2012/10/07

フローライト(ワインレッド&オリーブ)


フローライト Fluorite
Pine Canyon Deposit, Westboro Mts., Grant Co., New Mexico, USA



秋のミネラルショーが始まった。
今回は、以前アップした記事を。
フローライトは私がこのところ特に気に入って集めているのだけれど、ショーでもたくさんの素晴らしい標本に出会った。
色合いやその混在の様子、模様、質感、存在感など、それぞれが個性豊かでひとつとして同じものはない。
フローライトで世界一周がしてみたい今日この頃。

花のように結晶した可憐なフローライト(蛍石)。
ワインレッド・カラーの下にはオリーブグリーンが隠れていて、額縁のように枠を成している。
これをゾーニングと呼んでいる。
専門用語はなるべく使いたくない。
なぜなら私にもよくわからないからである。

ゾーニング。
大雑把に言えば、額縁。
結晶内部の色の境目を指して、そう呼んでいる。
写真のようにくっきり色合いが分かれていることもあるし、どちらかというとファントムに近い、ぼんやりとした色彩の帯であったりもする(→同じニューメキシコ産のフローライトにみられるゾーニングの顕著な例)。
蛍石のゾーニングの定義は曖昧で、感覚的に使っている人も多いという印象を受ける。
ファントムとはまた違う。
この標本を語る上でゾーニングの美意識を外すことはできないので、是非とも押さえておきたい。

産地からは、赤紫と黄緑の色合いを基調とするフローライトが発見されている。
多くはクラスター状に成長しており、無数の八面体結晶が発達した刺々しい姿をしている。
この標本とは逆に、オリーブグリーン・カラーが表面を覆っているために、色味に濁りを感じることもある。
赤紫と黄緑は色相環において正反対の位置、補色にあたる。
色の相性としては最も難しい。
補色同士が混ざり合うと、暗く濁った色合いになる。
いっぽう、補色関係にある赤紫と黄緑を並べると、互いの色がより鮮やかに見えるという相乗効果がある。
フローライトだから実現するゾーニングの魔法。
お手持ちのフローライトにも確認できるはずなので、見つけていただきたい。

華やかなフローライトの花が咲いている。
いったい何の花に喩えればよいだろう。
日本の家庭環境に優しいサムネイル・サイズの標本から広がる無限の宇宙。
私はこれを盆栽と名づけたい。


31×22×19mm  12.71g

2012/10/03

アメジストエレスチャル


アメジストエレスチャル
Amethyst Elestial Quartz
Karur, Tamil Nadu, India



以前カボションカットされたものをアップしたが、今回は原石を。
南インド・カルール産出のエレスチャルアメジストである。
スーパーセブンの全盛期、その発色が本来のそれより美しいために、南インド産スーパーセブンとして出回ったことは前回にも記した。
日本に入ってくる段階でほとんどは研磨加工され、ルースや六角柱の置物になってしまっていた。
原石の魅力について語られる機会は、少なかった。

写真は現在も僅かに流通のあるカルール産アメジスト。
世界中から産出するアメジストの中でも、紫の絶妙な色合いにおいては、メキシコのベラクレスアメジストに匹敵する美しさ。
魅力はその色だけではない。
クラスター、エレスチャル、セプタークォーツ、フラワーアメジストに近いもの等々、様々な形態がある。
この標本には白いしっぽのようなものが付いている。
私の手持ちのカルールのアメジストには、なぜかすべてしっぽがついている。
白いしっぽの飛び出した水晶には、他にも見覚えがある。
いずれご紹介したい。

南インドにヒマラヤ山脈があると思っている方は多いようだ。
インドの話題が続き申し訳ないのだが、南インドと北インドでは、気候や街並み、人々の様子、食事の味や言語に至るまで、全く異なっている。
インドの公用語は、英語である。
州によって言語や文字が異なるから、インド人同士でも言葉が通じないことがある。
古くは英国の統治下にあったインド。
年配の方々は、イギリス訛りの英語を使われることが多い。
フェイスブックに "Indian English" というカテゴリがあるように、現在インドで用いられている英語は、インドに独自のアレンジがなされている。
英語を母国語とする英米とは異なり、許容範囲は広い。

