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2012/08/08

紫金石(ゴールドストーン)


紫金石 Purple Goldstone
found in Iran



天然石ビーズに価値がおかれる風潮の中、人工物はあまり好まれない。
もともと、宝石やビーズは人の手でつくられることも多かった。
子供の頃はお小遣いがなかったから、おつかいのご褒美に得たおつりを貯めて、手芸店でビーズを買っては、その色合いを楽しんでいた。
グラスビーズをワイヤーで編んで、よく小物を作ったものだ。
色が足りないから作れない、だから大人になったらあらゆる色を揃えたい。
そんな子供だった。
世界中の天然石を用いたビーズが手に入ることになるなど、想像もつかなかった。
しかしながら、天然石ブームに乗じて、安価な人工石が不当な価値を与えられ、天然石として流通した。
これを危惧した人々の良心のおかげで、我々は正しい知識のもと、石と接することができるようになった。

天然石とされ市場に混乱を招いた石のひとつに、紫金石(パープル・ゴールドストーン、アヴェンチュリンガラス)がある。
茶金石もそれに同じ。
微細な銅の反射により、宇宙のような光景が広がる美しい石である。
パープルの場合はコバルトまたはマンガンに因る発色で、いずれもガラスと銅などの金属を高熱で溶かし、特殊な技術を用いて造られている。
今やそれが人工ガラスであることは誰もが知るところであるが、かつてはチェリークォーツのように天然石として販売されていた。
そのため、現在は避けられる傾向にある。

プロフィールにも記したが、私が初めて石と出会ったとき、気に入って購入したのはこの紫金石であった。
というのも、石に対する知識が全くなかったのだ。
友人に電話で石の名前を訊ねてアメジストではないかと言われ、長い間アメジストだと信じていたほどである。
興味がなかったわけではない。
改めて告白すると、私は幼少期から、いわゆるスピリチュアリズムに興味があった。
大人になるにつれて、世界中でそうした概念が都合よく解釈されていることを知る。
神秘主義や霊的能力を悪用し、人々を苦しめ死に至らせた人々がいることを知る。
絶望した。
だから、私はそれを封印した。
ニューエイジの人々がクリスタルを愛でていることは、学生時代から知っていた。
あえて近づかなかったのは、私を育ててくれた祖父が水石の収集家だったから。
幼い頃、祖父が石を磨く姿に憧れて、その様子を眺めていた。
祖父は私が14歳のとき亡くなった。
祖父が愛したライカのカメラは売却され、価値の無いものとみなされた石だけが残った。
私は石には関わらないと心に決めたのはその頃だ。

それから何年も経ったある日、道端で倒れていた私を助けてくださった女性が、私を石の世界へ導いてくださった。
アジアをウロウロするバックパッカー(→詳細はこちら)だった私が就職し、真面目に生きようと考えていた矢先、事件に巻き込まれた。
私は何もかもを失った。
かつて出合ったインドの神々は嘘だったものと絶望した。
その女性は神を信じていた。
ところが、鉱物標本店を営む彼女の旦那様は、神など信じていないようにみえた。
アメジストはどんな石なのですか?
ワクワクしながらそう聞いたら「鉄イオンが関連した…」という非常に適切なお答えが返ってきた。
祖父を思い出した。
私は失った宝物の代わりに、この人物から鉱物の世界を学ぼう!と決意した。

しかしながら、当時はよくわからなかったので、紫金石を購入して帰った。
結果的に鉱物が好きになりすぎてしまうのだが、もともと凝り性なので仕方ない。
最近になって社長から聞いたのだが、夫妻は私が自殺を図ろうとしているものと思って、お忙しい中、私を助けてくださったということであった。

ゴールドストーンは、17世紀にヴェネツィアで開発された宝石である。
現在もヴィンテージの宝飾品が高額で取引されている。
修道院において、或いは錬金術師が偶然に発見した、というのは事実ではないとされている。
中国や香港で量産されたために、どれも同じに見えるが、実は品質にも差異があり、ヴィンテージの紫金石と比較すればその差は明らかである。

近年注目されているアヴェンチュレッセンス(→わかりやすい例)の名は、紫金石の輝きから来ているという。
写真はアンティークの紫金石で、イランで発見されたもの。
イスラム教の儀式に用いられたとされる。
もともとヨーロッパで造られたものかもしれないが、年代など詳細についてはわからない。
既存のガラスを溶かして再利用してしまうケースもあり、質は落ちている。
ブログに記すことはおそらくないだろうと思っていたが、思うところあって、ご紹介させていただく。
この石には、古くから人々を魅了してきた宇宙がある。





最後に、日本のパワーストーン業界における正しい知識と意識の拡散に貢献された、KURO@VOIDさまにお礼を申し上げ、今後の活躍をお祈りするとともに、私の誤解や間違いを正してくださったことに感謝を込めて、勝手ながらリンクをご紹介させていたきます。
恥ずかしながら、ようやく紫金石の正体を知ったのは、氏のブログにおける記事でした。
なお、KUROさんは自分にとって大先輩にあたり、立場は全く異なること、氏は私のブログをご存じないこと、また私自身、現在は拝見するのを控えていることを何卒ご理解、ご了承願います。
KUROさんの今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。


http://voidmark.fc2web.com/


直径40mm  82.36g

2012/08/05

ピンクペタライト


ピンクペタライト
Pink Petalite
Karibib District, Erongo, Namibia



サクサク、フワフワ。
お茶うけに出てきそうなピンクのこの石は、ヒーリングストーンとして高い人気を誇るペタライト(ぺタル石/葉長石)。
ブラジルから産出する無色透明の結晶が有名だが、稀に不透明なピンクの塊となって発見されることがある。
写真は、ペタライトの名を知って間もない頃に入手した大きな原石。
表面の様子(劈開・へきかい)や鈍いガラス光沢に、ペタライトの特徴が現れている。
四角く切断されているため元の形についてはわからない。
いっぽうで、風化が進みやすいのか、2面は色あせてしまっている。
時間が経つと黄ばんでくる(?)ことが多いのも対応に困るところ。
ゴールデンヒーラーと呼んでしまう人も現れそうだ。

ペタライトはリチウムの発見に貢献したとされる鉱物。
精神科では安定剤として、陶芸の世界では素材の強化に使われるなど、リチウム資源としての用途は幅広い。
クリスタルヒーリングの分野では、天使の祝福を受けた石とされ、人気は依然として高い。
かつて白だと思われていたペタライトにピンクがあるとわかったとき、誰もが飛びついた。
初期には透明結晶を含む巨大なピンクペタライトが流通した。
現在はタンブルやビーズが主流となっている様子である。
いったん磨かれてしまうと、ペタライトかどうかを見分けるのは至難の業。
ローズクォーツやモルガナイトだと言われてもわからない。
華々しいチェリーピンクに染色されたとみられる怪しいペタライトも登場している。

ピンクペタライトの産地に関しては、かねてからの疑問であった。
加工品の表記はブラジルであったり、アフリカ(のどこか)であったり、アフガニスタンであったりと、アバウトな印象が拭えない。
さらに、中国の新疆ウイグル自治区からピンクペタライトが発見されているという。
現地は隠れた鉱物の名産地。
きな臭い噂の絶えない彼の地に、素晴らしい鉱物が数多く眠っている。

推測の域を出ないが、タンブルやビーズなどで僅かに流通しているのは、新疆ウイグル自治区から出たものかもしれない。
数年前から話には聞いていた。
中国産のペタライト標本が見当たらないところを見ると、既に加工にまわされてしまった可能性もある。
この原石に関しては、ナミビア産との表記に従うこととする。

ペタライトにはさまざまな色合いがある。
無色透明、ピンク、イエローのほかに、青や薄紫、オレンジなども。
ミャンマーからはゴールドに輝くペタライトが発見され、愛好家の間で珍重されている。
ありふれた、それでいて個性豊かな、ここ日本からも産出するペタライトの魅力は計り知れない。


40×38×36mm  90.97g

2012/07/25

ストロマトライト


ストロマトライト
Stromatolite
Sevaruyo, Eduardo Avaroa, Oruro department, Bolivia



太古の昔、地球の大気は二酸化炭素で占められていた。
ストロマトライトとは、30億年もの昔に生息していたシアノバクテリアと呼ばれる藍藻類の一種。
地球上に初めて酸素を供給した生物として知られている。
この石の独特の模様は、シアノバクテリアと海中の蓄積物が化石化し、層を成したもの。
厳密には、化石ではなく岩石の扱いとなる。
化石類についてはまだわかっていないことが多いが、ストロマトライトも例外ではない。
30億年前のそれとは異なる、27億年前に登場したシアノバクテリアが地球環境に変化をもたらしたという説が有力となっている。
1億年違うというだけで相当な時間が宙に浮く。
まさに気の遠くなるような話。

ストロマトライトはいわば生命の起源となる存在。
シアノバクテリアの光合成によって増加した酸素により、オゾン層が形成され、生命が陸へ上がる条件が整っていったと考えられている。
生命の創造主としてストロマトライトを神聖視するのは、西洋におけるキリスト教の価値観の影響によるものだろう。
キリスト教においては、神が生命を創り、人々を高みへと導き、時に厳しく裁きを下すということになっている。
日本人の考える神様とは少し事情が異なる点、押さえておきたい。

ストロマトライトがヒーリングストーンとして注目を集めたのもその流れ。
スーパーセブンでお馴染みの、メロディ氏が著書で取り上げた。
化石全般に言えることだが、ストロマトライトは外観としては地味であり、どちらかというと不気味である。
そんな岩石が、パワーストーンを支持する女性層の心をつかんだ理由は、生命の誕生というキーワードとクリスタルヒーラーの声、そして形状ではないかと私は考えている。
小さくカットされ、タンブルになったストロマトライトは、かわいい。
ポーチに入れて持ち歩きたくなる。
しかし、化石標本として並べられているストロマトライトにかわいさは微塵も無い。
かわいさが功を奏して、小さなストロマトライトが太古のメッセージを宿したクリスタルとして大流行…したような気がするのである。

さて、Wikipediaのストロマトライトの項では、非常に地味な泥の塊としてのありのままのストロマトライトを存分に参照することができる。
これは一体何事か(→写真

参考資料:

