2012/01/26

エレスチャル(オレンジリバー)


エレスチャルクォーツ
Elestial/Skeletal Quartz
Orange River, Northern Cape, South Africa



長い時間をかけて成長したために、内部から表面に至るまで、複雑な構造を示す水晶。
エレスチャルクォーツ、スケルタルクォーツなどと呼ばれている。
幾層もの結晶が折り重なり、光を反射して輝く。
標本の一部が白くみえるのは、粘土鉱物を取り込んだ状態で結晶しているため。
まるで迷路をのぞきこむかのような気分である。

世界の至る所から、個性豊かなエレスチャルクォーツが見つかっている。
形状や色合いから、おおよその産地は推測できる。
有名なのはブラジル産だろう。
さまざまなエレスチャルが産出しており、中にはゴツゴツとした形状のジャカレーや、ヒーリングストーンとして名高いスーパーセブンなども。
他に無色透明のメキシコ産、セプター寄りの形状と内包物のみられるマダガスカル産、濃厚なスモーキーアメジストが味わえるナミビア・ブランドバーグ産、通好みのアルプス産、鮮やかなアメジスト・カラーが神秘的なインド産、近年流通し始めたパキスタン産など。
ニューヨークのハーキマーダイヤモンド及びハーキマータイプ水晶、オーストラリアのモララクォーツなどもこれに分類されていることがある。
どこまでがエレスチャルかを定義するのは難しい。
現在はランダムな結晶構造を持つ水晶を総じてエレスチャル、もしくはエレスチャル風と表現している。

こちらは南アフリカとナミビアの境界を流れるオレンジリバー流域から届けられたエレスチャル。
パキスタン産に似ているが、より大きく、より豪快。
繊細なガラスに喩えられることの多い水晶。
このエレスチャルはガラスどころではなく、プラスティックのように頑丈かつ半端ない透明感を漂わせておる。
濃厚なスモーキーのふちどりもまた、この水晶の個性を引き立てている。

アフリカまで行って採ってきたという、国籍不明のオッサン(どことなくカナダ風のハンター風?)から、数年前にいくつか購入した。
オッサンは確かコレしか売っていなかった。
後にも先にも同じようなエレスチャルには出会っていない。
写真ではポイントのように見えるのだけれど、途中でグネっと曲がっていて、先端も水晶とは言い難い不思議な姿をしている。

何億年もかけて結晶し、太古の叡智を宿すとされるエレスチャルクォーツ。
天使の祝福を受けたヒーリングストーンとして話題になり、いっときは誰もが買い求めた人気商品だった。
しかし、徐々に質は落ち、白濁した内部さえ見えない粗悪な原石が蔓延する。
エレスチャルということばが一人歩きを始める。
人気は蝕像水晶に移行していく。
パキスタン・ワジリスタン産の登場で、再び注目を集めつつあるエレスチャル。
比較的大きさがあり、透明感にあふれ、内包物によって時にゴールドに輝き、かつこれまでにない激安特価を叩きだした恐るべき救世主である。

正月に実家で見つけた、思い出の一品。
焼き魚のような香ばしさ。
世界に一つだけの、個性豊かな世界を楽しみたい。




75×37×35mm  77.95g

2012/01/22

フローライト(レインボー)


フローライト Fluorite
China/中华人民共和国



パワーストーンとしてお馴染みの、フローライト。
フローライトは本来、衝撃や温度差により破損しやすく、光により退色する性質があるため、加工には向かない。
欧米では原石の造形美を楽しむものとして、専らコレクションの対象となる。
中国は世界有数のフローライトの産出国に数えられ、豊富なバリエーションと高い品質を示す原石標本は世界的評価を受けている。

