代表的産地で、"Japanese"というネーミングが世界的に定着していることにも興味を引かれた。
それまでは、狭い日本にマトモな鉱物標本など存在しないと思い込んでいた。
このブログの一発目に取り上げたのも、トップページに画像をくっつけているのも、メールアドレスにしているのも、お気に入りだったから。
ただ、積極的に集めたことはない。
国産鉱物の世界には、知識・経験ともに豊富な年配のファンが多く、何も知らない私には敷居が高かった。
気に入った形の日本式双晶が見つからないというのもあった。

水晶には思い出がある。
私がまだ幼かったとき、家族が山へ水晶を採りに行こうと言い出した。
魔法の結晶。
そんなイメージだった。
日帰りで行ける距離に、そんな場所があると聞いて、嬉しくて眠れなかった。
光り輝くクリスタルを拾う夢を見たほど。

待ちに待ったその日、私は一番に水晶を見つけようと、山を歩いてまわった。
しかし、水晶など何処にも落ちていなかった。
むき出しになった土を入念に調べても、キラキラした結晶はひとつとして現れなかった。
夕方になり、諦めるよう家族に言われた。
裏切られたような気持ちになった。
夢にまで見た水晶は、幻に過ぎないとわかったから。

その後、水晶をプレゼントしていただく機会はあったが、自分から探すことは意図的に避けてきた。
必ず裏切られる、だから絶対に求めてはいけない。
そう思うようにしていた。

鉱物に興味を持ってすぐ、かつてはその山から、美しい水晶が数多く発見されていたことを知る。
噂を聞いた人々がすべて掘り尽くしてしまったのである。
中には、ショベルカーで山を崩しにかかった者もいたらしい。
現地は今、山崩れを防ぐための柵に覆われている。
国内の有名な鉱物の産地のほとんどは、そうした理由で立入禁止になっている。
家族が嘘を言ったわけではなかった。

ふとしたきっかけで知り合った国産鉱物のディーラーであり、収集家でもある大先輩にお会いした。
予想を裏切らない、素晴らしい人物だった。
緊張した。
その方に、どんな鉱物に興味があるかと聞かれ、うろたえてしまった。
所詮は広く浅く、とっさに出てくるはずもない。
言葉に詰まっている私に、その方が薦めてくださったのが、写真の石。
日本式双晶のクラスターかと思ったが、それだけではない。
鳥が羽を広げたような形から、鳥形日本式三連双晶と呼ばれている、極めて珍しい双晶とのことだった。
まったく知らなかった。
福島のほうはなんとか落ち着いていると、笑顔でお答えになった。
涙が出そうになった。

鳥形日本式三連双晶の存在は古くから知られており、日本各地から発見されていたが、長い間幻の水晶として語られていたという。
10年ほど前に群馬からまとまった産出があったものの、すぐに採り尽くされてしまった。
そのうちの一つがこれ。

参考:日本式三連双晶の図解
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/pegma/index.html

鳥形日本式三連双晶には、左右対称に成長した双晶の間隔が、60度のものと、120度の二種類がある。
どちらかひとつ。
60度のほうを譲っていただいた。
今にも羽ばたかんとする鳥の羽根に、希望を感じた。
探し求めた究極の日本式双晶がここにある。


21×15×14mm

2011/10/14

パープライト


パープライト Purpurite
Usakos, Karibib District, Erongo Region, Namibia



パープライト。
ビロードのようになめらかな光沢と、深みのある赤紫色を特徴とする。
加工には向かず、宝石やビーズでは殆ど流通しないとされている。

近年、人気の高まりとともに、ビーズなどでも見かけるようになった。
パープライトは非常にもろく、こすると色移りする性質がある。
何らかの処理はなされているはず。
意外かもしれないけれど、現在流通しているパープライトは、そのほとんどが処理されたもの。
写真の原石にみられるメタリック・パープルの輝きも、酸処理に因るものである。

ある日、街を歩いていると、道端にビニールシートを広げ、石を売っている青年に出会った。
路頭に迷っているところを親切な人に救われ、石を安価で譲り受け、生計を立てているという。
並べられている石の中に、パープライトがあった。
彼はパープライトが処理されたものであることを知っていた。

私に鉱物の世界を教えてくださった女性がいる。
路上で倒れていた私に声を掛けてくださった。
一杯のコーヒーをご馳走になり、旦那様の経営する鉱物店へ案内していただいた。
鉱物の販売に携わるようになったさいには、卸先としてお世話になった。
のちにその男性が、鉱物業界では名の知れた人物であることを知る。
私は運がいいとつくづく思う。
当時の私は、抜け殻に等しかった。
全てを奪われ、もはや生きる気力すらも枯れ果てて、何も残ってはいなかったから。

嫌な予感がした。
その青年に、その時の女性を知っているかどうか尋ねたところ、やはりというかそうだった。
世の中は狭い。
彼いわく、その女性から譲られた石を路上で販売しているとのこと。
路上での物品販売は違法である。
恩を仇で返す行為ではないか。
複雑な思いだった。

ちなみに、パープライトの産地として最も有名なのは、ナミビアのウサコス鉱山。
こちらの標本もウサコスからやって来たもの。
素敵なネーミング…
などと反応するのは、私だけだろうけど。
元ヒッピーである某鉱物店の社長さんに、ウサコスへ連れて行って欲しいと頼んだことがある。
「無理」と言われた。
ウサコスがどんなところか検索してみたら、こんなのとかこんなのとかこんなのが出てきた。
ちょっと無理かもしれないと思った。

宇宙とのつながりが語られることの多いパープライト(注1)。
神秘性、高貴さを象徴とし、想像力や理解力を高める力があるそうだ。
支配や束縛からの開放を促し、新しい世界への旅立ちを支えるともいわれている。


29×18×17mm  10.2g

2011/10/08

ザギマウンテンクォーツ


ザギマウンテンクォーツ
Zagi Mountain Quartz
Zagi Mountain, Mulla Ghori, Khyber Agency, FATA, Pakistan



ザギマウンテンクォーツ。
パキスタンのザギ・マウンテンから産出する水晶である。
さまざまな呼び名があるようだが、ここではザギマウンテンクォーツと呼ぶことにする。
ヒーリングストーンとして名高い石で、その存在は以前から知っていた。
ピンと来ないというのが正直な感想だった。

ザギマウンテンクォーツの特徴は、その多彩な内包物。
エジリン、アストロフィライトのほか、トルマリン(ブラックトルマリンなど)、アンフィボール類(アクチノライト、リーベカイトなど)を含む。
ベースはクリアクォーツ。
内包物によって、赤やオレンジ、グリーン、ブラウン~ダークブラウン、黒などの色合いを示す。
初期は大小さまざまな、シンプルなポイントが中心だった(本文下右側の写真)。
現在はエレスチャル状、ポイント状、塊状など、多様化が進んでいる。
スモーキークォーツやミルキークォーツ・ベースのザギマウンテンクォーツも見かけるようになった。
今やその存在の不透明さは加速するいっぽう。

写真の石は、プレゼントとして偶然に付けていただいたもの。
うわ、なんじゃこりゃと思った。
よくわからんが、すごい。
後日、ザギマウンテンクォーツであることが判明。
小粒にしてこの存在感、本物だ。

大好きな西アジア。
これは絶対にザギマウンテンに登らねばならない。
標高175メートルなら余裕だ

今はほとんど使っていない、バックパックの出番が来たようである

※聖地ザギマウンテン付近の様子はこちらからどうぞ

現実は甘くない。
調べてみると、そう簡単には行けない土地であることがわかった。
聖地により外国人立入禁止説、乱獲により規制が入った説、タリバン出現につき国際的に入山不可能説、などが推測されたが、いずれにせよ外国人が入るのは容易いことではないと感じた。
ネットショップでは、聖地である旨説明されていることが大半。
もし最後の説が本当だったとしたら、命を覚悟しなければならない。
パキスタンの情勢が極めて不安定なのは、ご存知の通り。

