2012/02/28

インディゴライト


インディゴライト
Indicolite Tourmaline
Galiléia, Minas Gerais, Brazil



平和な日々をすごしています。
私は元気です。
今夜はブルールチルでお馴染みのインディゴライトの話をしましょう。
そう、憧れのあの青い針が、なんと束になっての登場です。
母岩が無いから丸ごとインディゴ。

だけど、なんだろう?この無言の圧力は。

エルバイト(リチアトルマリン)の中でも、緑色を帯びた青~濃紺色を示す結晶をインディゴライトと呼んでいる。
絶妙なブルーとグリーンのバランスがその基準となるため、判断は難しい。
ブルートルマリンよりも価値は高いとするのが一般的。
インディゴライト≠ブルートルマリン、とするなら、俗にいうブルールチルの定義に新たな見直しが必要かもしれぬ。
インディゴライトよりも、ブルートルマリンの針状結晶を内包する水晶としたほうが適切と考えられるからだ。
青緑の針の目立つブルールチルは、歓迎されない。
ジュディ・ホール氏の著書では、ブルー・トルマリンの入った水晶を青水晶としている。

この標本はインディゴライトとして入手した。
確かに全貌はインディゴライトだが、多彩すぎて意見はわかれそう。
一部にアクアブルーやグリーン(ヴェルデライト)、イエロー(カナリー?)の箇所が見られる(本文下に写真を掲載)。
いずれもエルバイトに属する。
あとはピンクがあれば勢揃いなのだけれど、残念ながら確認できず。

100gを越える大きさ。
手持ちのトルマリンの中で最も大きい。
そして分厚い。
鍋の底から現れたまさかの昆布のようなフォルムには、圧迫感すら感じる。
さほど高かった記憶がないのは、付着物・ダメージがみられることと、透明度や形状に「トルマリンらしさ」が欠けているためではないかと思う。
トルマリンといえば柱状のシャープな結晶体。
真っ直ぐな条線が光に透けてつやつやと輝くさまを楽しむもの。
複数の色味を持つ場合は、そのグラデーションの絶妙さも評価の対象となる。
だが、この標本は分厚すぎて、向こう側が見えない。
そこが光に満ちているのか、闇に包まれているのかは、わからない。

表面の至るところに、細かい毛状のなにかが貼り付いている。
シルバー?
水洗いしたら溶けて見えなくなった。
乾燥させて再び確認すると、復活している。
こすって落としても元に戻るコレ(本文下写真参照)は何?

カビの類いだろうか?
マイナスイオンで空間を清浄にするという美と健康の象徴・トルマリンに、カビなど有り得ないはずだ。
もしや水晶の中に入ってるアレ?
でも色がシルバーというか灰色。





追記:青い針のみのブルールチルは、インディゴライトによる発色ではないかもしれません。詳細はブルークォーツに記しました。(2012年9月8日 記)


91×46×32mm  125.5g

2012/02/26

モリオン(蛭川産黒水晶)


黒水晶/モリオン
Morion
岐阜県中津川市蛭川田原(旧恵那郡)



国内有数の鉱物の産地として知られる岐阜県中津川市。
中でも蛭川の花崗岩ペグマタイトからは美しい黒水晶が産出することで知られており、古くからコレクションとして愛されてきた。
現在も多くのミネラルハンターが、蛭川を訪れる。
町の至るところに、現地の石材を使用した歩道や建築物がみられるという。
これらの中から魅力的な鉱物が出てくるのではないか…とうっとりしてしまうロマンチスト(大先輩でございます)もいらっしゃる。

写真は古いコレクションで、過去にはこうした漆黒の結晶が多くみられたと伺った。
小ぶりながらもバランス良く、二つの結晶が組み合わせられ成長した、ユニークかつ見栄えの良い標本となっている。

このところ出回っているのは、蛭川産モリオンという名のスモーキークォーツ。
残念ながら、蛭川の黒水晶の流通は減るいっぽう。
モリオン(
黒水晶)が注目を集めたのがきっかけで、このところ国産モリオンの評価が急上昇している。
異常ともいえる高騰ぶり。
だが、それらの大半はスモーキークォーツといったほうが適切。
ファントムタイプのモリオンというモノを見かけたのだが、ツッコミどころがありすぎてどう反応していいのかわからない。
むしろ消費者はより警戒を強めることだろう。