先日、南インドとは何ぞや、というお話が出た。
中には南インド=サチャロカ、と認識しておられる方もいらっしゃるご様子。
南インドは私たちが考える以上に広大なのである。
情報としては不十分であるが、いったいどんなところだったか、少しだけ書かせていただこうと思う。

私が一人、南インドに上陸したさい、日本人旅行者は皆無であった。
日本でストーカーに追われ、命の危険を感じた。
インドに行くときは、おそらく生死の選択を迫られたとき。
幼い頃からそう思っていたが、遂にその時が来てしまった。
折りしも一年で最もチケットの取りづらい時期、突然出発を決めたにも関わらず、格安チケットにキャンセルが出たとの知らせを受けた。
十分な用意をする間もなく、私は日本を発つことになった。
インドに到着してすぐムンバイ空港で野宿したのは、そうした事情あってのこと。
安全なはずの日本で死ぬことが、周囲の人々を絶望させ、私は死後もその罪を背負うことになる。
それだけは、避けたかった。
インドに対しては、幼少期から非常に複雑な思いがあった。
私がインドに行くとすれば、人生が終わるときだという予感は、現実になった。

南インドに日本人はいなかった。
ただ、ネパールで知り合ったある日本人が、現在南インドのゴアという土地にいるはず。
その人物に会うことができれば、この絶望的な状況が好転するという一心で、私はゴアへ向かった。
一ヶ月以上に渡って、日本語が全く使えないという状況が続いた。
当初の目的地であったゴアに滞在する白人たちの多くは、開放的すぎて倫理的に無理があった。
ゴアでは性的に厳格なイスラムグループ、社交辞令に終わらない深い内容について話すことのできる地元のインド人と行動した。
あとで知ったのだが、日本人旅行者の集まる場所は、そこから少し離れた場所にあり、閉鎖的コミュニティになってしまっていたようだ。
それがかえって幸いし、私はインドが世界で一番好きになった。
私は長い呪縛から開放されたのだ。

南インドのリゾート地・ゴアには、無数のビーチが存在している。
ガイドの三郎(北島三郎に似ていたので勝手にそう呼んでいた)と友達になり、バイクのガソリン代を出し合って、ゴアにあるあらゆるビーチへ冒険に出かけたのを思い出す。
海沿いを走り、森を抜け、フェリーで川を渡り、椰子の木をかすめてどこまでも走る。
一般の旅行者が訪れない遠いビーチでは、高齢のヒッピーがウロウロしている。
一目でアブナイと感じたので、話しかけなかった。

ゴアの最も奥地にあるビーチ。
誰もいない砂浜。
清流を上っていくと、木陰からたくさんの人の集まっている様子が見えた。
ハレクリシュナ、と歌が聴こえる。
俗にいう、コミューンである。
ゴアにもまだあった。
参加してくる!と三郎に告げ、突入しようとしたら、「ここのは●●●●るから絶対に行くな!」と引き止められた。
三郎が世界的倫理観の持ち主であったことを、今でも不思議に思っている。
三郎は、しばしば左手で食事をしていたからである。

しかしながら、三郎には、地元のマフィア風の男に売り飛ばされそうになった。
ボスの間(?)に閉じ込められ、私が必死で助けを求めているというのに、三郎が新聞を読むふりをし、ニヤニヤしながらこちらを観察していたことについては、許しがたい。
マフィア風の男に激しい怒りを表明し、振り返ったときの彼の心底嬉しそうな表情を、今でも覚えている。
ブラックマネーなるものを初めて手にしたのも、三郎の仕業であった。
彼が仕事を休んで私を冒険に連れて行ってくれたことには、深く感謝している。
数々の悪巧みについても、当時だからお互い受け入れられたのかもしれない。
三郎が私を売り飛ばす気などなかったことはわかっている。
今では彼も立派な大人になり、家庭を築いていることだろう。
少なくとも十年ほど前、南インドとはそうした土地であった。




