2012/11/04

コロンビアレムリアン


コロンビアレムリアン
Colombian Lemurian
Peñas Blancas, Boyaca, Colombia



毎度のことながら、鉱物で世界を一周している。
今日は、危険な噂の絶えない南米・コロンビアを訪問する。
世界最高級と称される鉱物がピンポイントで産出するコロンビアの魅力を探ってみたい。

コロンビアといえばなんといっても、エメラルド。
世界で最も質の高いエメラルドはコロンビアから採掘されている。
それに伴って発見されたユークレースもまた、世界中で高い評価を受けている。
数あるコロンビアのエメラルド鉱山の中でも、かのムゾー鉱山からは、トップクオリティのエメラルドが産出している。
そんなムゾー鉱山から50kmほど離れた山中より発見されたのが、このコロンビア・レムリアン。
ブラジルの元祖レムリアンシード、ウラルのロシアンレムリアン(ロシレム)に続く新たなレムリアン水晶として話題になったのは、少なくとも4年以上前のこと。
地球温暖化に伴って溶け出した氷河の下から発見された、という話題性も手伝って、広く流通した。

上記のふれこみについては諸説ある。
同時期に話題になったヒマラヤアイスクリスタルのキャッチコピーにそっくりなのは明らか。
現地の産状が誤って伝えられたとする向きもある。
コロンビア・レムリアンの産出する鉱山は、有名なエメラルド鉱山でもある。
鉱山からはもともと見事なトラピッチェ・エメラルドが多数産出している。
勇敢にも高所の氷河跡を目指した人々により新たに発見されたということだろうか?(→鉱山の写真はこちら
いったいその氷河がいつ溶け、発見されたのかについては謎が多い。

コロンビア・レムリアンの特徴である、圧倒的な透明感。
表面には細く小さな水晶が二つ、潜りこんでいる。
コロンビア・レムリアンには、通常6面あるトップのファセット部分のうち3面が六角形、あとの3面が三角形に結晶していることがあり、ムゾー・ハビットと呼ばれて、クリスタルヒーラーの間で珍重されている。
このコロンビア・レムリアンにはムゾー・ハビットはみられないが、大きな3面のうちひとつが◇の形をしているのが面白い。
その左には見事なレコードキーパーが浮かんでいる(いずれも本文下の写真右)。
さらに、表面に皮膜のような虹が出る。
或いは、レムリアンといえば水晶の側面にバーコードのように刻まれた模様。
この標本も例外ではない。

水晶というのはほんとうにややこしくて、ちょっと変わった形をしていると付加価値がついてしまうため、物覚えの悪い自分には把握しきれていない。
水晶に価値を置く傾向は特に日本において顕著で、欧米の比ではない。
さきほどの◇にも特殊なネーミングが与えられ、高額で流通している。
端正な正五角形のファセット面はイシスクリスタルという。
イシスの出ている水晶は好きで、わりと手に取るのだが、四角形はなんだったか思い出せない。

そんな訳で、調べてみた。
水晶の先端に現れる◇はウインドウ、もしくはタイムリンクのいずれかのよう。
ただ、ウインドウは7つ目のファセット面限定(!)だとか、タイムリンクは長方形だといった議論に発展している。
だとしたら、6つ目のファセット面に菱形に出ているコレは、どちらにも該当しないということか。
どうも日本においては、こうした特殊なクリスタルにこだわり、価値を付けすぎるきらいがある。
欧米ではコロンビアレムリアンのムゾー・ハビットが強調されるにとどまっている。
ウインドウやタイムリンクで検索して引っかかるのは、国内サイトが大半で、コロンビアレムリアンに関してはその豊富な特殊要素をもって、マスタークリスタルの名を与えられていることも多い。
中にはマスタークリスタルと言えないものも含まれる。
ウインドウやタイムリンクの名を考案したのは欧米のクリスタルヒーラーのはず。
なぜ日本でここまで広まってしまったのか。
販売目的で多用されたのであれば、またもや注意を喚起しておかねばなるまい。

