2011/09/17

オトゥーナイト/燐灰ウラン鉱


オトゥーナイト/燐灰ウラン鉱
Autunite
Apex mine, Lander Co., Nevada, USA



ウランと聞いて、びっくりされる方もおられると思う。
鉱物であり、天然石/パワーストーンでもあるからして、当然コレクションの対象になる。
欧米には放射性鉱物の愛好家は多い。
こちらもアメリカの放射性鉱物専門コレクター(!)からの流出品。
放射性鉱物の愛好家は、長寿の方が多いらしい。

このように比較的大きさのある雲母状の結晶が密集している標本は珍しい。
母岩とのコントラストも見事である。
ベストクオリティとまではいかないが、大きさといい、インパクトといい、面倒な客を追い返すための最終兵器としての活躍が期待される。

燐灰ウラン鉱は、イエローまたはイエローグリーンの鮮烈な色彩を特徴とし、紫外線で蛍光するため、ウラン系鉱物の中で最も人気が高い。
しかし、その多くはハッキリ言って岩である。
よく見ると、黄色っぽい粒々がくっついている程度。
放射能をきらう日本でも、福島原発の事故以降、放射性鉱物に注目が集まっているが、ほとんどは鑑賞に耐えないものばかり。

放射能による諸問題については全く知識がない。
皆さまのほうがよくご存知かと思うので省略する。

原子力発電や核兵器に使用されるのは、天然のウラン鉱石に含まれる、「ウラン235」という物質らしいが、ウラン全体の10%に満たないという。
残りは劣化ウラン。
数ミリの結晶からわずかに採れるだけというから、枯渇するのは時間の問題か。
ちなみに、「ウラン235」による大爆発は、天然の状態では無い、らしい。

世界一の燐灰ウラン鉱といえばフランス産。
その美しさに惹かれるのも無理はなく、グリーンの燐銅ウラン鉱と並んで、ファンは多い。
ウランそのものの産出も多く、ウラン資源の供給元として知られているだけに、先日のフランスにおける原子力発電所事故発生のニュースは衝撃的だった。

ちなみにこの燐灰ウラン鉱、日本からも産出する。
岡山県苫田郡の人形峠が最も有名。
他に岐阜県土岐市、福岡県福岡市、茨城県霞ヶ浦、山口県柳井市、宮城県伊具郡など。
放射性鉱物としては、前述の人形峠から産出する人形石、岐阜県中津川市のジルコンや秋田県仙北市の北投石などが有名。

東京電力福島第一原発にほど近い、福島県石川町からは閃ウラン鉱が産出する。
皮肉にも戦時中、原子爆弾を作るため、学生らにより採掘が行われていたという。
詳細は下記サイトが詳しい。

http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201106080281.html

自然界とは不思議で、美しすぎるものに毒性があることが少なくない。
大自然からの警告であるといわれているくらい。
放射性鉱物も、例外ではない。
従って、乳幼児が興味を持ち、触れてしまうことも多い。
最悪の事態に備えるのは当然のこと。
収集に当たっては、ご家族の意向も確認し、同意を得てからにしたい。
私の場合は、家族が医学的研究にあたり放射性物質を扱っていた関係で、「今更どうでもいい」ということなので、やりたい放題やらせてもらっている。
ただ、子供の頃から原水爆の恐怖を植えつけられてきた我々日本人は、どうしても感情的になってしまいがち。
大切な標本を、ゴミの日に捨てられてしまうようなことになれば、どうなるか。
役目が終わったからと、パワーストーン感覚で土に埋めるなどの行為は絶対にしてはならない。

なお、パワーストーンとして知られている(?)「ラジウム石」なるものは、閃ウラン鉱や燐灰ウラン鉱を意味するらしいが、本当か。
なにやら超能力者のお墨付きで、「ラジウムストーンを肺へ吸い込んだり、飲用すると効果的」とある。
こうした行為には、死期を早める作用がある。
ホルミシス効果(→ウランガラス参照)のほうも否定されつつある。
自分だけでなく、他人を巻き込むことも考えられるので、知らない間に殺人犯にならぬよう、思い残すことなく成仏していただきたい。


45×33×21mm  46.31g

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What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?