1)オーストラリアの西オーストラリア州ハメリンプールに発達するストロマトライト
2)同じくハメリンプール・シャークベイのストロマトライト群がまるで地蔵群
3)群馬県立自然史博物館のストロマトライトの模型にロマンをかきたてられている様子の筆者
4)ストロマトライトの唄



生きた化石として現代に君臨するストロマトライト。
生物が陸に上がったのち、高等生命の餌食となりながらも、たくましく生き延びている。
そんなストロマトライトと生命の起源については、目下研究が進められている段階。
素人が論ずるのは憚られるから、詳細については上記のサイトや論文などを参考にしていただきたい。
ロマンを愛でる男性方には魅力的な存在に違いない。
しかしながら西オーストラリアでその雄姿を見届けるのは、私には難しい。
できることなら、写真にあるようなかわいいストロマトライトに神秘を準え、太古のメッセージに酔いしれたいものである。

なお、今年80歳になる私の父親は、ストロマトライトを見て、怖ろしい殺人蜂の巣が脳裏をよぎったという。
以降、当家において、この石を居間に放置することは固く禁じられている。


22×15×14mm  11.02g

2012/07/24

ヒマラヤレッドアゼツライト


ヒマラヤレッドアゼツライト
Unofficial Himalaya Red Azeztulite
Himalaya Mts., India



Heaven&Earth社から発表された新しいアゼツライト、ヒマラヤレッドアゼツ。
ヒマラヤゴールドアゼツと同じ、インド北部の山地から発見されたといわれている。
ぱっと見て、おかしいと思ったあなたは通の人。
どこがおかしいか。
ペンデュラムに加工されたこの石は、ヒマラヤレッドアゼツと同じもの。
しかし、H&E社のカタログにはない。

アゼツライトは石の名前だと考えている人も多いかもしれない。
正確には、H&E社とその代表であるロバート・シモンズ氏が発掘し、普及を手がけた商品の名称である(詳細はこちら)。
ご縁を頂戴した方から、日本の能力者により独自にアレンジされたアゼツライトが出回っているというお話を伺った。
アゼツライトの価値の認定及び加工、流通、販売等は全てシモンズ氏の管理下にある。
無関係な人が販売することでさらなる付加価値がつくというのは疑問が残る。
販売者に求められるのは、流通過程においていかに本来の魅力を損なわず、本物のアゼツライトを消費者に届けるかということではないだろうか。

では、カタログにないこの "ヒマラヤレッドアゼツ" の正体はというと、やはり全く同じものである。
シモンズ氏に原石を卸している業者が関係しているというが、言及は控える。
先日、参考までに購入した。
本国アメリカ産出のアゼツライトは、H&E社より厳しく管理されているが、インドのほうは無防備になりがち。
何らかの手違いにより加工された製品が、"ヒマラヤレッドアゼツライト" として流出したものとみられる。
ヒマラヤゴールドアゼツライトについても、まったく同じイエローの石が裏で取引されているのを目撃している。
価格としては微々たるもの。

このところ、石に独自の価値をつけて高値で販売するというH&E社の手法を真似た日本人業者が目につく。
ブレスなどの製品は出処と原価がある程度わかってしまうから、どうしてそれほどまでの過剰な利益が必要なのかと、驚かされることも多い。
H&E社製品でなければ価値のつかなかったものを、目的はなんであれ利用するのは危険なこと。
ただ一瞬の評価のために人の道を誤り、多くの人を悲しませるというのがパワーストーンの使い途だったか。
石は人の幸せを願うためにあったはず。
自分がやったことは、必ず返ってくる。
取り返しのつかないことになる前に、そのことを思い出してほしい。


2012/06/28

スモーキーアメジスト(ハレルヤクォーツ)


スモーキーアメジスト
Morion, Smoky Amethyst
Royal Scepter Mine, Hallelujah Junction, Washoe Co., Nevada, USA



スモーキークォーツ、アメジスト、シトリン、クリアクォーツ、そしてモリオン。
5つの色合いが混在した豪華な標本。
エレスチャル、もしくはジャカレーなどと呼ばれる複雑で変化に富む結晶構造を示し、かつ圧倒的な透明感を誇る。
切断面のほとんどみられない完全な結晶体で、結晶の至るところに水晶のさまざまな形態が観察できる。
300g近い本体の至るところにちりばめられた結晶の数々。
いくら眺めていても興味は尽きること無いが、重い。
このような歴史的コレクションがさかんに取引されるのも、歴代の鉱物ハンターを英雄に位置づけるアメリカならでは。

ロイヤル・セプター鉱山は、その名の通り、見事なセプタークォーツ(松茸水晶)を数多く産出する。
スモーキーの色合いが多いようだが、写真の標本から想像できるように、なんでもあり。
クリアクォーツやシトリン、アメジストファントム、スモーキーアメジストやアメトリン、さらにはモリオンまで。
形状も変わっていて、ダブルポイント(DT)、セプター、リバースセプター、セプター二段重ね、三段重ね(呼び名が不明)、いっぱいセプターダブルポイント(もはやエレスチャルの類い)といったユニークな標本が続々登場する。
鉱山のあるハレルヤジャンクションに因み、ハレルヤジャンクションクォーツ、ハレルヤクォーツとも呼ばれている。
この標本も例に漏れず、かつてセプタークォーツだったとみられる結晶が連なるように成長した痕跡がある。
水晶の持つあらゆる色を有する、往年のハレルヤクォーツの魅力を凝縮したかのような珍品である。

豊富な資源を有し、ハンターたちの憩いの地ともなっているネバダ州。
アメリカでは特に人気の高いターコイズ鉱山、鉱物標本としても評価の高いウラン鉱山などが有名。
この標本の産地ロイヤル・セプター鉱山もまた、ハンターたちの目指すネバダの宝の山の一つ。
現在も入ることはできるが良質な水晶の産出は減り、環境保護を訴える声も上がっているようだ。

これまでいくつか見たことはあったが、ここまで衝撃的な標本は初めて。
採取が丁寧で保存状態も良かったのだろう。
ハレルヤクォーツの魅力を語るにはこれひとつで十分かもしれない。
水晶は硬いがクラックが入りやすく、大きくなるほど透明感は失われていくものだが、この標本は向こう側が見えてしまう。
優しい色合いが印象に残るいっぽう、平凡な日本の家庭には優しくない大きさでもある。

記憶にある限り、ハレルヤクォーツはもっぱらヒーリングストーンとして紹介され、鉱物標本としての魅力に言及されることはなかった。
あったのかもしれないが、ハレルヤ産に凝っている人にはまだ出会ったことが無い。
ヒーリングストーンは名称優位なところがあって、質は特に問わない。
当然ながら、アメリカ産出の良品のほとんどは、アメリカ人収集家が所有している。
日本に流れてくることは滅多に無いから、希少価値も上がっていく。
ハレルヤクォーツが何なのかと悩んでおられた方には、単なる地名であることをお伝えしておきたい。




なお、ニューメキシコ州にもロイヤル・セプターの名を持つ同名の鉱山が存在する。
そのため、ニューメキシコ産の水晶が、一部でハレルヤクォーツとして混同されている様子である。
ヒーリングストーンの場合、外観の似ていることがその名称の基準となったりもするので、ニューメキシコ産ハレルヤクォーツが必ずしも偽物というわけではない。
「ハレルヤ」はキリスト教における念仏のようなもので、聖書や賛美歌などにしばしば登場する聖なる言葉である。
その神秘的な地名がクリスタルヒーラーたちの支持を得て広まったものと信じたい。

イットリウムフローライトでも取り上げたが、産地が曖昧にされてしまうことが、ヒーリングストーンに対する評価や信頼の低下を招き、誤解を受ける原因ともなっている。
数々のハンターたちが活躍したアメリカの歴史から、鉱物の正体を探ってみるのもまた楽しい。




88×63×40mm  294.5g

2012/06/19

オーラライト23


オーラライト Auralite-23
North of Lake Superior, Ontario, Canada



カナダ北部の聖なる土地より採取されるというAURALITE-23/オーラライト23クリスタル。
今年のツーソンショーで発表されたばかりの新しいヒーリングストーンで、シェブロンアメジストに似た模様を持ち、ポイント状に加工されている。
トップがヘマタイトに覆われていることもあるようだ。
その名の示す通り最大で23種類、少なくとも17種類の鉱物を含むとされる。
内部に含まれる鉱物の詳細はもちろんのこと、およそ15億年前に形成された太古のクリスタルであることが科学的に証明されたとのこと。

オーラライトのインクルージョンとされている23の鉱物は以下。

1) チタナイト/スフェーン Titanite
2) カコクセナイト Cacoxenite
3) レピドクロサイト Lepidocrosite
4) アホー石/アジョイト Ajoite
5) ヘマタイト Hematite
6) マグネタイト Magnetite
7) パイライト Pyrite
8) ゲーサイト Goethite
9) 軟マンガン鉱 Pyrolusite
10) 自然金 Gold
11) 自然銀 Silver
12) プラチナ Platinum
13) ニッケル Nickel
14) 銅 Copper
15) 鉄 Iron
16) リモナイト Limonite
17) スファレライト Sphalerite
18) コヴェライト/コベリン Covellite
19) カルコパイライト Chalcopyrite
20) 不明鉱物 Gialite
21) エピドート Epidote
22) ボーナイト Bornite
23) ルチル Rutile

伝説のアホー石、そして金やプラチナまで入っているとは豪華絢爛、恐れ入る。
まさに今が買い時、旬の味。
世界的に有名なクリスタルヒーラーたちが推薦者として名乗りを上げる目下話題のヒーリングストーンである。
産地はカナダ、スペリオル湖の北にある "Cave of Wonder" と呼ばれるネイティヴアメリカンの聖地だという。
よく発見されたものだ。
疑惑のコヴェライト、カルコパイライトが入っているというのは奇妙な印象(→詳細:ピンクファイヤークォーツ)だが、研究で解明されたということだから、どのような輝きが見られるか確認できる絶好のチャンスである。