なお、レムリアン水晶は、地球上に5種類(6種類説もあり)眠っているという。
ブラジル、ロシア、コロンビアに続き、あと2ヶ所から発見される予定だという。
一面置きに現れるはずだったレムリアンシードの定義が、曖昧になってきている今、果たして5ヶ所で済むかどうか、甚だ疑問である。
レムリアンシードと呼ぶことの可能なバーコード付き水晶は、アーカンソー州ホットスプリング産の水晶などに顕著であり、そうした水晶を数えだしたらきりがない。
またブラジルでは、他の産地からも続々と新型レムリアンが登場していて、もはや6種類を超えている。
レムリアの記憶は謎に満ちている。
実に奥が深い。




37×10×9mm  4.65g

2012/11/02

ファイヤーオブシディアン/玲瓏


ファイヤーオブシディアン
Fire Obsidian
Kyzyl Kum, Armenia



黒耀石をこよなく愛するうさこふのもとに、岩石岩男(がんせき・いわお)を名乗る人物から、珍情報が入った。
ファイヤーオブシディアンが北海道から産出する黒耀石、十勝石の中にごく稀に存在し、国産鉱物ハンターの間で伝説になっている…
その名も玲瓏(れいろう)。

ファイヤーオブシディアンといえば、オレゴン産の70年代のコレクションを、知人のご厚意で入手したばかり。
ピンクやレッドのファイヤが蛍のように飛び回るさまは、ピンクファイヤークォーツを圧倒していた。
ピンクファイヤークォーツは所詮、幻のオブシディアンの輝きに対する憧憬に過ぎなかった。
そう、思い込んでいた。
しかしながら、玲瓏の写真を見て思った。
私はファイヤーオブシディアンを誤解していたかもしれない、と。

岩石岩男氏に送っていただいた玲瓏(れいろう)の写真。
あたかもダイクロイックグラス(→特殊な技術を用いて作られた人工ガラス/写真はこちら)の如く輝く、メタリックな虹色のオブシディアンの姿がそこにあった。
レインボーオブシディアンにおける、ホログラムのように浮かぶ幻想的な虹とは異なる、力強い輝きである。
私の手持ちのファイヤーオブシディアンとは様子が異なっていて、蛍のように飛び交う赤いファイヤは見えないようであった。

そもそも玲瓏とは一体なんのことだろう。
辞書には、"透き通るように美しいさま、珠のように輝くさま" とある。
漢字が難しくて読めず、当初は中国産の黒耀石のことと思い込んでしまった。
玲瓏は古くから存在する日本語であり、「美しさ」を表現するにあたっては最も褒むべき表現のひとつにあたるものとみられる。
情けない限りである。
ただし現在、玲瓏という言葉は日常的には用いられてはいない。
十勝石にごく稀に現れるという幻の玲瓏。
この言葉を石に与えられるとしたら、古き良き日本の美意識を知る人物ということになろう(岩男情報:1968年に十勝の識者によって瞬時に命名されたとのこと。鉱物の専門家ではないという。私には言葉がみつからない)。

では、十勝石に稀にみられる玲瓏とは、一体なんだろう。
十勝石はマホガニーオブシディアン(黒地にブラウンの模様の入った黒耀石)様の外観で知られる国産鉱物の代表格。
岩石岩男の話では、国内では多彩なシーンの見える黒耀石は、すべて玲瓏に分類されているとのこと。
つまり玲瓏には、ファイヤーオブシディアンとは呼べないものが含まれる。
おそらく、生きているうちに国産ファイヤーオブシディアンに出会えたなら、その幸運な人生を喜ぶべきである。
玲瓏という言葉すら知らなかった自分にはまだ早い。
未知の鉱物が気になって仕方がない私には珍しく、あっさり諦めた。

謎の人物・岩石岩男とはその後も交流が続いていた。
幻の国産ファイヤーオブシディアン、玲瓏(れいろう)。
私には、知人から譲っていただいた見事なファイヤーオブシディアンがある。
出会ってしまってから、考えよう。
などと、暢気に構えていた。

