2012/03/21

チルドレン石


チルドレナイト Childrenite
Rapid Creek, Dawson Mining District, Yukon, Canada



チルドレナイト(チルドレン石)。
光沢のある針状結晶が集まって、キラキラ輝く。
この角度からだとまるで、はりねずみ。
カワイイ名前のふしぎないきもの。
こどもの宇宙。

チルドレナイトは、エオスフォライトの成分がマンガンから鉄に置き換わったもの。
エオスフォライト自体流通が少ないから、その亜種になど滅多に出会えない。
年末に購入したこの標本が、私の人生初のチルドレナイトとの対面だった。
かねてから「子供のための石」としてその名を与えられたであろうことを夢見ていたのだが、先ほど調べてみるとやはり、John George Children なる人物が最初に発見したのがその由来のよう。
つまり、自分のような初心者にあっては話題に上ることもない、そんな石。

チルドレナイトの存在を知ったのは、八川シズエ氏の著書にて。
右も左もわからぬ頃、恩師の奥様に薦められて購入し、チルドレン石の名に惹かれて目を通した。
暗褐色に鈍く光る、圧迫感のある板状の物体の写真があった。
まるで鈍器のようだった。
チルドレン石。
辛気臭く男臭く、むさ苦しいもの(たぶん、鈍器を用いて音を立てるイメージ。国でいうとドイツ)。
そう思い込んだまま忘れていた。

初めて出会ったチルドレナイトが、このように可愛らしい姿であったときの嬉しさといったら。
価格も思いのほか手頃だったため即決。
チルドレナイトは産地に拠って形が異なり、ブラジル産の板状結晶のほか、カナダから針状結晶も出ているそうだ。
鉱物の世界においては、前者の「かわいくないほうのチルドレン石」が貴重品とされている。
現在は流通すらない状態とも伺った。
八川シズエ氏の前述の著書には、この石をはじめ、今となっては入手の困難な鉱物も多く取り上げられている。
戸惑う人も多いのでは。

さて、私のイメージどおりだった、カナダ産チルドレナイト。
極細の透明結晶が密集しているため、光を透過してゴールドに輝く。
写真の標本は、ラズライト(天藍石)と共生している。
チルドレナイトのゴールドに、メタリックブルーのラズライトが見え隠れするさまは、宇宙の神秘に似ている。

なんと、最近になってこの石が、ヒーリングストーンの扱いを受けている模様。
入手困難石がヒーリングストーンとして扱われるとき、それは市場に相当量の流出があったとき、であることが多い。

今回の件についてはわからない。
私のような一般人は、割合どんな希少石にもたどりつくのだが、ヒーラーを名乗る人々はそうでない。
特にクリスタルヒーラーは、意外なほどルートを持っていない。
以前誘われてクリスタルヒーリングのイベントに行ったさい、ヒーラーとおぼしき人に「東京のミネラルショー(注1)で外国人から仕入れた本物の石」と謳われ、動揺した。
鉱物を使って治療行為をし、こうした希少石を破損させようものなら、名画に傷をつけるも同じこと。

このブログを読んでくださった方は、私をアンチ・パワーストーンな人と感じておられるかもしれない。
どちらでもないことだけ、お伝えしておきたい。
自分は、ひとつの石を、鉱物とヒーリングストーン(パワーストーン)の両方の側面からみるようにしている。
石から見え隠れする世界を楽しんでいる。
商品や資源としての需要の推移、社会の動きや歴史、そして人間の喜びや悲しみ、生きる意味といったものが、石には凝縮されている。
私は数珠に興味がないだけ。
産地を抹消されたビーズからは、何もみえないから。

ところで、チルドレナイトと聞くと、どうしても連想してしまう曲がある。
わりと昔の曲なので、知らない人のほうが多いかもしれない。
曲中に入るヴォーカルが、チルドレナイトに聴こえてしまうのは、私だけかもしれないが。
これで踊ったなあ!
って人。
同世代でしょう。
貼っておきます。


Children Of The Night - Juno Reactor




注1)東京のミネラルショー

春の新宿ショーもしくは冬の池袋ショーのことかと思われる。買い付けが目的でなくとも、誰でも入場することが出来る。ミネラルショーは全国各地で行われ、前述のスピ系イベントの行われた付近でも毎年開催されており、入場は無料である。仕入れに使うこともあるが「買った」と言うのが適切。また販売者である場合は名刺交換を行うのが一般的。