聖地に関しては思うところある。
外国人、特に日本人の海外での評判は、悪い。
現地の人々の感覚に合わせることをしないからだ。
意図的に遠ざけられた可能性はある。
パキスタンのように信仰が根付いている国においては、外国人が現地の人に打撃を与えることも少なくない。

パキスタンには好戦的な人が多いと思っている人が多いが、そうではない。
飾ることなく誠実で、温かな心をお持ちの方々だ。
宗教の異なる日本人に対しても、親切に接してくれることが多い。
我々日本人は、宗教と聞いただけで抵抗感を持ってしまいがちだが、現地での信仰心は、日本でいう法律であり、道徳であり、生活の一部でもある。
例外はある。
たとえば、戦争のあった地域で生まれ育った人々。
家や家族を失い、心に深い傷を負った彼らが、やむなく道を外れることもある。
詐欺や麻薬取引などの犯罪に関わっていたのは、私の知る限りでは、戦地など複雑な環境に育った人間だ。

ザギマウンテンについて、この石を譲ってくださった方に伺ってみた。
情勢が悪いというのは現実のよう。
ザギに登るのは厳しいと感じた。
私のような外国人が間違いを犯す(犯した)可能性も十分に考えられる。

ザギマウンテンからはバストネサイトのほか、ゼノタイム、イルメナイト、モナズ石などの希少石が産出することで知られている。
現地がレアアースの宝庫であることが判明したのは、ごく最近。
2001年頃だといわれている。
これも不思議な偶然で、近年においては最も危険だった時期である。
殺害されたテロリストが、アフガニスタンからパキスタンに逃亡したのは有名な話。
私がパキスタンを旅したのは11年前。
テロ発生の前年だが、空港は厳戒態勢が敷かれており、税関で厳しい検査があったのを鮮明に覚えている。

話を戻そう。
ザギマウンテンクォーツは、多彩な内包物を持つことで知られる。
中でも、アストロフィライト、エジリンが入ったものは人気があるようだ。
本文下、左は、手持ちのザギマウンテンクォーツの拡大写真。
最近入手したもので、アストロフィライトが内包されているということだった。

結晶中の太く黒い針がエジリンだという(→拡大写真)。
一本だけ確認できる太いオレンジの針は、なにか。
実は、過去のザギマウンテンクォーツに、このオレンジの針が高い確率で含まれていた(本文下の写真参照)。
エジリンではないし、ルチルにしては色が濃く太すぎる。

一般的に、アストロフィライトは繊細な繊維状のインクルージョンとなって、結晶全体をレッド~オレンジに染めるといわれているが、私にはオレンジの針が本来のそれではないかと思えてならならないのだ。
アストロフィライトとされる、オレンジの微細な毛状のインクルージョンは、私にはどうも、アンフィボール(角閃石)の類いにみえる。
マダガスカル産のアンフィボール入り水晶に、このような色合いを頻繁に見かける。
アストロフィライトのインクルージョンというのは他では聞かないから、相当珍しいはずだ。

なんとなく、気になる。
まあ、いいや。
この石にはきっと、危険を承知でザギへ入っていったパキスタンの人々の勇気、そして温かな心が、あふれんばかりに詰め込まれている。




14×11×6mm  7.78ct

2011/10/07

サラードクォーツ


サラードクォーツ Sarado Quartz
Diamantina, Minas Gerais, Brazil



サラードクォーツ。値札つき。
蝕像水晶(→レコードキーパーの項、注1参照)の一種。
角が溶けて丸くなっているのが特徴だろうか。
サラードは地名ではなく、現地の言葉で「回復」という意味。
透明感のある爽やかな水晶に、ビシビシと刻まれた侵食の跡が強烈である。
今でこそ価値を認められたサラードクォーツだが、価値がわからなければ「少し変わった水晶」でしかない。
そのため、こちらのサラードクォーツも、最近まで当家において不当な扱いを受けていた。

出会いは4年ほど前、某ミネラルショーにて。
無造作に並べられた水晶の山の中に、コレがあった。
ブースには、ぶっきらぼうな中年女性が2人。

「コレ、何の石ですか?」
「水晶です」
「面白い形ですね」
「パワーあるわよ」
「どんなパワーがあるのですか?」
「…」
「おいくらですか?」
「3000円」
「何か、意味があるのですか?」
「お買い得だと思うわよ」

やる気が全く感じられない。
ヒーリングストーンの知識にかけては半端ないはずの連れも、まったく興味のない様子。
つまるところ、誰にも価値がわからない。
この名も無きクリスタルに、3000円を投じるべきか否か。
今を逃すと後悔する、そう直感した。

そしてこの「謎の水晶」は、我が家の倉庫に奉納された。
たまに見かけて、手に取る程度。
そうして、4年が経った。

今年の夏、サラードクォーツなるものをネットで見かけ、興味を持った。
さっそく注文した翌日の晩、立ち寄った実家で写真の石と再会した。
目を疑った。
ネットで見たものと、全く同じではないか。
Saradoというラベルまで貼ってある(貼りっぱなし)から、間違いない。
ようやっと正体が判明し、日の目を見ることになったサラードクォーツ。
あの頃はまだ蝕像水晶という言葉は一般的ではなく、アイスクリスタルも流通し始めたばかりで、先のミネラルショーで出会ったお店の方もご存じなかったのだろう。

ネットショップさんには、あわててキャンセルをお願いした。
お店の方にはご迷惑をおかけしたが、入金前だったのが幸いし、キャンセルをお許しいただいた。
実家には半年に一度寄る程度。
このタイミングでの再会も、何かのご縁ということか。

帰宅後、調べてみた。
ディアマンティーナ産の蝕像水晶を、総じてサラードクォーツと呼んでいるようである。
ネットショップで見かけたものは、手持ちのサラードクォーツと同じ、角が溶けて丸くなっているタイプだった。
諸説あるのかもしれない。

水晶の名産地・ブラジルでは、どんな個性的な水晶にも愛称を与え、お守りにする習慣があるようだ。
日本人にはわかりづらい感覚かもしれない。
こうして今、サラードクォーツが評価されているのは、とても嬉しい。
一部が削れてしまっているのは、私のいい加減な保管によるもの。
床に置くのはやめ、箱にしまった。
付加価値を考慮せず、直感だけで購入した水晶に価値がわかることは滅多にないから、不思議な偶然に驚いている。


81×30×26mm  77.3g

2011/10/05

オーロベルディ


オーロベルディ Oro Verde
Diamantina, Minas Gerais, Brazill



メタモルフォシスをご存知だろうか。
見た目は普通のミルキークォーツ。
ガンマ線を照射すると真っ黒になり、その後300℃程度で加熱すると美しいグリーンゴールドに変化することから、変容・変革の象徴として、メロディ氏(→スーパーセブン参照)によりメタモルフォシスの名を与えられた。
オーロベルディは、いわばメタモルフォシスの変革後の姿。

ポイント状のオーロベルディは珍しい。
メタモルフォシスは塊状で産出し、オーロベルディも同様の形状を持つことで知られている。
こちらはメロディ氏と交流のあった海外のクリスタルヒーラーが所有していたオールドストック。
ごく初期に得られたオーロベルディのポイントとのこと。

元祖メタモルフォシスは、多少クラックの入った、大き目のタンブルだった。
形はいびつで、決して格好いいものではなかった。いっぽう、オーロベルディは、切り取られたような破片状の塊。
比較的小さな原石が多く、加工品の場合はそのほとんどに激しいクラックが入っている。
現在は、タンブルではない破片状のメタモルフォシスも、メロディ氏経由で出回っている。

実はこのメタモルフォシス、現地では以前からミルキークォーツとして知られており、珍しいとされるピンク・メタモルフォシスのほうも、ローズクォーツとして流通していた。
メタモルフォシスが知られ始めた段階で、既に国内に在庫のある業者もあったため、姿勢は二つに分かれた。
あくまでもミルキークォーツ・ローズクォーツとして売る業者もあった。
しかし、ミルキークォーツをメタモルフォシス、ローズクォーツをレアなピンクのメタモルフォシスとして扱い、国内で「変容」させたものをオーロベルディとして高値で販売、メロディ氏の人気に便乗しようとする人々も。