幻の玲瓏を知ってから十日余り、私は仕入れのためにお世話になっている鉱物店を訪れていた。
遅刻のため、持ち時間はたった一時間。
お願いしていた石を手にし、お疲れの店長と苦労話などをしながら、鉱物を見て周っていた。
そのとき私の目に、例の如く(?)見覚えのある光が飛び込んできたのである。




ブツはアルメニア産の黒曜石の塊。
写真の通り、メタリックな虹があちこちに浮かんでいる。
レインボーオブシディアンとは明らかに異なるこの虹、写真で見た玲瓏にそっくりである。

こんなにも早く遭遇するとは思っていなかったため、心の準備ができていない。
情けないことに、メタリックなレインボーを目前にして、玲瓏という単語が出てこない。
ひととおり在庫を見せていただいた。
虹が広範囲に入っているのは2つのみ。
2つとも譲っていただけることになった。
ちなみに、写真は小さいほうになる(→大きく虹の多いほうはオークションにて発表中です)。

気になって海外サイトを調べてみた。
ファイヤーオブシディアンとして流通しているのは、手元のアルメニアの黒耀石と同じもののようだった。
ファイヤーアゲートのようなメタリックな輝きがその特徴とみられる。
一般にはスモーキーオブシディアンに起きる現象で、米・オレゴン州から比較的産出がある。
私がアメリカ人に譲っていただいたファイヤーオブシディアンの産地に同じ。

思うにファイヤーオブシディアンには、こうしたレインボータイプと、蛍のようなファイアが飛び出すほたるタイプ、以上の2種類があるのではないだろうか。
私の持っているほたるタイプは、ゴールド/シルバーシーンオブシディアン・ベース。
メタリックな虹の見えるものだけが、ファイヤーオブシディアンと呼ばれているわけではない。
その定義については曖昧な点が多い。
振り返れば、私はレインボーに彩られた最高級のファイヤーオブシディアンの写真を見ていた。
写真で見た極上の玲瓏は、知人のコレクションに大量に含まれていた。
初めて玲瓏の写真を見たとき驚かなかったのは、地球上に同じものが存在することを知っていたから。
とっさに情報として出てこなかったのは、私が心の余裕を失っていたためだ。

かつて十勝から産出したというかの黒耀石(文末にリンクあり)は、世界に誇るべきファイヤーオブシディアンに相違ない。
ただし、ネットで画像を見た限りでは、国産の玲瓏の大半はレインボーオブシディアンに同じ。
玲瓏が必ずしもファイヤーオブシディアンを指すわけではない。
ファイヤーオブシディアンは世界的に稀産であり、価値としてはレインボーオブシディアンの比ではないから、見分けられるようにしておいたほうがいいかも。
また玲瓏の呼称は、国産の黒耀石に限定するのが妥当であろう。




この標本には少なくとも6箇所、メタリックな虹の浮かぶ箇所がある。
シーンが途中で内部に潜り込み、見えなくなっているから、カットすれば見事な宝石ができるはずだ。
また、下の写真にあるように、よく見ると所々に赤系のフラッシュ(ファイヤ)も出ている。
アルメニア産の黒曜石にファイヤーオブシディアンがあるとは聞いていない(前述の通り、オレゴン・十勝産は60年代には確認されている)が、未研磨でこの状態なのだから、研磨したのちの姿も想像できるというものだ。


参考)見事なコレクションを拝むことが出来る黒耀石ハンターさんのブログ。
これが問題の国産ファイヤーオブシディアンで、動画を拝見した限りでは、アルメニア産に同じ:
http://www.geocities.jp/blood_obsidian/tokachi_fire_obsidian.html

※動画の視聴にはダウンロードが必要なので要注意。




75×63×41mm  125g


岩石岩男さま、あなたとのご縁がなければ、この出会いはありませんでした。
貴重な情報及びアドバイスをありがとうございました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

