2012/02/09

クリストバライト


クリストバル石中の鉄かんらん石
Fayalite, Cristobalite
Cougar Butte, Siskiyou Co., California, USA



鉱物の魅力を知った翌年、私は東京にいた。
初めて入った有名鉱物店で、最初に買った標本がコレだった。
どうしてこんな変わったものを選んだんだろう。
壮絶なインパクトを感じて手に取ったとしか思えない。

ざっと見たところ、この産地のクリストバライトは世界的に有名なようだが、鉱物標本としての取り扱いは意外に少なく、調べなければ出てこない。
忘れていてもおかしくない。
購入から5年経つにも関らず、手元にコレがあることははっきり覚えていて、先日ようやく見つけ出した。

説明しよう。
中央に見える白い塊が、クリストバライト(クリストバル石/方珪石)。
鉄かんらん石(ファヤライト)はこの塊のどこかにある…はず。
黒い部分はオブシディアン(黒耀石)で、今回はオマケである。
パワーストーンとしては、スノーフレークオブシディアンと呼ばれるものがこれにあたる。

オブシディアンは、溶岩が地表で急速に冷え固まって出来る天然ガラスの一種。
それに加え、溶岩に含まれるシリカ成分がクリストバライトとなり分離した結果、このような物体が生成されるらしい。
クリストバライトと水晶は同じ成分でできている。
運命を分けるのは、冷却される速度や圧力など、複雑な環境条件に因り、必ずしもクリストバライトが生成されるとは限らない。
まだわかっていないこともあるそうだ。
一部にクリストバライトが確認できる例としては、オブシディアンの他にライトニングクォーツ(雷水晶)、リビアングラス(インパクトグラス/テクタイト)など。

本来の主役は、クリストバライト中の鉄かんらん石。
その名の通り8月の誕生石、ペリドットの仲間にあたる。
クリストバライトのどこかに微細な結晶体がみられるということだが、見えない。
ルーペがあれば見えるのかもしれないが、見えない。
マグマや隕石由来のペリドットは有名だから、その類いなのかもしれない。
素人ゆえこれ以上の言及は控える。

なお、クリストバライトに発がん性があるとして、国際的に問題視され、我が国でも厚生省により使用に制限が設けられている。
アスベスト同様、建築現場から粉塵となって生じることがあり、結晶構造もアスベストに似ているために、肺がんのリスクが指摘されているという。
クリストバライトは危険な化学物質であるとして、神経質になっている方が多く見受けられる。
いつものように注意を喚起しておきたい。

写真にあるように、クリストバライトは天然石である。
また、成分はSiO2、水晶やめのう、石英と同じ。
長期にわたって吸い込むことによる健康被害が指摘されているもの、と捉えるべきか。
しかしながら、クリストバライトへの恐怖が飛躍した結果、石英(※)さえ危険物質に含めている団体もあるようだ。

※代表的な石英に、ローズクォーツがある。

粉塵には概ね発がんのリスクが伴う。
建築現場においては、木材の粉塵さえも、発がん性物質に認定されている。
たとえ美しい天然水晶であっても、粉末にし長期に渡って吸引すれば、肺がんになるおそれがある。
死は人を選ばない。
本人の心がけとは無関係に、すべての人に平等に訪れる。
危険を避けるために、常にマスクをしていたとしても何れ、死ぬ。
クリストバライトは、妄信を諭し、真実を見極める力を授けるため、人類に与えられたパワーストーンなのかもしれない。


67×60×34mm  152.1g

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