2012/05/26

ハックマナイト(結晶化)


ハックマナイト Hackmanite
Sar-e-Sang, Koksha Valley, Badakhshan Province, Afghanistan



アメジスト?
フローライト?
いいえ、うさこふさんです。
春のミネラルショーで見つけて、何の石か訊ねようと店主を探していると、どこからか私の名を呼ぶ声がした。
いつも興味深い鉱物を届けてくださる馴染みの業者さんだった。
覚えていてくださって、うれしい。
しかし、いつもながら難解なものを届けてくださる。

一見しただけではわからなかった。
優しいラベンダーカラーと絹状光沢、結晶形から、フローライトやレピドライトを連想した。
価格は1,000円。
いつもながらの良心価格。
ハックマナイト、とのことだった。
紫の透明石は初めて見る。
よくハックマナイトとわかったものだ。
ブラックライトでオレンジに蛍光するさまは、まさにハックマナイトのそれ(本文下に写真を掲載、共生の青紫は不明
)。

結晶し、さらに侵食を受けた姿が興味深い、宝石質のこの標本は、ラピスラズリが採取されることで有名なアフガニスタン某所(※注1)からやってきた。
過去にソーダライトの考察において、ハックマナイトとラピスラズリとの混同が見受けられるとした(→ソーダライト/ハックマナイト及びアフガナイトに記)。
現在もこの件については意見がわかれる模様。
宝石として流通しているアフガンからのハックマナイトの多くはブルーの透明石。
ソーダライトと呼ぶほうが自然なのでは。
ハックマナイトはソーダライトの変種にあたる。

※注1)この標本の産地について、鉱山までは確認できていない。有名な産地は以下:Lajur Madan; Lapis-lazuli Mine, Sar-e-Sang District, Koksha Valley, Badakhshan Province, Afghanistan.


参考:さまざまな産地のハックマナイト
http://www.cgl.co.jp/latest_jewel/gemmy/135/02.html

ここではハックマナイトを産地別に分け、産地に拠って異なる特徴を示す原因について報告されている。
ミャンマー・パキスタン・アフガニスタン・ロシア・カナダ・グリーンランドからそれぞれ採取されたサンプルを用いている。
私がセットと思い込んでいたミャンマー産とアフガニスタン産だが、それらが異なるグループに属するという部分は非常に興味深い。
またパキスタンからは、どのハックマナイトとも違う特徴を示す石が出ているらしい。

さて、パキスタンのハックマナイトを探す旅が始まった。
しかしながら、アフガニスタン産のスキャポライト(マリアライトに分類されることが多い模様)にたどりついてしまった。
紫の色といい、質感といい、そっくりである。
カットしてしまうと全く見分けがつかない。
表記の産地は同じ(注1)。
無色透明~アクアブルー、濃紫色に至るまで、さまざまな色合いの結晶が出ているようだ。
いずれも蛍光し、イエローまたはブルー、レッド、ピンクなど、テネブレッセンスの色は石によって異なっている。
興味深いのは、ラピスラズリやアフガナイト同様、ピンクに蛍光する場合があるということ(→アフガナイト参照。アフガナイトはレッド~ピンク、ソーダライトやハックマナイトはオレンジ~レッドに蛍光するようだが、それらは持ち主によって異なるとみられる)。
同じ産地の同じ鉱物であっても、石によってテネブレッセンスの色合いが異なる、という現象は起こり得るのだろうか。
成分が著しく異なるのでないなら、違和感を感じずにいられぬ。
そんな素人がここにいる。

まとめよう。
同地からは無色透明~アクアブルー~濃紫色を示す蛍光鉱物が多数発見されている。
つまり、アフガニスタンのラピスラズリ鉱山からは、アフガナイト、ソーダライト、ハックマナイト、スキャポライト(マリアライト)、またダイオプサイドが産出し、しばしば混同されている?

蛍光鉱物について研究されている方に詳しく伺いたい。
何処におられるだろうか。
なお、異例の特徴を示すとされるパキスタン産ハックマナイトについては、入手できる可能性は極めて低い(Balochistanから産した例が一件のみ。以下ソース省略)。
またパキスタンに隣接する中国某所から、紫のスキャポライトが産出、産地を偽って市場に流れているということであった。




30×22×19mm  9.35g

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