そろそろ石の話に戻ろうと思う。
左の写真を見ると、このアメジストがセプタークォーツの要素を持っていることがわかる。
その後さらに成長し、起伏に富んだ形状になっていったとするなら、しっぽはその名残りなのかもしれない。
もうひとつ、カルール産アメジストに特徴的なのが、ゲーサイトやレピドクロサイト、カコクセナイトなどのインクルージョン。
右の写真では、サンストーンのような煌きに混じって、お馴染みのピンクのファイアが確認できる。

本来、スーパーセブンはブラジルのエスピリトサントから産するものを指すということになっている。
ビーズに関して、エスピリトサント産のスーパーセブンを使うことは、ほぼ無いようだ。
過去には流通があったが、同様の水晶が世界中から産するとわかってからは、原価の安い途上国からのアメジストが用いられるようになった。
インド産もおそらくもう無いはず。
また、万が一サチャロカ産と明記されていた場合は、必ず事前にお店の方に確認されることをお薦めする。

下の写真においては、一箇所の面に雲母が挟まるように入り込み、緑を帯びて見えるほか、シトリンの色合いも入っているのがわかる。
しっぽのついたかわいい姿を楽しみながら、その内部に広がる宇宙を味わいたい。
スーパーセブンの七つの要素+雲母+シトリン+しっぽ=?




41×20×16mm

2012/09/25

アプリコットルチル(鉄カーフォル石入り水晶)


鉄カーフォル石入り水晶
Ferrocarpholite in Quartz
Diamantina, Minas Gerais, Brazil



クリアな水晶に、流れるように詰め込まれたアプリコット・カラーの針。
夕日で撮影したため、オレンジが強く写っているのだけれど、針水晶においては、ありそうでなかった色。
表記のとおり、内部の針はルチルまたは角閃石ではない。
ザギマウンテンクォーツっぽいけど、アストロフィライトでもない。
赤いルチルにコッパールチルなる石があった気がするが、銅でもない。
稀産鉱物、鉄カーフォル石(鉄カーフォライト、鉄麦わら石)の針状インクルージョンで、アプリコットに染まった水晶である。

最初にお断りしておきたい。
カーフォル石の産出はごく稀で、話題に上ることはまずない。
その仲間にあたる鉄カーフォル石はさらに珍しく、さらに、水晶に内包されたものについては、少なくとも世界に3つあることくらいしかわからない。
私のような素人が手を出すようなシロモノではない。
しかしながら、親しみを持っていただくため、私はこれをアプリコットルチルと名づける(→ルチルについての効能はこちらにございます!)。

長い間謎の存在だった鉄カーフォル石入り水晶。
先日、内部に無数の赤い針が詰まっていることに気づいた。
倉庫で作業をしていたさいに、偶然わかった。
それまで全く気づかなかった。
大慌てで撮影したため、夕日での撮影となってしまった。

購入は確か5年くらい前。
東京にいた頃だったか、ミネラルショーで白人ディーラーから購入したもの。
眉間の皺が印象的な頑固そうなオッサンが、厳かに販売されていた。
なんともいえない、近寄りがたい雰囲気だったのをはっきり覚えている。
ブースにならぶ鉱物は、聞いたことのない名前ばかり。
決して綺麗とはいえない通好みの鉱物の中にあって、ひときわ鮮やかな赤い水晶を見つけ、手に取った。
聞いたことのない名前の石。
理由はそれだけだった。
水晶は安くあるべきという素人にありがちな考えに囚われ、5000円という価格に一日悩んだ末、購入。

翌日、私は友人と、文京区にある老舗の鉱物標本専門店へ来ていた。
国産鉱物の品揃えでは国内でも定評のあるそのお店に初心者が入店するには、侍のかまえが必要である。
地元在住の友人と一緒だったため、引き下がれなかった。
店内に入ると、これまた頑固そうな年配の男女が3人、作業中であった。
当然、私たちには見向きもされない。
趣味人の集うところ、長い歴史が作り上げた暗黙の了解と、厳しい上下関係がある。
苦し紛れに、当時話題になりつつあったモリオンについて尋ねたら、蛭川の黒水晶以外はケアンゴームであると、お叱りを受けてしまった。
当時の私には蛭川(※注)が何だかわからなかった。

※注:蛭川(ひるかわ)の黒水晶:

