2011/09/15

スウェディッシュブルー


スウェデッシュブルー
Swedish Blue Slag
Sweden



美しいマーブル模様を示す、空色のストーン。
スウェデッシュ・ブルーと呼ばれている。
14世紀のスウェーデンにおいて、製鉄場から処分された廃棄物が、長い時間を経てガラス質に変化したとされる。
表面には小さな孔がみられることが多い。
天然石ではないが、その美しさと希少性から、秘かに支持を得た。

現在流通しているのは、写真のような研磨品で、カボション・カットが一般的。
入手は極めて難しいとされている。
地中に廃棄されてから500年以上経っており、産出場所の特定が難しく、供給が不安定なのが原因だそうだ。
ただ、幾度となく見かけているので、探せばすぐ手に入ると思う。
また、それほど高価な石ではない。
大きさや質にもよるが、相場は2000~3000円くらい。

発色原因や成分、独特の模様の原因など、詳細については不明とされているが、ここで考察してみたい。
鉄の精製時、熱で溶け液状になった鉄の上部に溜まってできる不純物の層、これがスウェデッシュブルーの元となっていると考えられる物質。
カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、シリカなどで構成されているという。
これらを溶鉄から分離させ、裏山に捨てた。
当初、スカイブルーの色合いはコバルト由来との説を記したが、以下のサイトの内容と照らし合わせると、青色の原因はもしかすると鉄では?

参考:宝石の色と元素との関連について
http://www.art-express.co.jp/column/column/09.6column.html

微量元素としてコバルトが加わることもあると思う。
だが、鉄の精製の過程で鉄が完全に除去されるわけはなく、また当時の技術から考えれば、むしろ残るほうが自然。
美しいブルーの石が大量に発見されなければ、そもそもスウェデッシュブルーなんて名前は付いていなかったし、私のもとに来ることもなかったはずだ。
独特のマーブル模様は、積み上げられた廃棄物が崩れ、さまざまな成分が混ざり合う過程でできたものではないか。
アフリカでタイガーアイがピーターサイトに生まれ変わるように。

実は、スウェデッシュブルーと呼ばれている石には二種類ある。
ひとつは写真にある500年モノのスウェデッシュブルー。
もうひとつは、フローライトに似た透明感のある濃いブルーのガラスで、生成過程は同じだが、18世紀のもの。
当時の記録が残っており、製鉄所のあった場所もわかっているという。
どちらもレアストーンだが、違いは見分けられるようにしておいたほうがいいかも。

Somebody's Trash is Another's Treasure.

ある人にはゴミ、ある人にとっては宝物。
スウェディッシュブルーの醍醐味は、この一言に尽きる。
パワーストーンとしては、非常に霊的であるとされ、潜在能力を引き出し、成功へと導く力があるといわれている。


26×20×4mm  22.85ct

2011/09/12

レコードキーパー


レコードキーパー Record Keeper
Ganesh Himal, Himalayan Mts, Dhading, Nepal



レコードキーパー。
鉱物名ではなく、水晶の特徴を示す用語である。
水晶の先端に浮き出ている(もしくは刻まれている)、△のかたちをした刻印のようなものがそう。
このレコードキーパーに触れ、瞑想すると、古代文明の記憶に導かれ、しかるべきメッセージを得られるという。
また、自らの内面の探求を促し、魂のブロックを取り除き、生まれてきた意味を見出す助けとなって、持つひとのあらゆる可能性を引き出すとされる。
ニューエイジ系のショップでは特別な水晶として扱われ、お値段もかなりのもの。

売り手からすると、非常にやっかいな石。
特にネットショップさんからは愚痴を聞かれることが多い。
私自身かなり難しいと感じた。
売れないのである。
写真でレコードキーパーの魅力を伝えるのは大変なのだ。
なんせこのレコードキーパー、単にカメラを構えただけでは写らない。
うっすらと浮かび上がる模様を忠実に再現するなど、テクニックもカネもない凡人には無理というもの。
画像のピンボケぶりから、なんとなく感じていただけたら有り難い。
レコードキーパー満載の蝕像水晶(注1)である。
トップから柱面、裏側に至るまで、△マークがこれまでかといわんばかりに出ているのだが、写らない。
他の方の健闘ぶりをご覧頂きたいと思う。

お見事 
http://www.ishi-imi.com/vari/record.htm
http://www.occn.zaq.ne.jp/crystal/crystal-garden/gazou/recordkeeper.jpg