モリオン(黒水晶)については以前も記した。
天然の放射線の影響で水晶の結晶構造が破壊され、真っ黒に変わったものをそう呼ぶとしている。
黒水晶は蛭川産以外存在しない、あとはケアンゴーム、と仰る専門家もおられるほど。
手にとって「なんだ、スモーキークォーツか」とがっかりされる方がおられたら、そうではないとお伝えしたい。
こんなにも神秘的であり、美しいのだ。

なお、意外に知られていないようなのだが、岐阜県は放射性鉱物の産地として有名。
中津川市だけでなくその近隣、また土岐市のウランも有名。
従って、県内の一部の放射線量は、他の地域に比べ格段に高くなっている。
全国有数の放射線量を誇る蛭川だからこそ、ミネラルハンターに愛されてやまないというもの。
日本三大ペグマタイトといえば岐阜県苗木地方と福島県石川町、滋賀県田上山の三箇所。
中でも福島県石川町は、戦時中に原爆開発のため採掘が行われたほどの放射性鉱物を産出した(→詳しくはビクトリアストーンにて)。


蛭川(ひるかわ):古くから鉱業が盛んであった。現在鉱山は閉山しているが、鉱物愛好家にはよく知られた土地。人口は4,000人弱。日本有数の黒水晶の産地として有名である。他にトパーズ、ベリル、ジルコン、モリブデナイト、鉄コルンブ石など。水晶や長石の色合いが変わっているのは、天然の放射線の影響だとされている。

苗木(なえぎ):人口は6,500人ほど。天然の放射線量はトップレベルというが意外に人が住んでいる。砂金をはじめ多彩な鉱物を産し、日本三大ペグマタイトのひとつに数えられる。他にサファイア、トパーズ、ベリル、マイクロクリンの豪華結晶、スモーキークォーツなどが産出。稀にチンワルド雲母や放射性鉱物として知られるゼノタイムなどレア物も出るらしい。

福岡(ふくおか):人口は7,000人を超え、そこそこ発展している様子。有名な木積沢のトパーズのほか、バラエティに富んだ放射性鉱物の名産地。ジルコンのほか、フェルグソン石、モナズ石、サマルスキー石、ゼノタイムなどの各種レアアースが眠っており、鉱物鉱物愛好家は必ず礼拝に訪れるものとされている。なお、フェルグソン石は現地の人々に糞石と呼ばれ、ぞんざいな扱いを受けていたらしい。


「うちの近辺は線量が高い」という場合、土地そのものに問題があることも多い。
放射能をもつ天然石は、意外に身近に眠っていたりする。
流行のガイガーを買って、はじめてその事実を知る方もおられるようである。
敏感な方々は、家を購入するさいにガイガーを持参し、住環境の安全性を確認するのが常識になっているものと思い込んでいた。

ペグマタイトを掘っているうち、地層から放射性物質がこぼれ落ちるのはよくあること。
お子様の命が心配な方はまず、お住まいの市町村のペグマタイトの有無を確認しよう。
被ばくが心配なかたは、大自然はむしろ避け、金を惜しまず徹底的に安全性にこだわった、高層マンションに住むなどの対策が必要である。
当然であるが、外出はいっさい控えるのが望ましい。

「西日本の線量が高い」と言い出したのは誰なんだろう?
データがあるなら、西日本に放射性鉱物が大量にあるということなのだろうか。
誰もデータそのものを知らないようなので、不思議に思っている
放射性鉱物の産出はむしろ、東海~東北のほうが多いような気がする。
近畿なら、滋賀のペグマタイト、あとは京都や三重から若干といった感じで、数は少ない。
思い当たるのは岡山くらいで、それ以上向こうになると、もはやどこまで西日本なのかわからない。
中国から飛来するアレが西日本を直撃するのは確かなことである。
そのことに触れると怒り狂う方がいらっしゃるので、触れない。
中国のアレにどれくらいの放射性物質が含まれているかを、調べてはいけないんであれば、仕方ない。

ところで、昨日不思議に思ったことがある。
原発批判に盛り上がりをみせるツイッターにて、脱原発のカリスマとされる人物が、中津川市の蛭川にお住まいであることを知った。
あの方のツイートは、情報というよりインパクトの一種だと受け止めている。
素人でも考えうるシンプルな内容だから、報道を見るのであればわざわざ読む必要は感じない。
しかしながら蛭川で検索をかけたら、あの方が出てきてしまった。
福島から逃げろと執拗に繰り返される方が、よりによって蛭川在住というのは、違和感がありすぎる。

