2012/01/26

エレスチャル(オレンジリバー)


エレスチャルクォーツ
Elestial/Skeletal Quartz
Orange River, Northern Cape, South Africa



長い時間をかけて成長したために、内部から表面に至るまで、複雑な構造を示す水晶。
エレスチャルクォーツ、スケルタルクォーツなどと呼ばれている。
幾層もの結晶が折り重なり、光を反射して輝く。
標本の一部が白くみえるのは、粘土鉱物を取り込んだ状態で結晶しているため。
まるで迷路をのぞきこむかのような気分である。

世界の至る所から、個性豊かなエレスチャルクォーツが見つかっている。
形状や色合いから、おおよその産地は推測できる。
有名なのはブラジル産だろう。
さまざまなエレスチャルが産出しており、中にはゴツゴツとした形状のジャカレーや、ヒーリングストーンとして名高いスーパーセブンなども。
他に無色透明のメキシコ産、セプター寄りの形状と内包物のみられるマダガスカル産、濃厚なスモーキーアメジストが味わえるナミビア・ブランドバーグ産、通好みのアルプス産、鮮やかなアメジスト・カラーが神秘的なインド産、近年流通し始めたパキスタン産など。
ニューヨークのハーキマーダイヤモンド及びハーキマータイプ水晶、オーストラリアのモララクォーツなどもこれに分類されていることがある。
どこまでがエレスチャルかを定義するのは難しい。
現在はランダムな結晶構造を持つ水晶を総じてエレスチャル、もしくはエレスチャル風と表現している。

こちらは南アフリカとナミビアの境界を流れるオレンジリバー流域から届けられたエレスチャル。
パキスタン産に似ているが、より大きく、より豪快。
繊細なガラスに喩えられることの多い水晶。
このエレスチャルはガラスどころではなく、プラスティックのように頑丈かつ半端ない透明感を漂わせておる。
濃厚なスモーキーのふちどりもまた、この水晶の個性を引き立てている。

アフリカまで行って採ってきたという、国籍不明のオッサン(どことなくカナダ風のハンター風?)から、数年前にいくつか購入した。
オッサンは確かコレしか売っていなかった。
後にも先にも同じようなエレスチャルには出会っていない。
写真ではポイントのように見えるのだけれど、途中でグネっと曲がっていて、先端も水晶とは言い難い不思議な姿をしている。

何億年もかけて結晶し、太古の叡智を宿すとされるエレスチャルクォーツ。
天使の祝福を受けたヒーリングストーンとして話題になり、いっときは誰もが買い求めた人気商品だった。
しかし、徐々に質は落ち、白濁した内部さえ見えない粗悪な原石が蔓延する。
エレスチャルということばが一人歩きを始める。
人気は蝕像水晶に移行していく。
パキスタン・ワジリスタン産の登場で、再び注目を集めつつあるエレスチャル。
比較的大きさがあり、透明感にあふれ、内包物によって時にゴールドに輝き、かつこれまでにない激安特価を叩きだした恐るべき救世主である。

正月に実家で見つけた、思い出の一品。
焼き魚のような香ばしさ。
世界に一つだけの、個性豊かな世界を楽しみたい。




75×37×35mm  77.95g

2012/01/22

フローライト(レインボー)


フローライト Fluorite
China/中华人民共和国



パワーストーンとしてお馴染みの、フローライト。
フローライトは本来、衝撃や温度差により破損しやすく、光により退色する性質があるため、加工には向かない。
欧米では原石の造形美を楽しむものとして、専らコレクションの対象となる。
中国は世界有数のフローライトの産出国に数えられ、豊富なバリエーションと高い品質を示す原石標本は世界的評価を受けている。

中国の鉱物は日本への輸出に際し、加工を視野に独自のルートをたどるため、産地不明となってしまうことが大半。
このフローライトの研磨品も、中国産ということ以外わからない。
湖南省のYaogangxian鉱山のフローライトに似ているような気はするが、いかんせん中国は広すぎる。
原形を留めておらず産地も不明瞭。
鉱物標本としての価値は失われたということを意味している。

ずっと、考えてきた。
中国の人々は難しい。
これは中国、香港などを渡り歩いてきた日本人からもしばしば聞かれる言葉である。
これまでに(チベット系中国人も含め)多くの中国人に出会ったが、心を開いて打ち解けることのできる人にめぐり会うことは無かった。
私の性格上の問題と少なからず関係しているように思えた。
協調性のなさ、隙だらけの言動、成り行き任せの仕事ぶりは、彼らの目指すものとは間逆に思えた。
いつだったか、飛行機で隣に居合わせた、日本語を話す年老いた男性。
彼が中国人だとわかったとき、歴史的な溝もまた、感じた。

「中国に来るつもりなら、最低限中国語は話せるようにしろ。自分の身は自分で守れ」
そう教えてくれた人がいる。
彼は、同じ中学の出身で、バイト先で一緒になった、いわゆる在日中国人。
予測不能な行動と豪快で無敵の発言、スマートな仕事ぶりは、わりと個性的なバイトたちの中にあって、異彩を放っていた。
彼は誰よりも仕事ができた。
彼女は8人くらいいた(あやうく自分もカウントされそうになったので逃げた)。
しかし、彼が社会的に認められることはなかった。
日本人ではない、ただそれだけの理由で、就職のさいに本来の実力を評価されず、無念の表情を浮かべていた。
彼は亡くなった私の母のお気に入りで、幼かった彼は母を慕っていたそうだ。

あれから十年以上が経つ。
まだ石を集めはじめた頃、美しさのみに惹かれ購入したフローライトのエッグ。
箱を開けるたびに広がる虹色の光景は、夢のように美しかった。
大切に箱に入れ、自室に保管していた。

近所の店で働く中国人留学生、Rさん。
いつも笑顔で裏表がなく、かなりの天然である。
誰に対しても誠実に、謙虚に接する姿が印象的だった。
震災の折、帰国するよう泣く母を振り切って日本に残った。
お名前を中国語読みでいうとどのような発音か?という私の問いに、彼は日本語読みで呼んでほしいと繰り返した。
週七日勤務し、大学に通うというハードな生活。
彼は日本をどう思っているのだろう。
どうしても聞けないまま月日は過ぎていった。