23×18×11mm

2012/03/18

【速報】ピンクファイヤークォーツ


親切な内田さんのおかげで、あのピンクファイヤークォーツの中身がわかりました。



詳細はピンクファイヤークォーツの項にすべてまとめました。
なお、無断引用として掲載したURLは、私が以前引用したサイトだったことに先ほど気づきました。
無断での引用を行っているサイトが数多く認められたため、誤認したものです。
掲載にあたって、こうした貴重な情報をソース無しに引用することは控えたいものです。
関係者様には深くお詫び申し上げます。

2012/03/17

雷水晶


ライトニングクォーツ/雷水晶
Lightning Strike Quartz
Diamantina, Minas Gerais, Brazil



世界には、雷に打たれ崩壊の危機に晒されながらも、奇跡的にその存在をとどめた水晶があるという。
それらはライトニングクォーツといわれている。
ライトニングとは、雷の意味。
雷水晶と呼ばれることも多い。
現地では "Pedra de Raio" (雷水晶と同意)と呼ばれており、欧米での呼称であるライトニング・ストライク・クォーツは、メロディ氏による命名と聞いている。

ライトニングクォーツは世界中から発見されているというが、主な産地はブラジルのディアマンティーナ。
水晶の名産地として知られる土地である。
ディアマンティーナ産のライトニングクォーツは、雷との相互作用を語る上で、非常に重要な特徴を備えているという。
また、土地の特性なのか産出も多いようで、現在も安定した流通がある。

私が鉱物にすこしばかりディープに関わるようになった頃、話題になっていたのがライトニングクォーツだった。
なんじゃそりゃ。
そう思ってさっそく手にしたライトニングクォーツは、透明感にあふれ、とても崩壊の危機に晒されたようには見えなかった。
確かに、結晶の所々に破損やデコボコがあるのだけれど、本当に雷に打たれたのか。

ライトニングクォーツには一応の基準がある。

  • 電流が流れた形跡があること。
  • 結晶の柱面の少なくとも半分に、巻きつくように水晶が成長していること。
  • 落雷時の熱により、一部がクリストバライト(白い付着物)に変化していること。

このライトニングクォーツは、たまたま収集品の中から出てきた。
写真の水晶ポイントはその拡大写真。
巻き巻きとはいい難いが、小さな結晶が貼りつくような格好でポイントを覆っているのが見えるかと思う。
意外に気づかないものだが、重要事項なので、押さえておきたい。
写真にある激しい侵蝕が、電流の流れた痕?

ここまで激しい浸食が刻まれているものは珍しいようだ。
ただ、落雷の衝撃で折れてしまうことはある。
トップのないライトニングクォーツも倉庫のどこかにあったはず。
ディアマンティーナから産する水晶は、透明度が極めて高く、採掘も丁寧なのか、もともときれい。
雷に打たれても、きれい。
かえって雷の痕が映えるというわけ。

ところで、先日某オークションを見ていたら、ライトニングクォーツのブレスレットなるものを発見した。
色合いから察するに、放射線処理を施したスモーキーシトリンであった。
販売者が、ライトニングクォーツに放射能を浴びせ、売れ筋商品にしたかったという可能性もある。
しかし、これでは全くわからない。
クラックひとつないきれいな珠が、ふんだんに使用されている(本文下に写真を掲載。後日さらなる衝撃的物体を確認)。
売れ残りのブレスを、むりやりライトニングクォーツと名づけ、さばこうとしたように見えてならない。
いろんな意味で有名な、中華系の業者だった気がするのだが、まだ居るのか。
かれらは金を積んでオークションのトップに商品を並べているため、マトモな人々がドン引きして立ち去ってしまう。
これでは新しい人が入ってこない。

中華系の業者は、欧米においては、鉱物市場を襲った類い稀なる脅威とみなされ、恐れられているという。
市場はまさにライトニングクォーツ、といった状況。
彼らをとめる者はいないのかと、不思議になってくる。

ライトニングクォーツ。
激しい衝撃に打たれ、崩壊の危機にさらされながらも、その存在を打ち消されない。
人間は、そうなり得るだろうか。
この美しい水晶は、私に人間とは何かを、深く考えさせるものである。