岐阜県中津川市蛭川からは、かつて見事な黒水晶が産出した。現在流通している蛭川産モリオンと呼ばれる石の大半はスモーキークォーツ。蛭川産以外の世界中の黒水晶をすべてケアンゴームとみるならば、モリオンは既に絶産したということになる。記事はこちら

ふと、前日に購入したばかりの "Ferrocarpholite in Quartz" が浮かんだ。
折角専門家がいらっしゃるのだから、この石の正体を聞いてみようと思い立った。
そうして、最も頑固そうな初老の男性(ボス)にこの石を見ていただいたのだけど、不思議そうな顔をなさっている。
5000円したのだが相場だろうかと尋ねると、ボスはこう言った。

「それ位は、しますね」

びっくりした。
最後はお店の方々と色々なお話をし、後には特別な注文に応じてくださるなど、たいへんお世話になった。
ただ、当時は "Ferrocarpholite" の和名が鉄カーフォル石である、ということ位しか判らなかった。
ボスの言葉を胸に、謎の水晶として大切にしていた。

その後、私のミスで、透明だったこの標本はクラック(ダメージ)でいっぱいになってしまった。
初心者の自分が背伸びして購入した標本を傷つけてしまった罪悪感。
遠くから眺めるのが精一杯だった。
つい先日、この水晶の発色原因が赤い針によるものだと、偶然にわかるまで。

今思うこと。
それは、この石にまた巡り合うことは、極めて難しいだろうということ。
標本をよく見ると、私の過失以外にもダメージがあって、相当の年数が経過していることが推測できる。
過去のコレクターの流出品ではないかと考えている。
産地は水晶の名産地。
ひとつ見つかったということは、他にも幾つか見つかっている。
しかし、国内外ともに販売はない。

改めて鉄カーフォル石について調べてみた。
鉄カーフォル石は鉄、アルミニウム、チタン、マンガンなどから成る、きわめて稀な鉱物。
1951年にインドネシアで発見されたが、現在は絶産状態。
同じく絶産状態といわれるカーフォル石とは連続性がある。
原石は、葉ろう石に似た放射状の結晶の集合体で、絹状光沢をなし、オリーブ~イエローゴールド~ブラウンの色合いを示すという。

なお、産地の同じディアマンティーナから、鉄カーフォル石の針状インクルージョンを内包した透明水晶が産出した例が2件あった。
ただ、同地から鉄カーフォル石が産出した記録がないため、さらなる調査が必要として、それ以上の言及はなされていなかった。
サンプルが少ないために調査のしようがないということかもしれない。
いずれも拡大写真のみで形状は不明、針の色はどちらかというとシルバー。
いっぽう、手持ちの標本はセプターともいえそうなユニークな形状で、切断面のない完全な結晶体、流れるような針状結晶が水晶全体を赤く染めるさまなど、希少性以外にも見どころは多い。
私はただこのアプリコットカラーに惹かれて入手しただけ。
希少価値などどうでもいいではないか。

別名としてたまに出てくる「鉄麦わら石」。
確かに原石の色は、麦わら帽子に似ている。
水晶に含まれたらこんな色合いになるなんて、誰も予想しないだろう。
現時点では、この石は永遠の謎である。
いや、意外にあるのだけど、まだ誰も気づいていない?
そんなささやかな希望をもたらしてくれる、よどみのない光の束が、水晶の内部に輝いている。




45×28×27mm

2012/09/22

シルバーシーンオブシディアン


シルバーシーンオブシディアン
Silver Sheen Obsidian
Chihuahua, México



いつの間にか姿を消していたシルバーシーンオブシディアン。
そしてモサモサゴールドオブシディアン
おおっと違いますゴールデンシャインオブシディアンです。
3年前にはすでに切り替えられていたとみられる謎の黒耀石。
今回、詳しいことが明らかになりつつあるので、ご報告したい。

写真はかつてメキシコから産出した、幻のシルバーシーンオブシディアン。
ゴールドシーンオブシディアンのほうは代替品に切り替えられ、モサモサと安価で流通している(→詳細はこちらに記しました)が、シルバーについては忘れられたも同じ。
メキシコからの産出は減り、絶産はもはや時間の問題とみられる。
あれだけ身近だったこれらの石に、一体何が起きたのだろう。
わからないまま月日は過ぎていった。