師匠に薦められて年末に観にいった映画、『新世界の夜明け』。
正確には見逃して、諦めていた中でのアンコール上映だった。
謎が解けた。(※文末に詳細を記しました)

国籍など関係ない、ありのままのその人を見なければ意味がない、そう思っていた。
なのに自分はいつの間にか、意図的に彼らを避けるようになっていた。
想いは通じないものと、諦めてはいたのではないか。
国境は越えられるかもしれない。
石もまた同じ。
そのことに気づかせてくださった素晴らしい人々との出会いを、今後に生かすことができるかどうか。

私はもうすぐこの街を離れる。
Rさんに聞いてみたかったことはある。
聞くべきでないことも理解している。
私には希望がある。
宝物だったこのフローライトと同じくらい大切なものが、世界にはまだきっとある。



『新世界の夜明け』
サイト:http://shinsekainoyoake.jimdo.com/

中国系マレーシア人、リム・カーワイ監督の映画作品。
大阪・新世界のドヤ街(?)に、うっかり中国から来日した場違いなお嬢様の波乱万丈なクリスマスを描いた涙と笑いと希望の物語。以下、感想。

関西以外の人には馴染みのない土地かもしれない。
主に大阪市西成区、浪速区(及び近隣地区)の一部を指して使われる。
新世界のすべてを知り尽くす人は、おそらく世界中探してもいないだろう。
テレビカメラが入ることの許されないエリアも多い。
そのため、大阪在住の人々ですら、大半はこの街で何が起きているか知らない。
中国人有名監督がこのストーリーを撮ればこれほど日本人に支持されることはないだろうし、日本人有名監督が撮れば完成するかどうかも微妙。そんな街。
国際的にニュートラルな立場に立つ新鋭、リム・カーワイ監督だからこそ作れた作品だと思う。
監督の両国への愛情と理解が、この作品を支えている。
人懐っこいのかしらないが、海外では日本人の立ち入れない領域まで入れていただくことの多い自分も、この街にはかなわないと思った。
少なくとも、映画を撮る自信は無い。
観客を笑わせ、泣かせる自信は全く無い。

日本にあって日本でない新世界という特異な街を知る上で、この映画は重要な内容となっている。
インターネットの影響か、興味本位でこの街に土足で踏み入る人が増えていると聞く。
彼らにはすべて見えている。
この土地に生きる人々に対して失礼であり、極めて危険な行為であることを知ってほしい。
現実に泣き崩れる前に、まずはこの映画を見て泣いてほしい。


41×31mm  87.48g

2012/01/19

アンデシン/ラブラドライト


ラブラドライト Labradrite
産地不明



透明感のある赤にグリーンが混ざりこみ、所々イエローに透けるさまが、手の込んだ抽象画を思わせる。
2009年頃に出回った、中国産のアンデシンにそっくりだが、こちらはアフリカのコンゴ産出、鑑定の結果ラブラドライトと判明したらしい。
実は、宝石質のアンデシンはまだ持っていなかった。
以前から気になってはいたのだが、高すぎて買えなかった。
昨年末、ようやく池袋ショーで購入したのがこれ(表記はラブラドライト)。

2002年にコンゴのニイラゴンゴ火山で発見されたというこの石は当初、ラブラドライトかアンデシンかの議論で盛り上がったという。
宝石質のアンデシンは非常に稀で、そうとわかったときは誰もが驚いたそうだ。
アンデシンはナトリウム:カルシウム=6:4、ラブラドライトはナトリウム:カルシウム=4:6と成分は極めて近いため、この石は微妙な差異によりラブラドライトと判定されたのだろう。
見た目は中国・内モンゴル産のアンデシンと同じで、素人には区別がつかない。
価格は1カラット越えで2000円弱(酷い値切り方をしたのでわからない)。
鮮やかなレッド、グリーンの発色は、銅のインクルージョンによるものらしい。
ラブラドライトだから特価なのだろう思い、購入した。

実は、コンゴやチベットからアンデシンが産出するというのは知らなかった。
ずっとモンゴルのあたりから来るものと思い込んでいた。
お店の人に尋ねると、わからないという。
昨今のレッドアンデシンのほとんどはビーズで流通しており、原石標本を見かける機会がなかったため、見落としていた。
ただ、コンゴからの産出は僅かな量に過ぎず、現在は産出していない貴重品のようである。
なぜここまで値下がりしたのだろう。
ニイラゴンゴ火山における産状を、具体的に示す資料がないのも不可解ではあった。

つい先ほど、それに関連するとみられる記述を発見した。
真偽については触れないが、実に興味深い推論が展開されている。

コンゴ産アンデシンは中国の内モンゴル産、赤や緑の色合いは人工処理による発色
http://www15.plala.or.jp/gemuseum/gemus-sustn.htm

ここでは内モンゴル産の黄褐色のアンデシンが、処理により赤や緑となり、コンゴ産・チベット産として流通した旨説明されている。
中国の研究者の技術情報が流出したようである。
異なる三つの産地から発見されたにも関わらず、組成や特性がほぼ同じであることが判明し、改めて調査が行われたらしい。
処理した原石を各鉱山にばら撒いたものとする大胆な仮説は非常に興味深い。
なぜなら、私も同じことを考えていたからだ。
では一昨年、スピ系のイベントでアンデシンのブレスレットのみ販売していた、無口なクリスタルヒーラー(?)は偽物だったということになるのだろうか。

このところ人工宝石に興味が向いていたので、お手ごろ価格で美しい石が購入できて満足している。
おそらく中国産だと考えられるが、コンゴ産と明記されていたため、産地は不明としておきたい。
いわゆるレッドアンデシンは、現在も数万程度で販売されている。
タイ経由で仕入れるなどして、販売者に悪気はないのだとするなら、この件に関して大声で文句を言う気にはなれない。
なお、中国では2008年北京オリンピックのさい、公式宝石/国家の象徴としてその赤いアンデシンを掲げ、開催を祝ったといわれている。