60×15×12mm  15.58g

2012/03/14

サチャロカアゼツライト


サチャロカアゼツライト
Satyaloka Azeztulite
Satyaloka Monastery, Satyaloka, India



思えばサチャロカアゼツライトほど不確かな存在はなかった。
私がその存在を知ったときは、ミルキークォーツの塊だった。
やがて極小の結晶が主流となる。
H&E社の商品である「アゼツライト」(→アゼツライトの項参照)の名を冠するのはいかがなものかとの声を受け、H&E社の商品のひとつに加わったさいには、褐色を帯びた不透明な石英の塊と化していた。
当初「サチャロカクォーツ」の名で発売されたが、産出の激減を受けて生産中止。
代わりとして、現地から新たに発見されたという透明水晶「サチャマニクォーツ」が発表された。

2年が過ぎ、鉱物の世界に戻ってみると、「サチャマニクォーツ」は生産中止に。
そのH&E社から最近になって「サチャロカアゼツライト」と明記された商品が発表されたことを知る。
シモンズ氏にはお世話になったから、言及は控える。

アゼツライト同様、サチャロカアゼツライトもまた、形而上の概念である。
サチャロカとは南インドの地名。
その地から出現するというサチャロカアゼツライトは、数年前までニューエイジストーンの代表格であった。
高い波動と崇高な輝きを放ち、霊能力の強化やヒーリングに欠かせない存在として、高い人気を誇った。
かのH&E社が販売権を独占するまでは、その複雑な入手経路ゆえに、限られた売り手しか扱わなかった。
需要に供給が追いつかず、価格は異常とも思えるほどに高騰した。
H&E社が販売権を独占するまでは。
ただ、色や形、質感や大きさなどに随時変化が生じる、産地の様子がいっさい伝わってこないなど、謎は多い。
ある時は透明水晶、ある時は石英の塊。
米粒大かと思いきや巨大化し、オレンジや赤などもたまに登場する。
共通点はサチャロカ地方産出の石英ということだけ。
そうと言われなければ判断できないのは、高額商品だけに致命的な問題であった。

※パワーで鑑定できる人もいるとは思うが、それだけを根拠に販売すると逮捕されることがあるので注意したい。

写真の石は、販売権がH&E社に移る直前まで流通していた、幻のサチャロカアゼツライト。
米粒大だがポイント状の水晶だった。
いっぽう、H&E社から発売されたのは、ほんのりイエローを帯びた石英のポリッシュ(写真)。
現在販売されている「サチャロカアゼツライト」に似ている。
1988年に Dharma Dharini 氏によって世界に紹介されたというサチャロカアゼツ。
その不確かな存在に翻弄され、対応に追われた小売業者。
ある意味修行だったのかもしれぬ。

かつて、サチャロカアゼツは、南インドの寺院で、現地の僧侶が手作業で採掘しているということになっていた。
当地から産する水晶を拾い集めるのが修行の一環ということらしかった。
奇妙な印象は否めずにいた。
南インドという土地柄、また関係者の面持ちから察するに、欧米の若者向けのアシュラム若しくはコミューン、といった実態が想像されたからである。
調べたら実際そんな感じだった。
機会があれば訪れてみたいとよく人に話していたのだが、ほとんどの方は「?」という表情をされていた。
サチャロカアゼツは、インドでもトップレベルの修行者が得た、霊験あらたかな賜り物。
そう考えた人がほとんどだったのかも。

サチャロカ寺院、という翻訳が誤解を招いたのは確実。
それらがコピペされ、広まったせいでは?
寺院、僧侶という表現で語られると、少なくとも若い白人には結びつかない。
H&E社の従業員にお会いしたさい、サチャロカの実態について尋ねたことがあるのだが、「行ったことがないのでわからない」とのことだった。

サチャロカアゼツについては「持つ人を選ぶ」という特権意識が強調され、入手の難しさばかりが語られた。
難しいと感じたことはない。
興味を抱いた石はだいたい手元に来る。
なぜなら私は石に選ばれないよう努力しているからである。
冗談である。
少なくとも、ずっと欲しいと思っているがご縁がない、という方はおられなかったはず。
ただ、20年前のサチャロカアゼツについては全くわからない。

サチャロカのコミュニティを訪れるのがここ数年の夢であった。
歴代のサチャロカアゼツをコンプリートしてる人物は、きっとここにいる。
サチャロカアゼツを認定する人物は、きっとここにいる。
水晶や石英がアゼツライトに昇格する基準を明らかにするため、一度訪れる必要がある。
サチャロカのコミュニティまでの道のりや、施設の位置はだいたいわかっている。
ただし、主力商品を失って倒産したおそれがあり、現在も採掘が続いているかどうかはわからない。

