2013/03/24

スーパーセブン(ジンバブエ産)


ルチル入りアメジスト
Amethyst/w Rutile Inclusions
Chundu, Kazangarare, Zimbabwe



タイトルはスーパーセブンだが、写真の石は定義上、スーパーセブンではない。
被害が拡大中の "スーパーセブンもどき" に渇を入れるため、ここで改めてスーパーセブンについて考察するのが、今回の目的である。

あちこちで見かける昨今のスーパーセブン(セイクリッドセブン・メロディストーン)は、実はスーパーセブンではない。
スーパーセブンに関する前回の記事(→こちら)にも記したように、ブラジルのエスピリトサント州のインクルージョン入りアメジストを指して、スーパーセブンと呼んでいる。
現在国内で主流となっているスーパーセブンは、アフリカや中国から産出したもの。
鉄由来の成分であるレピドクロサイトやゲーサイト、ヘマタイトなどが見えるアメジストが、高波動の石スーパーセブンとなって、量産されているのである。


今一度、スーパーセブンの定義を見てみよう。

  • ブラジルのエスピリトサント州の鉱山から1995年に発見されたスモーキーアメジスト
  • 水晶、アメジスト、スモーキークォーツ、ルチル、ゲーサイト、レピドクロサイト、カコクセナイトの7つの要素から構成される
  • エレスチャル成長していることが多い
  • 鉱山は水没し、絶産している
  • 南インド産など他の産地から出た似た石は、定義上スーパーセブンと呼ぶことはできない

以上が現時点でわかっているスーパーセブンの基準。
既に絶産しており、1995年発見のオールドストックにはプレミアが付いている。
市場に流通している信頼のおける確実なエスピリトサント産スーパーセブンは、鉱物標本として流通しているスモーキーアメジスト。
実は2004年に新しく発見された鉱脈から得られたものらしい。
世界的にも主流となっているのもこれ。
エスピリトサントの他所から次々にインクルージョン入りアメジストが発見され、あたかもオリジナルのような価値を与えられて現在に至るというわけである。

後発の新しいスーパーセブンには、ヘマタイトが含まれていることが多々あった。
そのためスーパーセブンには8つの要素が…と解説していたり、最初からヘマタイトが入っていると説明しているサイトさまを見かける。
しかしもともとスーパーセブンの7つの要素にヘマタイトは無い。
また、ルチルが入っているスーパーセブンが見当たらないというのは謎である。

写真は意外に見かけない、ルチルの金の針が入ったアメジスト。
近年ジンバブエから発見されたこの美しいアメジストには、見事な細い金の針が詰まっている。

カコクセナイトについては諸説あるが、昨年エスピリトサント州フンダンより半世紀前のストックが発見され、カコクセナイト入りとして高く評価された。
私も昨年、偶然にも鉱山主さんから直接入手した。
同じ時期に米Heaven&Earth社より独占買収があり、鉱山主さんからの放出は無くなったそうだ。
それらはロバートシモンズ氏によりパープルアンジェリンの名を与えられて、小さくカットされて流通している(→詳細はカコクセナイトアメジストにて)。

私は例のごとく、違和感を受けた。
エスピリトサント産インクルージョンアメジストであれば、正統派スーパーセブン。
…のはず、だった。
しかし、カコクセナイトアメジストは、エスピリトサント産にも関わらず、スーパーセブンではないことが明記されていた。
調べてみたら、エスピリトサント州は世界に名だたるアメジストの名産地で、複数のアメジスト鉱山が稼動中だった。
つまり、現在手に入る本家スーパーセブンというのも所詮、偽物に過ぎなかったのである。

ルチルはどこから出てきたのか。
ルチルを内包するクリアクォーツ、或いはスモーキークォーツは、世界中から発見されている。
しかしアメジストに関しては、ヘマタイトやゲーサイトなど鉄関連鉱物のみ。

先日、大先輩にあたるK女史が、ルチル入りアメジストというのは実在するのか?と指摘されていた。
存在はしていることを思い出した。
このジンバブエ産アメジストはルチル入りアメジストとして購入したもの。
アフリカ産出にも関わらず、詳細な産地もわかっている。
ゲーサイトやレピドクロサイトなどの赤い針に混じって見える細いゴールドの針は、明らかにルチル。
極太の金のインクルージョンは一般にカコクセナイトとされているが、その様子とは明らかに異なるものである。




同じジンバブエ産アメジストの裏側が写真左。
右は側面から撮影している。
ルチルの針が見えるのはおわかりだろうか。
一見するとクラスター、途中からエレスチャル状に結晶している。
ジンバブエ産は主にエレスチャルアメジスト、他にセプタータイプが特徴となっている。

南インド・カルール産アメジストにも似た透明感、豊富な内包物、そして美しい結晶形。
紫の色合いの美しさはカルール産アメジストには及ばないが、内包物そのものの美しさや豊富さにおいてはジンバブエ産を推したい。
現在宝石やペンダントとなって高額で流通している "レアな本物のスーパーセブン" は、南インド、カルール産である。
スモーキーの色が少なく、どちらかというとシトリンの割合が多い。
高いからといって本物とは限らないので、注意していただきたい。

パワーストーンブームに火をつけるかのように登場し、インクルージョンという言葉を一気に身近にした魔法のクリスタル、スーパーセブン。
2004年の時点で、もう違うものが流通を始めていたということになる。
2年後に私が鉱物の世界にたどりついた時には、既に南インド産が主流になっていた。
現在主流の中国産 "スーパーセブン" は内包物に乏しく、美しさに欠ける。
期待のオーラライトにはインクルージョンそのものが見えない。

スーパーセブンのブレスレットは中国産アメジストなのだから、チベタンセブン等に改名するべきである。
などと思っていたある日、私は1995年発見とされる本物のスーパーセブンを拝む機会に恵まれ、ようやく納得した。
メロディ氏が発見したスーパーセブンには、ルチルが入っていた。
当時のサンプルからはヘマタイトが出なかったってことなんだろう。
世界的にはヘマタイトを内包した水晶のほうが一般的であり、ピンクファイヤークォーツや、カザフスタンのストロベリークォーツも現在はヘマタイトインクルージョンというのが通説となっている。

クリスタルヒーラーのA・メロディ氏によって見出された最初のスーパーセブン。
現在はクリスタルヒーラーのオールドコレクションがわずかに流れているだけのよう。
発見者のメロディ氏自身、分けてくださるような手持ちはないと踏んでいる。
入手は極めて困難である。
ただ、スーパーセブンのパワーがいまいちよく伝わってこないと思っておられた皆様にとっては、朗報となろう。




41×40×32mm  36.16g

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