2012/12/07

インファナイト


インファナイト
Infinite Stone
Northern Province, South Africa



独特の優しい模様や手ざわりを特徴とするヒーリングストーン、インファナイト(インフィナイト)。
クリソタイル(白石綿)を中心に構成されるサーペンティンの一種である。
1996年、南アフリカにおいてスティーヴン・ロスリー氏により見出され、世界に紹介された。
アジョイトを求め南アフリカを訪れていたロスリー氏は、この石に特別なインスピレーションを受け、"無限" を意味するインファナイトの名を与えたという。
インファナイトはその後、ジュディ・ホール氏やロバート・シモンズ氏といった世界的クリスタルヒーラーから高い評価を受けた。

インファナイトはいわば、白石綿の塊。
石綿から成る鉱物と聞いて驚いてしまう方もおられるかと思うが、砕いて吸引しない限り問題ない。
石綿、アスベストにまつわるヒーリングストーンは多い。
いまや私たちの命を脅かす存在と成り果ててしまったアスベストも、古代より神聖視されてきた鉱物のひとつだった。
以前も記したが、鉱物が人類にもたらした負の歴史は、自然には存在し得ない量の資源を掘り起こし、暮らしを豊かにしようとした人類への報いだと思っている。

先日、インファナイトをお探しとのご相談を受けた。
私にはその方に確かな情報をお伝えすることができなかった。
というのも、どうもおかしなことになっている。
ネットでは、鮮やかなグリーンやイエロー、茶系の石がインファナイトとされ、高価なブレスレットとなって紹介されている。
発見者であるスティーヴン・ロスリー氏自ら紹介したと説明しているところがあるのは不可解。
国内に限ったことではない。
私が持っているインファナイトとは、色、質感ともに、明らかに異なるものである。

写真は3年ほど前に入手したインファナイト。
現在インファナイトとして流通している石とは異なる石だ。
もう採り尽くされてしまったのかもしれない。
インファナイトの魅力は、人を選ばない(名目上はヒーラーのための石なのに、ヒーラー以外も楽しめる)というアバウトさ、親しみやすさ。
私の脳内のレアストーンリストに長らく残ったままになっていたこの石に今、何が起きているのだろう。

初めてこの石を知ったとき、インファナイトは「サーペンティンとクリソタイルの混在した非常に珍しい鉱物」と紹介されていた。
なぜ問題にならないのか、長らく不思議に思っている。
サーペンティンは鉱物のグループ名。
アンチゴライト、リザーダイド、そしてクリソタイルの3つの鉱物を総称してそう呼んでいる。
そう、クリソタイルはサーペンティンの一種を指す言葉なのだ。
リザーダイドについては、北欧から産出する鮮烈な黄緑色の石が知られているが、リザーダイドとサーペンティンが混在した鉱物という言い方はしない。
リザーダイドについてはなかなか流通しないから、レアストーンと呼んで差し支えないと思う。
かつてのインファナイトも珍しかったから、希少価値がついたのだ。
現在、世界的に流通している色濃い緑や黄色のインファナイト。
どう見ても他所から産出したサーペンティン。
残念ながら、サーペンティンは世界中から産するありふれた鉱物である。

写真は手持ちの南アフリカ産インファナイト。
4,5年前に入手した。
ロスリー氏の資料をあたると、どうもこのグレーグリーンの石が本来のインファナイトのよう。
インファナイトの詳細な産地は明かされておらず、詳しい産状はわからない。
同じ土地から、濃い緑や黄色のインファナイトも産出するということになるのだろうか。

もともとサーペンティンが好きだった。
サーペンティンといえば深緑から黄緑、イエローと色合いは幅広く模様も多彩。
インファナイトのすべすべの手触り、優しい色合いや質感、惑星のような独特の模様は、そんなサーペンティンを凌ぐ魅力に溢れていた。
しばしば "ヒーラーズ・ストーン" と紹介されるインファナイト。
この表現をすっかり気に入った私は、ヒーリングストーンを軒並みヒーラーズ・ストーンとご紹介してしまった。
反省している。
私はクリスタルヒーラーではない。
日本にクリスタルヒーラーが登場したのはごく最近のこと。
過去には危険思想やカルトと混同され嫌悪される日本を離れ、欧米や南米、インドなど、海外を拠点に活動される人のほうが多かった。
実際、日本でやるとそうなってしまう。
パワーストーンは苦手だという方からお話を伺うと、恐ろしい新興宗教やオカルト思想の一種とお感じの様子。
そうではないというと嘘になる。