※この件に関する研究論文が幾つかあり、いずれも合成石という結果が出ていました。また、商業サイトにおける鉱山の写真は、素人が見ても不自然で、強い違和感を覚えます。ディーラーの良心を信じたいものです。(12/08/05 追記)


1.06ct

2012/01/17

エイラットストーン


エイラットストーン
Eilat Stone
Eilat, Be'er Sheva, Israel



石は、霊的交流のしるしである。このような神の石、行動を表す石、示現や信仰の場所の部類は、容易に偶像崇拝の対象になっていた。そこで、モーセの命令でこれらは破壊されねばならなかった。( Lev. 26,1 ; Num. 33,52 )

イスラエルの青い涙、エイラットストーン。
ソロモン王が愛した石として、キングソロモンストーンとも呼ばれている。
銅の二次鉱物から成る混合鉱物で、クリソコラ、ターコイズ、マラカイト、テノライトなどから成り、アースカラー(ブルーグリーンの色合い)が強いほど高品質とされる。
イスラエルのナショナルストーン(注2)としてご存知の方も多いかもしれない。
紀元前から神聖視され、旧約聖書にも登場する歴史ある石である。

著名なクリスタルヒーラー、メロディ氏やジュディ・ホール氏が著書で取り上げたため、英米で盛り上がり、その後日本にも飛び火した。
ヒーラーには欠かせない石、超能力をもたらし、あらゆる問題を解決する奇跡の石として、高い人気がある。
ただし、イスラエル政府が輸出を制限しているため、入手は極めて困難。
そのため、コンゴやメキシコのクリソコーラ、マラカイトやターコイズなど外観の似た天然石をエイラットストーンと紹介していることが多い(注1:本文下に詳細及び参考写真を掲載)。
エイラットの土地の名を冠した由緒ある石だから、産地は問わないものとする売り方には違和感を覚える。

私がこのエイラットストーンを知ったのはいつだったか。
日本での流通はまだ無かった。
しかしながら日本からのオファーがイスラエルに殺到し、価格は跳ね上がり、ユダヤの民が富を得るのはもはや時間の問題と思われた。
写真のエイラットストーンは、先手を打って(?)現地の骨董商に連絡をとり、入手したもの。
イスラエルの民芸品として、エイラットストーンを入手しておきたいと思った。
使いみちがわからないのでお守りにしている。

写真のイスラエルからの民芸品と、欧米のヒーラーの間で数年前から流れているグレーの入った研磨品(注1)、恩師でもある鉱物店の社長さんがイスラエルの鉱山まで視察に行かれ、仕入れたという原石。
以上の3種類が、私の手持ちのエイラットストーンである。
この中で最も信頼性のあるのは、社長から直接譲っていただいた原石だが、衝撃的に地味だった。
「粉砕した白のチョーク10グラムに、ターコイズ粉末をひとつまみ入れてよくかき混ぜ、天日干しで固めた」ような感じ。
店頭に並ぶ箱詰めの段階でそれを知り、ひたすら選ばせてもらったにも関わらず、いわゆるアースカラーの石はひとつもなかった。
社長の話では、鉱山にはかすかに青緑をおびた岩と、その欠片が残るのみであったという。
樹脂加工しても色味が改善されるかどうかは微妙。
つまり、事実上絶産している。
消滅の危機に瀕しているナショナルストーンに、政府が規制をかけるのは当然のこと。

それから数年が経つにも関わらず、エイラットストーンが今なお絶賛販売中なのは如何なる現象か。
イスラエル産ではない旨、明記しているところもある。
しかし「イスラエルの鉱山で採掘を行う関係者から入手したもの」と明記している販売店を、かなりの頻度で見かける。
イスラエルに、積極的に国外へ輸出している奴らがおる…

参考:エイラットストーンの輸出販売
http://www.stoneageminerals.com/

真偽については触れないが、私はこの業者から仕入れる気にはなれぬ。
なぜなら「その他」の品揃えがヤバすぎる。

ユダヤの民はビジネスに熱心、かつぬかりない。
政府に目をつけられるようなことは裏でやる。
どうしても本物の、美しいエイラットストーンを手に入れたいなら、直接イスラエルまで行くことだ。
難しいなら、ブラックマーケットを通す覚悟で臨まれるべき。
そのような行為に、奇跡がもたらされるかどうかは抜きにして。

もうずいぶん前、イスラエル人コミュニティで過ごし、その質素な生活に驚かされた。
彼らの厳しさ、結束の固さ、そして残酷さも感じた。
アジアを旅しているラエリは平和的な人が多いけど、現実を生きている人にそれが当てはまるとは限らない。
私はこれからも、行方不明になったリオを探し続けるのだろう。

このエイラットストーンはおそらく本物では。かなり早い段階でお持ちだった様子。
はて、「イスラエルの青い涙」とは。





注1)写真左はコンゴ産のクリソコラ、マラカイト、テノライトの混合石。チーターストーンと呼ばれ、グリーンも存在するとのこと。写真右は、現在も入手可能な「エイラットストーン」。似た色合いの石はメキシコをはじめ、アフガニスタンや中国、台湾などからも産出する。

注2)イスラエルは誕生石の起源となる重要な土地でもあるが、Wikipediaの国家の石一覧にエイラットストーンの掲載は無い。またロシアはアレキサンドライト、中国はアンデシンのほうが有名。すべて絶産した模様。


30×5mm  3.81g

2012/01/15

レイクカウンティダイヤモンド


レイクカウンティダイヤモンド
Lake County Diamonds
Mt. Konocti area, Lake County, California, USA



カリフォルニア州レイクカウンティから産出する火山性シリカ。
いわば天然ガラスだが、その輝きからダイヤモンドの名を与えられた。
遥か昔、先住民族の長に恋をした月が、叶わぬ願いと知って流した涙が石になったもの、という伝説があることから、"Moon Tears"(月の涙)とも呼ばれているという。
地名の通り、現地は美しい湖と豊かな自然に恵まれたリゾート地。
この石が発見される火山地帯は、現地に暮らす先住民族の聖地でもある。
北米で最も古い湖とされるクリアレイクに連なるこの山を、移民たちはアンクルサムの山と呼んだそうだ。