美しいグリーンゴールドを示すオーロベルディ。
こちらも以前から流通があった。
海外ではオーロベルディ・シトリンと呼ばれており、放射線処理を施した宝石として認識されている。
同じく放射線処理によって作られる、レモンクォーツと同じような扱い(レモンクォーツは淡いイエロー)。
見た感じ、シトリンの代用品として扱われているに過ぎず、色合いもグリーンゴールドとは言い難いので、大量生産が可能なレモンクォーツと混同されているのかもしれない。
ポイントの流通も多いが、多くはレモンクォーツの色合い。

オーロベルディの名について、メロディ氏が命名したという記述は見られない。
ただ、いっとき海外のヒーラーの間でも話題になっているので、この石にメロディ氏が関わっているのは事実。
メロディ氏はもともとあった石にインスピレーションを受け、特別な名称を与えることが多いようだ。
本物か偽物かを問う以前に、付加価値の有無に問題があるように思う。
正規のルートで仕入れた場合、オーロベルディは「変容後」の姿で日本に入ってくる。

彼女のネームバリューはかなりのものであり、売り手にとっては死活問題。
そのため、メロディ氏の紹介した石が、彼女自身から仕入れたものかどうかが度々問題になった。
付加価値をつけるならメロディ氏を通すのは当然のこと。
メロディ氏経由で仕入れているところもある。
どちらを選ぶかは好みの問題で、出所にこだわる必要はない。
流通経路が不明、かつあまりにも高額な場合は、購入元に問い合わせてみよう。


メロディ氏によると、オーロベルディは持ち主に人生の深い意味を体験させ、成熟した人間性を育くむという。
また、強いエネルギーで持ち主を保護し、新しい未来を切り開いていくための意志と力を運んでくるとされている。


30×18×14mm 10.2g

2011/10/04

チンカルコナイト


チンカルコナイト
Tincalconite after Borax
Boron Open Pit, Boron, Kern County, California, USA



チンカルコナイト(チンカルコ石)。
その名のとおり、珍石である。
もし持っておられるなら、余程のレアミネラル収集家か、ネタとして購入した方ではないだろうか。

チンカルコナイトは、透明なボラックス(硼砂)という鉱物が、空気に晒されることによってできる。
専ら工業用、産業用に用いられる。
その用途は多彩で、過去には放射能漏れ事故のさいの応急処置に活躍したこともあるそうだ。

標本としてはほとんど出回っていない。
地味な上に、取り扱いが難しいからだ。
うっかり水で浄化しようものなら、溶けて無くなるらしい。
乾燥が過ぎると崩れて粉末になる。
加えて、もろく破損しやすい。
非常に軽く、風に吹かれてどこかへいってしまうこともあるという。

同じタイプの名前の石に、チンワルド雲母がある。
こちらも雲母だけあって、取り扱いが難しく、撮影中にヒビが入ってしまった。
とてもデリケートな鉱物たちなのである。

ちなみに、チンワルド雲母の名の由来は、ツィンヴァルト・ゲオルゲンフェルトというドイツの街。
ツィンヴァルト・ゲオルゲンフェルト雲母と呼んだほうがかっこいいような気がする。



ツィンヴァルト・ゲオルゲンフェルト雲母

25×13×6mm

2011/09/27

ピーターサイト


ピーターサイト Pietersite
Outjo, Damaraland District, Kunene Region, Namibia



ピーターサイトの塊。
濃紺色で描かれた抽象画のような、なにものにも喩えがたい独特の模様。
カットすると、まるで台風の目のようにみえることから、テンペスト・ストーン(嵐の石)とも呼ばれている。

その正体はクロシドライト(青石綿)。
猛毒として知られるだけに、驚かれる方もおられるかもしれない。
こちらはめのう化して固まっており、危険物が飛び散る心配はない。
一般には、クロシドライトを含んだ石英(ブルータイガーアイ)が地殻変動によって粉砕され、ふたたび浸透した石英によって、鉱物として蘇ったものとされている。

意外に知られていないが、タイガーアイやブルータイガーアイはクロシドライトから成る鉱物である。
青いクロシドライトが酸化してゴールドになったものがタイガーアイ。
両者は通常、混ざることはない。
しかし、いったん粉砕されたのちに形成されるこの石の場合は、青とゴールドが混ざり合った状態で発見される。
純粋な濃紺色は、原産地でもあるナミビア産のみに見られ、非常に高額で取引される。
なお、ゴールド~赤茶系のピーターサイトは、中国河南省から産出するもの。
ナミビア産とは成分が若干異なるらしい。
ピーターサイトには含めない、としているところも。
1962年に発見されたばかりの比較的新しい鉱物であり、その定義ははっきりしていないのかもしれない。

写真のピーターサイトは、昔たいそう気に入って手に入れた、大きな塊状の原石。
ところどころ酸化していて、濃紺色の嵐がうずまくさまが確認できる。
通常はカボション・カットされたり、ビーズなどで流通するピーターサイトだが、原石の美しさもなかなかのもの。
ちなみに、何も飛び散った形跡がないので、このままの状態で問題ないと思われる。

ジャンルを問わず広く日本人に愛されているタイガーアイ。
成分は同じであるものの、ピーターサイトのほうはヒーリングストーンとしての色合いが濃い。
シャーマニック・トラベルに欠かせない存在として知られているほか、瞑想にも向いているそうだ。
自分自身と向き合うための石でもある。
嵐の中にあっては、前も後ろも見えず、混乱し、何も考えられなくなってしまう。
しかし、台風の中心は、実に平穏なのだ。
安らぎと平和に満ちた世界に立ち戻ることによって、本来の自分自身を取り戻し、物事の本質をより深く理解することができるようになる。

先日、生まれて初めて石のブレスが千切れた。
ピーターサイトのブレスだった。
波乱万丈な運命に嘆く人に捧げる石である。
日常生活が波乱万丈すぎたのか。
いや、物事を見誤り、いつの間にか嵐の渦中を外れて、自ら突風に飛び込んでしまっていたのかもしれない。


約150g(未測定)

2011/09/24

スペクトロライト(各種)


スペクトロライト Spectrolite
Ylämaa, Etelä-Karjalan, Finland



二度目のご紹介。

スペクトロライトの名は、七色の輝きに由来するわけだから、当然七色の色合いがある。
しかし、七色!七色!と謳いながらも、実際に七色のスペクトロライトを紹介しているところはほとんどない。
私自身、「スペクトロライト=青く強い閃光を放つ鉱物」だと思い込んでいた。

そこで、今回はギャラリー形式にて、その魅力をご紹介させていただきます。
前回のスペクトロライトと併せてお楽しみくだされ。




スペクトロライトが発見されたのは1940年。
第二次世界大戦のさなかだった。
なんでもフィンランド軍が、ロシアとの国境付近にあるユレマーの地で、ソビエト軍の侵入を防ぐための穴を掘っていた際、青く輝く岩が見つかったという。

鉱脈の発見の瞬間だった。
軍を指揮していた将校は、奇しくもフィンランドの地質調査研究所長の息子であった。
研究は進められ、地質研究所長(親父?)によってスペクトロライトと命名されたという。




もともと1781年にロシアのサンクト・ペテルブルグに近い氷河からラブラドライトが発見されており、フィンランドからラブラドライトが出ることも推測されていた。
このようなとんでもないモノが出てくるということも、ある程度予想されていたのかもしれない。
しかし、地質学者が長年調査を続けていたにも関わらず、見つかることはなかった。
スペクトロライトの発見は、不思議な偶然が重なって実現したものだった。




スペクトロライトは、夢と深いかかわりがあるといわれている。
ラブラドライト同様、宇宙の叡智を運んでくるとされているが、そのメッセージはより深く難解であるという。
どんなメッセージが送られてくるかは、今宵の夢にて。


約30~60mm

2011/09/21

エジプトの星


エジプトの星
Hematite after Marcasite
White Desert, Farafra Oasis, Matruh Governorate, Egypt