かつて、鉱物を愛する人々は、パワーストーンブームがおかしな方向へ向かうことを警戒していた。
鉱物と併せ、ヒーリングストーンも好む人々の間には、掟のようなものがあった。
(私の周りだけかもしれないが)自分たちの中からクリスタルヒーラー、つまり特別な人間が誕生してはならないというものだ。
選民意識への反発、石への敬意と探究心、謙虚さ。
誰でも平等に、興味を抱いたあらゆる石を手にするべきだという、節義をわきまえた人々が居た。
石ではなく自分自身を愛する人々には、そうした発想は皆無だった。
今回のアセンションには、クリスタルヒーリングにおける過ちが関係している。

忘れてはいけないことがある。
インファナイトはクリスタルヒーラーになれる石ではない。
或いは、インファナイトが絶対的な「無限」を意味するとは限らない。
スーパーセブン、ティファニーストーンエイラットストーン、そしてこのインファナイトまでも、クリスタルヒーリングを愛する人を試すかのような存在になってしまった。
欧米において、南アフリカ産にそっくりな中国産インファナイトが堂々販売されているのを目撃した。
中国で「牛油玉」と呼ばれ大量に流通している岩石みたい。
名前が恐い。
南アフリカ産がサラサラなのに対して、中国産はツルツル光っている。
本来のインファナイトを一度でも手に取ったことのある人なら気づくはずだが、写真だけでは判断できない難しさがある。


インファナイトについて語るロスリー氏




ダライラマ似のスティーヴン・ロスリー氏自らインファナイトについて語っている
手にはジュディ・ホール氏やロバート・シモンズ氏の著書も
紹介されているのはグレーを基調としたかつてのインファナイトに同じもの


未測定

2012/12/04

セフトナイト/アフリカンブラッドストーン


アフリカンブラッドストーン
African Bloodstone/Seftonite
Arathi Highlands, Swaziland



一見するとインド産ブラッドストーンにも見えるこの石は、アフリカのスワジランドという珍国からやってきた。
日本の収集家さんが即売会で入手されたものと伺った。
スワジランドのインパクトに驚き、条件反射的に購入した。
ブラッドストーンではないが、よく似ているため、アフリカンブラッドストーンの愛称で呼ばれている。
他にセフトナイト(日本で訳されている例は見当たらなかった)と呼ばれたり、チェリーオーキッドアゲート、チェリーボルケーノアゲート、ボルケーノアゲート等々、流通名はまちまち。

鉱物としてはマーカサイトを豊富に含むカルセドニーの一種で、微細なパイライトを伴って発見されるという。
見た目よりもずっと軽い。。
研磨品はまるで火山性オブシディアンのような質感だが、オブシディアンとは異なり結晶している。
灰緑色と赤の模様は鉄分に由来する。
文末に研磨品の写真を掲載した。
磨くと光沢を増し、色合いが鮮明になるという特徴がある。
以上がアフリカンブラッドストーン/セフトナイトのプロフィール。

当初、私にはスワジランドがなんだか分からなかった。
国の名前だということはわかった。
スワジランドは南アフリカに隣接する小さな国で鉱業が盛ん、ということくらいしかわからない。
後日、この未知の鉱物がなんと、欧米で高い評価を得ていることを知る。
一見した時は同じものとわからなかった。
原石とはあまりに印象が違いすぎる。
もう一度、文末に掲載の研磨品をみていただきたい。
チェリーやオーキッド(蘭)のイメージとはかけ離れた、著しい変身の結果が見て取れると思う。
スワジランド産というヒントがなければ気づかなかった。
研磨前・研磨後のギャップは、この石の明暗を分けると言っても過言ではない。
日本で知名度を上げるには、ビーズへの加工が前提。
アフリカンブラッドストーンを日本市場に定着させるには、研磨後のそれを、癒しのパワーに変える必要がある。