きっかけは、あるアメリカ人ヒーラーとの出会い。
レイクカウンティダイヤモンドはアゼツライトより凄いと仰る。
従って、ヒーリングストーンとして紹介した。
当時のお客さんから「波動が凄くて驚いた」と感想をいただいたのが、印象的だった。

私がレイクカウンティダイヤモンドに出会った頃、これを持っている日本人収集家は皆無に近かったんじゃないだろうか。
なぜなら私は間違えた。
「レイクカントリーダイヤモンド」と紹介したのである(カウンティは「~郡」の意味)。
しばらく経って、自分と同じ間違いを起こしている業者さんが現れた。
他に紹介している日本人を見たのは初めてだったので、驚いた。
この石がヒーリングストーンとして注目されつつあった頃なので、おそらく偶然だと思うが、調子に乗って周囲に自慢していた記憶がある。

アメリカでは収集家には知られた存在のようで、量り売りが一般的。
写真はそのごく一部である。
土が付着しているが、透明感に富む美しい欠片。
稀に紫の色合いを示すこともある。
カットされ、宝石としても流通している。
鉱物としては天然ガラスに過ぎず、またカットに適した大粒の石は少ないことから、市場に流通するには無理があると思うのだが、それらしきものも販売されている。
価格は100ドルを超える。
手出ししないほうが無難かも。

現在は、この石を国内で見かけることも珍しくなくなった。
お持ちの方も多いことと思う。
まだ誰も知らない宝物。
私の中ではそういうことになっている。
レイクカウンティダイヤモンドは、これを見つけたときの興奮を私に思い出させてくれる。
ダイヤモンドより永遠…かもしれない。


16×9×8mm(最大) 4.93g

2012/01/12

星入り水晶


星入り水晶
Hollandite in Quartz
Fianaratsoa, Anketsaketsa, Madagascar



ホランダイト(ホランド鉱)のインクルージョンが放射状に広がり、まるで星のように見える水晶。
キャンドルクォーツに似たミルキーカラーを呈し、丸みを帯びたポイント状で発見されることが多い。
ホランダイト・イン・クォーツ、またその外観から星入り水晶、スパイダークォーツなどと呼ばれ、ビーズや装飾品になるほどの人気を誇った。
しかしながらその後新しく発見されることはなく、絶産したという。

アフリカ沖、西インド洋に浮かぶマダガスカル(とその周辺諸島)。
1億6千年前に島として孤立したため、珍しいいきものが生息し、貴重な食材が産出する。
鉱物の宝庫でもある。
ユニークかつ高品質な各種水晶のほか、セレスタイト、ラブラドライトなどが近年大ヒットを記録、マダガスカルはその産地として瞬く間に知名度を上げた。
セプタリアンなどの化石類、ペツォッタイトなど稀産鉱物の数々も報告されている。
まさに宝の島である。
世界最貧国に類されるマダガスカルでは、鉱物は専ら輸出用に採掘されており、多くは中国に持ち込まれて加工されている。

スーパーセブンの全盛期、インクルージョン入り水晶はちょっとしたブームになっていた。
星入り水晶もその一つだった。
希望の星、幸運の星。
写真の石は研磨されていないため、はっきりと星が確認できるのは一箇所のみだが、ちょこんと自立するカワイイ一品(多くはたくさんの星が観察できるよう研磨されている)。
ホランダイトの塊もみえる。

かつては300円程度でたくさん売られていたから、気に入って何回か購入した。
先日実家にてたまたま見つけたのがこれ。
売り物用のダンボールに無造作に入っていた。
最近見かけないと思ったら、もう出ていないのか。
貴重品になるなど思いもしなかったから、大切に扱うことをしなかった。
誰にも気づかれることなく、この星は消えていたのだ。

どうも最近中国から、これによく似た水晶が発見された様子。
パイロクシン、トルマリンなどの鉱物が透明水晶に入り込み、放射状に広がっている。
その姿はまるで、ダークグリーンの蜘蛛のよう。
クリアな水晶に内包されているため、今にも動き出しそうな臨場感がある。
原石は見かけていないが、産地がモンゴルの辺りなので、大半は加工に回されているものと考えられる。

奇妙なことに、この緑色の蜘蛛の入った水晶のブレスが、「マダガスカル産・ホランダイトクォーツ!(星入り水晶/スタークォーツ)」として販売されている。
どう考えても蜘蛛である。
私は蜘蛛が苦手であるからして、たくさん並んでいるのを見るのは恐怖である。
また、明らかに中国産であり、ホランダイトは入っていないと思われるため、ここで注意を喚起しておきたい。

おお怖い。
夜中にトイレに行けない。


20×14×13mm  4.71g

2012/01/11

サンムーンストーン


サンムーンストーン
Sun & Moon Stone
Potaniaskie Mountains, South Ural, Russia



女子高生?
いいえ、伝説のロシア・南ウラルのサンムーンストーンです。
ある意味ピンクファイヤー。
もはやそれすらも超越した、エレクトリカルパレードのような石である。

サンストーンのアヴェンチュレッセンス(輝き)とムーンストーンのアデュラレッセンス(シラー/輝き)が同時にみられることから、サンムーンストーンの愛称で呼ばれている希少石のひとつ。
鉱物としてはアノーソクレース(曹微斜長石)にヘマタイトが混入したものとされている。
多くはカットされ、研磨品として流通している。

ツーソンで知り合った台湾人ディーラーに、半ば強引に勧められて購入した思い出の一品。
貼りっぱなしのラベルには、$45.00とある。
かなりの高級品と覚悟して購入した。
ピンクファイヤークォーツの項でもこの話題を出したが、意図したつもりはない。
今考えると不思議ではある。
ピンクのファイアはこの石にも出ていると考えられるからだ。

名前からしていかにもパワーストーンのような印象を受けるが、専ら鉱物標本として流通している。
おそらく、ビーズなどに加工するほどの原石が確保できないのだろう。
さきほどサンムーンストーンの名でブレスが販売されているのを見て驚いた。
しかしそれはどう見ても、ブラウンオレンジのムーンストーンであった。
混同されているのかもしれない。
不当な価格での販売に仰天している。