疑問としては、

1) 鉱物として関連性の高いものを23に分けて表記していること
2) 産地がネイティヴアメリカンの聖地であるのが自慢なのに、ネイティヴアメリカンが発見することなく、昨年ようやく見つかったこと
3) これまでに売れたヒーリングストーンの要素を網羅していること
  • 複数の鉱物インクルージョン - スーパーセブン
  • 世界中のクリスタルヒーラーが絶賛 - 多数
  • 太古の鉱物 - シャーマナイト他
  • 計画された販売戦略 - プレセリブルーストーン
  • コヴェライト入り - ピンクファイヤークォーツ
  • 研究者により科学的に立証済み - 多数
  • ネイティヴアメリカンの聖地から出現 - 多数
  • 金プラチナ - 買取強化中 ほか
4) 研究機関、研究目的、論文の所在などが不明(スイス人研究者のよう)
5) 海外・国内ともに、解説文の23種類の内包物一覧にGialite(ギラライトとのスペルミス?もしくはありそうでなかった新鉱物ガイアライト?)という、現時点では謎の鉱物名が記載されており、そのことに対して言及がなされていない
6) 肉眼で確認できるのは鉄の関連鉱物のみ、詳細は以下に記/サンプルが少ないため断定は困難
7) 原石の加工における規格が統一されていること
8) なんか、どっかで見た気がする

さっそくオーラライトの内部の様子を観察してみた。
クリアなアメジスト…だと私は感じた。
ルチルやゲーサイト、エピドートは、鉱物中の針状インクルージョンとして広く知られている。
幾らか見えてもおかしくないのだが、私には確認できなかった。
困ったことになった。

アヴェンチュレッセンスを示す鉱物が多く含まれているとあるから、光に反応するはず。
それを確かめるべく、太陽光での撮影を決行したのが写真。
ピンクや赤、パープル~ブルーの輝きが結晶の3箇所に確認できる。
ただ、手元にある5つのオーラライトのうち、アヴェンチュレッセンスが確認できたのは写真の1点だけ。
残りは肉眼では認められなかった。
鉄や銅に関係する鉱物が入っているならば、タンザニアのサンストーン、ロシアのサンムーンストーンのような輝きが出てもおかしくない。
また、アホー石(アジョイト)は一般に、水晶内部のグリーンのインクルージョンとして認められなければ価値がないとされている。

批判的な内容になってしまったが、この石はきらいではない。
きっと、私の目に狂いが生じているのだ。
聖なるクリスタルに疑問を抱くような私の目に真実など映らないのである。
収集家に根強い人気を誇る希少鉱物の宝庫、モンサンチレールを有し、どちらかというと堅い印象だったカナダの石が、今ヒーリングの世界で注目を浴びている。
これからさらなるヒーリングストーンが登場するかもしれない。
オーラライトを手にした感想は、非常に爽快で初々しく、輝かしい印象かな。
まるで、かの有名なサンダーベイ・アメジストのよう。

あれ?
突然、サンダーベイ・アメジストに見えてきた。
カナダの名産品として古くから知られる、サンダーベイ・アメジスト/レッドアメジスト。
表面が酸化鉄などに覆われ、赤く染まったアメジストのことを指し、鉱物標本として人気は高い。
カナダ北部・サンダーベイ近くの鉱山がその産地とされる(→地図、☆印)。
奇しくもスペリオル湖の北、☆印の真上付近にオーラライトの産地 "Cave of Wonder" があるものと考えられる。
詳細な場所が明かされていないため、この付近の鉱山の一箇所としかわからない。

サンダーベイ・アメジストに、ゲーサイトやヘマタイト、レピドクロサイトのインクルージョンが入ることは珍しくない。
表面が鉄分で赤く染まっているという点でも、実によく似ている。
何らかの関連があるのかもしれないが、カナダは広く地質学的なことについては無知であるため、鉱脈など専門的な事柄について言及するのは控えたい。
鉱山の様子を記録した動画を文末に示した。




オーラライト23クリスタルの全貌と、産地である神秘の洞窟の魅力を伝えるドラマティックな動画。
このように豊富なインクルージョンが見られるかどうかについては、依然として確認できていない。
心が綺麗な人でないと見えないものは古くからある。
なお "Cave of Wonder" は海外で人気のゲームの一種とみられる。



見た感じは普通の鉱山と動物及びスーパーセブンに似たレッドアメジスト


※注意が入ることは絶対にないはずですが、重大な誤認が認められた場合、市販商品に対しての真偽や違法性を問うものと誤解を受けた場合は、訂正します。ワクワクしながら愛を込め、素直に記したものであることをここに明記します。

なお、23種類の鉱物中、唯一の謎だったGialiteについては、デヴィッド・ガイガー氏により、新鉱物ガイアライトであることが明らかになりました。


56×25×10mm  13.40g

2012/06/11

イットリウムフローライト


イットリウムフローライト
Yttrium Fluorite
Little Patsy Quarry, Jefferson Co., Colorado, USA



ラベンダーカラーのなめらかなフローライト。
透明感のあるピンキッシュパープルが光を包み込むさまは、まだ見ぬ天上の楽園を思わせる。
イットリウムフローライトは、フローライトのカルシウム成分がイットリウムに置き換わることによって生まれる、希少石のひとつ。
不透明~半透明の珍しいフローライトで、癒しや平和、開放をキーワードとする人気のヒーリングストーンでもある。
イットリウムフローライトは一般に、ブドウの房のような塊状で産するらしい。
そのため、原石の流通は少なく、研磨品やスライスなどの加工品を中心に流通している。
美しく魅力的、しかし謎だらけ。
私にとってはそんな存在。

かねてから好きな石だった。
確か、最初に興味を持ったフローライトはこれだった。
イットリウムという響きは神秘的な魅力にあふれている。
しかしながら謎が多い石である。
限られた人しか手に出来ない希少石とのことであるが、比較的入手は容易であり、現在もコンスタントな産出、及び流通がある。
イットリウムを含む鉱物の多くは放射性鉱物。
このフローライトもかなりのイットリウムを含んでいるという。
果たして安全なのか。
そのあたりについては、全くわからない。
もっぱら霊的存在としての扱いを受け、鉱物としての明確な定義は定かでない。
つまり、好きなのに正体がわからない。
記事も保留になっていた。

イットリウムフローライトの産地とされるエリアは、メキシコ及び北米に集中している。
これまでは硬く不透明なパープルのスライスであることが大半だった。
今回入手したのは、半透明のミルキー・パープル。
コロラド産とある。
アメリカ随所から産出があるにも関わらず、世界的に珍しいというのは不自然に思えてくる。
淡い紫のフローライトを総称してそう呼んでいるようにもみえる。
結晶質の原石も僅かに流通があるが、まるでカルセドニーのようである。
カルセドニーとごっちゃになってない?

ヒーリングストーンの詳細な産地が明らかにされることは珍しい。
今回は幸いにも産地がわかった。
石の正体を探るにあたって、産地は重大な手がかりとなる。
表記の産地、リトル・パッツィは、コロラドの有名なペグマタイト。
イットリウムフローライトと思しき鉱物も出ている。
この石の正式名称は "Yttrofluorite" 若しくは "Yttrocererite" にあたるものと思われる。
鉱物として確かに存在する。
やっとわかったイットリウムフローライトの正体。

以下、イットリウムフローライトの概要。
最初の発見は1911年、ノルウェー。
その判断基準は豊富に含まれたイットリウム成分。
紫以外の色もあるが、社会通念上は紫色の蛍石を指し、色合いがその基準となっているという。
産地はコロラドの他にニューメキシコ、ノースカロライナ、テキサス、米以外ではカナダ、中国、エジプト、ロシア、ウクライナ、ナミビアなど。
なんと、日本からも発見されている。
記載は福島県川俣町!
日本三大ペグマタイトにして放射性鉱物の宝庫、福島からもイットリウムフローライトの産出があった。
いっぽう、メキシコから産したという記録は無い。

ヒーリング関係の資料では、イットリウムフローライトの産地はメキシコのみ、色は紫のみと記されている。
しかしながらそれは、必ずしも鉱物としてのイットリウムフローライトであるとは限らない。
また、健康被害については不明との描写も。
大丈夫なのか。
フローライトの発色にイットリウムが関与することは珍しくないようなので、ヒーリングを旨とするものに関しては、色合いを基準にイットリウムフローライトと呼んでいる可能性も考えられる。
パープル・カルセドニーと混同されているケースもあるかもしれない。
このタンブルに関しては、クラックなどを見る限りではフローライトに相違ない。

石にまつわる謎や神秘性がヒーリングストーンのウリとなっているのは事実。
この記事を見てがっかりされた方もおられるかもしれない。
神秘性が石の本質ではないと信じたい。
鉱物としては、相当量のイットリウムを含む。
砕いて服用することのなきよう。
個人的には大好きな石だが、念のため。


28×23×15mm  15.33g

2012/06/05

ムーンストーン


ムーンストーン Moon Stone
Tamil Nadu, India



昨夜、月蝕の話題が出たばかりなので、今日は月にまつわるパワーストーンを取り上げようと思う。
ムーンクォーツではなく本家・ムーンストーン。
ムーンストーンの中でも、ブルーのシラー(輝き)が浮かび上がるものはブルームーンストーンと呼ばれ、価値が高いとされる。
多くはカットされ、宝石やビーズとなって流通している。
写真は、意外に珍しい、ブルームーンストーンの原石。

この原石をいつどこで購入したのかについては覚えていない。
産地と名前のメモが入っていなかったら、見落としていたかもしれない。
ムーンストーンのシラーを楽しむには、研磨加工が必要。
この標本も、結晶の一面がカットされている…はずだったのだが、どうも天然結晶のまま加工を免れている。
母岩のうえに付いた原石が薄いため、光を透しやすいのが原因だろうか。
オレンジを帯びたブルーの炎が結晶全体を包むさまを昼間から拝めるとは思わなかった。
実際の月と同様、原石の場合、太陽光でそれを見ることはなかなか難しい。

ロイヤルブルームーンストーン、レインボームーンストーン。
鉱物としては非常にわかりにくい。
ムーンストーンの呼び名は、特定の鉱物を指す言葉ではない。
うっすらとブルーの浮かぶ鉱物名を挙げていくと、きりがないほどにその種類は多く、特定が難しいために混乱を招いている。
ムーンストーンと呼ばれる石の正体は、サニディン、アノーソクレース、ラブラドライト
いずれも長石に類するが、その中のどれか一つを指定せよといわれると、専門家も言葉に詰まってしまうようである。