苦労してるぞ
http://elders.exblog.jp/13809836/

レコードキーパーといえるか微妙(参考)
http://bodhitree.blog87.fc2.com/blog-entry-402.html
http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/46/0000249946/98/imgde370dcazik0zj.jpeg


レコードキーパーは、実際にショップに赴いて、水晶の山の中から見つけ出すことにしている。
もちろん、パワフルなレコードキーパーをご所望なら、専門店をお勧めする。
私は敢えて鉱物標本店を狙う。
レコードキーパーに付加価値をつけないからだ。
また、レコードキーパー出現率の極めて高い蝕像水晶(注1)は、標本業界ではジャンク品とみなされる。
六角柱に結晶した透明感のある水晶に価値が置かれるため、運がよければ格安で入手できる。
写真のレコードキーパーは、ガネッシュヒマール産の蝕像水晶で、150円(税込)。
むしろ売られていたこと自体が奇跡で、通常は店頭にすら並ばない。
誰もが知っているH鉱物店の方にうっかり見られてしまい、「あー?そういうのって、好みですよね!」とコメントされた、恥ずかしい過去さえある。

ジャンクとはいえ、風水系のショップで絶大な人気を誇るヒマラヤ水晶の代表格、ガネッシュヒマールである。
セルフヒールド(注2)が著しく、ノンダメージ。
人工的に切断された形跡がなければ問題なし。
結晶の至るところにレコードキーパーがバキバキと刻まれ、浮き出ているという珍品。
気に入って窓辺に飾っていたところ、エアコンの工事に来たオッサンが蹴り落とし、ガネッシュヒマールは床に転落した。
ものすごいダメージを食らったが、150円なので仕方ないと笑える。
これがもし15,000円だったら、オッサンごと窓辺から蹴り落とす。

すぐにレコードキーパーが欲しければ、蝕像水晶をあたるのがてっとり早い。
だがネットで買うとなると、価値をわかっている所では高値がつくし、価値を与えない所では商品画像からは確認できない。
独特の構造、不思議な刻印、あり得ない形状。
まだ見たことがないという方がおられたら、店頭で選ばれることをおすすめする。
もう持っているという方は、鉱物標本店に突撃し、お宝探しに励んでいただきたい。
レコードキーパーといえばトライゴーニック
興味のある方はこちらも是非に。



注1)なんらかの物質(熱水やフッ化水素、酸など)の侵食を受け、溶けたようにみえる水晶。エッチングクォーツとも呼ばれる。表面に模様がみられる程度のもの、結晶の形が完全に崩れてしまったものまでさまざま。代表的なものとしては、世界的評価を受けたインドのアイスクリスタル。ブラジルのコリントクォーツ、サラードクォーツなども、女性を中心に人気がある。

注2)水晶がその成長過程で折れるなどして破損することがある。その破損箇所から、新たに別の水晶が成長した結果、ダメージのない水晶が得られる。こうした現象をセルフヒールド(自己修復)と呼ぶ。水晶の自己修復の過程を、人の運命になぞらえ、希望や復活の象徴として扱うもの。代表的な例として、両錐水晶(ダブルターミネイテッドクォーツ/DT)がある。


43×28×20mm  35.9g

2011/09/07

モリオン(広島産黒水晶)


モリオン/黒水晶 Morion 
広島県江田島



今年の2月頃、知人からシトリン(黄水晶)とモリオン(黒水晶)を頼まれた。
聞けば、占い師に、シトリンとモリオンを守護石として持つよう言われたらしい。
天然モノが欲しいとのことだったが、どちらも加工処理して作るのが一般的で、天然モノは希少。
予算内で収まるわけがない。
最近の占い師は恐ろしいと思っていたところ、直後に福島原発の事故発生。
放射能を防ぐパワーストーンとして、モリオンを求める人が後を立たず、ちょっとした騒ぎになったと聞いている。

かつてモリオンは人気がなかった。
その生成過程には、放射能が関わっているとされる。
放射能を嫌う日本人にとっては不気味な存在であり、一般人には手の届かない高級品だったせいもあって、好き好んで集める人は少なかった。
チェルノブイリ原子力発電所近くから、モリオンが大量に発見されるという噂もささやかれたほど(→
ヘリオドール参照)。
これらに科学的根拠はなく、あくまでも噂に過ぎない。
しかしながら、黒い色はもともと、死と深い関わりがあった。
モリオンの語源は、猛毒の朝鮮朝顔からきているといわれている。