先日、なにげなく眺めていた海外サイトで、私はモッサモサなゴールドのオブシディアンを見かけた。
日本だけじゃなかったのか。
表記はゴールドシーンオブシディアン。
ふと、真横にシルバーシーンオブシディアンもあることに気づいた。
一見すると見慣れたメキシコ産、だった。
目を疑った。
中国産と書いてあるではないか。

お世話になっている海外のディーラーさんがいる。
今回の事情を伝え、シルバーシーンオブシディアンをまとめてお願いした。
彼はベストクオリティのタンブルを私にわけて下さった。
まだメキシコからの産出は十分にある、なのに日本では、欧米を通すよりも安く上がる中国経由での仕入れが妥当とみなされている…
私はそう推測し、彼に伝えた。
少し間を置いて彼は、静かな口調で私に言った。

「もうメキシコからは(どちらの入手も)難しくなってきている。私も近いうちに(中国産に)切り替えることになるよ。」

驚いた。
彼はとっくに、そのことを知っていたのだ。
私などが勘づくとは思ってもみなかった…
そんなふうに、みえた。

現在国内で主流になっている、ゴールデンシャインオブシディアン。
主にビーズとして流通している。
これらが中国産であると明記しているところは、まだ見ていない。
中国からそっくりな黒耀石が出るなど、想像できようか。
広い国土を有する中国が、いかに豊富な資源に恵まれているかを示す重要な例だと思う。
現在は流通のないシルバーシーンオブシディアンのほうも、いずれ製品化されて流通するとみられる。

シルバーシーンオブシディアンを中国経由で買ってみた。
写真ではわからなかったのだが、現物を手に取り奇妙な印象を受けた。
輝きがうまく出ないのである。
価格はメキシコ産よりむしろ高額だった。
黒い黒耀石に銀のラメがまばらに載ったそれは、ゴールデンシャインオブシディアンより衝撃的だったのである。
質の悪いメキシコ産と言われたら最後、判断がつかないほど似ている。
ゴールドのほうはもともと石全体が金色に染まっているから、写真である程度判別できる。
シルバーが衝撃的なのは、その違いを言葉で説明するのが極めて難しいということ。
撮影技術があれば、全体にシーンが出ているように演出できてしまう。
つまりシルバーのほうは、実際に手にしてみないと、わからない。

今後、ゴールド・シルバーシーンオブシディアンのいずれも、メキシコ産から中国産に切り替えられると私はみている。
従来のシルバーシーンオブシディアンは黒く、光を浴びてシルバーに輝き、時にキャッツアイも見ることができた。
中国から全く同じ石が出ているなら、私は喜んで購入するだろう。
中国産鉱物を否定したいわけではない。
代替品とする行為そのものを疑問視している。
オブシディアンが主にヒーリングストーンとして流通している現状を考慮すると、これは日本だけの問題ではないかもしれない。
私が恐れているのは、産地を伏せ、メキシコ産として希少価値をつけて販売する人間が世界中に現れることだ。

先日入手した、シルバーシーンオブシディアン。
気軽に扱えるタンブルは、これが最後になると考えている。
何度も私を絶望から救ってくれた石だった。
最後に私の心を照らし、希望へと導いてくれたことに、深く感謝している。
このままでは、ゴールドやシルバーのシーンの耀う黒耀石は、市場から消える。
少なくとも私は、その姿に希望を見出せない。


27×23×23mm  20.11g

2012/09/20

マカバのペンダント


マカバ Merkabah
Heaven & Earth LLC



このところ霊的な方々とのご縁が続いたので、霊的クリスタルについて、真面目に考察してみたい。
写真のペンダントに見覚えのある方はおられるだろうか。
Heaven&Earth社プロデュース、目的別に厳選された数種類のクリスタル入りのミックスペンダントである。
輪を描くような魅力的なデザインと、ガラスケースに入ったカラフルなクリスタルの欠片。
それらの組み合わせによる大いなる力の目指すところが、その人の魂の目的というわけ。