ムーンストーンの偽物 "ペリステライト" という鉱物も存在する。
どこからか、それはムーンストーンじゃなくてペリステライトだ!という声があがり、大騒ぎになったのも懐かしい。
俗にいわれる「戦慄のムーンストーン・えちごや騒動」である(無い)。
しかしながらペリステライトもまた、長石の一種である。
詳細について記すと長文になってしまうため、専門書を参照していただきたい。

パワーストーンは大衆文化、鉱物標本は学問に近いものと捉えている。
議論は堂々巡りで、建設的とはいえぬ。
子供が鉱物名を誤解していたとして、それを教えたところでなんになろう。
元来、ムーンストーンは白かったと思っている。
もしそれが黒ければ、「冥王星(※追記)」「ブラックホール」等、別の名前で定着していたはずだ。
月にまつわる、神秘的な伝説が数多く存在するように。

※追記:冥王星の名を冠した元素はプルトニウムである(→詳細:テルル)。

日本では、月はたいそう縁起のよいものとして、好まれてきた歴史がある。
サンストーンよりムーンストーンのほうが人気が高いのも、そのせいかもしれない。
例えば、月にはうさぎが棲んでいるという伝説がある。
満月には白うさぎが餅をつく、ということになっている。
月にうさぎのいる国は、意外に多いようだ。
直接聞いただけなので、文化的には異なるのかもしれないが、少なくともインド、西ドイツの方から直接「自分の国も月にうさぎがいる」と聞いたことがある。


ここではジャータカ(仏教説話)に出てくるうさぎの物語が起源となって、月にうさぎがいるという伝説が生まれた旨、記されている。
ジャータカは私が物心ついたとき、既に私の心の中にあった。
兎本生と呼ばれるその物語は、私がうさぎに興味を持ち、インドに行くきっかけともなった思い入れのある説話。
インド、日本については、ジャータカが月のうさぎの言い伝えの由来になったとしている。
いっぽうで、世界には月光が狂気をもたらすとされ、忌み嫌う土地があると聞く。
月の影響で恐ろしい狼に変身する人もいた気がする。
一般に、欧米人は月を好まないとされている。
調べてみると発祥はどうも、ドイツ。
月は悪魔や魔女の象徴として描かれているという(ドイツは魔女狩りがもっとも盛んだった国)。
実際、欧米ではムーンストーンに対し、邪悪で背徳的な意味合いを与えることも少なくないようである。
うさぎがいるんじゃなかったのか。
ドイツの夜空にうさぎがいると教えてくれたのは、西ドイツの学者の息子。
父の跡を追い研究者を目指していた青年だ。
彼の性格や風貌は、オカルト的寓話とは全く結びつかないし、とくに仏教徒というわけでもなかったから、不思議なのだ。
欧州のオカルトは根が深い。
なぜドイツに両極端な二つの月のイメージが並存するのかについて、これ以上の言及は控える。

話を戻そう。
ムーンストーンは鉱物名ではない。
サニディンだったりアノーソクレースだったり、時々ラブラドライトやペリステライトであったりもする。

参考:ペリステライトとムーンストーン、ラブラドライト
http://www.cgl.co.jp/latest_jewel/gemmy/128/index.html

上記の3つの鉱物は、いずれも長石の一種。
宝石の場合は区別をするべきだが、大量生産が常であり、また消耗品でもあるパワーストーンの場合、かえって混乱の原因になりそう。
写真の石はインド産だから、ラブラドライトの可能性が高い。
しかしながら、産地からはペリステライトも出ている。
ムーンストーンより先は、鑑定するしかない。
そこまでして何になろう。
正式なムーンストーンとされるサニディンのすべてが、月の輝きを想わせるとは限らないのだから。

論争に決着が着いたかどうかはわからない。
ペリステライトはブルームーンストーンの偽物というのは言いすぎであろう。
ムーンストーンと呼ばれるのはひとつの鉱物ではない。
鉱物が違えば問題も起きるから、パワーストーンにもある程度の定義は必要だ。
ただ、宝石の場合はともかく、産地すら明らかにされない消耗品としてのパワーストーンに、細かな決め事が必要だろうか。

以下、素人の意見。
パワーストーンに限っては、青白いシラーの出る長石類をムーンストーンに統一してしまおう。
成分でなく外観や質を基準にし、規定の範囲内でムーンストーンの呼称を使ってしまおう。
いっぽう、お馴染みのオレンジムーン、ダークグレームーンなどについては、ムーンストーンとしての扱いは甚だ疑問であり、月のビジュアルとして考えると、どうにも不吉であり、不気味である。
ムーンストーンを邪悪な石にしてはいけない。
別途、名称の考案を望む。


47×30×12mm  19.15g

2012/05/28

フェナカイト/アクアマリン/フローライト


フェナカイト×アクアマリン×フローライト
Phenacite/w Aquamarine, Fluorite
Siyany Mountains, Deposit Snowy, Buryatia, Russia



フェナカイト(フェナサイト/フェナス石)の大きな結晶に、水色のアクアマリンが見え隠れし、紫のフローライトが華を添えている。
ホワイト~クリーム色のフェナカイトは、主役ながら素朴で地味。
何も言われなかったら脇役に見えてしまうかもしれない。
もともと、産出そのものが少ないため、希少価値・相場ともに年々上昇を続けている。
多くは1グラムに満たない欠片で、10gを超える標本は貴重品となっている。
フェナカイト、アクアマリン、フローライト。
この類い稀なる組み合わせは、ロシアから近年、僅かに発見されたものだという。
数年前に、欧米のヒーラーの間で流れていたものを運よく入手した。
現在も流通はある。
産出があるかどうかについてはわからない。

ロシア産のフェナカイトは貴重品で、なかなか拝む機会がなかった。
確かに、表面には土が付着していて、あまり綺麗とは言えない。
しかし、当時の私にこの大きさは衝撃であった。
洗う気になれず、そのまま保管してあった。
先日、たまたま見つけて、手に取った。
私の撮影技術ではその魅力を存分に引き出せなかったことが悔やまれる。

ロシア産フェナカイトは、クリスタルヒーリングを嗜む人々に特に人気が高い。
透明感においてはミャンマー産のほうが優れているし、形状のバリエーションにおいてはブラジル産が群を抜いている。
しかしながらロシアンフェナカイトの波動は、それらとは比較にならないということである。
ヒーリングストーンの頂点は、フェナカイトとアゼツライト。
次いでモルダバイト、ダンビュライト、ブルッカイト、水晶やニューエイジストーン各種が並ぶということになっている。
選ばれし人々のみが手にする石、フェナカイト。
そんな扱い。

驚く方もおられるかもしれないので、補足しておく。
波動はともかく、石が人を選ぶのには理由がある。
流通の少なく相場の高い石は、タイミングや予算などが違えば入手できないのが常。
また、入手ルートが限られることもある。
サチャロカアゼツライトはその典型的な例だろう。
フェナカイトはれっきとした鉱物で、専門家が見ないとそれとわからない、という曖昧さはない。
それどころか、一目でロシア産とわかってしまうような、独特の魅力を放っている。
クリスタルヒーラーのみならず、鉱物収集家にも好まれる希少品であるがゆえに、入手が難しいのだ。
一生モノを手にするためには、最低限の購入資金と、鋭いアンテナが必要となる。

さて、昨年Heaven&Earth社から、セラフィナイト入りフェナカイトなるものが登場し、話題を呼んでいる。
産地はウラルのエメラルド鉱山とのことだから、マリシェボからの産出ということになるのだろう。
フェナカイトとしては大きく見応えがあり、清らかで颯爽とした印象が心地よい。
気に入って大切にしている。
石としては文句のつけようがない。
ただ、違和感は拭えない。
当初は金雲母とセラフィナイト、フェナカイトが共生した状態で発見されたという。

ピンときた方もおられるかもしれない。
以前、ゴールデンセラフィナイトという鉱物を取り上げた。
セラフィナイトの産地は本来、ロシアのバイカル湖付近に限定されるということだった。
この "セラフィナイト入りフェナカイト" の産地と推測される、ウラル・マリシェボ鉱山からはかなりの距離がある。
手持ちの石に関しては、何らかの鉱物が共生していることがわかる程度。
セラフィナイト(もしくは鉱物名:クリノクロア)なのかどうかについては、肉眼での判断は困難であった。
天使の羽根という喩えの由来となった、独特の模様や深いグリーンの色合い、柔らかな質感などはみられない。
出処はモスクワ、地質博物館の学芸員とのこと。

白くてふんわりしたものが好きだ。
ロシアンフェナカイトの特徴でもある、雪のように白く、まるみをおびた姿。
結晶中に時折みられる透明な窓は、光を受けて虹色に煌く。
波動については素人ゆえ判らぬが、可愛らしくてたまらない。
数あるフェナカイトの中でもひときわユニークな「アクアマリン・フローライトの結晶を伴うフェナカイト」を私はおすすめしたい。
残念なことに、私のもとにはこれひとつ。
どうかあなたのもとにも、届きますように。


35×32×23mm  26.02g

2012/05/22

グリーンファーデンクォーツ


ファーデンクォーツ
Green Faden Quartz
Kharan, Baluchistan, Pakistan



ファーデンとはドイツ語で「糸」の意味。
うすい板状の結晶の中心に、糸のようなつなぎ目がみえる水晶をさして、ファーデンクォーツと呼んでいる。
以前はアルプス産出の高級品が中心だったが、近年パキスタンから比較的安価な標本が流通するようになり、一気に身近な存在となった。
クリスタルヒーリングにおいては、再生、復活、魂のパートナーとの繋がりを意味するとされ、人気は高い。
ファーデンクォーツの奇妙な形状とその生成過程については諸説ある。

最も一般的な説としては、もともと二つあった結晶が、地殻変動などによって割れ、再結晶した、というもの。
中央を貫く糸はつまり、修復された跡というわけ。
いっぽう、糸はいわば芯で、それを中心に結晶が成長していったという説もある。
また、上記の二つの過程が順番に起きたという説もあるようだ。
水晶は何億年の時を経て私たちのもとに届けられる。
その過程において何が起きたかについては、推測の域を出ない。
実験室で短期間のうちに合成水晶を作ることはできる。
しかし、自然界で起きている様々な出来事を、何億年もかけて実証してみせることは、事実上不可能であろう。

