2012/02/12

ラリマー


ラリマー Larimer
Barahona, Dominican Republic



ドミニカ共和国から産出する、カリブ海の青い宝石、ラリマー。
ラリマー(ラリマール)とは現地での呼び名で、正式にはブルー・ペクトライトという。
「三大ヒーリングストーン」の一つとして、スギライト、チャロアイトとともに人気を博した。
中でも美しいスカイブルーのラリマーは、愛と平和、人と自然との調和を象徴するパワーストーンとして、誰もが憧れた人気商品だった。
先日、大阪市N成区のスラム街にある違法露店でラリマーのブレスを見ていたら、店主から「それは世界三大ヒーリングストーンだ」と声を掛けられた。
我に返った。
そういえば最近聞かない。
スギライトはその存在すら危ういし、残りの二つは枯渇寸前。
かつての謳い文句も、それらが幻とわかった今、死語になりつつあるのかもしれない。

写真のラリマーは、荷物を整理していたら偶然出てきたもの。
発送のために梱包して段ボールに仕舞ってあった。
こげ茶色の母岩の中に柔らかな質感のラリマーが詰め込まれているさまは、巨大なキウイを思わせる。
スライスした研磨品は今も流通があるが、こうした未研磨(割ってはあるかも)の原石は滅多に見かけなくなった(スライスについては本文下に写真を掲載、二つで約五百円。この状態では、私には本物か偽物かは判別できない)。

ペクトライトは世界各地から発見されているが、独特の濃淡を伴うスカイブルーのペクトライトは、ドミニカ共和国産のみ。
もともと希少性が高かったこと、また近年世界的に注目を集めたために、産出は激減。
発見から30年余りで枯渇の危機に晒されることとなった。
採掘現場はより危険な場所へと移っている。
噂では現場はもはや崖、らしい。
事実かどうかはわからぬが、転落事故による死者が相次いでいるといわれている。
人間と自然との調和を表す石、のはずだった。
最近では霊能力者がラリマーを見て「呪われている!」と大騒ぎすることも珍しくないという。

産出の激減とともに、価格は上昇を続けている。
ラリマーのブレスの販売価格は、概ね十万を越えている。
天然石の加工に関しては世界一の技術を誇る中国での需要の急増にも原因があるという。
また、質も低下している。
黒や赤など不純物の混在した原石、色味の無い原石は製品にならないため、改良される。

なお、新型(※偽物ではない)のラリマーがブレスになって登場している。
色は美しいスカイブルー。
しかし、不自然な水玉模様が均等に入っており、中まで透けて見える。
「質を落とした廉価版」との説明だったが、どうも充填処理(色合いや形を整えるために他の物質で補強するなどして、作り変えること)を施されているよう。
本来ラリマーは不透明で、海中から見上げた青空のような、変化に富む模様を楽しむものだった。
廉価版といっても決して安いわけではない。
池袋ショーで並んでいたそれよりも、雑貨店で選んだプラスティックのアクセのほうがモノとして自然に感じるのは、私だけだろうか。

アイスラリマーと呼ばれている模様。人工石、処理石の如何を明らかにせず、ばらまかれている状態とみられる。また、ブルーアラゴナイトが極めてラリマーににており、原石であっても見分けがつかないことには、十分注意したい。業者側の見極めと、良心にかかっているといえるだろう。

ペクトライトでない他の岩石が染色され、ラリマーとして流通しているという話は有名だが、加工技術のほうも飛躍的に向上している。
リスクの高い買い物になることは覚悟しておいたほうがいいかも。
できればビーズではなく原石をおすすめしたいけれど、こちらも質は落ちている。
発送しなかったのはわざと。
久しぶりに再会し、神妙な気分になった。




52×45×31mm  74.08g

2012/02/09

クリストバライト


クリストバル石中の鉄かんらん石
Fayalite, Cristobalite
Cougar Butte, Siskiyou Co., California, USA



鉱物の魅力を知った翌年、私は東京にいた。
初めて入った有名鉱物店で、最初に買った標本がコレだった。
どうしてこんな変わったものを選んだんだろう。
壮絶なインパクトを感じて手に取ったとしか思えない。

ざっと見たところ、この産地のクリストバライトは世界的に有名なようだが、鉱物標本としての取り扱いは意外に少なく、調べなければ出てこない。
忘れていてもおかしくない。
購入から5年経つにも関らず、手元にコレがあることははっきり覚えていて、先日ようやく見つけ出した。