かつてインドを旅したとき、私はサチャロカ近くを確実に通過している。
奇しくも全盛期であったために、無念でならない。
しかし、私は当時、石に全く興味がなかった。
偶然コミュニティを見つけても、サチャロカアゼツを持ち帰ることはまずなかった。
実際、南インドでは、現地の宝石商に気に入られ、宝石を次々にプレゼントされて、正直困った。
日本人の感覚からすると宝石は大きすぎて、成金に間違えられること必至。
また、現地加工のためデザイン性皆無であり、日本ではとても身につけられないシロモノであった。
知り合いの家に向かう途中に彼の店があったため、通るたびに呼び止められ、断るわけにいかなかったのだ。
邪魔だったので、後に知り合った人たちに全部あげてしまった。
今更ながら記憶をたどると、けっこうな品質の貴石も混ざっていたのだが、日本に持ち帰っても数年後に失う運命だったから、むしろそれで良かったんだろう。

若気の至りか、もらうだけもらっておきながら、彼には内緒で町を去った。
インド人はよく物をくれる。
価値がわからなければ、とりあえずもらっておいたほうがいいかもしれない。
ただし、あなたが女性であれば、絶対に与えてはならない。


8×5×3mm(最大)計1.55g






追記

1)この記事をアップした3月に、サチャロカのコミュニティが消滅したとの噂が流れ、無断転載を疑われた件について

まず、偶然の一致を信じるかどうか悩むとして、私なりの考えを追記させていただいたのが以下の文章です。


サチャロカアゼツがH&E社の管理下となる以前は、サチャロカ・コミュニティの敷地内、もしくは周辺で小規模な採掘作業が行われているとされていました。
写真の石にも手掘りの形跡があります。
その後、この石の権利がH&E社に移り、大量生産が求められたために、採掘地が同地方の山岳地帯に移されたものと考えるのが妥当ではないでしょうか。
サチャロカのコミュニティを紹介したブログは、何年も前に更新が途絶えています。
なおこの記事は、私が独自に調べ、過去の経験をもとに記したものであること、ご理解願います。

しかしながら、さらに追記しますと、結論としては偶然の一致でありました。
正確には、私のほうが一週間遅いので、無断転載を疑われた方のほうが多かったかもしれません。というのも、ソースが全く同じなのです。
ただ、何年も前からあったサイトで、以前から気に入って愛読していたために、私には全く予想できませんでした。
ソースの提示は、(存続していれば)今後のコミュニティの運営に支障をきたすという懸念があり、あえて伏せました。
無関係であることを関係者様から伺い、感謝すると同時に、申し訳なく思っています。
噂については、サチャロカのコミュニティに非常に詳しい方が3月8日に言及されたとみられます。
この記事自体は3月入ってすぐに書いたものと記憶しておりますので、私自身困惑しています。
私が噂の存在を知ったのは7月末、そして確認が取れたのが今日ということになります。
ブログ主様、情報の持ち主様にはご迷惑をおかけしたことをお詫びすると共に、現状としては、まさかの偶然の一致を信じていただくしかなく無念に思います。
また、サチャロカ・コミュニティの閉鎖疑惑については、冗談のつもりで記したものであり、事実関係は把握できていません。(2012/08/06 追記)


2)サチャロカマスターアゼツライトの真偽について

南インド・サチャロカ地方から水晶が産出するという地質学的データはありません。
また、サチャロカコミュニティは水晶を採取するための組織ではなく、あくまでスピリチュアリティを探求するための修行の場でした。
いつの間にか鉱物の名産地になっているのは奇妙です。
サチャロカアゼツライトとして流通している水晶が、実はアメリカ・アーカンソー産水晶だったとして問題になっています。
関係者の情報が漏れ、明るみに出たようです。
比較的大きさのあるサチャロカマスターアゼツライトについては、ブラジル産やアーカンソー産の水晶と考えるのが妥当であり、サチャロカから産したとするには無理があります。

お世話になっている女性のご厚意で、原石をお預かりし、確認させていただきました。
ブラジル産水晶であると考えられます(→サチャロカマスターグランドアース)。
T様、いつもありがとうございます。