ふと、思い立った。
朱色のインパクトが強すぎるのだ。
そう、神社である。
全国の数ある神社の中から、この石のイメージに合う神社をチョイスすればよい。
1分後、この石の和名が決まった。


日本三景、瀬戸内海に浮かぶ厳島神社の鳥居を見ていただきたい。
社殿との色合いのコントラストは、まさにアフリカンブラッドストーンの研磨品そのものである。
平安時代を思わせるこの荘厳な姿は、癒しに通ずる(断言)。
ゆえに、アフリカンブラッドストーンはヒーリングストーンに間違いない(断言)。
幸い、まだ誰もこの石のことをご存じないようである。
ここぞとばかりに、クリスタルヒーリングにおける新たな可能性を示唆しておきたい。
謎の国・スワジランドから届けられたこの石は、日本人の美意識にふさわしい癒しのクリスタルだったのである。

以前広島を一人旅したさい、船に乗って厳島神社を見に行ったのを思い出す。
確か、満ち潮でほとんど見えなかった記憶がある。
フェリーで上陸した宮島は、鹿だらけだった。
鹿は神の使いだという。

話を元に戻そう。
由緒ある日本の美意識を現代に伝えるこのスワジランド産・厳島神社は、ヒーリングストーンとしての新たなる可能性を秘めている。
ただし、日本市場向けに、ビーズに加工する必要がある。
厳島神社といえど、好みはわかれるかもしれない。
原石のままであれば、カルセドニーならではのデリケートな雰囲気に、癒しを感じる方も多いのでは。
深いグリーンの色合いや優しい質感を生かし、原石に近い形で楽しむ方法はないものかと考えている。




53×33×15mm  26.97g

2012/11/30

フォーダイト


フォーダイト Fordite
Ford Rouge Plant, Detroit, Michigan, USA



フォーダイト、またの名をデトロイト・アゲート。
キラキラ輝くラメ状の細かな粒子、鮮やかな色合い、独特の模様が楽しめる。
アゲート(めのう)でないのは一目瞭然。
その正体は、米国はフォード社の自動車工場で塗装に用いられたラッカーだという。
しかしながら自動車には全く興味のない自分には、フォードが一体何なのかわからない。
アメリカの歴史に深く関わり、単なる民間企業の枠を超えた伝説的存在のようだ。
必死で調べたことをまとめたのが以下。



米・デトロイトに本社を置くフォード社は、ヘンリー・フォードという人物により1903年に創業された自動車メーカー。
100年以上に渡って世界の業界をリードしてきた会社で、戦争や不況といった困難を乗り越え、現在も存続しているという。
いわゆる「流れ作業」を最初に取り入れたのもフォードであったとのこと。


流れ作業といえば、子供の頃に観たチャップリンの映画。
あまり良いイメージではないのだが…
それはさておき、この不思議な宝石の産地は、工場での塗装部門。
1940年~80年代にデトロイトの工場から出た副産物をリサイクルして出来たのが、フォーダイトということになるようだ。
フォード社では、長い間ラッカーを用いた車体の塗装を行ってきた。
流れ作業において飛び散ったラッカーが積もり積もって、フォーダイトの原形(→写真はこちら)が完成した。
たまたまカットしたところ見事な宝石になったため、噂が噂を呼んで、広まっていったようである。

現在工場は閉鎖され、国外へ移転している。
80年代を最後に塗装の方法も変更になった。
今後中国以外から出てくることは無い。
あるときを境に消えたという神秘性や、カットして初めてわかったその美しさと偶然性こそが、フォーダイトの魅力といえよう。
こんなものを宝石にカットしようと思った人がいたのは驚きである。

