2012/04/16

スフェーン


スフェーン Sphene
Badakshan, Afghanistan



スフェーン、くさび石、チタナイト、チタン石などと呼ばれる希少石のひとつ。
鉱物学上はチタナイト(titanite/チタン石)の呼称が正しいそうだ。
宝石の場合スフェーンの名が一般的だから、ここではそう呼ぶことにする。

産出は少なく、大きな結晶は滅多に採れない。
多くはカットされ、コレクション用のルースとして流通している。
色はイエローまたはグリーン。
ダイヤモンドをしのぐ分散(輝き)を示し、鮮烈なファイアを放つことで知られる。
現物はクリアでシャープ、ファイアのひときわ強い見事なルースなのだが、私の撮影技術では再現できなかった。
この神々しい輝きを、サードアイ経由にて、どうにか感じ取っていただきたい。
スフェーンは硬度が5.5と低く、微量の放射能を有するため、アクセサリーに加工されることは滅多にない。
もう少し硬度があれば、とため息をつく方が後を絶たないほどに、魅力的な鉱物なのである。

かなり初期の段階で目をつけた。
宇宙の神秘を感じた。
最初に入手したのは300円程度、くさび形の結晶がいくつか入ったお買い得パックで、ブラジル産だった。
初期からの私のお気に入りで、ジルコンとともに持ち歩いていたのを思い出す。
その後パキスタン産の若草色の原石(クロム・スフェーン)に出会う。
ルースにはあまり興味がなかった。
少なくともコレに出会うまでは。

これまでにない圧倒的な透明感。
まぶしいゴールドの輝き。
飛び散る虹色のファイア。
1ct超えの大きさに加え、インクル(不純物)が肉眼で確認できない良石にもかかわらず、べらぼうに安かったのである。
そんなうまい話があるものか。

スフェーンの処理石はほぼ無いという。
あるとしたら別の鉱物をスフェーンとして扱っているケース。
ファイアが全くみられないグリーンはペリドットなど、ファイヤが強くともオレンジの色味が強い場合はスファレライトの可能性がある。
ただし、後者はスフェーンにならぶ希少石で、美しいものは稀産かつ高額となる。
次に疑われるのが、産地の偽造。
ルース/カット石は、産地の特定が困難と、プロの方も嘆いておられるくらい難しい。
こちらはスペイン産とあった。
価格面のみならず、すべてにおいて違和感がある。
また、チタニアダイヤにも類似点が多く見受けられるが、合成宝石は意外に高額なもの。
少なくとも一般的には、今回のスフェーンの数倍の価格で取引されている。
庶民ゆえもっと安いルートがあるかもしれぬが、わからない。

調べていくうちに、このクオリティのイエロー・スフェーンが、意外な場所から発見されていることを知る。
アフガニスタンである。
アフガンの鉱物の販売権を事実上握っているパキスタンだが、パキスタン自体、スフェーンの有名な産地。
パキスタン産のスフェーンは美しい若草色を特徴とし、世界的評価を受けている。
ただ、イエローは見たことが無かった。
そのため今回はアフガンからのルートは全く視野に入れず、中国やイエローの出ているマダガスカルを疑った。
しかし、またもやアフガンという結論に至る(前例にパライバトルマリンクンツァイトなど。この件に関しては謎が多く言及は控えたい)。

アフガニスタン産であることは確認した。
なんたること。
憧れのアフガンは、遥か彼方に。


1.60ct

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