2012/10/26

レピドクロサイト入りアメジスト


レピドクロサイト入りアメジスト
Amethyst/w Lepidocrocite Inclusions
Rio Grande do Sul, Brazil



鉱物を集め始めたばかりの頃購入したアメジスト。
実家のお宝箱の中から出てきたので、なんとなしに撮影した。
フラワーアメジストが産することで有名な、ブラジルのリオグランデ・ド・スル州からやってきた。
母岩のない、全体が結晶した色濃いアメジストのクラスターのあちこちに、ゴールドのレピドクロサイトが輝いている。
詳しいことはわからないが、まるで宙に浮いた状態で成長したかのよう。
ブラジル産のアメジストは久しく買っていない。
スーパーセブンはともかく、真っ先に浮かぶのは処分コーナーに投げ込まれている凡庸な紫のクラスターくらいだ。
メモがなければマダガスカル産インド産と勘違いしていたかもしれない。
実際、今ではほとんど見かけない。
まるで、咲き誇る花のよう。

先日、鉱物に詳しい方のお話を伺う機会があった。
フラワーアメジストの話題が出た。
レースのように薄く繊細な結晶が放射状に広がった、独特の姿をしたアメジストを、フラワーアメジストと呼んでいる。
一度撮影中に落して割ったこともある程デリケートなので、取扱いには注意が必要である。
その時のショックで、フラワーアメジストを頑なに避けていた私のハートも、けっこうデリケートだと自分では思っている。

会話の合間にふと思い出したのが、こちらのレピドクロサイト入りアメジスト。
フラワーアメジストとは呼ばないが、まるで花のように見える。
鉱物に関しては全くの無知だった私がこの標本を購入した理由に他ならない。
当時は鉱物に金をかけるという発想などなかったから、手頃な価格だったはず。
ガラスのような透明感、濃厚な色合い、見事な形状。
さらに、茶色のゲーサイトではなくゴールドのレピドクロサイト・インクルージョンなど、今となっては得がたい貴重な標本である。
当時はフラワーアメジストなんて知らなかった。
今なら割れてしまったものも含め、いくつか手持ちがある。
だけど、私にとってのフラワーアメジストは多分、これなんだと思う。
人の数だけフラワーアメジストがあっていい。

水晶には滅多に興味を示さないアメリカのミネラルハンターたちにこの写真を見せたら、思わぬ反響があった。
アメリカではクリスタルヒーラーを中心に好まれ、収集家には人気の無い水晶。
予想外だった。
日本では、水晶はひとつのジャンルとして確立している。
いっぽうで、水晶をメインに集めているアメリカ人にはまだ出会っていない。
そんな彼らにも、国境を超えて伝わった想いがある。




51×32×24mm  34.70g

2012/10/23

スコロライト


スコロライト
Scorolite Quartz
Aracuai, Minas Gerias, Brazil



秋の京都ミネラルショー初日。
私は宝石ブースで、想定外の事態に頭を抱えていた。
その日買い物をする予定はなく、財布には交通費しか入っていなかった。
にも関わらず、かねてから気になっていた石が目の前に輝いているのである。

ピンクファイヤーアメジストとされるその石は、以前ネットで見かけて気になっていたスコロライトそのものであった。
写真で見ると、オパライト(オパレッセンスの現れるアクリル製ビーズ)そっくり。
人工石を疑ってしまう。
しかし、現物を見た限り、天然のクォーツに間違いない。
なめらかで神秘的なミルキーパープルの色合い。
角度を変えるとピンクやオレンジのファイアが煌くさまは、ピンクファイヤークォーツとはまた違った、新たな宝石の可能性を感じさせた。
ただ、その場でスコロライトの名が出てこなかった。
新しい宝石の名称が安定するには時間がかかる。
両者が同じものかどうか訊ねようにも、スリランカ人である店主に日本の宝石事情を伝えるのは不可能であった。

店主の話では、産地はブラジルのミナス・ジェライス州。
ブルートパーズの産地として知られるアラスアイから、わずかに発見されたという(追記あり)。
ファイアがよく見えるよう大きめにカットしてあるとのお話であった。
写真では到底味わえない驚きが詰まっている。
特に水晶を集めているわけではないが、これは外せない。
しかしながら、財布には千円札と、両替できないまま残っていた100ドル札がそれぞれ一枚のみ。
祝日でATMは閉まっている。
店主さんはドル札でも構わないと仰り、おつりは日本円で出してくださった。
熱心な仏教徒である彼の温かな心に触れ、美しい宝石以上に価値ある時間を過ごせたことに、心から感謝している。