エジプトのサハラ砂漠の奥地から産出する、「エジプトの星」と呼ばれる鉱物。
その名から、希望の星になぞらえて語られることもある。
正体はゲーサイト(針鉄鉱)若しくはヘマタイト。
マーカサイトという鉱物が、長い時間をかけてゲーサイトに変化した。
つまり、マーカサイトの仮晶ということになる。
比較的よくみかけるが、他所からは発見されておらず、産出には限りがある。
エジプトがまだ海の底だった頃に形成されたといわれる、太古の石である。

ゲーサイトといえば、水晶の内包物としてご存知の方も多いと思う。
ストロベリークォーツやスーパーセブンに含まれる、赤やピンクのインクルージョンの本体がコレ。
鉄の一種であるからして、メタリックブラックの重厚な質感を持つ。
針状、塊状で産出することが多いゲーサイトだが、大自然が生み出した彫刻のようなものも存在する。
こちらの「エジプトの星」もそのひとつ。
松ぼっくりのような外観からは意外なほど頑丈、かつ繊細な結晶形を示す。
こうしたユニークな形状は仮晶ならでは。

産地はリビアとの国境にほど近い、ホワイトデザートと呼ばれるエリア。
現地にたどりつくにはサハラ砂漠の険しい道のりを辿らねばならず、採取には危険や困難が伴うとされている。
しかし、「エジプトの星」に関しては、産出も比較的安定しており、流通も多い。
その不思議な構造や神秘性から、内外を問わず人気は高い。
ホワイトデザートからは、他にもドーナツのような形を示すゲーサイトなど、興味深い石が多数発見されている。プロフェシーストーンが見つかるのもこの一帯らしい。
中にはこんなものもある(→エジプトの星になった貝化石)。

余談だが、H&E社(注1)から最近発表されたという「Zストーン」は、これと全く同じものらしい。
なぜZなのかは不明である。
なんでも、パワーが非常に強く、酔ってハイになることから、ミネラル・マリファナとの異名を与えられたという。
この石を持って車の運転をしてはいけないというから本格的だ。

確かに見た目はマリファナに似ている。
ここはいっそ「エジプトの星」をやめて、「秘境のマリファナ」とし、大麻愛好家向けに紹介してみてはどうだろうか。
大麻開放運動関係者の方から聞くところでは、決して好ましいとはいえない状況が続いている様子。
この石がマリファナ・ファンの希望の星となることも十分考えられる。
そこのフリークのあなたも、おひとついかが?
すべての人の心に、平和が訪れることを祈って。


注1)Heaven&Earth社の略。アゼツライトなど、ニューエイジストーンの発掘・普及に貢献してきたアメリカの企業で、業界のリーダー的存在。名も無き石に独自のネーミングを与えることも多く、その反響の大きさゆえ、著名人からの反発の声も聞かれるほどであった。代表でクリスタルヒーラーでもあるロバート・シモンズ氏は親日家として知られる。

余談だが、シモンズ氏はイケメンである。ウインクされ戸惑った経験から考えて、若い頃ヤンチャだった可能性があるが、現在は強力な奥方によって支えられている様子である。


35×28×20mm

2011/09/17

オトゥーナイト/燐灰ウラン鉱


オトゥーナイト/燐灰ウラン鉱
Autunite
Apex mine, Lander Co., Nevada, USA



ウランと聞いて、びっくりされる方もおられると思う。
鉱物であり、天然石/パワーストーンでもあるからして、当然コレクションの対象になる。
欧米には放射性鉱物の愛好家は多い。
こちらもアメリカの放射性鉱物専門コレクター(!)からの流出品。
放射性鉱物の愛好家は、長寿の方が多いらしい。

このように比較的大きさのある雲母状の結晶が密集している標本は珍しい。
母岩とのコントラストも見事である。
ベストクオリティとまではいかないが、大きさといい、インパクトといい、面倒な客を追い返すための最終兵器としての活躍が期待される。

燐灰ウラン鉱は、イエローまたはイエローグリーンの鮮烈な色彩を特徴とし、紫外線で蛍光するため、ウラン系鉱物の中で最も人気が高い。
しかし、その多くはハッキリ言って岩である。
よく見ると、黄色っぽい粒々がくっついている程度。
放射能をきらう日本でも、福島原発の事故以降、放射性鉱物に注目が集まっているが、ほとんどは鑑賞に耐えないものばかり。

放射能による諸問題については全く知識がない。
皆さまのほうがよくご存知かと思うので省略する。

原子力発電や核兵器に使用されるのは、天然のウラン鉱石に含まれる、「ウラン235」という物質らしいが、ウラン全体の10%に満たないという。
残りは劣化ウラン。
数ミリの結晶からわずかに採れるだけというから、枯渇するのは時間の問題か。
ちなみに、「ウラン235」による大爆発は、天然の状態では無い、らしい。

世界一の燐灰ウラン鉱といえばフランス産。
その美しさに惹かれるのも無理はなく、グリーンの燐銅ウラン鉱と並んで、ファンは多い。
ウランそのものの産出も多く、ウラン資源の供給元として知られているだけに、先日のフランスにおける原子力発電所事故発生のニュースは衝撃的だった。

ちなみにこの燐灰ウラン鉱、日本からも産出する。
岡山県苫田郡の人形峠が最も有名。
他に岐阜県土岐市、福岡県福岡市、茨城県霞ヶ浦、山口県柳井市、宮城県伊具郡など。
放射性鉱物としては、前述の人形峠から産出する人形石、岐阜県中津川市のジルコンや秋田県仙北市の北投石などが有名。

東京電力福島第一原発にほど近い、福島県石川町からは閃ウラン鉱が産出する。
皮肉にも戦時中、原子爆弾を作るため、学生らにより採掘が行われていたという。
詳細は下記サイトが詳しい。

http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201106080281.html

自然界とは不思議で、美しすぎるものに毒性があることが少なくない。
大自然からの警告であるといわれているくらい。
放射性鉱物も、例外ではない。
従って、乳幼児が興味を持ち、触れてしまうことも多い。
最悪の事態に備えるのは当然のこと。
収集に当たっては、ご家族の意向も確認し、同意を得てからにしたい。
私の場合は、家族が医学的研究にあたり放射性物質を扱っていた関係で、「今更どうでもいい」ということなので、やりたい放題やらせてもらっている。
ただ、子供の頃から原水爆の恐怖を植えつけられてきた我々日本人は、どうしても感情的になってしまいがち。
大切な標本を、ゴミの日に捨てられてしまうようなことになれば、どうなるか。
役目が終わったからと、パワーストーン感覚で土に埋めるなどの行為は絶対にしてはならない。

なお、パワーストーンとして知られている(?)「ラジウム石」なるものは、閃ウラン鉱や燐灰ウラン鉱を意味するらしいが、本当か。
なにやら超能力者のお墨付きで、「ラジウムストーンを肺へ吸い込んだり、飲用すると効果的」とある。
こうした行為には、死期を早める作用がある。
ホルミシス効果(→ウランガラス参照)のほうも否定されつつある。
自分だけでなく、他人を巻き込むことも考えられるので、知らない間に殺人犯にならぬよう、思い残すことなく成仏していただきたい。


45×33×21mm  46.31g

2011/09/15

スウェディッシュブルー


スウェデッシュブルー
Swedish Blue Slag
Sweden



美しいマーブル模様を示す、空色のストーン。
スウェデッシュ・ブルーと呼ばれている。
14世紀のスウェーデンにおいて、製鉄場から処分された廃棄物が、長い時間を経てガラス質に変化したとされる。
表面には小さな孔がみられることが多い。
天然石ではないが、その美しさと希少性から、秘かに支持を得た。

現在流通しているのは、写真のような研磨品で、カボション・カットが一般的。
入手は極めて難しいとされている。
地中に廃棄されてから500年以上経っており、産出場所の特定が難しく、供給が不安定なのが原因だそうだ。
ただ、幾度となく見かけているので、探せばすぐ手に入ると思う。
また、それほど高価な石ではない。
大きさや質にもよるが、相場は2000~3000円くらい。

発色原因や成分、独特の模様の原因など、詳細については不明とされているが、ここで考察してみたい。
鉄の精製時、熱で溶け液状になった鉄の上部に溜まってできる不純物の層、これがスウェデッシュブルーの元となっていると考えられる物質。
カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、シリカなどで構成されているという。
これらを溶鉄から分離させ、裏山に捨てた。
当初、スカイブルーの色合いはコバルト由来との説を記したが、以下のサイトの内容と照らし合わせると、青色の原因はもしかすると鉄では?