中国の鉱物は日本への輸出に際し、加工を視野に独自のルートをたどるため、産地不明となってしまうことが大半。
このフローライトの研磨品も、中国産ということ以外わからない。
湖南省のYaogangxian鉱山のフローライトに似ているような気はするが、いかんせん中国は広すぎる。
原形を留めておらず産地も不明瞭。
鉱物標本としての価値は失われたということを意味している。

ずっと、考えてきた。
中国の人々は難しい。
これは中国、香港などを渡り歩いてきた日本人からもしばしば聞かれる言葉である。
これまでに(チベット系中国人も含め)多くの中国人に出会ったが、心を開いて打ち解けることのできる人にめぐり会うことは無かった。
私の性格上の問題と少なからず関係しているように思えた。
協調性のなさ、隙だらけの言動、成り行き任せの仕事ぶりは、彼らの目指すものとは間逆に思えた。
いつだったか、飛行機で隣に居合わせた、日本語を話す年老いた男性。
彼が中国人だとわかったとき、歴史的な溝もまた、感じた。

「中国に来るつもりなら、最低限中国語は話せるようにしろ。自分の身は自分で守れ」
そう教えてくれた人がいる。
彼は、同じ中学の出身で、バイト先で一緒になった、いわゆる在日中国人。
予測不能な行動と豪快で無敵の発言、スマートな仕事ぶりは、わりと個性的なバイトたちの中にあって、異彩を放っていた。
彼は誰よりも仕事ができた。
彼女は8人くらいいた(あやうく自分もカウントされそうになったので逃げた)。
しかし、彼が社会的に認められることはなかった。
日本人ではない、ただそれだけの理由で、就職のさいに本来の実力を評価されず、無念の表情を浮かべていた。
彼は亡くなった私の母のお気に入りで、幼かった彼は母を慕っていたそうだ。

あれから十年以上が経つ。
まだ石を集めはじめた頃、美しさのみに惹かれ購入したフローライトのエッグ。
箱を開けるたびに広がる虹色の光景は、夢のように美しかった。
大切に箱に入れ、自室に保管していた。

近所の店で働く中国人留学生、Rさん。
いつも笑顔で裏表がなく、かなりの天然である。
誰に対しても誠実に、謙虚に接する姿が印象的だった。
震災の折、帰国するよう泣く母を振り切って日本に残った。
お名前を中国語読みでいうとどのような発音か?という私の問いに、彼は日本語読みで呼んでほしいと繰り返した。
週七日勤務し、大学に通うというハードな生活。
彼は日本をどう思っているのだろう。
どうしても聞けないまま月日は過ぎていった。

師匠に薦められて年末に観にいった映画、『新世界の夜明け』。
正確には見逃して、諦めていた中でのアンコール上映だった。
謎が解けた。(※文末に詳細を記しました)

国籍など関係ない、ありのままのその人を見なければ意味がない、そう思っていた。
なのに自分はいつの間にか、意図的に彼らを避けるようになっていた。
想いは通じないものと、諦めてはいたのではないか。
国境は越えられるかもしれない。
石もまた同じ。
そのことに気づかせてくださった素晴らしい人々との出会いを、今後に生かすことができるかどうか。

私はもうすぐこの街を離れる。
Rさんに聞いてみたかったことはある。
聞くべきでないことも理解している。
私には希望がある。
宝物だったこのフローライトと同じくらい大切なものが、世界にはまだきっとある。



『新世界の夜明け』
サイト:http://shinsekainoyoake.jimdo.com/

中国系マレーシア人、リム・カーワイ監督の映画作品。
大阪・新世界のドヤ街(?)に、うっかり中国から来日した場違いなお嬢様の波乱万丈なクリスマスを描いた涙と笑いと希望の物語。以下、感想。