緑に染まったファーデンクォーツ。
結晶表面から内部に至るまで、ふりかけのように点在している緑の鉱物は、クローライト(アクチノライトとの説も)とのこと。
ファーデンクォーツの成長過程において、クローライトが取り込まれ、表面にびっしり付着するほどに、両者は密接した状態であったものと考えられる。
長期間にわたって同じ環境下で成長したということである。
ゆえに、地殻変動などが原因で結晶が二つに割れるほどの大規模な環境の変化が起きたという説には、違和感を覚える。
仮に地殻変動との関係があるとするなら、この結晶が形成されるごく初期の段階での出来事ではないだろうか。
「修復」後に起きることも、ファーデンクォーツの正体に迫るうえで重要な手がかりになるという推測が可能だ。

さて、このグリーンファーデンクォーツには、一般的なそれとは異なる特徴がみられる。
一見して興味を惹かれるのは、20本余りのダブルポイントの水晶が束になっていること。
やや板状ではあるが、一つ一つのポイントが生々しくその姿をとどめている。
ファーデンクォーツの多くは、再結晶を繰り返すうちに、本来の形は崩れていく。
極めて薄い板状の連晶となって発見され、そこにかつての面影は無い。
結晶の本数が数えられるほどに形を留めていて、そのすべてがダブルポイント(両錐水晶)となっているのは興味深い。

水晶には普通、上下がある。
両錐水晶は、どちらかの先端が先に形成され、その後反対方向に結晶が成長していくことにより出来るといわれている(写真)。
一つの水晶に二つ以上のトップ(先端)が見られる場合、それらは別途形成されたものと解釈する。
よく観察すると、あとから出来たトップはどちらかわかることが多い。
しかし、この標本の場合、二つのトップがほぼ同時に出来たように見えるのである。
それらが押し固められて、束になった状態。
いったいどうして、こんなことになってしまったのだろう。

ファーデンクォーツについて、調べてみた。
誰もが異なる意見を主張をしている。
専門家(?)の意見がこうも食い違うということは、実際のところよくわかっていないってことだろう。
クリスタルヒーリングで多用される、修復という推論は、こじつけの感がある。
かつて2つあったものが折れ、修復されただけなのであれば、日本式双晶のようなシンプルな形になるんじゃなかろうか(本文下の写真右)。
一部にはそうしたシンプルなファーデンクォーツも存在する。
ただし、先輩方のご意見をまとめると、その生成過程は、時と場合により異なるものと考えるのが妥当だろう。

では、このグリーンファーデンの場合はどうか。
一本の白く太い糸が、結晶の中央を貫ぬくからには、ファーデンクォーツだろう。
いっぽうで、フロータークォーツ(大雑把に説明すると、特殊環境で宙に浮かんだ状態で成長したために、上下がない水晶のこと)のようにも見える。
ただし、フロータークォーツが自由奔放に成長し、方向性が定まらないのとは異なり、この標本は左右対称である。
水晶の束は、中央の糸を境に同じ方向を向いて成長している(本文下の写真左)。
ふりかけのようにちりばめられた、緑のクローライトが謎を加速させる。
以下は、あくまで想像である。

このファーデンクォーツはきっと、始まったばかり。
実はこの先にはまだ、続きがあったのだ。
それを誰かが見つけて、持ち帰ってしまった。
中央を貫く太くまっすぐな糸が、この結晶をより複雑で神秘的な姿に導くはずだった。
ゆえに、このファーデンクォーツは、無限の可能性を秘めている。
私にはそう感じられてならないのである。





左は裏からみたところ。やや板状となった結晶の中心に、糸がみえる。右はマダガスカル産の日本式双晶。こちらも中央に「糸」がみえるが、その定義や生成過程は異なる。マダガスカルからファーデンクォーツが産するという話は聞かない。


40×38×12mm  16.48g

2012/05/21

ポリクロームジャスパー


ポリクロームジャスパー
Polychrome Jasper
Near Analalava, Tulear province, Madagascar



まるで砂漠に建つ城のよう。
2006年にマダガスカルで発見されたジャスパーの一種である。
多彩で変化に富む絵画のような模様は、塊状の原石を研磨することにより自然に現れたもの。
ポリクロームの名は、その幅広い色合いに因む。
その名の示すとおり、赤からイエロー、ブルーやパープルなど、あらゆる色がこの石に現れるのは非常に興味深い。
砂漠から産することから、デザートジャスパーとも呼ばれている。

ジャスパーは日本では人気がない。
国内の天然石の需要の多くはビーズ。
模様を楽しむには小さすぎる。
ゆえに、国内で流通しているジャスパーの多くは、中国で染色された岩石である。
ジャスパーの類いはすべて偽物だと割り切っている人々もいる(詳細はアゲートに記しました)。

欧米ではジャスパーの評価は高く、専門のコレクターもいるほど。
中でも研磨により風景の浮かぶジャスパーは、ランドスケープジャスパーとして、高額で取引されている。
しかしジャスパーに現れる風景を楽しむ日本人はごく一部。
多くは偽物扱いされ、二束三文の価値とみなされる。
例外はある。
マダガスカル産のオーシャンジャスパー、オーストラリアのムーカイトなど、ヒーリングストーンとして評価を受けたジャスパーの人気は高い。

このポリクロームジャスパーもヒーリングストーンとして注目されつつある。
それに伴い、国内での人気も上昇している。
なんでもこのポリクロームジャスパーを用いて瞑想すると、高次の世界へ導かれるのだとか。
癒しの石というのも、絵画療法に使えそうだからわかる気がする。
アセンションストーンという呼び方もある模様(参考:パワーで選んでしまった好例)。
ジャスパーに価値が与えられるのは大変嬉しいこと。
ただ、パワーだけで選ぶと二束三文のジャンクを掴むことになる(参考:日本人がいかに舐められているか実感できる好例2)。
できるなら、パワーと併せ、自然が作り出した美しい情景を楽しみたい。

イメージはバビロンの空中庭園かな。
砂漠を彷徨った旅人がようやく見つけた楽園。
バグダッドの遥か南。


55×12mm  50.95g

2012/05/06

チャロアイト


チャロアイト Charoite
Murunskii Massif, Aldan Shield, Saha Republic, Eastern-Siberian Region, Russia



世界3大ヒーリングストーン。
これまでにスギライトラリマーに思いを馳せて参ったが、最後の一つがまだであった。
ロシアから産する希少石、チャロアイト(チャロ石)である。
色はスギライトと同じ紫色。
独特のマーブル模様は同じロシア産出のセラフィナイトに似ている。
産出はセラフィナイトとは比較にならぬほどに少ない。
もともと特殊な環境下で生成される、産地限定の貴重品であった。
乱獲のため、絶産の危機に晒されているという。
スギライトやラリマー同様、謎の多かったこの石に、先日強い違和感を感じたため、旅先でこれを書いている。

先日、ネットでみかけたチャロアイトのタンブル(写真)。
このところ見かける機会が減っていたため、気になって購入したが、届けられたのは、かつてのチャロアイトとは違う何かだった。
淡い紫に半透明のグリーンが混在したこの石は、今年のツーソンショーで出回ったものらしい。
本文下のビーズは、3年ほど前に入手したもの。
ジャンクとして別途保管してあった黒やゴールドの入ったチャロアイトで、うち一つに半透明のグリーンが混在している。

チャロアイトは黒いエジリンやゴールドのティナクサイト、イエローのカナサイト、ステッシーアイト、白または半透明のカリ長石などから成る混合石。
前述のビーズにみられるゴールドのインクルージョンは、ティナクサイトかもしれない。
ティナクサイトはチャロアイトを新鉱物として世に送り出したロシアの鉱物学者・ベーラ・ロゴワが、チャロアイトの研究の過程で発見したとされる希少石。
一見ルチルのようだが、ルチルより珍しい。

チャロアイトはベーラ・ロゴワによって見出され、1978年新鉱物に認定された。
発見は1949年と古いが、絹状の外観から角閃石の一種とみなされていたらしい。
チャロアイトに魅了されたロゴアが研究を重ね、30年ののちに新鉱物であることをつきとめたという。
共生のティナクサイトの発見のほうが先だったということだから、チャロアイトの正体を見極めるのは容易なことではなかったのだろう。

チャロアイトの名は "魅惑する" というロシア語に因むという。
ロゴアにとって、この神秘的なマーブル模様の鉱物は、計り知れない可能性を秘めた特別な存在だったのだろう。
研究の対象を超えた魅力がそこにあったとするならば、前回のスギライト(原産)に記した冗談みたいな奇跡もあるんじゃないだろうか。
彼女はそれを現実にしてしまったんじゃないかとすら、思える。

では半透明のグリーンのインクルージョンの正体は何か。
ざっと調べたが、具体的な資料は見当たらない。
チャロアイトを構成する鉱物のひとつと仮定するなら、カリ長石が無難だろうか。
エジリンも疑わしいが、ブラックライトで赤く蛍光する(=カリ長石)ことからその可能性は低いものと考える。

チャロアイトの一連の変化は世界的に起きており、ニュータイプ・チャロアイトの名で呼ばれることもあるようだ。
微かなパープルに、グリーンに透ける穴が混在した姿に、私は強い違和感を覚える。
ロゴアが魅了されたチャロアイトではない。
そう感じてしまうのは、私の勝手な思い込みに過ぎないのかもしれないけれど。




25×20×10mm  8.50g

2012/04/11

アトランティサイト


アトランティサイト
Atlantisite
(Stichtite-Serpentine)
Stichtite Hill, North Dundas, Tasmania, Australia



黄緑色のサーペンティン(リザーダイド)と紫色のスティッチタイト。
鮮やかな色彩のハーモニーが印象的である。
クリスタルヒーラーのメロディ氏によって紹介されたヒーリングストーンのひとつに数えられる、アトランティサイト。
産地に因んでタスマナイトとも呼ばれている。
その希少性と、メロディ氏のネームバリューも手伝って、長い間その人気は衰えることを知らない。
アトランティサイトの名の由来は、言うまでも無い。
失われた幻の大陸、アトランティスの叡智にアクセスできるというこの奇跡のクリスタルは、ヒーリングの分野のみならず、標本業界にも多大なインパクトを与えた。
事実上ニューエイジストーンの統括に関わって久しい、米・HEAVEN&EARTH社のカタログにもその姿を見ることができる。

