2011/10/05

オーロベルディ


オーロベルディ Oro Verde
Diamantina, Minas Gerais, Brazill



メタモルフォシスをご存知だろうか。
見た目は普通のミルキークォーツ。
ガンマ線を照射すると真っ黒になり、その後300℃程度で加熱すると美しいグリーンゴールドに変化することから、変容・変革の象徴として、メロディ氏(→スーパーセブン参照)によりメタモルフォシスの名を与えられた。
オーロベルディは、いわばメタモルフォシスの変革後の姿。

ポイント状のオーロベルディは珍しい。
メタモルフォシスは塊状で産出し、オーロベルディも同様の形状を持つことで知られている。
こちらはメロディ氏と交流のあった海外のクリスタルヒーラーが所有していたオールドストック。
ごく初期に得られたオーロベルディのポイントとのこと。

元祖メタモルフォシスは、多少クラックの入った、大き目のタンブルだった。
形はいびつで、決して格好いいものではなかった。いっぽう、オーロベルディは、切り取られたような破片状の塊。
比較的小さな原石が多く、加工品の場合はそのほとんどに激しいクラックが入っている。
現在は、タンブルではない破片状のメタモルフォシスも、メロディ氏経由で出回っている。

実はこのメタモルフォシス、現地では以前からミルキークォーツとして知られており、珍しいとされるピンク・メタモルフォシスのほうも、ローズクォーツとして流通していた。
メタモルフォシスが知られ始めた段階で、既に国内に在庫のある業者もあったため、姿勢は二つに分かれた。
あくまでもミルキークォーツ・ローズクォーツとして売る業者もあった。
しかし、ミルキークォーツをメタモルフォシス、ローズクォーツをレアなピンクのメタモルフォシスとして扱い、国内で「変容」させたものをオーロベルディとして高値で販売、メロディ氏の人気に便乗しようとする人々も。

美しいグリーンゴールドを示すオーロベルディ。
こちらも以前から流通があった。
海外ではオーロベルディ・シトリンと呼ばれており、放射線処理を施した宝石として認識されている。
同じく放射線処理によって作られる、レモンクォーツと同じような扱い(レモンクォーツは淡いイエロー)。
見た感じ、シトリンの代用品として扱われているに過ぎず、色合いもグリーンゴールドとは言い難いので、大量生産が可能なレモンクォーツと混同されているのかもしれない。
ポイントの流通も多いが、多くはレモンクォーツの色合い。

オーロベルディの名について、メロディ氏が命名したという記述は見られない。
ただ、いっとき海外のヒーラーの間でも話題になっているので、この石にメロディ氏が関わっているのは事実。
メロディ氏はもともとあった石にインスピレーションを受け、特別な名称を与えることが多いようだ。
本物か偽物かを問う以前に、付加価値の有無に問題があるように思う。
正規のルートで仕入れた場合、オーロベルディは「変容後」の姿で日本に入ってくる。

彼女のネームバリューはかなりのものであり、売り手にとっては死活問題。
そのため、メロディ氏の紹介した石が、彼女自身から仕入れたものかどうかが度々問題になった。
付加価値をつけるならメロディ氏を通すのは当然のこと。
メロディ氏経由で仕入れているところもある。
どちらを選ぶかは好みの問題で、出所にこだわる必要はない。
流通経路が不明、かつあまりにも高額な場合は、購入元に問い合わせてみよう。


メロディ氏によると、オーロベルディは持ち主に人生の深い意味を体験させ、成熟した人間性を育くむという。
また、強いエネルギーで持ち主を保護し、新しい未来を切り開いていくための意志と力を運んでくるとされている。


30×18×14mm 10.2g

2011/10/04

チンカルコナイト


チンカルコナイト
Tincalconite after Borax
Boron Open Pit, Boron, Kern County, California, USA



チンカルコナイト(チンカルコ石)。
その名のとおり、珍石である。
もし持っておられるなら、余程のレアミネラル収集家か、ネタとして購入した方ではないだろうか。

チンカルコナイトは、透明なボラックス(硼砂)という鉱物が、空気に晒されることによってできる。
専ら工業用、産業用に用いられる。
その用途は多彩で、過去には放射能漏れ事故のさいの応急処置に活躍したこともあるそうだ。

標本としてはほとんど出回っていない。
地味な上に、取り扱いが難しいからだ。
うっかり水で浄化しようものなら、溶けて無くなるらしい。
乾燥が過ぎると崩れて粉末になる。
加えて、もろく破損しやすい。
非常に軽く、風に吹かれてどこかへいってしまうこともあるという。

同じタイプの名前の石に、チンワルド雲母がある。
こちらも雲母だけあって、取り扱いが難しく、撮影中にヒビが入ってしまった。
とてもデリケートな鉱物たちなのである。

ちなみに、チンワルド雲母の名の由来は、ツィンヴァルト・ゲオルゲンフェルトというドイツの街。
ツィンヴァルト・ゲオルゲンフェルト雲母と呼んだほうがかっこいいような気がする。