関西以外の人には馴染みのない土地かもしれない。
主に大阪市西成区、浪速区(及び近隣地区)の一部を指して使われる。
新世界のすべてを知り尽くす人は、おそらく世界中探してもいないだろう。
テレビカメラが入ることの許されないエリアも多い。
そのため、大阪在住の人々ですら、大半はこの街で何が起きているか知らない。
中国人有名監督がこのストーリーを撮ればこれほど日本人に支持されることはないだろうし、日本人有名監督が撮れば完成するかどうかも微妙。そんな街。
国際的にニュートラルな立場に立つ新鋭、リム・カーワイ監督だからこそ作れた作品だと思う。
監督の両国への愛情と理解が、この作品を支えている。
人懐っこいのかしらないが、海外では日本人の立ち入れない領域まで入れていただくことの多い自分も、この街にはかなわないと思った。
少なくとも、映画を撮る自信は無い。
観客を笑わせ、泣かせる自信は全く無い。

日本にあって日本でない新世界という特異な街を知る上で、この映画は重要な内容となっている。
インターネットの影響か、興味本位でこの街に土足で踏み入る人が増えていると聞く。
彼らにはすべて見えている。
この土地に生きる人々に対して失礼であり、極めて危険な行為であることを知ってほしい。
現実に泣き崩れる前に、まずはこの映画を見て泣いてほしい。


41×31mm  87.48g

2012/01/19

アンデシン/ラブラドライト


ラブラドライト Labradrite
産地不明



透明感のある赤にグリーンが混ざりこみ、所々イエローに透けるさまが、手の込んだ抽象画を思わせる。
2009年頃に出回った、中国産のアンデシンにそっくりだが、こちらはアフリカのコンゴ産出、鑑定の結果ラブラドライトと判明したらしい。
実は、宝石質のアンデシンはまだ持っていなかった。
以前から気になってはいたのだが、高すぎて買えなかった。
昨年末、ようやく池袋ショーで購入したのがこれ(表記はラブラドライト)。

2002年にコンゴのニイラゴンゴ火山で発見されたというこの石は当初、ラブラドライトかアンデシンかの議論で盛り上がったという。
宝石質のアンデシンは非常に稀で、そうとわかったときは誰もが驚いたそうだ。
アンデシンはナトリウム:カルシウム=6:4、ラブラドライトはナトリウム:カルシウム=4:6と成分は極めて近いため、この石は微妙な差異によりラブラドライトと判定されたのだろう。
見た目は中国・内モンゴル産のアンデシンと同じで、素人には区別がつかない。
価格は1カラット越えで2000円弱(酷い値切り方をしたのでわからない)。
鮮やかなレッド、グリーンの発色は、銅のインクルージョンによるものらしい。
ラブラドライトだから特価なのだろう思い、購入した。

実は、コンゴやチベットからアンデシンが産出するというのは知らなかった。
ずっとモンゴルのあたりから来るものと思い込んでいた。
お店の人に尋ねると、わからないという。
昨今のレッドアンデシンのほとんどはビーズで流通しており、原石標本を見かける機会がなかったため、見落としていた。
ただ、コンゴからの産出は僅かな量に過ぎず、現在は産出していない貴重品のようである。
なぜここまで値下がりしたのだろう。
ニイラゴンゴ火山における産状を、具体的に示す資料がないのも不可解ではあった。

つい先ほど、それに関連するとみられる記述を発見した。
真偽については触れないが、実に興味深い推論が展開されている。

コンゴ産アンデシンは中国の内モンゴル産、赤や緑の色合いは人工処理による発色
http://www15.plala.or.jp/gemuseum/gemus-sustn.htm

ここでは内モンゴル産の黄褐色のアンデシンが、処理により赤や緑となり、コンゴ産・チベット産として流通した旨説明されている。
中国の研究者の技術情報が流出したようである。
異なる三つの産地から発見されたにも関わらず、組成や特性がほぼ同じであることが判明し、改めて調査が行われたらしい。
処理した原石を各鉱山にばら撒いたものとする大胆な仮説は非常に興味深い。
なぜなら、私も同じことを考えていたからだ。
では一昨年、スピ系のイベントでアンデシンのブレスレットのみ販売していた、無口なクリスタルヒーラー(?)は偽物だったということになるのだろうか。