工場からの副産物といえば、ジンカイトやスウェデッシュブルーが有名である。
スウェデッシュブルーと異なるのは、産出場所や埋蔵量(?)が特定できるため、いつ市場から消えるかもはっきりしているということ。
1940年代の古い素材を用いたフォーダイトは、モノクロに近いシックな印象で、数が少ないために希少価値が付くのだそう。
写真のフォーダイトはサイケデリックな色彩が好まれた70年代のフォーダイトのカット品で、同じ塊からカットされたものと伺っている。
最末期の80年代のカット品は、時代を反映した派手な色合いが特徴で、市場に出回っているものの大半がこれにあたるらしい。

こんな個性的な色を自動車に使っていたというのは、考えてみれば不思議なこと。
国産車は高級品になるほど白や黒、シルバーといった無難な色になる。
60~70年代のベンツなど、欧米の車に見られる、芸術性の高いカラーリングやデザインには、車に興味のない私でさえ感動を覚える。
ヴィンテージの車を愛する知人が多い私は恵まれている。
国産車にそういった美意識が皆無なのは、自家用車における歴史が浅いこと、個性より効率を重視した結果といえるかもしれない。

思うに多くの日本人は、車に芸術性など求めないのであろう。
空調やカーナビゲーション、イミテーションの毛皮などは、自動車には本来必要のないものである。
ましてや安全確認のおそろかになるテレビ、他車の走行を妨げる過剰なイルミネーション、騒音を奏でるオーディオなどを積むのは、不幸な事故につながる危険行為に他ならない。
車は人の命を一瞬にして奪う。
不幸な事故を極力避け、通行人に不快感を与えないよう、芸術性にこだわるべきである。
それができない者には軽トラの利用が適している。

話が逸れてしまった。
フォーダイトには自動車文化を彩ってきた遊び心が詰め込まれている。
米国ではアクセサリーとして人気も高い。
今後ヴィクトリアストーン同様、中国からの模造品が出回ることが危惧されるから、興味のある方はお早めに手にしていただきたい。


40×25×5mm, 31×30×5mm  計10.25g


この度は多くの皆さまにオークションにご参加いただきました。
本当にありがとうございました。
皆さまの温かいメッセージに涙し、励まされ…
オークションも最終段階に入りました(なんと、まだ終わっていなかったんですね!)

最後まで全力で頑張ります。
この場を借りて、皆さまにお礼申し上げます。
次回は池袋にてお会いしましょう(フォーダイトも参ります)!

2012/11/29

フェナカイト(ロシア産)


フェナカイト Phenacite
Malyshevo, Ekaterinburg, Ekaterinburgskaya Oblast', Russia



世界で最も希少な鉱物のひとつにして、石を愛する人なら誰もが手に入れたいと望んでいる。
それがフェナカイト(フェナサイト/フェナス石)と呼ばれる石である。
もちろん他の鉱物と共生した標本(→こちら)などではなく、ロシア、マリシェボ産フェナカイトの単独結晶ということになろう。
収集家なら一度は憧れる希少品、高い波動を持つニューエイジストーンとしても知られるこのロシアンフェナカイト。
マリシェボのフェナカイトは枯渇しかけているから、知名度の割に良品は少ない。

フェナカイトといえばミャンマー産。
比較的流通があり安価で手に入る。
ミャンマー産は小さいながらクリア、結晶の様子も独特でわかりやすい。
結晶の複雑さ、美しさで選ぶなら、ミャンマー産より若干入手しづらいブラジル産もおすすめ。
もしあなたがハイレベルなフェナカイトにこだわるのなら、ロシア産をひとつは持っておきたい。

写真は最も価値の高いとされる、ロシアはウラル地方、マリシェボ産のフェナカイト。
マリシェボ産の特徴である、グレーの母岩を伴う大きな標本で、一目で気に入って購入した。
ロシアンフェナカイトの完全結晶の多くは、写真のように母岩に覆われている。
岩の隙間に見える透明結晶に浮かぶ虹が美しい。

フェナカイトは近年、パワーストーンにまでなって登場している。
特にパワー満載だというロシア産に憧れ、お探しの方が多いようだが、なかなか予算に見合わずお困りと聞く。
安いものには必ず訳があるから、あせらずお探しになることをお薦めする。
ロシアンフェナカイトがどうしても必要な場合は、なるべく切断、加工されていない原石を探してみよう。
マリシェボならではのこのグレーの母岩がないと、いったいどこから来た何者なのか、パワーで判断するしかないからである。