参考:宝石の色と元素との関連について
http://www.art-express.co.jp/column/column/09.6column.html

微量元素としてコバルトが加わることもあると思う。
だが、鉄の精製の過程で鉄が完全に除去されるわけはなく、また当時の技術から考えれば、むしろ残るほうが自然。
美しいブルーの石が大量に発見されなければ、そもそもスウェデッシュブルーなんて名前は付いていなかったし、私のもとに来ることもなかったはずだ。
独特のマーブル模様は、積み上げられた廃棄物が崩れ、さまざまな成分が混ざり合う過程でできたものではないか。
アフリカでタイガーアイがピーターサイトに生まれ変わるように。

実は、スウェデッシュブルーと呼ばれている石には二種類ある。
ひとつは写真にある500年モノのスウェデッシュブルー。
もうひとつは、フローライトに似た透明感のある濃いブルーのガラスで、生成過程は同じだが、18世紀のもの。
当時の記録が残っており、製鉄所のあった場所もわかっているという。
どちらもレアストーンだが、違いは見分けられるようにしておいたほうがいいかも。

Somebody's Trash is Another's Treasure.

ある人にはゴミ、ある人にとっては宝物。
スウェディッシュブルーの醍醐味は、この一言に尽きる。
パワーストーンとしては、非常に霊的であるとされ、潜在能力を引き出し、成功へと導く力があるといわれている。


26×20×4mm  22.85ct

2011/09/12

レコードキーパー


レコードキーパー Record Keeper
Ganesh Himal, Himalayan Mts, Dhading, Nepal



レコードキーパー。
鉱物名ではなく、水晶の特徴を示す用語である。
水晶の先端に浮き出ている(もしくは刻まれている)、△のかたちをした刻印のようなものがそう。
このレコードキーパーに触れ、瞑想すると、古代文明の記憶に導かれ、しかるべきメッセージを得られるという。
また、自らの内面の探求を促し、魂のブロックを取り除き、生まれてきた意味を見出す助けとなって、持つひとのあらゆる可能性を引き出すとされる。
ニューエイジ系のショップでは特別な水晶として扱われ、お値段もかなりのもの。

売り手からすると、非常にやっかいな石。
特にネットショップさんからは愚痴を聞かれることが多い。
私自身かなり難しいと感じた。
売れないのである。
写真でレコードキーパーの魅力を伝えるのは大変なのだ。
なんせこのレコードキーパー、単にカメラを構えただけでは写らない。
うっすらと浮かび上がる模様を忠実に再現するなど、テクニックもカネもない凡人には無理というもの。
画像のピンボケぶりから、なんとなく感じていただけたら有り難い。
レコードキーパー満載の蝕像水晶(注1)である。
トップから柱面、裏側に至るまで、△マークがこれまでかといわんばかりに出ているのだが、写らない。
他の方の健闘ぶりをご覧頂きたいと思う。

お見事 
http://www.ishi-imi.com/vari/record.htm
http://www.occn.zaq.ne.jp/crystal/crystal-garden/gazou/recordkeeper.jpg

苦労してるぞ
http://elders.exblog.jp/13809836/

レコードキーパーといえるか微妙(参考)
http://bodhitree.blog87.fc2.com/blog-entry-402.html
http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/46/0000249946/98/imgde370dcazik0zj.jpeg


レコードキーパーは、実際にショップに赴いて、水晶の山の中から見つけ出すことにしている。
もちろん、パワフルなレコードキーパーをご所望なら、専門店をお勧めする。
私は敢えて鉱物標本店を狙う。
レコードキーパーに付加価値をつけないからだ。
また、レコードキーパー出現率の極めて高い蝕像水晶(注1)は、標本業界ではジャンク品とみなされる。
六角柱に結晶した透明感のある水晶に価値が置かれるため、運がよければ格安で入手できる。
写真のレコードキーパーは、ガネッシュヒマール産の蝕像水晶で、150円(税込)。
むしろ売られていたこと自体が奇跡で、通常は店頭にすら並ばない。
誰もが知っているH鉱物店の方にうっかり見られてしまい、「あー?そういうのって、好みですよね!」とコメントされた、恥ずかしい過去さえある。

ジャンクとはいえ、風水系のショップで絶大な人気を誇るヒマラヤ水晶の代表格、ガネッシュヒマールである。
セルフヒールド(注2)が著しく、ノンダメージ。
人工的に切断された形跡がなければ問題なし。
結晶の至るところにレコードキーパーがバキバキと刻まれ、浮き出ているという珍品。
気に入って窓辺に飾っていたところ、エアコンの工事に来たオッサンが蹴り落とし、ガネッシュヒマールは床に転落した。
ものすごいダメージを食らったが、150円なので仕方ないと笑える。
これがもし15,000円だったら、オッサンごと窓辺から蹴り落とす。

すぐにレコードキーパーが欲しければ、蝕像水晶をあたるのがてっとり早い。
だがネットで買うとなると、価値をわかっている所では高値がつくし、価値を与えない所では商品画像からは確認できない。
独特の構造、不思議な刻印、あり得ない形状。
まだ見たことがないという方がおられたら、店頭で選ばれることをおすすめする。
もう持っているという方は、鉱物標本店に突撃し、お宝探しに励んでいただきたい。
レコードキーパーといえばトライゴーニック
興味のある方はこちらも是非に。



注1)なんらかの物質(熱水やフッ化水素、酸など)の侵食を受け、溶けたようにみえる水晶。エッチングクォーツとも呼ばれる。表面に模様がみられる程度のもの、結晶の形が完全に崩れてしまったものまでさまざま。代表的なものとしては、世界的評価を受けたインドのアイスクリスタル。ブラジルのコリントクォーツ、サラードクォーツなども、女性を中心に人気がある。

注2)水晶がその成長過程で折れるなどして破損することがある。その破損箇所から、新たに別の水晶が成長した結果、ダメージのない水晶が得られる。こうした現象をセルフヒールド(自己修復)と呼ぶ。水晶の自己修復の過程を、人の運命になぞらえ、希望や復活の象徴として扱うもの。代表的な例として、両錐水晶(ダブルターミネイテッドクォーツ/DT)がある。


43×28×20mm  35.9g

2011/09/07

モリオン(広島産黒水晶)


モリオン/黒水晶 Morion 
広島県江田島



今年の2月頃、知人からシトリン(黄水晶)とモリオン(黒水晶)を頼まれた。
聞けば、占い師に、シトリンとモリオンを守護石として持つよう言われたらしい。
天然モノが欲しいとのことだったが、どちらも加工処理して作るのが一般的で、天然モノは希少。
予算内で収まるわけがない。
最近の占い師は恐ろしいと思っていたところ、直後に福島原発の事故発生。
放射能を防ぐパワーストーンとして、モリオンを求める人が後を立たず、ちょっとした騒ぎになったと聞いている。

かつてモリオンは人気がなかった。
その生成過程には、放射能が関わっているとされる。
放射能を嫌う日本人にとっては不気味な存在であり、一般人には手の届かない高級品だったせいもあって、好き好んで集める人は少なかった。
チェルノブイリ原子力発電所近くから、モリオンが大量に発見されるという噂もささやかれたほど(→
ヘリオドール参照)。
これらに科学的根拠はなく、あくまでも噂に過ぎない。
しかしながら、黒い色はもともと、死と深い関わりがあった。
モリオンの語源は、猛毒の朝鮮朝顔からきているといわれている。

モリオン / 黒水晶については産出が少ないせいもあって、まだわかっていないことが多い。
一般的には、長い間地中の放射線に晒された結果、水晶の結晶構造が破壊され、黒くなったものとされている。