このところ人工宝石に興味が向いていたので、お手ごろ価格で美しい石が購入できて満足している。
おそらく中国産だと考えられるが、コンゴ産と明記されていたため、産地は不明としておきたい。
いわゆるレッドアンデシンは、現在も数万程度で販売されている。
タイ経由で仕入れるなどして、販売者に悪気はないのだとするなら、この件に関して大声で文句を言う気にはなれない。
なお、中国では2008年北京オリンピックのさい、公式宝石/国家の象徴としてその赤いアンデシンを掲げ、開催を祝ったといわれている。



※この件に関する研究論文が幾つかあり、いずれも合成石という結果が出ていました。また、商業サイトにおける鉱山の写真は、素人が見ても不自然で、強い違和感を覚えます。ディーラーの良心を信じたいものです。(12/08/05 追記)


1.06ct

2012/01/17

エイラットストーン


エイラットストーン
Eilat Stone
Eilat, Be'er Sheva, Israel



石は、霊的交流のしるしである。このような神の石、行動を表す石、示現や信仰の場所の部類は、容易に偶像崇拝の対象になっていた。そこで、モーセの命令でこれらは破壊されねばならなかった。( Lev. 26,1 ; Num. 33,52 )

イスラエルの青い涙、エイラットストーン。
ソロモン王が愛した石として、キングソロモンストーンとも呼ばれている。
銅の二次鉱物から成る混合鉱物で、クリソコラ、ターコイズ、マラカイト、テノライトなどから成り、アースカラー(ブルーグリーンの色合い)が強いほど高品質とされる。
イスラエルのナショナルストーン(注2)としてご存知の方も多いかもしれない。
紀元前から神聖視され、旧約聖書にも登場する歴史ある石である。

著名なクリスタルヒーラー、メロディ氏やジュディ・ホール氏が著書で取り上げたため、英米で盛り上がり、その後日本にも飛び火した。
ヒーラーには欠かせない石、超能力をもたらし、あらゆる問題を解決する奇跡の石として、高い人気がある。
ただし、イスラエル政府が輸出を制限しているため、入手は極めて困難。
そのため、コンゴやメキシコのクリソコーラ、マラカイトやターコイズなど外観の似た天然石をエイラットストーンと紹介していることが多い(注1:本文下に詳細及び参考写真を掲載)。
エイラットの土地の名を冠した由緒ある石だから、産地は問わないものとする売り方には違和感を覚える。

私がこのエイラットストーンを知ったのはいつだったか。
日本での流通はまだ無かった。
しかしながら日本からのオファーがイスラエルに殺到し、価格は跳ね上がり、ユダヤの民が富を得るのはもはや時間の問題と思われた。
写真のエイラットストーンは、先手を打って(?)現地の骨董商に連絡をとり、入手したもの。
イスラエルの民芸品として、エイラットストーンを入手しておきたいと思った。
使いみちがわからないのでお守りにしている。

写真のイスラエルからの民芸品と、欧米のヒーラーの間で数年前から流れているグレーの入った研磨品(注1)、恩師でもある鉱物店の社長さんがイスラエルの鉱山まで視察に行かれ、仕入れたという原石。
以上の3種類が、私の手持ちのエイラットストーンである。
この中で最も信頼性のあるのは、社長から直接譲っていただいた原石だが、衝撃的に地味だった。
「粉砕した白のチョーク10グラムに、ターコイズ粉末をひとつまみ入れてよくかき混ぜ、天日干しで固めた」ような感じ。
店頭に並ぶ箱詰めの段階でそれを知り、ひたすら選ばせてもらったにも関わらず、いわゆるアースカラーの石はひとつもなかった。
社長の話では、鉱山にはかすかに青緑をおびた岩と、その欠片が残るのみであったという。
樹脂加工しても色味が改善されるかどうかは微妙。
つまり、事実上絶産している。
消滅の危機に瀕しているナショナルストーンに、政府が規制をかけるのは当然のこと。