モリオン / 黒水晶については産出が少ないせいもあって、まだわかっていないことが多い。
一般的には、長い間地中の放射線に晒された結果、水晶の結晶構造が破壊され、黒くなったものとされている。

わかりやすくいえば、被ばくして細胞が死んじゃった水晶?
産出するのは主にペグマタイトと呼ばれる地質からで、長石などを伴って発見されることが多い。
代表的なのは、岐阜県中津川市の黒水晶。


そんな中、偶然見つけた広島産モリオン。
地図を見て、当然ながら、よからぬことを考えてしまう。
聞けば、最初の発見は60年前。
大東亜戦争のさなか、軍事関係の施設の建設中に最初に見つかったという。
前述のペグマタイトから産出する、一般的な黒水晶で、余計な心配は不要とのこと。
つまり原爆投下とは何の関係もないということだ。


その後、長い間当地から黒水晶は発見されず、半ば忘れられていたらしい。
つい最近になって、現地を散策していた熱心な収集家によって再び発見され、話題になっている。
実に60年ぶりに発見された奇跡の黒水晶である。


60年前ぶりの発見?
終戦が1945年だから、少なくとも2004年には見つかってたってことになるのかな?
複雑な事情があって、それ以上聞けなかった。

モリオンには謎が多い。




60×53×31mm  98.99g

2011/09/04

ハウライト/マグネサイト


ハウライト Howlite
マグネサイト Magnesite
Zimbabwe



ハウライト(ハウ石)。
純粋・崇高・目覚めを象徴するといわれている。
発見者であるカナダの鉱物学者、ヘンリー・ハウ(ヘンリー・カウと一字違いですネ)に因んで命名された。
誰もが知っている、ありふれたパワーストーン。
トルコ石やラピスラズリの偽物として知られる、やっかいで紛らわしい石。

常識は、時に覆される。
もし、実際にハウライトを持っておられるなら、大いに自慢していただきたい。
なぜなら、本物のハウライトは現段階で、容易には入手できない貴重品だからである。
数万する標本も珍しくない。
いったいどういうことか。

実は、ハウライトとして現在流通しているのは、マグネサイト。
見た目はそっくりだが全く違う鉱物である。
どちらも染色が容易く、加工しやすい。
イミテーションの代表格としてきらわれるハウライト・トルコも、マグネサイトを染色したもので、ハウライトやトルコ石とは無関係。
戦後、ハウライトを染色加工した模造品が "亜トルコ石" として流通した名残りなんだそうだ。
ハウライトが次第に入手困難になってきたため、その代用として、安価なマグネサイトが使用されるようになった。

これまでハウライトとされていたビーズやアクセサリーまでもが、イミテーションだったのである。
「真犯人は違うところに隠れていたのね!してやられたわ!」
少しニヤニヤしてしまう衝撃の展開。

先日、大先輩でもあるショップのオーナーさんから、ハウライトを購入した。
この件についてはご存じなかったとのこと、驚きのご様子だった。
さっそく受け取ったのが写真のお品。
つるつるの綺麗なタンブル。
産地はジンバブエ。
ジンバブエからハウライトが出るかどうかを調べていくうちに、ジンバブエ産のマグネサイトにたどりついてしまった。
素人判断で申し訳ないのだが、他の情報と比較・検討した結果、マグネサイトで間違いなさそう。

参考)ハウライトとの混同、類似についての指摘
http://www.purestone.com/index.php?main_page=product_info&products_id=3367

本物のハウライトを確実に手に入れるのであれば、原産地であるアメリカ・カリフォルニア産を探すしかなさそう(→現物と記事はこちら)。
ただしかなり大きく、高価。
今後、加工品も出回るようになるかもしれないので、少し待ってみるのもいいかもしれない。
アメリカ以外にも、カナダから上記のような結晶体として発見される。
カナダ産はダークブラウンの小さな結晶体で、私たちが見慣れたハウライトとは似ても似つかない。

※他にメキシコ、ロシア、トルコなどからも産出がある様子。また、マグネサイトとハウライトが共生して発見されるケースがあるとのこと。(以上、オーナー談)