わかりやすくいえば、被ばくして細胞が死んじゃった水晶?
産出するのは主にペグマタイトと呼ばれる地質からで、長石などを伴って発見されることが多い。
代表的なのは、岐阜県中津川市の黒水晶。


そんな中、偶然見つけた広島産モリオン。
地図を見て、当然ながら、よからぬことを考えてしまう。
聞けば、最初の発見は60年前。
大東亜戦争のさなか、軍事関係の施設の建設中に最初に見つかったという。
前述のペグマタイトから産出する、一般的な黒水晶で、余計な心配は不要とのこと。
つまり原爆投下とは何の関係もないということだ。


その後、長い間当地から黒水晶は発見されず、半ば忘れられていたらしい。
つい最近になって、現地を散策していた熱心な収集家によって再び発見され、話題になっている。
実に60年ぶりに発見された奇跡の黒水晶である。


60年前ぶりの発見?
終戦が1945年だから、少なくとも2004年には見つかってたってことになるのかな?
複雑な事情があって、それ以上聞けなかった。

モリオンには謎が多い。




60×53×31mm  98.99g

2011/09/04

ハウライト/マグネサイト


ハウライト Howlite
マグネサイト Magnesite
Zimbabwe



ハウライト(ハウ石)。
純粋・崇高・目覚めを象徴するといわれている。
発見者であるカナダの鉱物学者、ヘンリー・ハウ(ヘンリー・カウと一字違いですネ)に因んで命名された。
誰もが知っている、ありふれたパワーストーン。
トルコ石やラピスラズリの偽物として知られる、やっかいで紛らわしい石。

常識は、時に覆される。
もし、実際にハウライトを持っておられるなら、大いに自慢していただきたい。
なぜなら、本物のハウライトは現段階で、容易には入手できない貴重品だからである。
数万する標本も珍しくない。
いったいどういうことか。

実は、ハウライトとして現在流通しているのは、マグネサイト。
見た目はそっくりだが全く違う鉱物である。
どちらも染色が容易く、加工しやすい。
イミテーションの代表格としてきらわれるハウライト・トルコも、マグネサイトを染色したもので、ハウライトやトルコ石とは無関係。
戦後、ハウライトを染色加工した模造品が "亜トルコ石" として流通した名残りなんだそうだ。
ハウライトが次第に入手困難になってきたため、その代用として、安価なマグネサイトが使用されるようになった。

これまでハウライトとされていたビーズやアクセサリーまでもが、イミテーションだったのである。
「真犯人は違うところに隠れていたのね!してやられたわ!」
少しニヤニヤしてしまう衝撃の展開。

先日、大先輩でもあるショップのオーナーさんから、ハウライトを購入した。
この件についてはご存じなかったとのこと、驚きのご様子だった。
さっそく受け取ったのが写真のお品。
つるつるの綺麗なタンブル。
産地はジンバブエ。
ジンバブエからハウライトが出るかどうかを調べていくうちに、ジンバブエ産のマグネサイトにたどりついてしまった。
素人判断で申し訳ないのだが、他の情報と比較・検討した結果、マグネサイトで間違いなさそう。

参考)ハウライトとの混同、類似についての指摘
http://www.purestone.com/index.php?main_page=product_info&products_id=3367

本物のハウライトを確実に手に入れるのであれば、原産地であるアメリカ・カリフォルニア産を探すしかなさそう(→現物と記事はこちら)。
ただしかなり大きく、高価。
今後、加工品も出回るようになるかもしれないので、少し待ってみるのもいいかもしれない。
アメリカ以外にも、カナダから上記のような結晶体として発見される。
カナダ産はダークブラウンの小さな結晶体で、私たちが見慣れたハウライトとは似ても似つかない。

※他にメキシコ、ロシア、トルコなどからも産出がある様子。また、マグネサイトとハウライトが共生して発見されるケースがあるとのこと。(以上、オーナー談)

模造品の問題は深刻だった。
ターコイズ、ラピスラズリのほか、スギライトなどの高価な石が、入荷後に偽物だと判明し、騒ぎが相次いだ。
業者のほうがむしろ大変で、卸元に返品できず在庫を抱えてしまったり、買っていったお客さんに無償で返金を申し出るなど、後始末に追われた。
それが元々なんの石であったかなど、気に留めている余裕すらなかったのかもしれない。
実際に鑑定でハウライトが出たケースは稀だったはず。

オーナーには申し訳ないことをしてしまった。
半ば営業妨害、お世話になった大先輩に対して、やってはいけないことだった。
にも拘らず、オーナーは、私の疑問に対し、さまざまな角度からご見解を示してくださった。
また、ハウライトとマグネサイトの見分け方に関する素晴らしい情報も頂戴している。
さまざまな方のご意見を参照しながら、今後も考察を続けて行きたい。

写真右は、オーナーから譲っていただいた、アメリカ産ターコイズ。
ハウライトは、ホワイト・ターコイズと呼ばれることがある。
これは、現地の先住民に珍重された、滅多に見つかることのない白いターコイズ、つまりハウライトを指しているのだと、どこかで聞いた。
仲良く並ぶこれらの石に、何の罪があろうか。

ビーズなどの販売にあたって、ハウライト=マグネサイトであると明記するショップが増えている。
知名度の都合上、致し方ないのかもしれないが、 "別名マグネサイト" という表記はいかがなものか。
ハウライト/ハウ石 Ca2B5SiO9(OH)5 はケイ酸塩鉱物にして、だいたいカルシウム。
マグネサイト/菱苦土石 MgCO3 のほうは炭酸塩鉱物にして、だいたいマグネシウム。
パワーストーンブーム初期の段階で、既にハウライトは出回っていなかったようなので、見分けがつかないというより、誰もホンモノを見ていないのでわからないということ?


28×20×13mm 10.85g


ご協力いただいた鉱物店オーナー、B様に心より感謝申し上げます。
情報提供有難うございました。

2011/09/03

ロードクロサイト/稲倉石


ロードクロサイト/稲倉石
Roadcrosite/Inakuraishi
北海道古平郡稲倉石鉱山



本来、鉱物店は、流通している標本の中から良品を厳選してストックし、品揃えで勝負する。
このところの傾向として、流出の増えた標本を一気に売ってしまい、在庫がなくなり次第終了、という売り方が増加しているようだ。
こうした傾向がみられるようになったことで、石の価格も下がり、入手も容易になった。
ただ、時期を逃すと、入手は困難になる。
見つかっても、品質が劣るなど条件は悪化、難しい選択を迫られる。

しばらく鉱物の世界から離れていた。
そのため、その間に流通した重要な標本の多くは、出尽くした後だった。
北海道産のロードクロサイト(インカローズ)もその一つ。
国産鉱物の流行で再評価され、素晴らしい標本が数多く出回ったそうだ。
春のミネラルショーで見つけたのは、小さなアクセサリー程度、それもパッとしないものか、逆にとんでもないプレミアが付いた標本だった。

北海道のロードクロサイトの産地といえば然別鉱山、そして世界的にも有名な稲倉石鉱山。
中でも稲倉石鉱山のほうは、美しいロードクロサイトが産出することで古くから知られていた。
稲倉石の名も、標本名として定着している。
海外でも "Inakuraisi" と呼ばれ、評価は高い。

このロードクロサイト/稲倉石は、半ば諦めていた頃に、偶然見つけたもの。
幸運にも、ディーラーさんは地元の方。
信じられない価格で譲っていただいた。
稲倉石鉱山産ロードクロサイトの醍醐味でもある、ブドウ状原石を研磨したものだ。
透明感のある濃いピンク色の結晶で、幾層にも重なった縞模様が美しい。