それから数年が経つにも関わらず、エイラットストーンが今なお絶賛販売中なのは如何なる現象か。
イスラエル産ではない旨、明記しているところもある。
しかし「イスラエルの鉱山で採掘を行う関係者から入手したもの」と明記している販売店を、かなりの頻度で見かける。
イスラエルに、積極的に国外へ輸出している奴らがおる…

参考:エイラットストーンの輸出販売
http://www.stoneageminerals.com/

真偽については触れないが、私はこの業者から仕入れる気にはなれぬ。
なぜなら「その他」の品揃えがヤバすぎる。

ユダヤの民はビジネスに熱心、かつぬかりない。
政府に目をつけられるようなことは裏でやる。
どうしても本物の、美しいエイラットストーンを手に入れたいなら、直接イスラエルまで行くことだ。
難しいなら、ブラックマーケットを通す覚悟で臨まれるべき。
そのような行為に、奇跡がもたらされるかどうかは抜きにして。

もうずいぶん前、イスラエル人コミュニティで過ごし、その質素な生活に驚かされた。
彼らの厳しさ、結束の固さ、そして残酷さも感じた。
アジアを旅しているラエリは平和的な人が多いけど、現実を生きている人にそれが当てはまるとは限らない。
私はこれからも、行方不明になったリオを探し続けるのだろう。

このエイラットストーンはおそらく本物では。かなり早い段階でお持ちだった様子。
はて、「イスラエルの青い涙」とは。





注1)写真左はコンゴ産のクリソコラ、マラカイト、テノライトの混合石。チーターストーンと呼ばれ、グリーンも存在するとのこと。写真右は、現在も入手可能な「エイラットストーン」。似た色合いの石はメキシコをはじめ、アフガニスタンや中国、台湾などからも産出する。

注2)イスラエルは誕生石の起源となる重要な土地でもあるが、Wikipediaの国家の石一覧にエイラットストーンの掲載は無い。またロシアはアレキサンドライト、中国はアンデシンのほうが有名。すべて絶産した模様。


30×5mm  3.81g

2012/01/15

レイクカウンティダイヤモンド


レイクカウンティダイヤモンド
Lake County Diamonds
Mt. Konocti area, Lake County, California, USA



カリフォルニア州レイクカウンティから産出する火山性シリカ。
いわば天然ガラスだが、その輝きからダイヤモンドの名を与えられた。
遥か昔、先住民族の長に恋をした月が、叶わぬ願いと知って流した涙が石になったもの、という伝説があることから、"Moon Tears"(月の涙)とも呼ばれているという。
地名の通り、現地は美しい湖と豊かな自然に恵まれたリゾート地。
この石が発見される火山地帯は、現地に暮らす先住民族の聖地でもある。
北米で最も古い湖とされるクリアレイクに連なるこの山を、移民たちはアンクルサムの山と呼んだそうだ。

きっかけは、あるアメリカ人ヒーラーとの出会い。
レイクカウンティダイヤモンドはアゼツライトより凄いと仰る。
従って、ヒーリングストーンとして紹介した。
当時のお客さんから「波動が凄くて驚いた」と感想をいただいたのが、印象的だった。

私がレイクカウンティダイヤモンドに出会った頃、これを持っている日本人収集家は皆無に近かったんじゃないだろうか。
なぜなら私は間違えた。
「レイクカントリーダイヤモンド」と紹介したのである(カウンティは「~郡」の意味)。
しばらく経って、自分と同じ間違いを起こしている業者さんが現れた。
他に紹介している日本人を見たのは初めてだったので、驚いた。
この石がヒーリングストーンとして注目されつつあった頃なので、おそらく偶然だと思うが、調子に乗って周囲に自慢していた記憶がある。

