2011/10/14

パープライト


パープライト Purpurite
Usakos, Karibib District, Erongo Region, Namibia



パープライト。
ビロードのようになめらかな光沢と、深みのある赤紫色を特徴とする。
加工には向かず、宝石やビーズでは殆ど流通しないとされている。

近年、人気の高まりとともに、ビーズなどでも見かけるようになった。
パープライトは非常にもろく、こすると色移りする性質がある。
何らかの処理はなされているはず。
意外かもしれないけれど、現在流通しているパープライトは、そのほとんどが処理されたもの。
写真の原石にみられるメタリック・パープルの輝きも、酸処理に因るものである。

ある日、街を歩いていると、道端にビニールシートを広げ、石を売っている青年に出会った。
路頭に迷っているところを親切な人に救われ、石を安価で譲り受け、生計を立てているという。
並べられている石の中に、パープライトがあった。
彼はパープライトが処理されたものであることを知っていた。

私に鉱物の世界を教えてくださった女性がいる。
路上で倒れていた私に声を掛けてくださった。
一杯のコーヒーをご馳走になり、旦那様の経営する鉱物店へ案内していただいた。
鉱物の販売に携わるようになったさいには、卸先としてお世話になった。
のちにその男性が、鉱物業界では名の知れた人物であることを知る。
私は運がいいとつくづく思う。
当時の私は、抜け殻に等しかった。
全てを奪われ、もはや生きる気力すらも枯れ果てて、何も残ってはいなかったから。

嫌な予感がした。
その青年に、その時の女性を知っているかどうか尋ねたところ、やはりというかそうだった。
世の中は狭い。
彼いわく、その女性から譲られた石を路上で販売しているとのこと。
路上での物品販売は違法である。
恩を仇で返す行為ではないか。
複雑な思いだった。

ちなみに、パープライトの産地として最も有名なのは、ナミビアのウサコス鉱山。
こちらの標本もウサコスからやって来たもの。
素敵なネーミング…
などと反応するのは、私だけだろうけど。
元ヒッピーである某鉱物店の社長さんに、ウサコスへ連れて行って欲しいと頼んだことがある。
「無理」と言われた。
ウサコスがどんなところか検索してみたら、こんなのとかこんなのとかこんなのが出てきた。
ちょっと無理かもしれないと思った。

宇宙とのつながりが語られることの多いパープライト(注1)。
神秘性、高貴さを象徴とし、想像力や理解力を高める力があるそうだ。
支配や束縛からの開放を促し、新しい世界への旅立ちを支えるともいわれている。


29×18×17mm  10.2g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?