2012/04/27

クォーツ(フローライト仮晶)


クォーツ(フローライト仮晶)
Quartz after Fluorite
Derwentwater, Lake District, England



フローライトが長いときを経て石英に変化した珍しい標本。
もともとの姿については、ナミビアのフローライトを見ていただくとわかりやすいかもしれない。
むしろ、あまりのわかりやすさに、当初見かけたときは仰天した。
形状はフローライトそのもの。
フローライトの面影だけを残して、石英に変わってしまった。

このように、元々の鉱物が他の鉱物に変化、若しくは入れ替わったものを仮晶と呼んでいる(参考:仮晶について素人なりにまとめたクリソコラの例)。
仮晶には、必然的に生成される大量生産ラインと、偶然に生成された限定ラインの二種類がある。
どんな世界においても、ファンに好まれるのは限定品。
過去に紹介したエジプトの星プロフェシーストーン、ノルウェーのアイオライトなどは後者にあたる。
これらは限定品ではあるが、いっとき頻繁に見かけたので、お持ちの方も多いと思う。

この標本も偶然の産物で、一度きりの産出であったものと思われる。
他に見かけたことは無いので、詳しいことはわからない。
産地は英国、湖水地方。
ピーターラビットの物語が生まれたことでも知られる湖水地方は、その作者であるビアトリクス・ポターが愛し、生涯をかけて守った土地である。
現在、このエリアの大半は、日本でいう国立公園に該当し、政府により保護されている。
この地に眠る貴重な資源の持ち出しは許されない。
鉱物の産地としては一般的ではなく、詳しいことはわからない。

鉱山から出た標本だが、鉱山の資料が見当たらないため、記載は避ける(※興味のある方はお問い合わせください)。
なお、ピーターラビットは、100年ほど前に実在したうさぎである。
彼女が飼っていたこのうさぎが、後に絵本の主人公となって世に出たのは偶然らしい。
ポターが家庭教師として教えていた身体の弱い子供のために作った絵本がその始まりと聞いている。
ビアトリクス・ポターの植物のスケッチはそれは見事なもので、素人の見解で申し訳ないのだが、絵本作家の領域を超えている。
以上はすべて私が中学生のときの記憶に基づく記述である。
間違っていたらツッコミをお願いしたい。

彼女の植物についての研究は、論文として紹介されるほどの内容にも関わらず、女性であるという理由で公にされることはなかった。
高校生の頃だったか、ナショナルトラストに興味を持ったのは、彼女がこの土地を守ろうとした理由がうわべだけのものではないと感じたから。
古いコレクションであるこの標本は、その事実を垣間見ることができる貴重な資料だと考える。
なお、私が幼い頃最も好んだポターの絵本は、「こわいわるいうさぎのはなし」であったという。


52×35×16mm  22.62g

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