自宅で楽しめるエレクトリカルパレード。
きっとあなたも、女子高生になれる。
もうすぐ自分のお誕生日であるからして、当日は煌くレインボーの光に乗り、夢の世界に連れて行ってもらう予定である。




55×28×12mm  39.29g

2012/01/09

ビクトリアストーン


ヴィクトリアストーン
Victoria Stone/Imori Stone
USA - Iimori Laboratory, Japan



幻想的な模様が好奇心をそそる美しい宝石。
グリーンのほかにブルー、イエロー、オリーブなどさまざまな色合いがある。
欧米、特にアメリカでの評価は高く、概ね100ドル以上で取引されている。
ビクトリアストーンは人工的に作られた宝石である。
しかしながら、開発者がその製造過程を誰にも明かすことなく死去したため、今後新しく作られることはないとされている。
その希少性と神秘性、美しさから、海外では有名な合成石の一つ。
石のカリスマブログライターさんが(ややこしいので省略)予定されていることを知った。
国内では見たことのなかったビクトリアストーン。
タブーではあるまいかと避けていたが、真相を問うべく書かせていただく。
福島での原発事故の熱が冷める前に。

3年ほど前にアメリカのディーラー経由で知ったビクトリアストーン。
イモリストーンとの併記があった。
イモリ=爬虫類?
何事と思ってよく読んだら、日本の研究者である飯盛里安(いいもりさとやす)博士が開発した人工石であり、iimoriが訛ってimoriとして定着してしまったようだった。
日本人が開発したにも関わらず、日本国内にビクトリアストーンが存在しないばかりか、適切な資料さえ見当たらないのは不可解であった。
まるで封印されたかのよう。

飯盛博士は放射性鉱物や発光性鉱物、希元素などの研究、放射能測定機の考案等の功績を持つ化学者で、1982年に96歳で亡くなっている。
戦時中に日本で極秘に行われた原爆開発。
このプロジェクトに関わった研究者の一人に、彼の名前が挙げられている。
資料をあたり、封印された二つの実績がリンクしていないことに違和感を覚えた。
原爆とビクトリアストーンの開発者は別人なのか。
比較的珍しいお名前だから、どちらもご本人であろうと思う。
もしこの矛盾が事実であるならば、彼はおそらく利用されたのではないか。
日本軍が福島県石川町で原爆を製造した歴史が封印されたことは燐灰ウラン鉱で取り上げた。
事故のあった東京電力福島第一原発にほど近いその土地で、動員された学生らが放射性鉱物の採掘に従事し、失敗に終わったという皮肉である。

飯盛博士は97歳でこの世を去るまで精力的に宝石の開発に取り組んだ。
志半ばで亡くなったわけではないから、レシピが残っていないというのは不自然で、意図的なものではないかと疑いたくなる。
彼自身、過去を封印したとしか思えないからだ。
唯一の被爆国、日本。
その日本が原爆を作ろうとしていた事実。
重要なのは、彼が核開発を望んでいたとは思えないこと。

その福島において、歴史に残る深刻な原発事故が起きた。
以前カポジョンカットをお願いしたアメリカ人に、こうした事実関係について先ほど確認した。
見事にスルーされた。
日本とアメリカには、今もなお見えない壁がある。

※後日談…「研磨してもっと用意する」との一言(日本人との取引は私が初めて、通常は断っていたようなニュアンス)。のちに彼の正体が判明するが…

推測するならば、彼は平和を望み、自らの死をもってビクトリアストーンを封印した。
その宝石は今、アメリカで高く評価されている。
趣味の悪いアメリカンジョークとしか思えない。
飯盛博士がかつて福島で見た絶望的な光景。
明かされることのない想い。
それらは、この美しい宝石に秘められたまま、伝説となった。(2011年12月20日付)


飯盛里安(1885―1982)
http://www.kanazawa-museum.jp/ijin/sugao/main-iimori.htm




36×16mm  37.00ct



【続・ヴィクトリアストーン】

その後、明たな事実が判明しました。残念ながら、アメリカ人は飯盛博士やこの石の正体にはいっさい興味なく、事実関係にも無関心。「歴史から消えた宝石」というミステリーは好奇の対象に過ぎないというのが現実です。飯盛博士そのものが評価されているわけではありません。

ここに続編を含めた記事を、新たにアップさせていただきます。2012年明けてすぐ、初夢に晩年の飯盛博士が出てきたために、なにかあるのかと思い立ち、引き続き調べようと資料をあたったところ、わかったものです。以下に昨夜、音楽と鉱物と映画を愛する大切な友人に送った手紙を引用します。なお、国内でも「メタヒスイ」(別物です)として僅かに流通はあったようなのですが、宝石としての美しさより翡翠らしさを重んじる日本では、その存在は忘れられてしまったようです。


"クリスマスに見せたビクトリアストーンの話の続きがあります。親父と同い年の反日アメリカ人が所有していたあの石です。

昨日知りました。飯盛博士は、実は二人いたのです。名前も経歴も、職業どころか職場も同じだったために、同一人物だと思い込んでいました。

原爆の開発に直接関わったのは、飯盛博士のご長男、武夫氏でした。かの「二号研究」に携わってたった半年、終戦を待たずして、31歳の若さで亡くなったそうです。

博士がビクトリアストーンの開発に成功したのは、1955年。自分を追って東大理科学研究所に入り、研究を共にした息子を失った後悔の念を抱え、博士は終戦後、宝石の開発に没頭していったものと思われます。1952年に理化学研究所を引退し、飯盛研究所を設立してすぐ、彼は合成宝石の研究に取り組んでいます。

息子が最後に過ごした、ウラン資源の採掘現場ともなった福島県石川町の水晶山。博士がその山で収集したという、キャッツアイに彩られた美しいネフライト(軟玉ひすい)のコレクションが、博士に残された唯一の楽しみだった。しかしその宝物さえも、終戦の年に自宅共々焼け落ちたそうです。武夫氏の死去からわずか二年後のことでした。