ロードクロサイトと聞いて、南米アルゼンチン・ペルーのインカローズを思い起こす方は多いと思う。
それらの持つ華やかさ、 "パッションローズ" と称される大胆で情熱的な容姿。
稲倉石鉱山のロードクロサイトにもみられるが、この標本に関してコメントするなら、ハッキリ言って地味。
じっくり見ていただきたい。
ブラウンを帯びた深い色合いや、墨を流したような優美な模様、凛とした佇まい。
喩えるなら、ラテン系美人と大和撫子。
同じ鉱物でも、産地や加工方法によって、まったく雰囲気が異なってくる。
それぞれの持ち味を楽しみたい。

稲倉石鉱山の操業開始は、明治18年。
金、銀、銅、マンガンなどを産出し、その実績は全国に知れわたるほどであった。
同時に発見されるロードクロサイトは、アクセサリーに加工されるなどして珍重されたらしい。
コレクションも盛んだったようで、操業当時の標本が現存している。
1984年(昭和59年)に鉱山が閉山されてからは、立ち入りが難しくなっているとのこと。
また、良質なロードクロサイトはほとんど採れなくなったといわれている。

写真の石はオールドストック、昭和59年の閉山まで鉱山に関わっていた人物のコレクションだったという。
具体的な年代は不明とのことだが、昭和30~50年代に採取されたものだろう。
閉山から30年近く経っており、ご本人が現在どうされているかはわからない。
稲倉石鉱山の全盛期、そして時代とともに衰退していくさまを最後まで見守られた。
このロードクロサイトもまた同じ。
石がそれを記憶しているならば、聞いてみたいものだ。
残念ながら、私にそんな能力はないのだけれど。

ちなみに現地では、稲倉石は身近な存在で、日常風景の一部と化しているらしい。
街の飲食店の入り口に、巨大な原石がドスーンと置かれているとのこと。
北海道はスケールがでかい。

ロードクロサイト、インカローズの人気は高い。
南米アルゼンチン、ペルー以外にも、続々と新しい産地が見つかっている。
近年、アメリカ・コロラド州のSweet Home鉱山から、ジェムクォリティ(宝石質)のロードクロサイトが発見され話題になった。
また、今年のツーソンショーでは、新たに中国から発見されたロードクロサイトが注目を集めた。
Sweet Home鉱山のほうは2004年に閉山しているが、中国からはそれらに匹敵するトップ・グレードの結晶が多く出ているらしい。
絶産したとの噂を聞いて久しい、元祖(?)アルゼンチン産インカローズについては、またの機会に紹介させていただけたらと思う(→ココに概要だけまとめました)。

 
30×28×11mm  20.12g

2011/09/01

バストネサイト


バストネサイト Bastnasite
Zagi Mountain, Mulla Ghori, Khyber Agency, FATA, Pakistan



セリウムやランタンなどのレアアースを含む希少石、バストネサイト。
特にパキスタンのザギマウンテンからは、ジェムクォリティ(宝石質)の原石が産出することで知られている。


こちらは宝石質とはいえないが、比較的大きさがあり、結晶形の美しさが際立つ標本。
透明度の高いライト・ブラウンの結晶は、収集家の間で非常に人気があり、カットされるなどして流通している。
ちなみに放射性鉱物である。
放射能濃度は40Bq/g~50Bq/g程度。

鉱物の世界に興味を抱き始めた頃、希少石をこよなく愛する大先輩に出会った。
私を「レアストーンハンターうさこふ」と命名してくださった人物である。
いかなるジャンルであれ、コレクターは頑固で近寄りがたく、若輩者に厳しいもの。
しかし師匠は、まるで好奇心旺盛な冒険家のようであった。
その方から最初に譲っていただいたのが、当時究極のレアストーンといわれていたペイナイト。
そしてこのバストネサイトだった。
一目見て夢中になった。
当時は資料などなく、調べてもよくわからなかった。

放射性鉱物の収集は欧米、特にヨーロッパでは盛んである。
しかし、放射能アレルギーが蔓延する日本においては少数派であった。
福島原発事故以降、閃ウラン鉱など、これまで避けられることの多かった本格的な放射性鉱物が大いに売れており、鉱物店に問い合わせが相次いでいるそうだ。
実に素晴らしいことである。
ガイガーカウンターと併せて楽しみたい。

ペイナイト、バストネサイトともに、ここ数年でずいぶん身近な存在となった。
もはや究極のレアストーンと呼ぶことはできないだろう。
師匠は今どこで何をしておられるだろうか。
譲っていただいた希少石の数々は、倉庫のどこかにあるはず、探してみようと思う。



【パワーストーンのブレスレットによる被爆データ】

ジルコンも取り上げられているんですが、内容としてはつまらんです。
そもそもサンプルを取る段階で偏りが生じているのでは?
いっそ、パワーストーンに人類の負の遺産が凝縮されていることに言及してほしかった。
参考程度にどうぞ。



24×12×11mm  7.6g

2011/08/28

サファーリン


サファーリン Sapphirine
Kolonne, Sabaragamuwa Province, Sri Lanka



サファーリン、サファリン。
知る人ぞ知る希少石のひとつ。
主にスリランカ、タンザニアから発見される、ジェムクオリティ(宝石質)の原石がカットされ、流通している。
発見から200年近く経っているが、これまでに報告された最も大きなカットストーンは8ct(1.6g)程度であるといわれている。
多くは、落としたら二度と出てこないであろうミクロサイズ。
相場は1ctあたり一万円程度。
希少な割にお買い得だといえる。

サファイアのようにみえることがその名の由来だそうだが、カラーチェンジ・ガーネット(注1)に似た、ややグリーンを帯びたダーク・ブルーの色合いが一般的。
ずっとガーネットの一種だと思い込んでいた。
実際、成分はカラーチェンジ・ガーネット(正確にはパイロープ)に近いらしい。

注1)白熱光により青から赤紫に色変化を起こす、代表的なカラーチェンジ・ガーネット。かつてスリランカからも産出した。現在はマダガスカル産が中心。アレキサンドライトの色変化に似ていることから、アレキ・タイプとも呼ばれる。

初めてこのカットストーンを見たときには、なんじゃこりゃと思った。
色合いが明るすぎる。
明らかにガーネットではない…ことにようやく気づいた。
写真は、直射日光の下で撮影。
サファイアのようなブルーが美しい。
タンザニア産にはみられる色で、最近になって、スリランカからもこうした質の高い原石が出るようになったそうだ。
以前より見かける機会が増えたので、産出も増えたのかもしれない。
ネットでは、皆が皆「ほとんどの人は知らない石」として、紹介している。
それだけが取り得ではなかろうに。

サファーリンには多色性があり、写真にもイエローやパープルが映り込んでいた。
実際、イエローやパープル、また赤いサファーリンも存在するらしい。
産地も多様。
標本クラスの原石は主にマダガスカルやグリーンランド、そして南極大陸からも発見されている。
南極では、ダイヤモンド入りの隕石をはじめ、レアストーンが多く出ているようなので、勇敢なレアストーンハンターは、是非とも訪れていただきたい。
適当に岩石を拾い、ゴンドワナイト、ローラシアイト、パンゲアイトなどと名づけ、隠された神秘のハイエナジー・ストーンとして売り出すのもオススメ。
いいや、もう既にあったりするかもしれない。


0.18ct

2011/08/23

アンダラクリスタル


アンダラクリスタル
Andara Crystal
Sierra Nevada, Mt. Shasta Region, USA



存在感極まりない不思議な物体。
オブシディアンの一種であるが、その正体は謎に包まれている。
1967年、レディ・ネリーという女性により発見された。
なんでも、地中から突然出現したらしい。
ローマングラスのような、年代が特定できる近い過去の遺産とは異なる特殊なクリスタルで、ニューエイジ方面にて絶大なる支持を受けている。
現在流通しているのは、ネリーランドと呼ばれる彼女の私有地で、ひとつひとつ拾い集められたもの。
その数は非常に少ないといわれている。