模造品の問題は深刻だった。
ターコイズ、ラピスラズリのほか、スギライトなどの高価な石が、入荷後に偽物だと判明し、騒ぎが相次いだ。
業者のほうがむしろ大変で、卸元に返品できず在庫を抱えてしまったり、買っていったお客さんに無償で返金を申し出るなど、後始末に追われた。
それが元々なんの石であったかなど、気に留めている余裕すらなかったのかもしれない。
実際に鑑定でハウライトが出たケースは稀だったはず。

オーナーには申し訳ないことをしてしまった。
半ば営業妨害、お世話になった大先輩に対して、やってはいけないことだった。
にも拘らず、オーナーは、私の疑問に対し、さまざまな角度からご見解を示してくださった。
また、ハウライトとマグネサイトの見分け方に関する素晴らしい情報も頂戴している。
さまざまな方のご意見を参照しながら、今後も考察を続けて行きたい。

写真右は、オーナーから譲っていただいた、アメリカ産ターコイズ。
ハウライトは、ホワイト・ターコイズと呼ばれることがある。
これは、現地の先住民に珍重された、滅多に見つかることのない白いターコイズ、つまりハウライトを指しているのだと、どこかで聞いた。
仲良く並ぶこれらの石に、何の罪があろうか。

ビーズなどの販売にあたって、ハウライト=マグネサイトであると明記するショップが増えている。
知名度の都合上、致し方ないのかもしれないが、 "別名マグネサイト" という表記はいかがなものか。
ハウライト/ハウ石 Ca2B5SiO9(OH)5 はケイ酸塩鉱物にして、だいたいカルシウム。
マグネサイト/菱苦土石 MgCO3 のほうは炭酸塩鉱物にして、だいたいマグネシウム。
パワーストーンブーム初期の段階で、既にハウライトは出回っていなかったようなので、見分けがつかないというより、誰もホンモノを見ていないのでわからないということ?


28×20×13mm 10.85g


ご協力いただいた鉱物店オーナー、B様に心より感謝申し上げます。
情報提供有難うございました。

2011/09/03

ロードクロサイト/稲倉石


ロードクロサイト/稲倉石
Roadcrosite/Inakuraishi
北海道古平郡稲倉石鉱山



本来、鉱物店は、流通している標本の中から良品を厳選してストックし、品揃えで勝負する。
このところの傾向として、流出の増えた標本を一気に売ってしまい、在庫がなくなり次第終了、という売り方が増加しているようだ。
こうした傾向がみられるようになったことで、石の価格も下がり、入手も容易になった。
ただ、時期を逃すと、入手は困難になる。
見つかっても、品質が劣るなど条件は悪化、難しい選択を迫られる。

しばらく鉱物の世界から離れていた。
そのため、その間に流通した重要な標本の多くは、出尽くした後だった。
北海道産のロードクロサイト(インカローズ)もその一つ。
国産鉱物の流行で再評価され、素晴らしい標本が数多く出回ったそうだ。
春のミネラルショーで見つけたのは、小さなアクセサリー程度、それもパッとしないものか、逆にとんでもないプレミアが付いた標本だった。

北海道のロードクロサイトの産地といえば然別鉱山、そして世界的にも有名な稲倉石鉱山。
中でも稲倉石鉱山のほうは、美しいロードクロサイトが産出することで古くから知られていた。
稲倉石の名も、標本名として定着している。
海外でも "Inakuraisi" と呼ばれ、評価は高い。

このロードクロサイト/稲倉石は、半ば諦めていた頃に、偶然見つけたもの。
幸運にも、ディーラーさんは地元の方。
信じられない価格で譲っていただいた。
稲倉石鉱山産ロードクロサイトの醍醐味でもある、ブドウ状原石を研磨したものだ。
透明感のある濃いピンク色の結晶で、幾層にも重なった縞模様が美しい。

ロードクロサイトと聞いて、南米アルゼンチン・ペルーのインカローズを思い起こす方は多いと思う。
それらの持つ華やかさ、 "パッションローズ" と称される大胆で情熱的な容姿。
稲倉石鉱山のロードクロサイトにもみられるが、この標本に関してコメントするなら、ハッキリ言って地味。
じっくり見ていただきたい。
ブラウンを帯びた深い色合いや、墨を流したような優美な模様、凛とした佇まい。
喩えるなら、ラテン系美人と大和撫子。
同じ鉱物でも、産地や加工方法によって、まったく雰囲気が異なってくる。
それぞれの持ち味を楽しみたい。