25×19×15mm

2012/11/25

アイスエンジェル/見つかったアイスデビル


アイスエンジェル™
Ice Quartz
Madagascar



先日出会った謎のクリスタル、アイルデビル。
お世話になった方のご厚意でお借りしたにも関わらず、翌朝には消えてしまった(→なりゆきについてはこちら)。
必死になって探したのに、いっこうに見つからない。
大切なコレクションをお預かりした以上、弁償しなければならない。

問題はどこから入手するか。
渦中の人物からの購入品でないことは伺っていた。
アイスデビルの正規取扱店を自称するその人物は、どうも日本人かどうかすら疑わしく、会社の存在自体危うい。
詳しいことはここでは記すことができない。
かの人物の取り扱うヴィクトリアストーンアンダラクリスタルはすべて中国産もしくはオークションからの転売品であり、しばしば劇薬や産業廃棄物が混入しているという。
信じがたいことだが、その人物の扱う鉱物を私はこの目で見ている。
悪寒がして処分してしまっただけに、説得力がある。
飯盛博士のご遺族との親交についても嘘であったとみられる
そのような人物から得体の知れない化学物質を買うことができようか(※注)

そんな折、偶然卸先で見つけた透明水晶の塊。
マダガスカル産出のアイスクォーツとあるから、もしかしたら同じものかもしれない。
すぐに注文した。
アイスデビルをお借りしていた方からは、代わりにはなり得ないことは明白にも関わらず、ご快諾いただいた。
たった一度だけ見たアイスデビル。
はっきり覚えている。
果たして同じものなのか。

燃えつきかけながらも必死で取り組んだオークションが終わり、一息ついた頃だったか、その水晶は我が家にやってきた。
意外な誤算だった。
マダガスカル生まれというその水晶は実に清涼で、強く純粋な光を放っていた。
残念ながらアイスデビルとは別物(何人かの方にご意見を伺ったが、異なるとのご意見のみ)。
アイスデビルの第一印象が「硬い」のに対して、届けられた水晶は「やわらかい」質感を持つという点で全く異なる。
そこで私は名案を思い立った。
アイスデビルとの違いを明白にすべく、私が勝手に名前をつけてしまおう、と。

かくしてアイスエンジェルという新しい高波動クリスタルが、うさこふにより勝手に考案された。
アイスデビルに対抗すべく、数秒余りで閃いたとはいえ、我ながら良い名である(自画自賛)。
実際、アイスエンジェルという名のヒーリングストーンは、ありそうでなかった。
新世代のクリスタル、アイスエンジェル™が世に誕生した瞬間であった。

いっぽう、アイスデビルは一ヶ月近く経っても見つからなかった。
わるい印象は全く受けなかっただけに、私自身の問題と自分を責めた。
ただ、アイスエンジェルが来てからというもの、状況は目に見えて好転していった。
この未知のクリスタルが、悲しみや不安をひとつずつ消していくかのように思えた。
一刻も早くあの方にアイスエンジェルをお届けしようと思った。
一つ一つチェックし、最もクリアな石2つと、レインボーの見える石、以上の3つを選んで、梱包に取りかかった。
ふと、しばらく見ていなかった愛用のグレーのポーチが目に入った。
今にも転がりそうである。
慌てて救助し中身を取り出した。
絶句した。
あれほど探し回ったアイスデビルが出てきたのだ。
のちに、お守りとして持ち歩いていたはずのガーディアンストーン/ガーディアナイト(H&E社)が一緒に入っていたことに気づき、神妙な気持ちになった。

急がないとまた消えてしまうかもしれない。
ひとつをアイスデビルと入れ替えてすぐに発送した。
実は、不安だった。
あれほどクリアだったアイスデビルが、濁って見えたから。
石には魂が宿る。
目に見えない力についてはわからない。
だが、私がもしあの石を濁らせてしまったのだとしたら、私の心の濁りが原因だ。
あえて事前にご連絡せず、手紙をしたためて発送した。