ビクトリアストーンは、空襲により焼失した彼のコレクションを再現すべく開発された宝石だといわれています。しかしながら私は、失った思い出のネフライトと、自分の跡を追ったために早世した息子への想いを、博士が宝石という形で蘇らせたものと思えてなりません。アメリカは彼にとってかけがえのない宝物をすべて奪い去った恐ろしい存在だったはずです。同じく原爆開発に関わった湯川秀樹とは異なり、暴力的ともいえる言動でその無念をはらすことはせず、飯盛博士は研究者としての立場を貫き、天寿を全うされました。

福島第一原発の事故圏内に位置する福島県伊達郡。当地から発見された新鉱物に、飯盛石があります。飯盛博士とご長男・武夫博士、お二人の功績にちなんで1970年に命名されたそうです。ただ、奇妙なこともあります。飯盛武夫博士は、歴史から消されたも同然なのです。この石はその例外ともいえる貴重な存在です。

福島での原子爆弾開発に熱心に取り組んだ仁科芳雄博士。現在もその名を知られる偉大なる研究者です。ところが、仁科博士のもとで何も知らずに研究に取り組んだ武夫博士については、仁科プロジェクトに参加した研究者のリストから削除されているだけでなく、その死因すら明らかにされていないようなのです。里安氏については戦時中、仁科博士とともに国家幹部より原爆開発に関する相談を受けた記録が残っています。つまり、父親である里安氏も原爆の開発に関わっていた事実があった。同じ「飯盛博士」として一部で混同されているのもまた現実であるようです。

初夢に、飯盛博士らしきおじいさんが出てきました。たぶん晩年だと思います。博士は海を見つめたまま、何も話してくれなかった。本には博士の愛した海岸の写真がありました。彼の故郷、石川県にある、海沿いのペグマタイトだそうです。それは、確かに夢に出てきた光景でした(博士と記念撮影した場所にあった、謎の銅像は見当たらなかったけれど?)。

失われた歴史を知る二人の名を冠した飯盛石。そして日本においてはその姿さえ見ることのできない、幻のビクトリアストーン。ビクトリアストーンに平和への祈りとともに、我が子への愛と後悔が込められているように感じるのは私だけでしょうか。"
(12/01/15)






【特集】

ヴィクトリアストーンの真相
2012年 ~飯盛博士没後三十年を祈念して~


その後明らかになったヴィクトリアストーンの隠された真実に、うさこふが挑みます。

どうしてヴィクトリアストーンは日本から消えたのか。
飯盛博士はこの石に何を見て、何をしようとしたのか。
2012年、日本における突然のブームにより明らかになった、日本人には扱えない宝石、ヴィクトリアストーンの正体とは?


国内のウェブショップに続々登場するヴィクトリアストーンという名のカラーストーンに、私が強く感じた違和感。
背後に存在する思惑に、独自の視点で迫ります!
2012年末~明けて2013年、明らかになるその実態をお楽しみ下さい。



【第一話】メタヒスイ
http://usakoff.blogspot.com/2012/12/blog-post_27.html

【第二話】本当の意味
http://usakoff.blogspot.com/2012/12/blog-post_31.html


【第三話】父の愛
http://usakoff.blogspot.com/2013/01/blog-post.html


【第四話】おわりとはじまりの場所
http://usakoff.blogspot.com/2013/01/blog-post_6.html


完結!ありがとうございました



2012/01/07

シヴァリンガム


シヴァリンガム Shiva Lingam
Narmada River, Mandhata, Madhya Pradesh, India



インド・ナルマダ川から採取されるという、シヴァ神の化身、シヴァリンガム。
隕石由来の物質であるとか、このままの形で川底から発見されるなどのミステリアスな噂は人々を仰天させた。
しかし、実際はジャスパーの一種で、ナルマダ川から得た原石を現地の人が加工しているということらしい。
私が石に興味を持ったとき、すでにシヴァリンガムは人気商品として定着しつつあった。
アクセサリーにして楽しんだり、ヒーリングツールとして用いる方も多いと聞く。
その人気は衰えるどころか、高まる一方のよう。

初めて見たとき笑ってしまったのは私だけだろうか。
神聖なものだけに申し訳ないが、罰ゲームにもってこいじゃないか。
これで瞑想するのはある意味大変だと思った。
どうしてこれほどに需要があるのか、長い間不思議でたまらなかった。

シヴァリンガムの「シヴァ」はインドのシヴァ神、「リンガム(リンガ)」はサンスクリット語で男性器を意味する。
シヴァリンガムとはつまり、見たまんま。
男性の象徴である。
あくまで信仰の対象で、それ以上の意味はないものと捉えてほしい。
ただし、子宝に恵まれる、村を守るといわれるくらいだから、性的な意味合いもまた含んでいる。
よって、日本では男子は18歳、女子は16歳まで手にしてはならぬ。
立てて置くなどもってのほか。

と、ずっと思っているのだけれど、今ネットでみた感じだと、かなり都合の良い解釈をされ、多岐にわたるご利益を期待されているようである(それもだいたいコピペ)。
聖なるシヴァリンガムの誤用を防ぐため、今一度注意を喚起したい。

インドは広い。
イスラム教徒や仏教徒、キリスト教徒、シーク教徒など、さまざまな信仰を持つ人々が暮らしている。
ヒンドゥ教においても派閥があるらしいから、すべての人がシヴァを信仰しているわけではない。
シヴァリンガムの意味を知らないインド人も多いと考えるのが妥当だろう。
寺院に性器を象った「リンガ」が安置されているという話は聞いている。
男性器と女性器を組み合わせた衝撃的なご本尊様である。
写真では見たことがあるし、それを見た人の話も聞いている。
インドでは私も実際に見ようと出かけたのだけれど、寺院にはあまりにも人が多すぎた。
すぐに引き返した。
ヒンドゥ教徒ではない自分がウロウロしていては、礼拝に来る人々の邪魔になる。