写真は訳あって入手した「マカバ」。
アゼツライトモルダバイトブルッカイト、ヘルデライト、フェナカイト、メルカバイト・カルサイトという特殊なカルサイト、以上6種類の鉱物が入っているらしい。
なお私自身は、スピ系に対しては肯定・否定のどちらでもないという立場を貫いている。
不思議な出来事に遭遇しやすいのは事実だが、偶然であるものと考えている。

2009年2月、私はアメリカのツーソンショーで、Heaven&Earth社代表のロバートシモンズ氏にお会いした(→その時のことはこちらにまとめました)。
その直前、私はシモンズ夫人やスタッフの方とお話しながら、ふと自分に合うミックスペンダントは何だろう?と思い立った。

カタログには、目的によって様々な種類のミックスペンダントが用意されている。
「チャクラ・ハーモニー」「チャネリング」「トランスフォーメーション」「シャーマニック・ジャーニー」「エンジェリック・レルム」「リカバリー」「アセンション」、そしてシモンズ氏お得意のシナジー・シリーズ等々、ニューエイジャーさん御用達のキーワードが目白押し。
しかし、自らの魂の目的を、自分で勝手に決めてよいのか?という疑問が残る。
凡人ゆえ背伸びは避けたいものである。
だが、気になる。
折角プロのスタッフが対応してくださるのだ。
話の種にひとつ選んでいただこうと思い立った。

ミックスストーンペンダントの種類は非常に多い。
大まかには3種類に分けられる。

1)霊的上昇 ー サードアイ/アカシックレコード/ライトボディなど
2)愛と癒し ー ハートチャクラ/ポジティヴ思考/幸運など
3)保護 ー プロテクション/浄化/オーラ・リペアーなど

私に必要なのは、どれなんだろう。
おそらくは、ハート関連だろうと考えていた(その後シモンズ氏に見事言い当てられてしまう)。
ハートチャクラやエンジェル関連のペンダントを幾つも選び、シモンズ夫人やスタッフの方々に、私に適切なのはどれかと伺ってみた。

「どっちかっていうとマカバだよ」

全員が私にそう言った。
統計的に信憑性があるのではないかと、単純な私は考えた。
なんだか凄そうである。
で、マカバってなんだろう。
石に携わってのち、比較的よく聞く言葉のひとつなのに、わからないまま現在に至る。
困ったことになった。
マカバの正体をつきとめなければ、私の魂の正体もわからぬままである。

よくわかるマカバの世界(英語サイト):
http://www.crystalinks.com/merkaba.html

ここでは、マカバの概念と実践について、写真や図を用いてわかりやすく述べられている。
ユダヤ神秘主義に由来するマカバの概念は、専門家によって近年特に語られることの多い、非常に重要なキーワードだという。
マカバはつまり、高次元へ到達するための祝福の光。
「マ」は光、「カ」は精神、「バ」はボディを表す。
マカバは車輪のように光速回転し、次元を超えた光の領域へ意識を運び…
え?
回転するの?
いったい、どこまで行けば?

ああ、見落としがあった。
具体的に書いてあるではないか。
なるほど、自分でいうのも変だが「マカバ」は私にぴったりのペンダントである。
ツーソンの宿で知り合ったアーティストで、ヒーリングの知識もあるインディアンの末裔の青年。
彼が描いてくれた私の絵にも、マカバが登場した。
ご本人もそれがマカバであることを私に伝えてくださったから、間違いない。
その根拠は、上記サイトにあるイラストと解説にすべて集約されているため、以下に引用させていただく。

The Merkabah is a UFO.

50×8mm

2012/09/16

プラチナルチル(ブルッカイト)


ブルッカイト入り水晶
Quartz with Brookite
Kharan Mountains, Baluchistan, Pakistan



パキスタン・カハラン産出の有名な水晶。
希少石ブルッカイトを伴って発見されるこの輝かしい標本は、世界中でその価値を認められ、高い評価を得ている。
日本では特にブルッカイトのインクルージョンに価値が置かれている。
レアストーンブレスの定番商品としてご存知の方も多いはず。
プラチナルチル、ブルッカイトルチル、またプラチナクォーツとも呼ばれ、高額で取引されているという。
水晶内部に広がるブルッカイトのシルバーの強い輝きがプラチナを思わせるため、誰が呼んだかプラチナの愛称で定着した。
ブルッカイトは、厳密にはルチルとは異なる鉱物なのだが、両者には連続性がある。
この標本においても、ブルッカイト及びルチルの針状インクルージョンが同時に認められる。