それから十日余り。
今だご連絡がない。
事前にお伝えしなかった自分に問題があると感じ、メールを送ったところ、すぐにその方から変わらぬ元気なお返事が返ってきた。
お忙しかったとのこと、荷物のほうは無事に到着していると伺い、ホッとした。
ただ、不可解な点がある。
2日前に到着したばかりとのこと、十日前には送ったはずだから、もしかすると何らかのトラブルに巻き込まれたのかもしれない。
奇想天外な出来事が続きすぎて、もう慣れてしまった。
気になるのはアイスデビルの変化。
お返ししたさいの様子について、恐る恐る伺った。
意外なお返事をいただいた。
アイスデビルの奥から虹が見え、輝いているとのお話。
ダメージによるクラックをそう表現してくださったその方のご配慮には恐縮している。
こちらを出発したときには虹は無かったから、長旅がこたえたのだろう。
石の濁りについては、伺うタイミングを見失ってしまった。

人間なら誰しも夢を見る。
こんないいものを見つけたならば、もっと手に入れておこう、と。
もしアイスエンジェルが私に幸運を運んできてくれたのなら、追加で注文するべきではない。
タイミングに拠っては全く異なる石が届くのがロット買いのデメリット。
私はこの限られた石に感謝し、不思議な偶然を信じることにした。
アイスデビルとの比較用として、安易にお配りするのはやめるようと思った。
ロットでの購入だったが、量は思ったより少なく、無料でお配りすることはできない。
もし本当に必要としている方がおられたら、お譲りしたい。

推測になるが、アイスデビルは中国産水晶の加工後の欠片ではないだろうか。
加工される水晶はもっぱら、中国またはブラジル産水晶である。
欧米向けに加工されるブラジル産とは異なり、中国の水晶は独自のルートで日本に入ってくる。
中国産水晶は産出の多さに関わらず、極めて透明度が高い。
原価も安いうえ、日本であれば地理的にも有利。
加工された余りについても需要が見込めるのは、どう考えても日本だろう。
以上は推測である。
どうか事実とは受け止めないでいただきたい。
参考までに、日本までの国際郵便の送料が最も高い地域に、マダガスカル及びブラジルが分類される旨、記しておきたい。





注:悲しいことに、アイスデビル販売者の信じがたい噂はすべて事実でした。アンダラ等は絶対に直接触れてはいけません。ヴィクトリアストーンとされる染色品等も危険です。小さなお子様やペットの命を守ってください。アイスデビルは500円を超えない範囲でのご購入を強くお薦めします(詳細はこちら)。


35×27×14mm  計23.23g

2012/11/18

ネビュラストーン


ネビュラストーン
Nebula Stone
Remote Mtn., Córdoba, Veracruz-Llave, México



深いダークグリーンの色合いと、神秘的なゴールドの輝き。
銀河系の彼方を思わせる模様を持つこの石に、星雲を意味するネビュラの名が与えられた。
写真で見ると儚さが漂うが、手に取ると実に艶やかで、色濃く重厚感がある。
気に入っていつも見えるところに飾っていた。
手に入れた当時は、かなり珍しかった。
アゼツライトをきっかけに日本で知名度を上げた米Heaven&Earth社が、このネビュラストーンを取り扱っているためか、現在はあちこちで見かけるようになった
もうレアストーンには含まれない…
はずだった。

先日のオークションでネビュラストーンを紹介させていただいた。
反響は大きかった。
注目に値する石だとは思っていなかったため、驚いた。
また、予想外の価格を付けたネビュラストーンをご落札くださった持ち主様はしかるべき人物だった。
過去には、どなたかにプレゼントしようと思って手に取ったこともあった。
今日まで手元に残しておいて良かったと心から思う。
しかしながら、知名度が上がっているはずなのに、お持ちでない人が非常に多いのは奇妙である。
ふと、国内でどれくらい流通しているのだろうかと、画像検索をかけてみた。