アメリカでは収集家には知られた存在のようで、量り売りが一般的。
写真はそのごく一部である。
土が付着しているが、透明感に富む美しい欠片。
稀に紫の色合いを示すこともある。
カットされ、宝石としても流通している。
鉱物としては天然ガラスに過ぎず、またカットに適した大粒の石は少ないことから、市場に流通するには無理があると思うのだが、それらしきものも販売されている。
価格は100ドルを超える。
手出ししないほうが無難かも。

現在は、この石を国内で見かけることも珍しくなくなった。
お持ちの方も多いことと思う。
まだ誰も知らない宝物。
私の中ではそういうことになっている。
レイクカウンティダイヤモンドは、これを見つけたときの興奮を私に思い出させてくれる。
ダイヤモンドより永遠…かもしれない。


16×9×8mm(最大) 4.93g

2012/01/12

星入り水晶


星入り水晶
Hollandite in Quartz
Fianaratsoa, Anketsaketsa, Madagascar



ホランダイト(ホランド鉱)のインクルージョンが放射状に広がり、まるで星のように見える水晶。
キャンドルクォーツに似たミルキーカラーを呈し、丸みを帯びたポイント状で発見されることが多い。
ホランダイト・イン・クォーツ、またその外観から星入り水晶、スパイダークォーツなどと呼ばれ、ビーズや装飾品になるほどの人気を誇った。
しかしながらその後新しく発見されることはなく、絶産したという。

アフリカ沖、西インド洋に浮かぶマダガスカル(とその周辺諸島)。
1億6千年前に島として孤立したため、珍しいいきものが生息し、貴重な食材が産出する。
鉱物の宝庫でもある。
ユニークかつ高品質な各種水晶のほか、セレスタイト、ラブラドライトなどが近年大ヒットを記録、マダガスカルはその産地として瞬く間に知名度を上げた。
セプタリアンなどの化石類、ペツォッタイトなど稀産鉱物の数々も報告されている。
まさに宝の島である。
世界最貧国に類されるマダガスカルでは、鉱物は専ら輸出用に採掘されており、多くは中国に持ち込まれて加工されている。

スーパーセブンの全盛期、インクルージョン入り水晶はちょっとしたブームになっていた。
星入り水晶もその一つだった。
希望の星、幸運の星。
写真の石は研磨されていないため、はっきりと星が確認できるのは一箇所のみだが、ちょこんと自立するカワイイ一品(多くはたくさんの星が観察できるよう研磨されている)。
ホランダイトの塊もみえる。

かつては300円程度でたくさん売られていたから、気に入って何回か購入した。
先日実家にてたまたま見つけたのがこれ。
売り物用のダンボールに無造作に入っていた。
最近見かけないと思ったら、もう出ていないのか。
貴重品になるなど思いもしなかったから、大切に扱うことをしなかった。
誰にも気づかれることなく、この星は消えていたのだ。

どうも最近中国から、これによく似た水晶が発見された様子。
パイロクシン、トルマリンなどの鉱物が透明水晶に入り込み、放射状に広がっている。
その姿はまるで、ダークグリーンの蜘蛛のよう。
クリアな水晶に内包されているため、今にも動き出しそうな臨場感がある。
原石は見かけていないが、産地がモンゴルの辺りなので、大半は加工に回されているものと考えられる。

奇妙なことに、この緑色の蜘蛛の入った水晶のブレスが、「マダガスカル産・ホランダイトクォーツ!(星入り水晶/スタークォーツ)」として販売されている。
どう考えても蜘蛛である。
私は蜘蛛が苦手であるからして、たくさん並んでいるのを見るのは恐怖である。
また、明らかに中国産であり、ホランダイトは入っていないと思われるため、ここで注意を喚起しておきたい。

おお怖い。
夜中にトイレに行けない。


20×14×13mm  4.71g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?