稲倉石鉱山の操業開始は、明治18年。
金、銀、銅、マンガンなどを産出し、その実績は全国に知れわたるほどであった。
同時に発見されるロードクロサイトは、アクセサリーに加工されるなどして珍重されたらしい。
コレクションも盛んだったようで、操業当時の標本が現存している。
1984年(昭和59年)に鉱山が閉山されてからは、立ち入りが難しくなっているとのこと。
また、良質なロードクロサイトはほとんど採れなくなったといわれている。

写真の石はオールドストック、昭和59年の閉山まで鉱山に関わっていた人物のコレクションだったという。
具体的な年代は不明とのことだが、昭和30~50年代に採取されたものだろう。
閉山から30年近く経っており、ご本人が現在どうされているかはわからない。
稲倉石鉱山の全盛期、そして時代とともに衰退していくさまを最後まで見守られた。
このロードクロサイトもまた同じ。
石がそれを記憶しているならば、聞いてみたいものだ。
残念ながら、私にそんな能力はないのだけれど。

ちなみに現地では、稲倉石は身近な存在で、日常風景の一部と化しているらしい。
街の飲食店の入り口に、巨大な原石がドスーンと置かれているとのこと。
北海道はスケールがでかい。

ロードクロサイト、インカローズの人気は高い。
南米アルゼンチン、ペルー以外にも、続々と新しい産地が見つかっている。
近年、アメリカ・コロラド州のSweet Home鉱山から、ジェムクォリティ(宝石質)のロードクロサイトが発見され話題になった。
また、今年のツーソンショーでは、新たに中国から発見されたロードクロサイトが注目を集めた。
Sweet Home鉱山のほうは2004年に閉山しているが、中国からはそれらに匹敵するトップ・グレードの結晶が多く出ているらしい。
絶産したとの噂を聞いて久しい、元祖(?)アルゼンチン産インカローズについては、またの機会に紹介させていただけたらと思う(→ココに概要だけまとめました)。

 
30×28×11mm  20.12g

2011/09/01

バストネサイト


バストネサイト Bastnasite
Zagi Mountain, Mulla Ghori, Khyber Agency, FATA, Pakistan



セリウムやランタンなどのレアアースを含む希少石、バストネサイト。
特にパキスタンのザギマウンテンからは、ジェムクォリティ(宝石質)の原石が産出することで知られている。


こちらは宝石質とはいえないが、比較的大きさがあり、結晶形の美しさが際立つ標本。
透明度の高いライト・ブラウンの結晶は、収集家の間で非常に人気があり、カットされるなどして流通している。
ちなみに放射性鉱物である。
放射能濃度は40Bq/g~50Bq/g程度。

鉱物の世界に興味を抱き始めた頃、希少石をこよなく愛する大先輩に出会った。
私を「レアストーンハンターうさこふ」と命名してくださった人物である。
いかなるジャンルであれ、コレクターは頑固で近寄りがたく、若輩者に厳しいもの。
しかし師匠は、まるで好奇心旺盛な冒険家のようであった。
その方から最初に譲っていただいたのが、当時究極のレアストーンといわれていたペイナイト。
そしてこのバストネサイトだった。
一目見て夢中になった。
当時は資料などなく、調べてもよくわからなかった。

放射性鉱物の収集は欧米、特にヨーロッパでは盛んである。
しかし、放射能アレルギーが蔓延する日本においては少数派であった。
福島原発事故以降、閃ウラン鉱など、これまで避けられることの多かった本格的な放射性鉱物が大いに売れており、鉱物店に問い合わせが相次いでいるそうだ。
実に素晴らしいことである。
ガイガーカウンターと併せて楽しみたい。

ペイナイト、バストネサイトともに、ここ数年でずいぶん身近な存在となった。
もはや究極のレアストーンと呼ぶことはできないだろう。
師匠は今どこで何をしておられるだろうか。
譲っていただいた希少石の数々は、倉庫のどこかにあるはず、探してみようと思う。



【パワーストーンのブレスレットによる被爆データ】

ジルコンも取り上げられているんですが、内容としてはつまらんです。
そもそもサンプルを取る段階で偏りが生じているのでは?
いっそ、パワーストーンに人類の負の遺産が凝縮されていることに言及してほしかった。
参考程度にどうぞ。



24×12×11mm  7.6g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?