シヴァは破壊と再生の神。
インドの人々は、一族の幸せと繁栄のため、リンガムに祈りを捧げるのだろう。
日本人の考える宗教とは異なり、試練や精進という感覚なのかもしれない。
性に関してはむしろ、日本よりも厳格な印象を受ける。
インドでは大半をインド人と過ごしていたが、信仰の領域にこちらから踏み込むことはしなかった。
リゾート地、動物園や博物館、或いは観光地としての聖地を堪能し、たまにコミューンをのぞいたりもした。
あくまで日本人としての立場を貫きたかった。

写真は2009年の米・ツーソンショーで、かなりのスペースを利用して、シヴァリンガムが販売されている衝撃の現場を撮影したもの。
大小さまざまなシヴァリンガムが所狭しと並んでいる。
ちなみに「大」は数メートルある。
こんなものが川から拾えるなどと言い出したのは、どこの誰であろう。
もはや、信仰の対象というより、世界規模のビジネスである。
外国人はインドに神秘を求め、インド人はそれに応える。

シヴァリンガムはいくつか手元にある。
あえてこの写真にしたのは、シヴァリンガムが世界規模で商業ラインに乗っている事実を見てほしかったから。
確かヒンドゥ教徒は売り場にいなかったし、宣伝もしていなかった。

寺院に安置されているシヴァリンガムと、世界的に流通しているシヴァリンガムの外観が異なるのはなぜだろう。
シヴァリンガムが、現地の人々の間で用いられているのは間違いないと思う。
ただ、私たちがシヴァリンガムを見る感覚とは、視点が異なるのではないだろうか。
少なくとも、これを持ち歩いているインド人を私はまだ見たことがない。
さすがにインドの方には聞けないので、調べてみた。
用途について書かれたと思われる記事を見つけたので、あくまで参考としてみていただけたらと思う。
罰ゲームにだけは使わないように。
シヴァリンガムは、神聖です。


【注意】

インドの文化や信仰に関してわかりやすく述べられており、危険な内容とは感じません。
宗教に抵抗のある方、シヴァリンガムに霊的な用途のみを求められる方はお読みにならないほうがいいと思います。
また、性的表現が含まれますので、その旨ご注意ください。


(参考)シヴァリンガムとその信仰について
http://www.bhagavati.de/site06aj.htm

(参考)シヴァリンガムの用途
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/antiGM/lingam.html


※この石が18禁的な意味合いを持たないというのは確かなようです。ナルマダ川にあるすべての石をシヴァリンガムと呼ぶということならば、いくつかの疑問が生じます。極端な例をあげると、中国産の水晶がシヴァリンガムになり得るのか、など。
シヴァ神は無知の破壊者というくだりは非常に興味深いものです。


10~60mm程度、数点

2012/01/05

アクロアイト


アクロアイト
Achroite Tourmaline
Merelani Hills, Arusha, Tanzania



カラーレスのトルマリン。
聞いたことはあったが、現物を見たのはたぶん、初めて。
同じくカラーレスのガーネット、リューコガーネットが産することで知られる、メレラニ鉱山から届けられたと伺っている。

さまざまなカラーバリエーションを持ち、無色透明の石に価値を置かれる宝石に、ガーネットがある。
ガーネットは私の誕生石でもあったので、ぼちぼち集めていた。
無色透明の石があると知ったときには必死で探したものだ。
トルマリンもまた同様、無色透明の石はアクロアイトと呼ばれ、収集家の憧れと聞いている。
パライバトルマリンなど、ダイヤモンドの価値を上回るような石も存在するため、それらの華やかさに隠れてしまいがちだけれど、探してもすぐに出会えるものではない。

このアクロアイトは、ある日偶然に目にとまった。
それも、初めて見つけたお店で、一目惚れしてしまった。
宝石の世界が無知に甘くないことは知っている。
また、長年お世話になった業者さんとの別れを機に、しばらく宝石の購入は控えるつもりでいた。

東京に出発する直前のこと。
気力も体力も果てつつあったが、この石について質問せずにはいられなかった。
対応してくださった社長さんが親切な方だったために、夢中でお話を伺った。
謙虚で誠実、かつ気さくな方なれど、宝石にたいする情熱と鋭い眼差しを、私は見逃さぬ。
どんな人にも平等に、わかりやすく物事の魅力を伝えられるというのは、限られた人に与えられた才能に他ならない。
社長さんとは、もっとお話ししたかったのだが、途中で力尽きてしまった。

池袋ショーをまわるにあたって、その方からいただいた助言の数々は、非常に意味のあるものだった。
本物を知らずして偽物を語るなかれ。
そう、それが私の口癖だったのに。
私はようやっと、大切なことを思い出したのである。

疲れ果てて宿に戻ったら、ベッドの上に荷物が置かれているのに気づいた。
社長さんが東京まで送ってくださったのだ。
その輝きは、今までにない鮮烈な光を放ち、私は圧倒された。
カラーレスのトルマリンは、数々の混乱を経て、リセットされた心に似ている。
無限の可能性を秘めているようにすら感じさせる。
完全に透明ではなく、僅かに(といっても自分にはほとんどわからない)グリーンを帯びているところもまた自然で、とてもいい。

熱意あふれるディーラーさんとのご縁に恵まれた年であった。
もう少し磨かねばなるまいな。
やっとのことでお礼を書いて、そう思った。
長く険しい一年が、ようやく終わりを告げようとしていた。


0.34ct

2012/01/03

シャッタカイト入り水晶


シャッタカイト入り水晶
Shattuckite In Quartz
Kaokaveld, Kunene Region, Namibia



シャッタカイトのボール状結晶を内包する水晶。
鉱物標本業界の最先端を行く有名鉱物店がウェブ上で紹介し、収集家の間で専ら話題になっていた。
鉱物界の権威、H先生とは全く面識がないし、鉱物愛好家のバイブル『楽しい鉱物図鑑』も見たことがない(怒らないで下さい)。
サイトを拝見したのも初めてだった。
さすがの品揃えと情報量、そして紹介されていたシャッタカイト入り水晶の見事なこと。
まりものような濃青色のシャッタカイトが水晶の内部に浮かぶさまは、時間さえ忘れるほどに楚楚たる風景であった。
残念ながら、サイトで紹介されていた標本の展示即売会は、既に終了していた。