パワーストーンとしてもお馴染みのサーペンティン。
正式には、鉱物のグループ名にあたり、アンチゴライト、クリソタイル、リザーダイトの三種類に分類される(アトランティサイトの黄緑色はリザーダイド)。
それぞれ色合いや質感が異なり、産地もさまざま。
また、特に珍しい鉱物とは言い難い。

鍵を握るのはスティッチタイト。
1910年、オーストラリア・タスマニアで発見された希少石である。
発見当時はサーペンティンと混在した状態だったという。
つまり、初期の段階において、その外観は "アトランティサイト" であったものと考えられる。
新しい鉱物という扱いを受けるこの石だが、発見から100年余りが経っているということになる。
スティッチタイトはサーペンティンの変化によって生じる鉱物。
両者には密接な繋がりがある。
しかしながら、スティッチタイトの産出はオーストラリア、タスマニアに集中している。
南アフリカやチェコからも報告されているが、数は少ない。
アトランティサイトが希少石として扱われる所以であろう。

先日、とても有り難いリクエストをいただいた。
この石には思い入れがあり、いつかまとめてみたいとある方にお伝えしたばかりだった。
アトランティサイトは、メロディ氏が命名した石のひとつ…であり…?
だったっけか?
命名までそうと聞いた記憶がない。
早速調べてみた。
日本では "メロディ氏が命名した石"というふれこみで、こぞって紹介されている。
しかし、メロディ氏による命名と明記している資料は(日本を除いて)見当たらない。
そればかりか、アトランティサイトの名付け親を名乗る人物が、世界各地に存在するようである。

アトランティサイトが世に知れ渡るきっかけとなるのは1998年。
関係者がスティッチタイト鉱山の権利を獲得した直後のことだという。
原石を得るため現地入りしたメロディ氏のはしゃいでいる姿が、タスマニアにて確認されている。
彼女が初期からこの石に関わり、普及に尽力したのは間違いない。
ちなみに、あまり知られていないが、クリスタルヒーラー・メロディ氏は、科学者/数学者という側面もお持ちである。
理系であったとは。
グランドフォーメーションを連発、鉱物に対して独自の見解を示し、世界を混乱させるカリスマ・我らがメロディ女史。
お会いしたことはないが、もしかしたら天然なのかもしれない。
彼女については、あくまでアトランティサイトを紹介した、という表現にとどめるべきかと思う。

メロディ氏を含む関係者に、鉱物のサンプルを提供した人物がいるという。
のちにアトランティサイトと呼ばれることになる、スティッチタイトの標本である。
そのやりとりにおける流れで、タスマニアとアトランティスとの関連性が話題に上り、命名に至ったのではなかろうか。
ただし、接点のみえない名付け親も存在する。

参考:オーストラリアの鉱物業者
http://www.openallday.au.com/StitchSerp.html

私のアトランティサイトとの出会いは、石に興味を持ってすぐ。
その鮮やかで個性的な姿を見て、一目で気に入ったのを覚えている。
発表年代としては前後するが、日本ではかつてスーパーセブンは高級品であって、気軽に入手できるものではなかった。
比較的安価で入手できるアトランティサイトのほうが、知名度は高かったはず。
だが、スーパーセブンとは異なり、その後定番商品として定着するほどの流通は無く、相場はむしろ上昇している。
現在もお探しの方は多いようだ。

写真は、選りすぐりのカポジョンを、友人にお願いして作ってもらったオリジナルのペンダント。
デザインにこだわり、あれこれ注文を付けたので、けっこうな額を請求された。
ジェットをアクセントにした理由は覚えていない。
後にも先にもこれひとつ。
厳選された素材を使った力作にして、今となっては二度と作れない幻のペンダント。
宝物はいつしか、思い出へと変わっていく。


31×25×10mm Handmade by Jun; Kyoto

2012/04/06

スラティシェールレコードストーン


スラティシェール・レコードストーン
Melody's Slaty Shale Record Stone
Melody Green Mine, Mt. Ida, Arkansas, USA



スラティシェール・レコードストーン。
著名なクリスタルヒーラー、メロディ氏のお墨付きで登場し、一部で話題になったものの、数は少なく、ほとんど日本に入ってこなかった。
紺とアイボリーのパターンから成る縞模様は、まるで絵画のよう。
どの石にもこの模様が出ていて、一目でそれと判る。
メロディ・グリーン・マイン(既に閉山した氏所有の鉱山)から発見された、カオリナイトと鉄から成る岩石である。
ニューエイジストーンと呼ばれる石が概ねそうであるように、その価値はクリスタルヒーラーの感性や直観に委ねられる。

スラティシェール・レコードストーンは、薄いプレート状となっており、神秘的な縞模様が両面にみられるのが特徴である。
なんでも、この模様には、霊的な領域の情報が刻まれているという。
当時の記録が残っていたので、コピペ。

  • 異次元からの情報の記録媒体である。
  • あらゆるヒーリングに適している。
  • 霊的にふさわしいパートナーに出会えるよう導く。その相手がたとえ古代文明にあった場合でも、その繋がりを叶える。
  • 望んだ願いを実現させる力がある。それが本当に必要な願いであるかどうかを見極める能力も備わるよう導く。
  • 2つを並べると蝶の羽根に見えることから「バタフタイ・ストーン」とも称され、霊的なパートナー同士で持つと、この石の力が存分に発揮されるという。

よくぞシンプルにまとめたものだ(自画自賛)。
メロディ氏からのコメントは熟読したが、正確に伝えるための基礎知識が自分には不十分だった。
氏の文章はもともと難解かつかつクセがあり、専門用語の頻度も高い。
ニューエイジ方面に詳しい方もわからないとおっしゃっていたくらい。
よってこのあとにお詫びの文章が続く。

スラティシェール・レコードストーンの名前自体、翻訳できなかった。
今回は他サイトを参考にさせていただいた。
混乱された方がおられたら、申し訳なく思う。

もともとはバラフライ・ストーンとして、ペアで譲っていただいたもの。
多くの人に知っていただく機会と思い、片方は売りに出した。
写真はその当時のもの。
買い手は付いたが、やむを得ぬ事情により現在も当家に鎮座しておられる。
つまり、キャンセルを繰り返し、多くの人を窮地に陥れたそのお客様と、私は霊的パートナーになってしまうところだった。
2つとも、私のところにとどまる宿命だったのかもしれない。
現在も販売されているようだが、驚くべきことに、この石を特徴付けるはずの縞模様が見当たらぬ。
事実上消滅したものと捉えるべきか。
大好きな石のひとつだった。
ご紹介できず、残念に思う。
ラストは当時私が素直に書いた、お詫びの文章で締めくくりたい。


【お詫び】

原文が非常に難解で、十分な翻訳ができませんでした。
世界的に入手困難で、資料も少ない石です。
情報などございましたら、是非お寄せくださいませ。
大変申し訳ございません。


71×51×3mm  9.99g

2012/03/23

リビアングラス


リビアングラス
Libyan Desert Silicate Glass
Gilf Kebir, Libyan Desert, Egypt



私はホテルの一室に入っていった。
暗い室内の床に青いビニールシートが貼られている。
大量の黄色い物体が積んである。
部屋には臆病そうな青年が一人。
「選んでいいか?」と尋ねると、彼は頷いた。
砂まみれになりながら幾つか選び、交渉に入る。

リビアングラスは、1932年にリビア砂漠で発見されたテクタイト(インパクトグラス)の一種。
2500~3000万年前に形成されたといわれている。
テクタイトとは、隕石の衝突に伴う衝撃で地表の岩石が溶け、冷え固まることにより成形された天然ガラスのこと。
多くは不透明な黒い塊で発見される。
クリームイエローの色合いを示すリビアングラスは、グリーンのモルダバイトと並ぶ人気であるが、産出は圧倒的に少ない。
写真の石は、リビア砂漠の砂付きで盛られていた中から幾つか選んだもののうち、まだ手元にあったもの。

リビアングラスの正体は、長い間不明とされてきた。
2006年、産地付近に巨大なクレーターがあることが判明、リビアングラスが隕石の衝突に由来する事実が確認されつつある。
また、クリストバライトのほか、エンスタタイトなどの希少鉱物が含まれていることが明らかになっている。

産地はリビア砂漠の奥深く、エジプト、スーダン、リビアの国境付近に広がるギルフ・ケビールと呼ばれる岩山。
世界の果てとも称される、過酷な土地である。
かつてはこの地に人類が文明を築いていたことが明らかになっている。
エジプトのピラミッドやツタンカーメンの墓から、リビアングラスで作られた護符や装飾品が発見されているのはご存知の通り。
高価な宝石だと思われていたのは、大半がリビアングラス、つまり天然ガラスであったものと推測されている。

天然ガラスであるからして、偽物も出てくる。
現在ブレスの形で流通しているものは、淡い黄色に着色されたガラスだという。
天然のリビアングラスを使っている場合も、ビーズの場合はほとんどがシリカ成分で補整、強化してあるらしい。
販売価格は数万~数十万ほど。
処理によりいくら耐久性を高めても、ブレスにかかる負荷は他の装飾品の比ではなく、数年経てば使い物にならなくなる。
石の世界で成功している人物が、ブレスではなく、パテックフィリップやフローレスのダイヤモンドなどをお持ちだったとき、なにかしら説得力を感じた。
ブレスでなければ効果が期待できないということはないので、無理はしないでほしい。

なお、最近エジプト政府がリビアングラスの採取を禁止したとの噂が流れている。
詳しいことはわからない。
希少価値が増しているという煽り文句には注意したい。
リビアングラスは、カルマの深い人に縁があるといわれている。
古代の泥棒も宝石と間違えたほど。
もしあなたのカルマが本物なら、私のように、いずれきっと本物のリビアングラスが届けられるはず。
焦らなくても大丈夫?


