2011/10/07

サラードクォーツ


サラードクォーツ Sarado Quartz
Diamantina, Minas Gerais, Brazil



サラードクォーツ。値札つき。
蝕像水晶(→レコードキーパーの項、注1参照)の一種。
角が溶けて丸くなっているのが特徴だろうか。
サラードは地名ではなく、現地の言葉で「回復」という意味。
透明感のある爽やかな水晶に、ビシビシと刻まれた侵食の跡が強烈である。
今でこそ価値を認められたサラードクォーツだが、価値がわからなければ「少し変わった水晶」でしかない。
そのため、こちらのサラードクォーツも、最近まで当家において不当な扱いを受けていた。

出会いは4年ほど前、某ミネラルショーにて。
無造作に並べられた水晶の山の中に、コレがあった。
ブースには、ぶっきらぼうな中年女性が2人。

「コレ、何の石ですか?」
「水晶です」
「面白い形ですね」
「パワーあるわよ」
「どんなパワーがあるのですか?」
「…」
「おいくらですか?」
「3000円」
「何か、意味があるのですか?」
「お買い得だと思うわよ」

やる気が全く感じられない。
ヒーリングストーンの知識にかけては半端ないはずの連れも、まったく興味のない様子。
つまるところ、誰にも価値がわからない。
この名も無きクリスタルに、3000円を投じるべきか否か。
今を逃すと後悔する、そう直感した。

そしてこの「謎の水晶」は、我が家の倉庫に奉納された。
たまに見かけて、手に取る程度。
そうして、4年が経った。

今年の夏、サラードクォーツなるものをネットで見かけ、興味を持った。
さっそく注文した翌日の晩、立ち寄った実家で写真の石と再会した。
目を疑った。
ネットで見たものと、全く同じではないか。
Saradoというラベルまで貼ってある(貼りっぱなし)から、間違いない。
ようやっと正体が判明し、日の目を見ることになったサラードクォーツ。
あの頃はまだ蝕像水晶という言葉は一般的ではなく、アイスクリスタルも流通し始めたばかりで、先のミネラルショーで出会ったお店の方もご存じなかったのだろう。

ネットショップさんには、あわててキャンセルをお願いした。
お店の方にはご迷惑をおかけしたが、入金前だったのが幸いし、キャンセルをお許しいただいた。
実家には半年に一度寄る程度。
このタイミングでの再会も、何かのご縁ということか。

帰宅後、調べてみた。
ディアマンティーナ産の蝕像水晶を、総じてサラードクォーツと呼んでいるようである。
ネットショップで見かけたものは、手持ちのサラードクォーツと同じ、角が溶けて丸くなっているタイプだった。
諸説あるのかもしれない。

水晶の名産地・ブラジルでは、どんな個性的な水晶にも愛称を与え、お守りにする習慣があるようだ。
日本人にはわかりづらい感覚かもしれない。
こうして今、サラードクォーツが評価されているのは、とても嬉しい。
一部が削れてしまっているのは、私のいい加減な保管によるもの。
床に置くのはやめ、箱にしまった。
付加価値を考慮せず、直感だけで購入した水晶に価値がわかることは滅多にないから、不思議な偶然に驚いている。


81×30×26mm  77.3g

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