帰宅後、調べてみた。
ピンクファイヤーアメジストとスコロライトは、同じものであると思われる。
同じように宝石にカットされたものが高額で販売されている。
いっぽう、小さなビーズとなって流通しているケースも数多くみられた。
ルースや原石であれば外観や重みでその真偽はある程度わかるが、小さなビーズの場合、それがオパライト等の人工物であっても判別できない。
事実、海外ではスコロライトに対する激しい論争も起きているようである。
人工石だと明言しているところさえある。
かつてヒマラヤブルームーンクォーツを知ったとき、私が真っ先に原石を探したのは、そうした理由からだった。

採れる量はわずかだというから、スコロライトの名にあやかって人工石を流したところもあったのだろうと推測している。
このルースに関しては、天然水晶に間違いない。
ただし、ヒーリングストーンとして流通しているビーズについては、リスクが伴うといわざるを得ない。
本来見えるはずのファイヤを確認するのも難しいだろう。
ブルーやパープル、ピンク、オレンジなどさまざまな色合いを楽しめる興味深い宝石、スコロライト。
実際に手にとって、その美しさを確認してからの購入をお薦めしたい。
自分で言うのもなんだが、写真ではオパライトにしか見えない。


16×12mm  8.46ct


追記:この石が、2度にわたるアメジストの加熱によって得られるものであるとの貴重な情報をいただきました。確かに、一見ローズクォーツ。アメジストに分類されるのは奇妙です。人工石ではありませんが、処理石を前提に購入し、その美しさを楽しむべきものといえます。こちらのカット石は3,500円での購入ですが、販売価格がこれを大幅に上回る場合は注意が必要です。また、不透明な白は失敗作とのこと。

以上、石をこよなく愛するKさまからアドバイスいただきました。本文に訂正を加えず、ここで注意を喚起したいと思います。また、海外で問題になっている人工石についても、混在の可能性が考えられますので、十分に警戒なさってください。Kさま、いつもありがとうございます!



2012/10/21

ヌーマイト


ヌーマイト Nuummite
Godthabsfjnord, Nuuk, Greenland



今回オークションに参加させていただいて、奇妙な印象を受けた石がいくつかある。
思わぬ事故で作業が遅れてしまっているので、簡潔にまとめたい。
その石のひとつがヌーマイト。
「グリーランドから発見された、地球上で最も古い石」として各方面で話題になり、人気のある鉱物のひとつである。
クリスタルヒーリングにおいては特に重視され、強い保護の石として知られている。
ある方へ石を贈ろうと、偶然手に取ったジュディ・ホール氏の著書。
開いたページにヌーマイトがあった。
早速この石について調べたところ、ある疑問が浮かび上がったので報告したい。

本来ヌーマイトは滅多に輝かず、一部がキラリと光るもの。
ところが、このところ流通しているヌーマイトは、全体が豪華絢爛に輝いている。
また、華やかさに反して、冷たい印象を受ける。
ヌーマイトの放つ光は温かなイメージだったはず。
画像から検索してみたところ、明らかに二つのパターンがみられた。
ひとつはゴールデンレッド~イエローの輝き。
もうひとつはシルバーブルー~グリーンの輝き。

以前、暖色系と寒色系の違いについて記した(→詳細はこちら)が、そのトリックがここでも用いられていた様子。
なんとWikipediaにもこの件が取り上げられており、簡潔にまとめられているので引用させていただく。

黒い地に、パラパラと散らばる玉虫色の細い破片(研磨したアルベゾン閃石に見られる針の集合のようなものではない)が光る。光り方が似ているところから、アルベゾン閃石と間違えられやすい。」(以上wikipediaより引用)