53×28×25mm(左側) 43.52g

2012/03/17

雷水晶


ライトニングクォーツ/雷水晶
Lightning Strike Quartz
Diamantina, Minas Gerais, Brazil



世界には、雷に打たれ崩壊の危機に晒されながらも、奇跡的にその存在をとどめた水晶があるという。
それらはライトニングクォーツといわれている。
ライトニングとは、雷の意味。
雷水晶と呼ばれることも多い。
現地では "Pedra de Raio" (雷水晶と同意)と呼ばれており、欧米での呼称であるライトニング・ストライク・クォーツは、メロディ氏による命名と聞いている。

ライトニングクォーツは世界中から発見されているというが、主な産地はブラジルのディアマンティーナ。
水晶の名産地として知られる土地である。
ディアマンティーナ産のライトニングクォーツは、雷との相互作用を語る上で、非常に重要な特徴を備えているという。
また、土地の特性なのか産出も多いようで、現在も安定した流通がある。

私が鉱物にすこしばかりディープに関わるようになった頃、話題になっていたのがライトニングクォーツだった。
なんじゃそりゃ。
そう思ってさっそく手にしたライトニングクォーツは、透明感にあふれ、とても崩壊の危機に晒されたようには見えなかった。
確かに、結晶の所々に破損やデコボコがあるのだけれど、本当に雷に打たれたのか。

ライトニングクォーツには一応の基準がある。

  • 電流が流れた形跡があること。
  • 結晶の柱面の少なくとも半分に、巻きつくように水晶が成長していること。
  • 落雷時の熱により、一部がクリストバライト(白い付着物)に変化していること。

このライトニングクォーツは、たまたま収集品の中から出てきた。
写真の水晶ポイントはその拡大写真。
巻き巻きとはいい難いが、小さな結晶が貼りつくような格好でポイントを覆っているのが見えるかと思う。
意外に気づかないものだが、重要事項なので、押さえておきたい。
写真にある激しい侵蝕が、電流の流れた痕?

ここまで激しい浸食が刻まれているものは珍しいようだ。
ただ、落雷の衝撃で折れてしまうことはある。
トップのないライトニングクォーツも倉庫のどこかにあったはず。
ディアマンティーナから産する水晶は、透明度が極めて高く、採掘も丁寧なのか、もともときれい。
雷に打たれても、きれい。
かえって雷の痕が映えるというわけ。

ところで、先日某オークションを見ていたら、ライトニングクォーツのブレスレットなるものを発見した。
色合いから察するに、放射線処理を施したスモーキーシトリンであった。
販売者が、ライトニングクォーツに放射能を浴びせ、売れ筋商品にしたかったという可能性もある。
しかし、これでは全くわからない。
クラックひとつないきれいな珠が、ふんだんに使用されている(本文下に写真を掲載。後日さらなる衝撃的物体を確認)。
売れ残りのブレスを、むりやりライトニングクォーツと名づけ、さばこうとしたように見えてならない。
いろんな意味で有名な、中華系の業者だった気がするのだが、まだ居るのか。
かれらは金を積んでオークションのトップに商品を並べているため、マトモな人々がドン引きして立ち去ってしまう。
これでは新しい人が入ってこない。

中華系の業者は、欧米においては、鉱物市場を襲った類い稀なる脅威とみなされ、恐れられているという。
市場はまさにライトニングクォーツ、といった状況。
彼らをとめる者はいないのかと、不思議になってくる。

ライトニングクォーツ。
激しい衝撃に打たれ、崩壊の危機にさらされながらも、その存在を打ち消されない。
人間は、そうなり得るだろうか。
この美しい水晶は、私に人間とは何かを、深く考えさせるものである。




60×15×12mm  15.58g

2012/03/14

サチャロカアゼツライト


サチャロカアゼツライト
Satyaloka Azeztulite
Satyaloka Monastery, Satyaloka, India



思えばサチャロカアゼツライトほど不確かな存在はなかった。
私がその存在を知ったときは、ミルキークォーツの塊だった。
やがて極小の結晶が主流となる。
H&E社の商品である「アゼツライト」(→アゼツライトの項参照)の名を冠するのはいかがなものかとの声を受け、H&E社の商品のひとつに加わったさいには、褐色を帯びた不透明な石英の塊と化していた。
当初「サチャロカクォーツ」の名で発売されたが、産出の激減を受けて生産中止。
代わりとして、現地から新たに発見されたという透明水晶「サチャマニクォーツ」が発表された。

2年が過ぎ、鉱物の世界に戻ってみると、「サチャマニクォーツ」は生産中止に。
そのH&E社から最近になって「サチャロカアゼツライト」と明記された商品が発表されたことを知る。
シモンズ氏にはお世話になったから、言及は控える。

アゼツライト同様、サチャロカアゼツライトもまた、形而上の概念である。
サチャロカとは南インドの地名。
その地から出現するというサチャロカアゼツライトは、数年前までニューエイジストーンの代表格であった。
高い波動と崇高な輝きを放ち、霊能力の強化やヒーリングに欠かせない存在として、高い人気を誇った。
かのH&E社が販売権を独占するまでは、その複雑な入手経路ゆえに、限られた売り手しか扱わなかった。
需要に供給が追いつかず、価格は異常とも思えるほどに高騰した。
H&E社が販売権を独占するまでは。
ただ、色や形、質感や大きさなどに随時変化が生じる、産地の様子がいっさい伝わってこないなど、謎は多い。
ある時は透明水晶、ある時は石英の塊。
米粒大かと思いきや巨大化し、オレンジや赤などもたまに登場する。
共通点はサチャロカ地方産出の石英ということだけ。
そうと言われなければ判断できないのは、高額商品だけに致命的な問題であった。

※パワーで鑑定できる人もいるとは思うが、それだけを根拠に販売すると逮捕されることがあるので注意したい。

写真の石は、販売権がH&E社に移る直前まで流通していた、幻のサチャロカアゼツライト。
米粒大だがポイント状の水晶だった。
いっぽう、H&E社から発売されたのは、ほんのりイエローを帯びた石英のポリッシュ(写真)。
現在販売されている「サチャロカアゼツライト」に似ている。
1988年に Dharma Dharini 氏によって世界に紹介されたというサチャロカアゼツ。
その不確かな存在に翻弄され、対応に追われた小売業者。
ある意味修行だったのかもしれぬ。

かつて、サチャロカアゼツは、南インドの寺院で、現地の僧侶が手作業で採掘しているということになっていた。
当地から産する水晶を拾い集めるのが修行の一環ということらしかった。
奇妙な印象は否めずにいた。
南インドという土地柄、また関係者の面持ちから察するに、欧米の若者向けのアシュラム若しくはコミューン、といった実態が想像されたからである。
調べたら実際そんな感じだった。
機会があれば訪れてみたいとよく人に話していたのだが、ほとんどの方は「?」という表情をされていた。
サチャロカアゼツは、インドでもトップレベルの修行者が得た、霊験あらたかな賜り物。
そう考えた人がほとんどだったのかも。

サチャロカ寺院、という翻訳が誤解を招いたのは確実。
それらがコピペされ、広まったせいでは?
寺院、僧侶という表現で語られると、少なくとも若い白人には結びつかない。
H&E社の従業員にお会いしたさい、サチャロカの実態について尋ねたことがあるのだが、「行ったことがないのでわからない」とのことだった。

サチャロカアゼツについては「持つ人を選ぶ」という特権意識が強調され、入手の難しさばかりが語られた。
難しいと感じたことはない。
興味を抱いた石はだいたい手元に来る。
なぜなら私は石に選ばれないよう努力しているからである。
冗談である。
少なくとも、ずっと欲しいと思っているがご縁がない、という方はおられなかったはず。
ただ、20年前のサチャロカアゼツについては全くわからない。

サチャロカのコミュニティを訪れるのがここ数年の夢であった。
歴代のサチャロカアゼツをコンプリートしてる人物は、きっとここにいる。
サチャロカアゼツを認定する人物は、きっとここにいる。
水晶や石英がアゼツライトに昇格する基準を明らかにするため、一度訪れる必要がある。
サチャロカのコミュニティまでの道のりや、施設の位置はだいたいわかっている。
ただし、主力商品を失って倒産したおそれがあり、現在も採掘が続いているかどうかはわからない。

かつてインドを旅したとき、私はサチャロカ近くを確実に通過している。
奇しくも全盛期であったために、無念でならない。
しかし、私は当時、石に全く興味がなかった。
偶然コミュニティを見つけても、サチャロカアゼツを持ち帰ることはまずなかった。
実際、南インドでは、現地の宝石商に気に入られ、宝石を次々にプレゼントされて、正直困った。
日本人の感覚からすると宝石は大きすぎて、成金に間違えられること必至。
また、現地加工のためデザイン性皆無であり、日本ではとても身につけられないシロモノであった。
知り合いの家に向かう途中に彼の店があったため、通るたびに呼び止められ、断るわけにいかなかったのだ。
邪魔だったので、後に知り合った人たちに全部あげてしまった。
今更ながら記憶をたどると、けっこうな品質の貴石も混ざっていたのだが、日本に持ち帰っても数年後に失う運命だったから、むしろそれで良かったんだろう。

若気の至りか、もらうだけもらっておきながら、彼には内緒で町を去った。
インド人はよく物をくれる。
価値がわからなければ、とりあえずもらっておいたほうがいいかもしれない。
ただし、あなたが女性であれば、絶対に与えてはならない。


8×5×3mm(最大)計1.55g






追記

1)この記事をアップした3月に、サチャロカのコミュニティが消滅したとの噂が流れ、無断転載を疑われた件について

まず、偶然の一致を信じるかどうか悩むとして、私なりの考えを追記させていただいたのが以下の文章です。


サチャロカアゼツがH&E社の管理下となる以前は、サチャロカ・コミュニティの敷地内、もしくは周辺で小規模な採掘作業が行われているとされていました。
写真の石にも手掘りの形跡があります。
その後、この石の権利がH&E社に移り、大量生産が求められたために、採掘地が同地方の山岳地帯に移されたものと考えるのが妥当ではないでしょうか。
サチャロカのコミュニティを紹介したブログは、何年も前に更新が途絶えています。
なおこの記事は、私が独自に調べ、過去の経験をもとに記したものであること、ご理解願います。