仰天した。
水疱瘡(みずぼうそう)のような恐ろしい発疹模様の石がズラーッと出てきた。
儚いペールグリーンの地肌に、著しい症状が数え切れぬほど、これは重症である。
あまりの衝撃に、私まで水疱瘡になりかけた。
大量に出回っているのに、何かが違う。
そう、確か、マダガスカルから産出するストロマトライトか何かだ。
マダガスカル産と書いてあるから間違いない。
もはや星雲ではない。
水疱瘡石(みずぼうそうせき)の和名がふさわしい。

1995年、メキシコにおいてロンとカレンの二人により発見されたネビュラストーンは、ヒーリングストーンとして現在も高い評価を受けている。
発見当初はネフライトの一種だと思われていた。
調査の結果、リーベカイト、アノーソクレース、エジリンと石英から成る混合石であることが判明したという。
明るいグリーンは微細なエジリンに覆われたリーベカイト。
石英を多く含む部分がツヤのある暗いグリーンとなり、独特の模様が生まれるという。
鉱物としては非常に珍しい組み合わせで、他には例がないとのこと。

では、あの水疱瘡はいったい何の石だったか。
確か、ストロマトライトから成るオーシャンジャスパーだったはず…
そう思い込んで大騒ぎしていたら、カンババジャスパーだよ、とツッコミをいただいてしまった。
そうだった。
少なくとも4年ほど前に大問題になったから、覚えている。
まさかカンババジャスパーがネビュラストーンにとって代わり、本物として販売されているなどと、予想できようか。
カンババジャスパーはマダガスカルから中国に流れ、ビーズにまでなるくらい多くの産出がある。
ネビュラストーンのほうは数は圧倒的に少なく、両者の価格には大きな差異がある。
一緒にするのは問題がある。
ところが、市販価格はほぼ、変わらない。
間違えて買ってしまった方もおられるかもしれない。

不安に思って、発見者であるロンとカレンに直接問い合わせてみた。
二人はカンババジャスパーが「ネビュラストーン」として流通していることを、たいそう悲しみ、お悩みのご様子だった。
是非本物をと、綺麗なポリッシュをお薦めいただいたのだが、支払い方法が折り合わず、断念となった。
お二人は最後まで親切に、誠実に接してくださった。
ネビュラストーンはメキシコからしか産出していないことを強調しておられたのが印象的だった。
お二人の真摯な姿勢が、この石の奏でる壮大なる宇宙の静寂に重なって見えた。

状況はつかめた。
十日ほどたったある日、再び画像検索をかけてみた(※この結果はイメージです)。
再び仰天した。
ショッキングな薄緑の水疱瘡ではなく、シルバーメタリックなエイリアンが並んでいる。
メキシコ産ネビュラストーンとは書いてあるのだが、不気味である(マダガスカル産カンババストーンと呼ばれているもののよう)。

マダガスカルから新しく発見されたというネビュラストーンは売り切れていた。
たった一週間余りで完売とはまた、奇妙である。
ネビュラストーンとカンババジャスパーの混同については長年問題視され、発見者の方まで伝わるほどに深刻な事態となっている。
それを販売者が知らないというのは不自然に思える。

あれからもう一ヶ月経つだろうか。
メキシコ産ネビュラストーンがリニューアルのうえ、新発売されているようである。
なぜか水疱瘡石(みずぼうそうせき)に逆戻りしている。
つまりネビュラストーンは結局カンババジャスパーのまま。
売り手のほうも本物のネビュラストーンをよくご存じではなく、対応に追われた挙句、諦めたのかもしれない。
しかしながら、発見者や関係者から仕入れず、不確かなルートを通したのは明らかである。
皆さまも、自己責任で購入いただきたい。


参考)パワーに騙されず真実を見抜かれている例
http://d.hatena.ne.jp/tarosource/20070508

ムンクとはまさに言いえて妙。
筆者は芸術的・霊的に高い領域に達しておられる方とみられる。
筆者の指摘通り、本物のネビュラストーンは癒しの石とみて間違いない。
現在は素晴らしい能力者としてご活躍されていることだろう。


40×22×10mm  10.43g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?