新しく発見されたという中国・内モンゴル産ヌーマイト。
シルバーブルーの輝きが放射状に広がっている。
外観や特徴は内モンゴル産アルベゾン閃石に同じである。
どちらも珍しいが、ヌーマイトはかなりの希少石であり、決して身近な存在ではなかったはずだ。
また、色相から受けるインスピレーションは全く異なるはずなのに、なぜ両者が混同されているのだろう。
アルベゾン閃石をヌーマイトとして取り入れ、流通を増やしたのだとしたら、高級品だけに衝撃は大きい。
中には画像を編集して石をむりやり赤く見せているところまであるが、大丈夫なのか。

ヌーマイトに関して、私の手持ちにアルベゾン閃石は無かった。(→あったが若干異なっていた。こちら
私が最初に手に入れたヌーマイトが「本物」であったからこそ違和感を覚えたのは確か。
尊敬する大先輩であり、お世話になっている日本のディーラーさんがツーソンで仕入れられたものだった。
過去にその方から譲っていただいた思い出のヌーマイトの写真を下に掲載した。
氏には心から感謝し、今後のご活躍をお祈り申し上げる。



左はヌーマイトの原石、右は初めて手にした思い出のヌーマイト


14×10×8mm

2012/10/19

ザギマウンテンクォーツ/消えたアイスデビル


ザギマウンテンクォーツ
Zagi Mountain Quartz
Zagi Mountain, Mulla Ghori, Khyber Agency, FATA, Pakistan



本当ならここで、美しいアイスデビル(→考察はこちら)をご紹介できるはずだった。
ある方のご厚意で手元にやってきたアイスデビル。
透明度の高い塊状の水晶で、悪魔的なイメージは全く感じられなかった。
切断面が著しいため、鉱物標本としての価値はないが、癒しには成りうるだろう。
ただ、約3000円という市販価格はやや高額であり、300~500円程度が妥当なのではないかというのが素直な感想だった。
想像するに、加工した水晶の残りであろう。
ヒーリングストーンとしては、同じマダガスカル産出のジラソルのほうが美しいと感じる。

天然石に同じものは存在しない。
お返しするさいに何かあってはと、封筒に入れて倉庫の奥にしまった。
翌日、撮影のため封筒を手に取ったら、中身は空っぽになっていた。
その間たった一日。
家族は旅行中で留守だった。
ご厚意を裏切るようなかたちになってしまったことを情けなく、恥ずかしく思う。

ここ数日、強い違和感が続いていた。
一週間前、二階の窓めがけて飛んできた漆黒の虫事件(前回の記事参照)以降、有り得ないようなトラブルが次々に起きていた。
最も衝撃的だったのは肋骨損傷で、あと一秒遅ければ死んでいたかもしれない。
実は肋骨損傷に関わるPTSDが、私が障害者として生きることになるきっかけだった。
まだ治っていないことをつきつけられた。
今回は事故に過ぎないのに、精神的ダメージは思ったより大きかった。
あまりに災難が続くため、遺書まで書いたほどである。

翌朝、アイスデビルは消えてしまった。
むりやりで申し訳ないのだが、どことなく外観の似たこの石をご紹介させていただこうと思う。
ザギマウンテンから産出したという、ゴールドに輝く水晶。
実に美しい。
鉄分による発色だろうか。
こんなものが眠っていたとは、ザギの魅力は計り知れない。

ザギマウンテンクォーツの流通は急激に増え、さまざまなバリエーションを見かけるようになった。
このゴールドの他にも、青い針の入ったザギマウンテンクォーツが見つかっている(→せっかくなので出品しました)。
いわゆるブルールチルにそっくり。
インディゴライト入りと紹介しているところもある。
ザギからはショール(ブラックトルマリン)の産出記録があるが、インディゴライトについては記録がない。
可能性があるとしたらアクチノライトではないかと思うのだが、見た目から判別するのは困難であった。

参考)ザギマウンテンは聖地ではなかった?

http://usakoff.blogspot.com/2012/08/27.html


ザギマウンテンは広い。
こんな珍品があったことに驚かされる。
私を助けてくれたのかもしれない。
或いはアイスデビルは、無意識に眠る心の闇を明らかにするクリスタルなのかもしれない。
そう思いながら、消えてしまったアイスデビルを必死で探している。


43×32×25mm  31.57g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?