アンダラクリスタルには、写真のクリア(オラクル)のほか、グリーン、ブルー、イエロー、ブラウン、シャンパン、アンバー、シーフォーム、ルミネッセント各種など、さまざまな色合いがある。
それぞれ用途は違うので、興味があれば調べていただきたい。
私が初めて手にしたのは、グリーンアンダラ。
超能力に関心のあるお客さんが増えてきたので、試しに注文した。
正規のルートで入れたのだが、ジュースの瓶の破片のような、毒々しいグリーンに吐き気を催し、段ボール内に封印した。
その後、どうしても欲しいという方が現れたので探したが、未だに発見されない。
儲ける気など毛頭ないのだから、出てきてくれてもいいんじゃないかと思うが、私が激しく抵抗感を示したのがいけなかったのだろうか。

今思うと、そのグリーンアンダラはおそらくシエラネバダ産ではなくインドネシア産だったのではないかと思う
注文する時に間違えたのかもしれない。
アンダラクリスタルには、シエラネバダ産以外にインドネシア産がある。
インドネシア産は色味が強く、天然石を見慣れた人には抵抗があるかもしれない。

※後日談:あれほど探したのに出てこなかったグリーンアンダラでしたが、これを入手した後、実家に帰ったら一発で見つかりました。シエラネバダ産に間違いなさそう。手にするのが早すぎたのかもしれません。

かつてアンダラクリスタルは、世界中のクリスタルヒーラーに注目されていた。
需要に供給が追いつかなかった。
小さなものでも一万円を超えていた。
故に、偽アンダラなるものが大量に出回った。
人工ガラスの製作に関しては世界一の腕前といわれる中華が、アンダラの流行を見逃すわけがない。
世界各国のオークションや通販サイトで、争いは繰り広げられた。
しかしながら、巨大すぎて違和感満載だったり、あり得ない色をしていたり、商品画像の背景が香港チックな怪しいビルであったりと、特に霊能力がない人でも一瞬で判別できる単純明快さがあった。

現在は技術が格段に向上し、難しい時代になった。
リスクのあるものに手を出すときは、初めは正規のルートで買うのが原則。
ヴィトンも初心者は直営店へ出向くべし。
本物を見たことがないのに、偽物を見抜けるわけがない。
アンダラのコピーが未だに流通している。
もしあなたが売り手なら、取り返しのつかないことになる。

3年前、思うところあってブルーアンダラを入手した。
グリーンとはまるで違った。
本当に美しかった。
何かしようと思った。
そこで、ずうずうしくも、世界最大のミネラルショー、アリゾナ・ツーソンショーに行くことにした。
飛行機のチケットやゲストハウスの予約はすぐ済んだが、よくよく考えるとショーまで1ヶ月半をきっていた。
もし行けなかったらショックで立ち直れず、最悪入院だったろう。
アンダラのおかげだと言えた立場ではないが、きっかけを頂いたことには大いに感謝する。

ネリー氏はその翌年、98歳でこの世を去った。
それを知って、彼女の面影の残った最後のアンダラを、手元に置かせてもらおうと思った。
写真のクリア(オラクル)がそう。
ネリー氏の事実上の後継者の一人に直接選んでいただいた。
瞑想に向いているらしいので愛用している。
一番好きなのはコレかな。

ちなみに、ネリー氏はおそらく見ることのなかったであろう、コズミックブラックと呼ばれる黒いアンダラが新たに発表されている。
手に取った感じ、これまでのようなガラス質ではなく、粘土質なんだろうか、鉱石の質感。
私は好きだが、好みは分かれそうだ。

お会いすることはなかったが、ネリー氏の一貫したところ、能力を売りにせず、物事に誠実に取り組む姿勢が感じられるところには、マリア・サビーナの如きインパクトを得たし、尊敬していた。
あのサイババからのオファーも快く受けたそうだ。
ネリー氏を囲む人々は、正直あまり好きではなかった。
彼女亡き後、厳しい時代が来るだろう。
ニューエイジャーたちに異変が起きている。
いったい何があったのだろう。

アンダラクリスタル。
古代の人々が使用していた聖なるクリスタルで、その後25万年もの間、地中でその日を待っていた。
クリスタルヒーリングには必須、また超能力の目覚め、人生の方向転換や魂のレベルアップを支えるほか、アセンションとも深く関わっているという。
ちなみに、持つ人を選ぶらしい。
欲しくなった?
あげない。


37×28×24mm  20.95g

2011/08/19

ブルールチル


ブルールチル
Tourmalinated Quartz
Jenipapo, Minas Gerais, Brazil



インディゴライト(ブルートルマリン)の藍色の針を内包する水晶。
ブルークォーツ、インディゴライト入り水晶、インディゴライト・イン・クォーツ、トルマリネイテッド・クォーツ、青針水晶などと呼ばれている。

現在、パワーストーンとして定着している「ブルールチル」の名は愛称。
皆様もご存知かと思うが、ルチルは鉱物名であり、青いルチルは存在しない(→ルチルの原石についての考察)。
ルチルクォーツの知名度が上がりすぎたために、水晶に含まれる針状インクルージョンを、総じてルチルと呼ぶようになった。
流通し始めた当初は、「ブルールチル」という呼び名は鉱物学的に誤りであるとの批判が相次いだ。
ここで今一度、ブルールチルという存在の意味について考えてみたい。

本文下の写真にあるビーズは、手持ちのブルールチル。
ごく初期に出回ったもので、先日確認したら、予想以上に手元に残っていた。
撮影のさい光源の関係で、一部に色ムラが出てしまったが、実物はきわめて透明度の高い綺麗なビーズ。
まだ販売されているのを見たことがない段階で決断を迫られ、私なりに賭けに出た。

メチャクチャ売れた。
必死すぎるくらい売れた。
現在、まだ半連以上残っているということは、途中からどうでもよくなったんであろうと思われる。
数が少ないために、当初枯渇は時間の問題だといわれていた。
しかし現在もなお、ブルールチルのブレスは人気商品として定着している。

写真の石は、ブルークォーツとして今年購入した。
藍色のインディゴライトの針が内包された、いわばビーズに加工される前の原石。
こうした標本の流通が増えており、相場は下落している模様。
こちらのエレスチャル状結晶のほか、エッチングの入ったもの(蝕像水晶)、なぜか加工用大原石も格安で販売されていたので購入した。
ブレスには、それらの原石の100倍近い値段が付いている。
なんと、ホームレスの行き交う大阪市N成区の違法露店でも、ブルールチルが売れ筋だというからたいしたものだ。
白濁した、青い針も満足に見えない玉を使ったブレスでさえ、いいお値段で販売されている。
あれはさすがにどうかと思う。
また、アクチノライトを内包した青緑色や青灰色の水晶もブルールチルとして扱われているようだが、原価が全く違うのだから、一緒にするべきではない。
では、なぜブレスと原石の評価に、ここまで差が開いてしまったのだろう。

ルチルクォーツが爆発的ヒットを飛ばしたのを覚えておられるだろうか。
誰もがルチルのブレスを手に入れた。
ゴールド・シルバーカラーのルチルだけでは、いずれ飽きられてしまうから、先手を打たなければ折角の市場が台無しになってしまう。
そこで、ユニクロの如く、さまざまなカラーのルチルを取り揃え、幅広い層にアピールしてしまおうとする声があがった(想像)。

ゴールド・シルバーに続くのは、ブラックルチル、グリーンルチル、レッドルチル、ホワイトルチル。
加えてやや入手の難しいプラチナルチル、オレンジルチルなど。
最後に最も入手困難な激レアカラー、ブルールチルをプレミア価格にて販売。
消費者は誰よりも素晴らしいブレスを手に入れるため、躍起になる。
ルチルで金運UPを期待するのはもう時代遅れ?

そんなわけで、ルチルじゃなくて!トルマリンとかアンフィボールとかだ!などと騒いでいた標本業界は、パワーストーン業界に遅れを取ってしまった。
価格の暴落の意味するところ、それは石に対するこだわりが過ぎた結果ではないだろうか。
めちゃくちゃ適当な推測なので、本気にしないでいただきたい。

ブルールチル、若しくはインディゴライト入り水晶。
どちらの表記のショップで買い求めるかについては、目的によって選び分けたい。
幸せになれるのなら死んでもいいというあなたは前者、石さえあれば(以下同文)後者がおすすめだ。




40×23×21mm  22.18g

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What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?