蛭川付近の放射線量は、少なくとも他所より3倍近く高いという。
なぜにご本人が蛭川にこだわっておられるのか、不思議でならない。
こんなことを質問したら、電波攻撃と受け止められ悲しまれるに違いないので、ご存知の方がおられたら、教えていただきたい。
また、困ったことに、その方の存在自体が著作権等に違反するのである。
以下は夢にすぎず、電波攻撃によるまやかしの類いであると捉えていただきたい。


twtterにおける "このメディアは取り扱いに注意を要する" 氏のさけび
https://twitter.com/#!/tokaiama

URL

鉱物採集家にとって憧れの地である放射性鉱物の宝庫、蛭川を背景に
脱原発のカリスマによる意外な告白が記されている


49×25×23mm  38.93g(ベース含)

2012/02/24

クンツァイト(バイカラー)


バイカラークンツァイト
Bi-Color Spodumene, Kunzite
Mawi, Laghman Province, Afghanistan



まるでキャンディみたい。
パステルカラーが可愛らしいクンツァイトの原石。
ひとつの結晶に2色の色合いが出ているものを選んだ。
パープル~ブルー(クンツァイト)を2点、ピンク~ブルー(クンツァイト)、ピンク(クンツァイト)~イエロー(トリフェーン)、グリーン(ヒデナイト)~クリア(スポデューメン)を1点ずつ。
 
※この石の持つ多色性のため、光源によってはまた別の色合いになる。

スポデューメン/クンツァイトの呼び名とその論議についてはブルークンツァイトにまとめたのだけど、現在はどの色であってもクンツァイトと呼んでしまっていいような感じ。
なのでここではクンツァイトと総称することにする。

クンツァイトを無造作に並べ、何がしたかったのかというと、バイカラーのクンツァイトをひととおり揃えてみたかったのである。
手持ちのクンツァイトにたまたま、二色の色合いが出るバイカラーの石があった。
ここはひとつ、極めてみようと思った。
それだけ。
鉱物学上何の石かと言われたら、説明に困る。
色味によって名前が分れているのは、この石の特性からすると不便ではあると思う。

昨年末、池袋ショーでの購入品。
夜に宿にて撮影した。
世界中から訪れるディーラーの中で、いま最も勢いのあるパキスタン人業者。
奴らは魅力的なアフガニスタンの鉱物を多数ストックしておる。
当初このクンツァイト、3つで4,500円と言われた。
裏技を使ったら、5つで4,000円になった。

さて、売り手の青年に、産地を書いてくれとメモを渡したところ、彼の名前(サイン?)までていねいに記入されたものが返ってきた。
カタカナで書かれてあった。
日本語を喋れても、書ける外国人は少ない…はず。
そもそも、先程まで英語で会話していたアナタが、なぜに?
などとは聞かなかった。

改めてメモを見て気づいた。
「クソザイト」と書いてあった。
なんじゃそりゃ。
主力商品にその間違え方はまずいだろ。


30×15×12mm(最大) 27.78g

2012/02/22

フォンセンブルー


フォンセン・ブルー
Vonsen Blue Jade
Vonsen Ranch, Petaluma, Marin Co., California, USA



南の島の海を思わせる、穏やかなブルーグリーン。
パシフィック・ブルー・ジェイドの別名にも納得がいく。
古風にいえば、納戸色といったところだろうか。
発見者であるマグナス・フォンセン氏に因んで、フォンセン・ブルーと呼ばれることが多い。
ロシアから産出するダイアナイトに似ていることから、同じものかどうか問い合わせたのがきっかけでその名を知った。
販売先も詳細をご存じなく、卸元からの情報でわかったもの。
当時送っていただいた文章を以下に引用させていただく。


かつてアメリカで活躍したミネラル・ハンター、フォンセン氏が、1949年にカリフォルニア州ペタルマ付近の牧場で発見した、フォンセン・ブルーと呼ばれるネフライトジェイドの一種です。
農場主が頻繁な立ち入りを許可しなかったため、採掘はほとんど行われませんでした。
最近になって農場主が代わり、手掘りで採取が進められ、市場に出回るようになったとのことです。