説明しよう。
中央に見える白い塊が、クリストバライト(クリストバル石/方珪石)。
鉄かんらん石(ファヤライト)はこの塊のどこかにある…はず。
黒い部分はオブシディアン(黒耀石)で、今回はオマケである。
パワーストーンとしては、スノーフレークオブシディアンと呼ばれるものがこれにあたる。

オブシディアンは、溶岩が地表で急速に冷え固まって出来る天然ガラスの一種。
それに加え、溶岩に含まれるシリカ成分がクリストバライトとなり分離した結果、このような物体が生成されるらしい。
クリストバライトと水晶は同じ成分でできている。
運命を分けるのは、冷却される速度や圧力など、複雑な環境条件に因り、必ずしもクリストバライトが生成されるとは限らない。
まだわかっていないこともあるそうだ。
一部にクリストバライトが確認できる例としては、オブシディアンの他にライトニングクォーツ(雷水晶)、リビアングラス(インパクトグラス/テクタイト)など。

本来の主役は、クリストバライト中の鉄かんらん石。
その名の通り8月の誕生石、ペリドットの仲間にあたる。
クリストバライトのどこかに微細な結晶体がみられるということだが、見えない。
ルーペがあれば見えるのかもしれないが、見えない。
マグマや隕石由来のペリドットは有名だから、その類いなのかもしれない。
素人ゆえこれ以上の言及は控える。

なお、クリストバライトに発がん性があるとして、国際的に問題視され、我が国でも厚生省により使用に制限が設けられている。
アスベスト同様、建築現場から粉塵となって生じることがあり、結晶構造もアスベストに似ているために、肺がんのリスクが指摘されているという。
クリストバライトは危険な化学物質であるとして、神経質になっている方が多く見受けられる。
いつものように注意を喚起しておきたい。

写真にあるように、クリストバライトは天然石である。
また、成分はSiO2、水晶やめのう、石英と同じ。
長期にわたって吸い込むことによる健康被害が指摘されているもの、と捉えるべきか。
しかしながら、クリストバライトへの恐怖が飛躍した結果、石英(※)さえ危険物質に含めている団体もあるようだ。

※代表的な石英に、ローズクォーツがある。

粉塵には概ね発がんのリスクが伴う。
建築現場においては、木材の粉塵さえも、発がん性物質に認定されている。
たとえ美しい天然水晶であっても、粉末にし長期に渡って吸引すれば、肺がんになるおそれがある。
死は人を選ばない。
本人の心がけとは無関係に、すべての人に平等に訪れる。
危険を避けるために、常にマスクをしていたとしても何れ、死ぬ。
クリストバライトは、妄信を諭し、真実を見極める力を授けるため、人類に与えられたパワーストーンなのかもしれない。


67×60×34mm  152.1g

2012/02/07

小川山の水晶


スモーキークォーツ Smoky Quartz
長野県南佐久郡川上村 小川山



豊かな自然に恵まれた日本アルプスには、有名な水晶の産地が数多く存在する。
長野県と山梨県の境界に位置する、標高2418mの小川山。
その地味すぎるネーミングから想像できるように、登山家には殆ど知られていない。
いっぽうで国内有数の水晶の産地として知られ、ミネラルハンターにとっては憧れの地でもある。
そんな小川山より採取されたという、優美なたたずまいのスモーキークォーツ。

吸い込まれるかのような透明感、柱面のほとんどみられない独特の結晶構造、そして噴きつけたかのようなイエローのコーティング。
この色合いは、結晶表面を薄く覆う鉄分に因るもの。
水晶がゴールドに輝くさまに特別な力があるとして、クリスタルヒーリングを愛する人々の間で「ゴールデンヒーラー」と呼ばれ神聖視されている。
元々はアメリカ・アーカンソー産の水晶を指して使われたものと記憶している。
国内からは、他にもゴールデンヒーラーの認められる水晶が得られたようだが、それらの多くは現在、貴重品となっている。
利欲にとらわれることなく、先人への敬意を以って賜るべきものと心得よ。

トップのみ発達した水晶は、アメリカから産出するスモーキーアメジストなどによく見られるが、この色合いは意外に見かけない。
小川山からは、他にも素晴らしい各種鉱物が発見されるらしい。
それが何なのかは、勇敢なミネラルハンターのみぞ知る。
日本には、美しい水晶を拝める秘境がある。
小春日和の太陽の下で、くつろぎながら味わいたい一品。