アーカンソー産水晶については、過去にも "ノースカロライナ産アゼツライト透明原石" と称して販売され、ファンの顰蹙(ひんしゅく)をかったことでも有名です。
決して悪いものではなく、世界で最もクリアな水晶のひとつとして、収集家にも高い人気があります。
ただ、小さなポイントが3000円以上の値を付けるようなことはまずありません。
偽物にはご注意ください。

サチャロカは広大な南インドのごく一部に過ぎず、インド人にも知らない人がいるほど。
コミュニティは欧米人を中心とし、ミレニアムをピークに稼動していた宗教団体の一種であって、古くから存在するインドの聖地ではないというのが私の見解です。(2013/08/18 最終追記)


2012/03/12

フローライト(ロジャリー)


フローライト Fluorite
Penny's Pocket, Rogerley Mine, Frosterley, Weardale
North Pennines, Co. Durham, England



数あるフローライトの中で最も格調高いとされる、英国・ロジャリー鉱山のフローライト。
微量のユーロピウムを含み、極めて強い蛍光性を示す。
本来はグリーン。
太陽光、或いは室内灯にあてただけでブルーに色変化を起こす。
曇り空にて撮影したが、結晶全体がブルーグリーンに写っているのは、ロジャリー産フローライトならでは。

フローライトの中には、紫外線に反応し、色合いが変化するものがある。
イギリスや中国、モロッコ産などが有名(日本からも稀に産出するらしい)。
色変化の度合いはさまざまで、全く蛍光しないフローライトもある。
また、多くはブラックライトが必要。
このロジャリーのグリーン・フローライトの豪快な色変化は、世界的にも稀なんだそうだ。

こちらは2011年産出の貫入双晶。
極めてクリア、比較的大きさのあるシャープな結晶体で、ひときわ青が濃い。
ロジャリー鉱山から発見されるのは、グリーンフローライトが中心だが、発見年代や鉱床の違いによる特性についても重視される。
そのわずかな差異もまた、収集家に愛される所以となっている。

さて、以前から気になっていたのだが、フローライトの結晶内に、白い内包物がみられることがある。
この標本もそう(本文下の写真がわかりやすいかも)。
私はこの内包物が大好き。
空にうかぶ雲のような、南国の海の泡のような、この何か。
ざっとみた感じ、気にかけている方はおられない様子なので、これ以上触れない。

この標本は、往年のロジャリー産フローライトの魅力を凝縮したかのような貫禄の品といえる。
なお、歴史と伝統を重んじる英国では、各地から産出する特徴的な鉱物に、格調高いネーミング(愛称)を与えることが多い。
見ていると、けっこう面白い。
詳しくはまたの機会に。




32×31×28mm  37.30g

2012/03/10

グランドキャニオンワンダーストーン


グランドキャニオンワンダーストーン
Grand Canyon Wonderstone
Grand Canyon Area, Arizona, USA



グランドキャニオンワンダーストーン。
なんだかすごい名前である。
鉱物としては、鉄分に富むライオライト(流紋岩)の一種。
米アリゾナ・グランドキャニオンの50万年前の地層から採取されるという。
グランドキャニオン国立公園の敷地内から採れるわけではなく(たぶん捕まる)、産地はあくまでその周辺らしい。
しかしながら、パワースポットのエネルギーを宿したヒーリングストーンとして、一部で人気があるようだ。

特徴は、レッド、オレンジ、イエローの暖色系パターン。
規則的な縞模様は、すべての石に現れる訳ではない。
また、莫大な人気を誇る石というわけではない。
ヨーロッパのごく一部では知られているようだが、扱いは地味。
ヒーリングストーンとしての扱いは少なく、むしろこの色合いの美しさに焦点が当てられ、宝飾品として注目されているようだ。

ワンダーストーンの名を持つ石は、アメリカほか世界中から産出する。
キロ単位で取引され、工芸品の素材として、また建築用素材としても用いられる。
いずれもマグマ由来のライオライトである。
なお、同地から得られる「グランドキャニオンジャスパー」、こちらは全く別の石。
さまざまな色合いが混在したシックな石で、印象としてはピクチャージャスパーに近い。

グランドキャニオンワンダーストーンは、いうなれば、これからの石。
この石のもつ温かみは、多くの人々を虜にする魅力に満ちている。
数あるワンダーストーンの中で、今後特別な扱いを受ける可能性を秘めているのは、このグランドキャニオンワンダーストーンくらい。
さほど高価なものでもないので、手に入れていただきたい。


27×22×19mm  15.32g





今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?