見た目はそっくりだが、ダイアナイトとは別の鉱物。
かつてダイアナイトを知っている人は少なかったが、フォンセン・ブルーを知っている人はもっと少なかった。
現在も国内でほとんど流通がないのが不思議なくらい。
ブルージェイドもそうであるが、ピンクジェイド、パープルジェイド等々、ジェイドではない天然石を使った染めビーズが多く流通し、市場は混乱している。
或いは、ダイアナイトと混同されているのかもしれない。

鉱物としてはさほど珍しいものではない。
ネフライトの一種である。
成分は主にトレモライト(透角閃石)。
他にサーペンティン類を含み、青い色はアルミニウムに由来するとされている。
原産地、アメリカでは安定した人気があるようだ。
アメリカから良質なネフライトが産出する例は意外に少なく、色合いの珍しさもあって、けっこうなお値段が付いている。

平和を象徴し、持つ人を深いリラックス状態に導くとして、ヒーリングストーンの扱いを受けていることもある。
ダイアナイトとの共通点を感じさせるこの石が、熱心な鉱物収集家によって発見され、価値を与えられたという事実は興味深い。




アメリカで活躍したミネラルハンター・フォンセン氏は、イケメンである。
酪農家の出身で、研究者ではない。
新鉱物の発見、研究や出版にも貢献した彼だが、鉱物の知識についてはほぼ独学だったという。
日々採取に明け暮れる彼のコレクションはとどまるところを知らず、膨大なコレクションを保管するため、自宅のとなりに自宅(保管用と展示用)を建てたほど。
フォンセン氏の収集した鉱物は、アメリカで最も素晴らしいコレクションの一つとして、現在も高い評価を受けている。


ドイツ・ミュンヘンショーで展示された氏のコレクション
http://www.the-vug.com/vug/article111.html


34×25×15mm  14.98g

2012/02/18

ストロベリークォーツ(& チェリークォーツ)


ストロベリークォーツ
Strawberry Quartz
Djezkazgan, Bektau Hills, Chemkent, Kazakhstan



盛り盛りいちご。
ストロベリークォーツと呼ばれる水晶は数あれど、元祖ストロベリークォーツといったらこれ。
カザフスタン産出のこのクラスターは、いちご女王の座に君臨して久しい。
その希少性、美しさから、収集家にとっては憧れの存在となっている。
赤い色合いは、水晶に内包されたゲーサイト(針鉄鉱)による発色とされる。
切断して研磨すると、中央に向かって赤~白のグラデーションとなっていることが多く、まるで本物のいちごのよう。

少し前までは数万もの貴重品だった。
幾度となく見かけたが、購入は後にも先にも一つだけと決め、見送っていた。
念願のストロベリークォーツをようやく手に入れたのは、昨年の終わり。
五千円まで下がっていたので、決断に踏み切った。

カザフスタン産ストロベリークォーツは、先端にかけてスモーキーの色合いが入っていることがある。
まるで、少しいたんだいちご。
果物は新鮮がよろしい。
写真ではやや赤みが強く映っているが、現物は素朴な色合い。
研磨し樹脂でコーティングして外観を整えた標本が、これまでの主流だった。
昨今の原石標本は未加工品に価値を置かれているよう。
美しく自然でとてもいい。
ダメージのある個所もみられるが、気にならない程度。
むしろ険しい道のりをよく耐えたものだ。

ストロベリークォーツはカザフスタンの標高四千メートルもの山岳地帯から産出するという。
採掘には困難が伴い、険しい山道を経て、馬を使い街まで運ばれているそうだ。
立ち入れるシーズンは限られているとのこと。
現地の情勢は決して良好とはいえず、採掘がいつ中断されてもおかしくない状況ともいわれている。

ストロベリークォーツと呼ばれる水晶は他にも存在する。
ブラジルやマダガスカルなどから産する、ハーレークインクォーツ、ファイヤークォーツと呼ばれる水晶がそう。
外観と価格で判断できるから、一通り見て目を鍛えておこう。
時にはクォーツと呼べないものも混ざっている。
アヴェンチュリン(クォーツァイト/岩石)やマスコバイト(雲母)、中国製のチェリークォーツ(グラスビーズ)などがストロベリークォーツとして流通している。