しかしながら、さらに追記しますと、結論としては偶然の一致でありました。
正確には、私のほうが一週間遅いので、無断転載を疑われた方のほうが多かったかもしれません。というのも、ソースが全く同じなのです。
ただ、何年も前からあったサイトで、以前から気に入って愛読していたために、私には全く予想できませんでした。
ソースの提示は、(存続していれば)今後のコミュニティの運営に支障をきたすという懸念があり、あえて伏せました。
無関係であることを関係者様から伺い、感謝すると同時に、申し訳なく思っています。
噂については、サチャロカのコミュニティに非常に詳しい方が3月8日に言及されたとみられます。
この記事自体は3月入ってすぐに書いたものと記憶しておりますので、私自身困惑しています。
私が噂の存在を知ったのは7月末、そして確認が取れたのが今日ということになります。
ブログ主様、情報の持ち主様にはご迷惑をおかけしたことをお詫びすると共に、現状としては、まさかの偶然の一致を信じていただくしかなく無念に思います。
また、サチャロカ・コミュニティの閉鎖疑惑については、冗談のつもりで記したものであり、事実関係は把握できていません。(2012/08/06 追記)


2)サチャロカマスターアゼツライトの真偽について

南インド・サチャロカ地方から水晶が産出するという地質学的データはありません。
また、サチャロカコミュニティは水晶を採取するための組織ではなく、あくまでスピリチュアリティを探求するための修行の場でした。
いつの間にか鉱物の名産地になっているのは奇妙です。
サチャロカアゼツライトとして流通している水晶が、実はアメリカ・アーカンソー産水晶だったとして問題になっています。
関係者の情報が漏れ、明るみに出たようです。
比較的大きさのあるサチャロカマスターアゼツライトについては、ブラジル産やアーカンソー産の水晶と考えるのが妥当であり、サチャロカから産したとするには無理があります。

お世話になっている女性のご厚意で、原石をお預かりし、確認させていただきました。
ブラジル産水晶であると考えられます(→サチャロカマスターグランドアース)。
T様、いつもありがとうございます。

アーカンソー産水晶については、過去にも "ノースカロライナ産アゼツライト透明原石" と称して販売され、ファンの顰蹙(ひんしゅく)をかったことでも有名です。
決して悪いものではなく、世界で最もクリアな水晶のひとつとして、収集家にも高い人気があります。
ただ、小さなポイントが3000円以上の値を付けるようなことはまずありません。
偽物にはご注意ください。

サチャロカは広大な南インドのごく一部に過ぎず、インド人にも知らない人がいるほど。
コミュニティは欧米人を中心とし、ミレニアムをピークに稼動していた宗教団体の一種であって、古くから存在するインドの聖地ではないというのが私の見解です。(2013/08/18 最終追記)


2012/03/10

グランドキャニオンワンダーストーン


グランドキャニオンワンダーストーン
Grand Canyon Wonderstone
Grand Canyon Area, Arizona, USA



グランドキャニオンワンダーストーン。
なんだかすごい名前である。
鉱物としては、鉄分に富むライオライト(流紋岩)の一種。
米アリゾナ・グランドキャニオンの50万年前の地層から採取されるという。
グランドキャニオン国立公園の敷地内から採れるわけではなく(たぶん捕まる)、産地はあくまでその周辺らしい。
しかしながら、パワースポットのエネルギーを宿したヒーリングストーンとして、一部で人気があるようだ。

特徴は、レッド、オレンジ、イエローの暖色系パターン。
規則的な縞模様は、すべての石に現れる訳ではない。
また、莫大な人気を誇る石というわけではない。
ヨーロッパのごく一部では知られているようだが、扱いは地味。
ヒーリングストーンとしての扱いは少なく、むしろこの色合いの美しさに焦点が当てられ、宝飾品として注目されているようだ。

ワンダーストーンの名を持つ石は、アメリカほか世界中から産出する。
キロ単位で取引され、工芸品の素材として、また建築用素材としても用いられる。
いずれもマグマ由来のライオライトである。
なお、同地から得られる「グランドキャニオンジャスパー」、こちらは全く別の石。
さまざまな色合いが混在したシックな石で、印象としてはピクチャージャスパーに近い。

グランドキャニオンワンダーストーンは、いうなれば、これからの石。
この石のもつ温かみは、多くの人々を虜にする魅力に満ちている。
数あるワンダーストーンの中で、今後特別な扱いを受ける可能性を秘めているのは、このグランドキャニオンワンダーストーンくらい。
さほど高価なものでもないので、手に入れていただきたい。


27×22×19mm  15.32g





2012/02/22

フォンセンブルー


フォンセン・ブルー
Vonsen Blue Jade
Vonsen Ranch, Petaluma, Marin Co., California, USA



南の島の海を思わせる、穏やかなブルーグリーン。
パシフィック・ブルー・ジェイドの別名にも納得がいく。
古風にいえば、納戸色といったところだろうか。
発見者であるマグナス・フォンセン氏に因んで、フォンセン・ブルーと呼ばれることが多い。
ロシアから産出するダイアナイトに似ていることから、同じものかどうか問い合わせたのがきっかけでその名を知った。
販売先も詳細をご存じなく、卸元からの情報でわかったもの。
当時送っていただいた文章を以下に引用させていただく。


かつてアメリカで活躍したミネラル・ハンター、フォンセン氏が、1949年にカリフォルニア州ペタルマ付近の牧場で発見した、フォンセン・ブルーと呼ばれるネフライトジェイドの一種です。
農場主が頻繁な立ち入りを許可しなかったため、採掘はほとんど行われませんでした。
最近になって農場主が代わり、手掘りで採取が進められ、市場に出回るようになったとのことです。

見た目はそっくりだが、ダイアナイトとは別の鉱物。
かつてダイアナイトを知っている人は少なかったが、フォンセン・ブルーを知っている人はもっと少なかった。
現在も国内でほとんど流通がないのが不思議なくらい。
ブルージェイドもそうであるが、ピンクジェイド、パープルジェイド等々、ジェイドではない天然石を使った染めビーズが多く流通し、市場は混乱している。
或いは、ダイアナイトと混同されているのかもしれない。

鉱物としてはさほど珍しいものではない。
ネフライトの一種である。
成分は主にトレモライト(透角閃石)。
他にサーペンティン類を含み、青い色はアルミニウムに由来するとされている。
原産地、アメリカでは安定した人気があるようだ。
アメリカから良質なネフライトが産出する例は意外に少なく、色合いの珍しさもあって、けっこうなお値段が付いている。

平和を象徴し、持つ人を深いリラックス状態に導くとして、ヒーリングストーンの扱いを受けていることもある。
ダイアナイトとの共通点を感じさせるこの石が、熱心な鉱物収集家によって発見され、価値を与えられたという事実は興味深い。




アメリカで活躍したミネラルハンター・フォンセン氏は、イケメンである。
酪農家の出身で、研究者ではない。
新鉱物の発見、研究や出版にも貢献した彼だが、鉱物の知識についてはほぼ独学だったという。
日々採取に明け暮れる彼のコレクションはとどまるところを知らず、膨大なコレクションを保管するため、自宅のとなりに自宅(保管用と展示用)を建てたほど。
フォンセン氏の収集した鉱物は、アメリカで最も素晴らしいコレクションの一つとして、現在も高い評価を受けている。


ドイツ・ミュンヘンショーで展示された氏のコレクション
http://www.the-vug.com/vug/article111.html


34×25×15mm  14.98g

2012/02/16

スギライト


スギライト Sugilite
Karahali Mn Field, Northern Cape, South Africa



パワーストーンブームに火を着けた重要な鉱物。
日本人が最初に発見した高貴な紫色のヒーリングストーンとして紹介され、定着している。
和名の杉石は発見者の一人、杉博士に因むもの。
スギライトの名がそこから来ているのは有名なエピソードである。

前回のラリマーチャロアイト同様、今となっては懐かしい「世界三大ヒーリングストーン」のひとつ。
90年代後半、クリスタルヒーラーのジェーン・アン・ダウ氏(2008年没)に見い出され、ニューエイジの石として紹介されたのがきっかけで、世界的に注目を集めることとなった。
浄化要らずのマルチパワーを発揮し、敏感な人は石酔い(石のパワーにより飲酒したように酔いがまわる状態。いかに優れた感性の持ち主かということを示している)するといわれている。
しかし、どうも最近見かけない。
日本最大のスラム街でも話題になるくらい人気のパワーストーン・スギライト。
もしこれが実体のないものだったとしたら、皆様はどう思われるだろう。

賢い主婦は、見た目の良い野菜より、見た目は悪くとも安全な野菜を買い求める。
同様に賢い消費者は、見た目にこだわらず、本物のスギライトを買い求め、そのパワーを享受する権利がある。
しかしブレスの場合、同じ色合いで統一しなければ、商品としての見栄えが悪く不利になる。
天然石においては非常に難しいことなのである。

スギライトには本来、これといった色味はない。
紫のほか、白や黒、赤や青、グレーなど、色合いには幅がある。
要は紫色とは限らない。
しかし、紫の石として定着してしまった以上、売り手は考えうる限りの手段を駆使し、紫のスギライトを販売せねばならない。
そのため「紫の天然石=スギライト」という大胆かつ分かりやすい売り方が常識となっていく。
消費者は、不自然なまでに紫なビーズをふんだんに使用した「スギライト」のブレスを、言われるがままに買い求めた。
いっぽうで本物のスギライトが偽物扱いされるなど、事態は混乱を極めた。

南アフリカから美しい紫のスギライトが産出していたのは確かである。
ただし、色は紫だけではなかったようだ。
いつ頃からスギライトが別のモノに切り替えられたかについてはわからない。
自分はスギライトは原石しか扱った記憶がない。
4年程前には既に、怪しい気配が漂い始めていたような気がする。
恩師さえもトラブルに悩んだと聞かされた。
現在も入手可能なスギライト製品の多くは、パープルジェイドとよばれる石の類いであろう。

原石のほうはまだ流通があるけれど、スギライトのブレスは最近見ていない。
もしまだ紫のみの石で統一された商品を販売しているところがあれば、怪しいと思っていいだろう。
混ざりけのない高貴な紫。
「石酔いで頭がボーっとする、触ると手が痺れるようだ」
誰もが口を揃えてこう言った。
大いに崇められた気高い紫の石は、人の手によって創られた幻想に過ぎなかったのである。

なお、1942年に愛媛県で杉博士らによって発見された最初のスギライトは、淡~いミントグリーン(wikiでは「うぐいす色」表記)であったという。


15×10×5mm  1.51g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?