ブルッカイトはルチル、アナテースとともに重要な酸化チタン鉱物に数えられ、幅広い需要がある。
いずれも関連性が認められ、しばしば共生して発見される。
現地からはブルッカイトだけでなく、ルチル、アナテースの産出もある。
ブルッカイトの和名は板チタン石(そのまんまですね)とされるが、もはやプラチナルチルに変更になったかのような勢い。
残念なことに、プラチナは入っていない。
初期には水晶にプラチナが入っているものと思い、買い求めた人々も多かった。
プラチナルチルは和名であり、愛称である。
海外で使うと誤解を招くおそれがあるので要注意。
また、シルバーの針のみえる水晶のすべてがブルッカイト入りであるとは限らない(例:希少石アンカンガイトを内包する水晶のルース)。

ルチルクォーツやトルマリン入り水晶を「プラチナルチル」としているケースが目立つ。
ルチルクォーツのブレスを、プラチナルチルとして高額で購入された方も少なくないようだ。
写真の標本のように、ルチルとブルッカイトの両方が入っている場合は差し支えないと考える。
しかし、ブルッカイト入り水晶に太いゴールドの針が見えるとは聞かない。
鑑別書は肝心の鉱物名が隠れていて、見えない。
以下に参考資料を引用させていただく。

ブルッカイトではなくルチル入りのおそれがあるケース:
例1)http://store.shopping.yahoo.co.jp/ashiya-rutile/13mm24rt-0206-54-kyo.html
例2)http://store.shopping.yahoo.co.jp/luz/0241pur54.html

私には、インクルージョンを外観から判断できるほどの知識や経験はない。
ただ、プラチナルチルはシルバーグレーのブルッカイトの極細の針状インクルージョンを指して使われていた言葉だった。
写真の原石についても、インクルージョンとしてはルチルの割合が高いとみられる。
しかしながら有り難いことに、堂々たるブルッカイトが共生している(ピンボケしたので写真を二枚に分けました。後日撮り直します!)。
ブルッカイトの大きな板状原石(→本文下の写真及び結晶先端の拡大写真)が水晶の隙間に確認できる。
ワインレッドを帯びた強い光沢を伴うシャープな結晶は、まさに世界中の収集家を魅了し続けるパキスタン産ブルッカイトの醍醐味。
この産地からのブルッカイト、またアナテースは欧米では異常とも言える人気ぶり。
水晶と共生したブルッカイトの標本は、ダメージがない場合、概ね100ドルを超える貴重品となる。

いっぽう、クリスタルヒーリングにおいては、高次のチャクラを活性化させ、人々を高みに導くクリスタルとして、アゼツライトやフェナカイトに並ぶ最も重要なヒーリングストーンのひとつに数えられている。
このような希少石が分野を超えて愛されたのは、パキスタンから数多くのブルッカイトが届けられたからに他ならない。
欧米を経由するととんでもない金額になってしまうブルッカイト。
私たちがそうした希少石を良心価格で入手できるのは、日本に活躍する多くのパキスタン人ディーラーのおかげであることを忘れてはならない。

金、銀、銅のグラデーションに彩られたインクルージョン。
流れるような繊細な糸が輝くさまは、誰も入ることの無い秘境で見た奇跡の光のような、純粋な感動を与えてくれる。
なお、この産地の水晶には、アンハイドライト(エンジェライト)のチューブ・インクルージョンが入ることがあるらしい。
よく見ると、空洞のような針もみえるので、もし原石をお持ちの方がおられたら、お宝チェックをしていただきたい。
見どころは満載である。

プラチナルチルはあらゆる奇跡と富をもたらすパワーストーンとされている。
何十万もするプラチナルチルのブレスレット。
富がもたらされるならば何としてでも買わねばならぬ。
しかしながら既に、プラチナルチルのブレスにキラキラとレインボーが輝き始めた方は多いことだろう。
そのレインボーは、次のプラチナルチル・ブレスへの買い替え時を意味している。




45×37×25mm  30.48g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?