2012/02/03

ジルコン


ジルコン Zircon
Gilgit, Gilgit-Baltistan, Pakistan



鮮やかなワインレッド。
ジルコンの結晶は褐色であることが多いが、パキスタンからは透明感に富む色鮮やかな標本が産出している。
その強い光沢ゆえ、宝石として扱われることも多い。
過去には、処理により無色透明に改色したジルコンをカットし、ダイヤモンドの代用品として使用した。
現在はジルコンからケイ素(Si)を取り除いた、キュービックジルコニアがその主流となっている。

ジルコンは放射性鉱物である。
微量のウラン、トリウム等を含み、日用雑貨や電化製品などの素材として活躍している。
私たちは知らない間に放射能のお世話になっている。
ちなみに、前述のキュービックジルコニアは放射性物質ではない。
キュービックジルコニアとジルコンが混同されているのを頻繁に見かける。
気になる場合は放射線の有無を確認してみよう。

ところで、最近懐かしい名前をよく聞く。
ユリゲラー。
かなり昔の人だが、覚えておられる方もいらっしゃるかもしれない。
スプーンを念力で曲げてみせ、テレビ番組の人気者となった外国人である。
自分は当時小学生であった。
当然ながらスプーンを曲げる「ユリゲラーごっこ」が教室で大流行した。
給食時間に皆が皆、力まかせにスプーンを曲げるものだから、先生が怒りに満ちていたのを覚えている。
案の定、すぐに「ユリゲラーごっこ」は禁止された。

月日は流れ、私が鉱物に興味を持ち始めた頃のこと。
100円~500円程度の石をたまに買い、気に入った石を数個、お手製のポーチに入れて持ち歩いていた。
石繋がりでたまたま、同世代の女性と仲良くなった。
驚いたことに、彼女はユリゲラーのお弟子さんだという。

「スプーン曲げるのは禁止やで!アレはただの手品で宗教や!」

もはや聞き飽きていた。
コツをつかめばスプーンなどすぐに曲がることも知っていた。
ユリゲラーがまだ生きて活動していて、宗教家や手品師などではなく、日本に弟子までいる霊能力者だった…ことに衝撃を受ずにはいられなかった。

彼女がユリゲラーからもらったというペンダント。
スプーンとは全く関係ない上品なものだった。
その頃にはもう、トリックを駆使する危険なパフォーマーにすぎないという話が定着していたが、そうした理由で他者を遠ざけるのは好きではなかった。
ユリゲラーがどこの誰なのかは知らぬ。
現在もなお活躍中で、実に不可解な理由から再評価されつつあることを知り、複雑な心境である。

ある日、彼女が私の石を見たいと言い出した。
せっかくなので宝物をと、ポーチに入れて持ち歩いていた石を数個、写メに撮って送った。
「ひとつ、嫌な感じのする石がある。黒い。処分したほうがいいよ」
彼女がそう言ったのは、ジルコンだった。
綺麗な八面体に結晶していた。
写メのジルコンはブラウンに写っていて黒くなどなかったし、宝物のひとつだったのだけれど、頑固な自分には珍しく、手放すことに決めた。
そればかりか、以降ジルコンを頑なに避けてきた。
いつしか連絡は途絶え、自分がなぜジルコンを避けているのかも忘れてしまっていた。

今であれば、放射性鉱物だからじゃないの?と思われる方もおられるだろう。
当時一般人が入手できた放射性鉱物は、人体にほとんど影響しないものばかりであり、滅多に話題に上ることはなかった。
また、霊能力者やクリスタルヒーラーは放射性鉱物を好み、神聖なものとして扱うことが多い。
処分しろとまでいう人は珍しい。
最近では、それらを内服、飲用または吸引することにより、内部被ばくを実践させている指導者もいるという。

彼女がジルコンに何を感じたのかについては、あえて聞かなかった。
そういえば、石の名前すら伝えていなかった。
彼女が福島に住んでいたことを思い出し、先日衝動的に購入したジルコン。
あの言葉が何を意味していたのかは、今となってはもう、わからない。


20×18×10mm  7.51g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?