26×22×20mm  12.35g

2012/02/05

ソーダライト/ハックマナイト


ソーダライト
Sodalite (Var: Hackmanite)
Pegmatite No.62, Karnasurt Mountain, Lovozaro Massif
Kola Peninsula, Murmanskaja Oblast', Russia



鉱物に紫外線(ブラックライトなど)をあてると蛍光することがある。
これをテネブレッセンス効果と呼んでいる。
この言葉を一躍有名にしたのが、ハックマナイト(→記事はこちら)。
もともとハックマナイトはソーダライトの成分の一部が硫黄に置き換わったもの。
ソーダライトの変種にあたる鉱物である。

ソーダライトといえば青が一般的だが、ときに白または淡いグリーンを帯びていることがある。
この種のソーダライトに、テネブレッセンスがみられることが多々あるようだ。
また、ハックマナイトと似て非なる独特の色変化(太陽光→不変、紫外線→蛍光→その後しばらく色が残る)が起きるという。

先日倉庫から出てきた謎の石。
ラベルには事細かな産地とともに、「ソーダライト(ハックマナイト)」と記されている。
外見からはどちらとも判断できない。
ハックマナイトであれば、外に置けば紫に変わるであろうということで、直射日光の下に三十分放置。
しかし白とグリーンの色合いのまま変化無い。

ではブラックライトではどうなるか実験してみた(本文下に写真を掲載)。
写真左が、写真にある白にグリーンの入ったソーダライト。
右側はアフガニスタン産の色濃い紫のハックマナイト(→もとの姿の写真)。
撮影を終えて照明をつけた。
アフガン産ハックマナイトは濃い紫のまま。
いっぽう、先ほどまで白かったソーダライトは、一部が淡いピンクに変わっており、次第に白へ戻った。
調べたところ、前述の通りソーダライト(ハックマナイト)には産地限定でこうしたテネブレッセンスのパターンがみられることがわかった。

ハックマナイトは元々無色~褐色であるが、少し窓辺に置いただけで、紫外線に反応して鮮やかな紫色に変化する。
しかしこのソーダライト(ハックマナイト)の場合、一般的なハックマナイトのように太陽光で紫にはならず、元の色合いのまま変化しない(ご覧の通り、照りつける直射日光の下で撮影している)。
いっぽう、ブラックライトを照射すると、ハックマナイト同様オレンジ~赤に蛍光し、見分けが付かないほど。

もともと希少石に数えられるハックマナイトだが、従来のミャンマー産に加え、近年アフガニスタンからの流通が急速に増加、知名度、人気ともに高まる一方である。
かたやソーダライトのほうは、量産型薄利多売商品(パワーストーン)の一種に格下げされてしまった。
人気は下降気味で、最近ではブレスレット売り場ですら見かけない。
消費者の関心はより珍しく希少性の高い鉱物に移行している。
ひとついえること、それはソーダライトであっても稀に蛍光するということ。
ただし、ハックマナイトとの境界線は曖昧なものとなっている。
では、なにをもってソーダライトとハックマナイトを区別すべきなのだろうか。

  • 鉱物学上ソーダライトと表記する例
  • ソーダライトのうち、テネブレッセンスを示すものをハックマナイトと呼ぶ例
  • 成分に硫黄が含まれている場合ハックマナイトとする例
  • 色で判断「透明感ある濃い青色で方ソーダ石とするのが相応しい」
     参考:http://www.hori.co.jp/hori/list/137.pdf( C1. 方ソーダ石 )
  • 産地によりソーダライトとみなす例(カナダ、グリーンランド、アフガニスタンなど)
  • アフガニスタン産の場合、アフガナイトと混同されることがある

ざっと見たところでは、以上のように解釈は多様であり、明確な定義はないようだ。
外見だけではこの標本、グリーンランド産のブルーグリーンのソーダライトと区別がつかない。
通常のハックマナイトとは異なる独特のテネブレッセンスを示すさまも共通している。
ソーダライトと呼びたくなる。
しかし困ったことに、この石はロシア・コラ半島産。
この産地からは青緑色のハックマナイトが産出するとされている。
ラベルを見る限り外国人から購入したようであるが、どうしてこんなややこしいものをわざわざ選んだのか覚えていない。