中でもチェリークォーツは呪われた石。
というのも当初、チェリークォーツが天然石として紹介されたために、誰もがそれを信じてしまったのだ。
「美しいチェリーピンクの水晶」はすぐに注目を浴び、高い人気を得た。
その正体が明らかになったとき、誰もが唖然とした。
チェリークォーツを取り扱った多くの業者が損害を受け、廃業する者も少なくなかった。
当時の在庫は未ださばけておらず、グラスビーズとして二束三文で流通している。
天然石と明記している場合はお店の人に聞いてみよう。

日本に偽物が集中するのには訳がある。
たぶん仏教国だからだろう、数珠が大いに好まれるのである。
石がビーズに加工される場合、専門家でも真偽の見分けは難しい。
原石を見れば一目瞭然なのに、原形をとどめていないのだから。
男女問わず数珠に走るのが不思議でならない。
ビーズに本物を求めるなど、滅茶苦茶だ。
宝石と異なり、すべてを鑑定することができない(サンプルのみの鑑定になる)から、リスクは高まる。
あなたのそのブレスがカザフスタン産のストロベリークォーツで作られたものなら、べらぼうに高かったはず。
ゆえに、より一層のご利益が期待できる。
信じる者は救われる。
ストロベリークォーツは、チェリークォーツの被害に遭われた犠牲者への祈りを捧げるにふさわしいパワーストーンであるといえよう。


40×35×22mm  33.68g

2012/02/16

スギライト


スギライト Sugilite
Karahali Mn Field, Northern Cape, South Africa



パワーストーンブームに火を着けた重要な鉱物。
日本人が最初に発見した高貴な紫色のヒーリングストーンとして紹介され、定着している。
和名の杉石は発見者の一人、杉博士に因むもの。
スギライトの名がそこから来ているのは有名なエピソードである。

前回のラリマーチャロアイト同様、今となっては懐かしい「世界三大ヒーリングストーン」のひとつ。
90年代後半、クリスタルヒーラーのジェーン・アン・ダウ氏(2008年没)に見い出され、ニューエイジの石として紹介されたのがきっかけで、世界的に注目を集めることとなった。
浄化要らずのマルチパワーを発揮し、敏感な人は石酔い(石のパワーにより飲酒したように酔いがまわる状態。いかに優れた感性の持ち主かということを示している)するといわれている。
しかし、どうも最近見かけない。
日本最大のスラム街でも話題になるくらい人気のパワーストーン・スギライト。
もしこれが実体のないものだったとしたら、皆様はどう思われるだろう。

賢い主婦は、見た目の良い野菜より、見た目は悪くとも安全な野菜を買い求める。
同様に賢い消費者は、見た目にこだわらず、本物のスギライトを買い求め、そのパワーを享受する権利がある。
しかしブレスの場合、同じ色合いで統一しなければ、商品としての見栄えが悪く不利になる。
天然石においては非常に難しいことなのである。

スギライトには本来、これといった色味はない。
紫のほか、白や黒、赤や青、グレーなど、色合いには幅がある。
要は紫色とは限らない。
しかし、紫の石として定着してしまった以上、売り手は考えうる限りの手段を駆使し、紫のスギライトを販売せねばならない。
そのため「紫の天然石=スギライト」という大胆かつ分かりやすい売り方が常識となっていく。
消費者は、不自然なまでに紫なビーズをふんだんに使用した「スギライト」のブレスを、言われるがままに買い求めた。
いっぽうで本物のスギライトが偽物扱いされるなど、事態は混乱を極めた。

南アフリカから美しい紫のスギライトが産出していたのは確かである。
ただし、色は紫だけではなかったようだ。
いつ頃からスギライトが別のモノに切り替えられたかについてはわからない。
自分はスギライトは原石しか扱った記憶がない。
4年程前には既に、怪しい気配が漂い始めていたような気がする。
恩師さえもトラブルに悩んだと聞かされた。
現在も入手可能なスギライト製品の多くは、パープルジェイドとよばれる石の類いであろう。

原石のほうはまだ流通があるけれど、スギライトのブレスは最近見ていない。
もしまだ紫のみの石で統一された商品を販売しているところがあれば、怪しいと思っていいだろう。
混ざりけのない高貴な紫。
「石酔いで頭がボーっとする、触ると手が痺れるようだ」
誰もが口を揃えてこう言った。
大いに崇められた気高い紫の石は、人の手によって創られた幻想に過ぎなかったのである。

なお、1942年に愛媛県で杉博士らによって発見された最初のスギライトは、淡~いミントグリーン(wikiでは「うぐいす色」表記)であったという。


15×10×5mm  1.51g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?