こちらは先月池袋ショーにて、外国人ディーラーのブースで見つけた研磨品。
2003年にツーソンショーで仕入れたものとのことだった。
これから流通が増える可能性があるなら待つところだが、それ以降見ていないとのお話。
競争率を考えると即決が妥当かと思われた。
驚くほど高価なものでもなかった。

先月私がネットで見かけたシャッタカイト入り水晶の原石は、一瞬で売切れてしまったらしい。
一目見ようと多くの収集家が詰め掛けたが、展示即売会の会場にその姿を見た人は誰一人いなかったという。
ネット上で見た限り、即売会を待たずに高額で売却された可能性あり?
こちらは研磨品だが、見た目はそっくり。
同じ産地から出たものかどうかはわからない。

池袋ショーで出会ったとある業者さん。
シャッタカイト入り水晶の話題が出たので、購入したばかりである旨伝えたところ、目を丸くしておられた。
その方も例のシャッタカイト入り水晶に一目惚れしたらしいのである。
渦中の標本は、その方の知る有名な収集家の手に渡ったという話であった。

不思議に思うのは、十年近く前に出たはずのこの石が、なぜここまで注目を集めたのかということ。
まるで世界に数個しかないようなこの騒ぎは何事か。

銅の二次鉱物であるシャッタカイトは、希少石の中でも人気が高い。
特に、石英と共生して発見される美しいブルーの結晶は、高価であるが比較的流通はある。
大流行したクォンタムクアトロシリカ(→詳細はシャッタカイト/カルサイトに記)に、シャッタカイトが含まれていると噂されたのも記憶に新しい。
シャッタカイトが透明水晶に内包される可能性もあり得る。
私ですらすぐに見つけたのだから、プロのディーラーも探すほど珍しいものではないはずだ。
また、皆が注目したと思われる標本の写真には、結晶の先端のごく一部しか写っていなかった。

池袋ショーの会場、一発目の店で見つけた研磨品。
どうして残っていたのか。
パパゴアイト入り水晶と並んで販売されていたため、気づかず通り過ぎた人が多かったのかもしれない。
十年近く売れなかったのだから、価値など無いのかもしれない。
素人には、これで十分。
むしろ勿体無いくらいの美しさだ。
スーツ姿の不審者(急いでるのに執拗に追っかけてきて参った。サイコパスの暇つぶしに付き合わされるなんてマジ悲劇!唖然として見守る飲食店の店員たち、助けろ!)に行く手を阻まれ、会場に到着した頃には日が暮れていた。
最後まで迷惑をかけてしまったにも関わらず、迎えてくださった方々に恐縮し、多くの出会いに感謝した。

もしこの石に価値があるのだとしたら、いずれ誰かがもっと素晴らしい標本を仕入れ、紹介するはず。
慌てて探すよりも、気長に待つほうがいいんじゃないかと思う。
思いがけない出会いもまた、鉱物の魅力の一つだから。


19×11mm  6.75ct

2012/01/01

ルチル(原石)


ルチル Rutile
Diamantina, Minas Gerais, Brazil



ルチルクォーツを見たことのない人っているのだろうか。
全盛期には、手のひらサイズのスフィアが400万という、破格の値段を付けるほどに大流行した。
いっぽうで問題を起こし、論争を巻き起こし、善からぬ人々を招きいれ、それらが現在も解決していないという奇妙な存在。
なぜ、未だに解決しないのか。
正月だけに、縁起のよさそうなルチルで新年を祝いつつ、考察をしてみたい。

ことのなりゆきはブルールチルで取り上げた。
要は、ルチルクォーツには様々な色合いがあり、人々はもはや、水晶に入ってる針=「ルチル」であるものと認識していた。
鉱物をこよなく愛する人々にとって、その誤認の定着は、不愉快極まりない出来事であった。
ルチルはあくまで鉱物のひとつでなければならない。
俗に言われる『阿鼻叫喚のルチル闘争』がそれである(無い)。

ふと、思った。
ルチルの原石を見たこのある人ってどれくらいいるのだろうか。
あれからかなり経つのに、現在もあちこちで論争を見かける。
以前は、誤認ゆえの成功と記したが、ルチルの原石にも原因があるように思える。
ルチルクォーツのゴールドの針のイメージとはかけ離れた姿、と説明することはできる。
色合いは?結晶の形は?
そう聞かれても、一言では説明できない。
じゃあ結局、ルチルの原石ってどんな石?

写真の標本はルチルクォーツの全盛期に、ひっそりと棚に並んでいた、ルチル(金紅石)の原石。
「網状双晶を示すルチル」と書いてあった。
小さいながらも、メタリックでキラキラしていて、形もカワイイ。
当時ルチルクォーツのブレスは、安いところでもこれを10個、通常は100個近く買ってようやっと手に入る高級品だった。
幾つも並んでいたから、私のルチル原石のイメージは長い間コレだったのだ。

この手のルチルはその後、見かけていない。
大抵は他の鉱物と共生している。
ルチルクォーツならばいくら掘っても出てくる。
しかし、ルチルの原石はやはり、少ない。
ルチルは鉱物だといわれても、具体的なイメージが出てこないのは致命的。

ルチルクォーツのご利益が凝縮されて出来た、半端なく凄い石のはずなのに、どうして誰も探さないんだろう。
トルマリンやアクチノライトより珍しくて、こんなに美しいのに。
わかってる。
大半の人は、そんなことどうでもいいのだ。
客層をみればわかる。
ルチルクォーツをご購入されたお客様の声は、たぶんこんな感じだろう。

「スロットで負け続け、ますます借金が増えていきます」(Aさん/千葉県)
「ロレックスより高かったのに質屋が取らんぞゴラ」(Bさん/大阪府)
「幸せになれないのは浄化の仕方に問題があるのでしょうか」(Cさん/福岡県)
「ブラックルチルって偽物なんですか?」(Dさん/北海道)
「ヒーラーになれないんですけど!」(Eさん/東京都)
「買いすぎて自己破産しました」(Fさん/愛知県)


パワーストーン・ルチルクォーツの効能は、以上である。


約10mm  数点

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?