この標本は1998年に上記の鉱脈から発見されたハックマナイトのひとつで、ブルーグリーンを基調とする独特の風貌を特徴とする。
購入元のラベル表記に従い、ここではソーダライトとする。
なお、アフガニスタンのラピスラズリ鉱山からは、見事な紺色のハックマナイトが産出することがあるという。
素人にはラピスラズリにしか見えない(ラピスラズリはソーダライトを含む複合鉱物。詳細はアフガナイト問題に記載)。
呼び名が統一されていないせいかもしれない。
色合いやテネブレッセンスの微妙な経過の違いをもって、細かく分けてはくれまいか。
ついついハックマナイトに目がいくのもわかるけれど、元祖ソーダライトのほうも忘れないであげてほしい。




34×30×24mm  14.19g

2012/02/03

ジルコン


ジルコン Zircon
Gilgit, Gilgit-Baltistan, Pakistan



鮮やかなワインレッド。
ジルコンの結晶は褐色であることが多いが、パキスタンからは透明感に富む色鮮やかな標本が産出している。
その強い光沢ゆえ、宝石として扱われることも多い。
過去には、処理により無色透明に改色したジルコンをカットし、ダイヤモンドの代用品として使用した。
現在はジルコンからケイ素(Si)を取り除いた、キュービックジルコニアがその主流となっている。

ジルコンは放射性鉱物である。
微量のウラン、トリウム等を含み、日用雑貨や電化製品などの素材として活躍している。
私たちは知らない間に放射能のお世話になっている。
ちなみに、前述のキュービックジルコニアは放射性物質ではない。
キュービックジルコニアとジルコンが混同されているのを頻繁に見かける。
気になる場合は放射線の有無を確認してみよう。

ところで、最近懐かしい名前をよく聞く。
ユリゲラー。
かなり昔の人だが、覚えておられる方もいらっしゃるかもしれない。
スプーンを念力で曲げてみせ、テレビ番組の人気者となった外国人である。
自分は当時小学生であった。
当然ながらスプーンを曲げる「ユリゲラーごっこ」が教室で大流行した。
給食時間に皆が皆、力まかせにスプーンを曲げるものだから、先生が怒りに満ちていたのを覚えている。
案の定、すぐに「ユリゲラーごっこ」は禁止された。

月日は流れ、私が鉱物に興味を持ち始めた頃のこと。
100円~500円程度の石をたまに買い、気に入った石を数個、お手製のポーチに入れて持ち歩いていた。
石繋がりでたまたま、同世代の女性と仲良くなった。
驚いたことに、彼女はユリゲラーのお弟子さんだという。

「スプーン曲げるのは禁止やで!アレはただの手品で宗教や!」

もはや聞き飽きていた。
コツをつかめばスプーンなどすぐに曲がることも知っていた。
ユリゲラーがまだ生きて活動していて、宗教家や手品師などではなく、日本に弟子までいる霊能力者だった…ことに衝撃を受ずにはいられなかった。

彼女がユリゲラーからもらったというペンダント。
スプーンとは全く関係ない上品なものだった。
その頃にはもう、トリックを駆使する危険なパフォーマーにすぎないという話が定着していたが、そうした理由で他者を遠ざけるのは好きではなかった。
ユリゲラーがどこの誰なのかは知らぬ。
現在もなお活躍中で、実に不可解な理由から再評価されつつあることを知り、複雑な心境である。

ある日、彼女が私の石を見たいと言い出した。
せっかくなので宝物をと、ポーチに入れて持ち歩いていた石を数個、写メに撮って送った。
「ひとつ、嫌な感じのする石がある。黒い。処分したほうがいいよ」
彼女がそう言ったのは、ジルコンだった。
綺麗な八面体に結晶していた。
写メのジルコンはブラウンに写っていて黒くなどなかったし、宝物のひとつだったのだけれど、頑固な自分には珍しく、手放すことに決めた。
そればかりか、以降ジルコンを頑なに避けてきた。
いつしか連絡は途絶え、自分がなぜジルコンを避けているのかも忘れてしまっていた。

今であれば、放射性鉱物だからじゃないの?と思われる方もおられるだろう。
当時一般人が入手できた放射性鉱物は、人体にほとんど影響しないものばかりであり、滅多に話題に上ることはなかった。
また、霊能力者やクリスタルヒーラーは放射性鉱物を好み、神聖なものとして扱うことが多い。
処分しろとまでいう人は珍しい。
最近では、それらを内服、飲用または吸引することにより、内部被ばくを実践させている指導者もいるという。

彼女がジルコンに何を感じたのかについては、あえて聞かなかった。
そういえば、石の名前すら伝えていなかった。
彼女が福島に住んでいたことを思い出し、先日衝動的に購入したジルコン。
あの言葉が何を意味していたのかは、今となってはもう、わからない。


20×18×10mm  7.51g

2012/02/01

ダイアナイト


ダイアナイト
Dianite/Potassic Richterite

Murunskii Massif, Sakha Republic, Eastern-Siberian Region, Russia



ロシア・サハ共和国から産出するブルージェイド。
シベリアンブルージェイドとも呼ばれている。
その存在が知られ始めた矢先、死去が伝えられたダイアナ元皇太子妃を偲んで、ダイアナイトの名を与えられた。
その美しいブルーの色合いが、青を好んだ彼女をイメージさせるからともいわれている。
鉱物としては、リヒター閃石を主成分とするネフライト・ジェイドの一種で、主に研磨され流通している。
原石の質にはばらつきがある。
こうした深みのあるロイヤル・ブルーの石は稀で、全体的に淡い水色であることが多い。

私がダイアナイトを知ったのはいつだったか。
海外では比較的流通があったが、国内では見かけなかった。
ところが最近になって、日本においてこの石の人気が急上昇しているらしい。
入手困難との声も聞かれる。
この状況には、どうも納得しかねるものがある。
以前ある方がダイアナ元皇太子妃について独特の視点で言及しておられたので、私もここでダイアナイトについて私なりにまとめてみようと思う。

彼女はなぜ石の名となったのだろう。
ダイアナ・スペンサー、ダイアナ元皇太子妃。
彼女は生前多くの問題を抱えた人物だった。
つまり、その人柄を偲ばれるのは当然だが、石の名前になるほどに幸福な人物であったかということ。
誤解を恐れずに言うなら、マイケル・ジャクソンもまた同じ。
二人は生前、スキャンダラスな私生活を取り沙汰され、ともすれば奇行を繰り返す、倫理を犯すなどといった、心無い評価を受けた。
故人を想う気持ちが募り、すべてが美化される。
その扱いのあまりの違いに違和感を覚えることは過去に幾度もあった。
私がダイアナイトに複雑な気持ちを抱くのは、ダイアナ妃についてもまた、そうした違和感を感じずにはいられなかったからだ。

名門・スペンサー家に生まれたダイアナは家庭環境に恵まれず、6歳で両親の離婚を経験している。
20歳でチャールズ皇太子と結婚し、イギリス王室に入るものの、結婚生活は思うようにいかなかった。
人一倍愛を求めていた彼女にとって、過酷としかいえない状況が続いた。
お互いに不倫に走った結果、二人は1996年に離婚という結末を迎えた。
その間、彼女は摂食障害に悩まされ、自殺未遂を繰り返したとされている。
離婚後、ダイアナ妃が熱心に慈善活動に関わったのは有名なエピソードであるが、愛に飢えた満たされないその心が彼女の原動力となっていたという説には共感せざるを得ない。
ダイアナ妃の生涯に、男性の噂が絶えなかったこと、それらは公人として許されるとはいえない内容であったこと、葛藤と苦しみ、自傷行為、そしてプライバシーのない生活。
心身ともに追い詰められた末に起きた事故。

彼女は幸せだったろうか。
彼女の心は常に安らぎに満ち、輝いていたといえるだろうか。
彼女の愛と苦難に満ちた波乱の人生を、この石をもって称えることは、彼女への哀悼の念にふさわしい。
しかしそのいっぽうで、彼女の抱えていた心の闇をも美化するのは、ややもすれば残酷なことと思えてならないのである。

1997年、わずか36歳でこの世を去ったダイアナ元皇太子妃。
世界中の人々が、彼女の死を悼み、冥福を祈った。

-We'll always love you Princess Diana, we'll never forget you.

『私たちはあなたのことを、忘れないだろう。あなたの深い愛は我々の心の中で永遠となった。あなたは輝ける星となり、我々を照らし続ける。』(世界の声より)


22×11×5mm  16.55ct

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?