ツィンヴァルト・ゲオルゲンフェルト雲母

25×13×6mm

2011/09/27

ピーターサイト


ピーターサイト Pietersite
Outjo, Damaraland District, Kunene Region, Namibia



ピーターサイトの塊。
濃紺色で描かれた抽象画のような、なにものにも喩えがたい独特の模様。
カットすると、まるで台風の目のようにみえることから、テンペスト・ストーン(嵐の石)とも呼ばれている。

その正体はクロシドライト(青石綿)。
猛毒として知られるだけに、驚かれる方もおられるかもしれない。
こちらはめのう化して固まっており、危険物が飛び散る心配はない。
一般には、クロシドライトを含んだ石英(ブルータイガーアイ)が地殻変動によって粉砕され、ふたたび浸透した石英によって、鉱物として蘇ったものとされている。

意外に知られていないが、タイガーアイやブルータイガーアイはクロシドライトから成る鉱物である。
青いクロシドライトが酸化してゴールドになったものがタイガーアイ。
両者は通常、混ざることはない。
しかし、いったん粉砕されたのちに形成されるこの石の場合は、青とゴールドが混ざり合った状態で発見される。
純粋な濃紺色は、原産地でもあるナミビア産のみに見られ、非常に高額で取引される。
なお、ゴールド~赤茶系のピーターサイトは、中国河南省から産出するもの。
ナミビア産とは成分が若干異なるらしい。
ピーターサイトには含めない、としているところも。
1962年に発見されたばかりの比較的新しい鉱物であり、その定義ははっきりしていないのかもしれない。

写真のピーターサイトは、昔たいそう気に入って手に入れた、大きな塊状の原石。
ところどころ酸化していて、濃紺色の嵐がうずまくさまが確認できる。
通常はカボション・カットされたり、ビーズなどで流通するピーターサイトだが、原石の美しさもなかなかのもの。
ちなみに、何も飛び散った形跡がないので、このままの状態で問題ないと思われる。

ジャンルを問わず広く日本人に愛されているタイガーアイ。
成分は同じであるものの、ピーターサイトのほうはヒーリングストーンとしての色合いが濃い。
シャーマニック・トラベルに欠かせない存在として知られているほか、瞑想にも向いているそうだ。
自分自身と向き合うための石でもある。
嵐の中にあっては、前も後ろも見えず、混乱し、何も考えられなくなってしまう。
しかし、台風の中心は、実に平穏なのだ。
安らぎと平和に満ちた世界に立ち戻ることによって、本来の自分自身を取り戻し、物事の本質をより深く理解することができるようになる。

先日、生まれて初めて石のブレスが千切れた。
ピーターサイトのブレスだった。
波乱万丈な運命に嘆く人に捧げる石である。
日常生活が波乱万丈すぎたのか。
いや、物事を見誤り、いつの間にか嵐の渦中を外れて、自ら突風に飛び込んでしまっていたのかもしれない。


約150g(未測定)

2011/09/24

スペクトロライト(各種)


スペクトロライト Spectrolite
Ylämaa, Etelä-Karjalan, Finland



二度目のご紹介。

スペクトロライトの名は、七色の輝きに由来するわけだから、当然七色の色合いがある。
しかし、七色!七色!と謳いながらも、実際に七色のスペクトロライトを紹介しているところはほとんどない。
私自身、「スペクトロライト=青く強い閃光を放つ鉱物」だと思い込んでいた。

そこで、今回はギャラリー形式にて、その魅力をご紹介させていただきます。
前回のスペクトロライトと併せてお楽しみくだされ。




スペクトロライトが発見されたのは1940年。
第二次世界大戦のさなかだった。
なんでもフィンランド軍が、ロシアとの国境付近にあるユレマーの地で、ソビエト軍の侵入を防ぐための穴を掘っていた際、青く輝く岩が見つかったという。

鉱脈の発見の瞬間だった。
軍を指揮していた将校は、奇しくもフィンランドの地質調査研究所長の息子であった。
研究は進められ、地質研究所長(親父?)によってスペクトロライトと命名されたという。




もともと1781年にロシアのサンクト・ペテルブルグに近い氷河からラブラドライトが発見されており、フィンランドからラブラドライトが出ることも推測されていた。
このようなとんでもないモノが出てくるということも、ある程度予想されていたのかもしれない。
しかし、地質学者が長年調査を続けていたにも関わらず、見つかることはなかった。
スペクトロライトの発見は、不思議な偶然が重なって実現したものだった。




スペクトロライトは、夢と深いかかわりがあるといわれている。
ラブラドライト同様、宇宙の叡智を運んでくるとされているが、そのメッセージはより深く難解であるという。
どんなメッセージが送られてくるかは、今宵の夢にて。


約30~60mm

2011/09/21

エジプトの星


エジプトの星
Hematite after Marcasite
White Desert, Farafra Oasis, Matruh Governorate, Egypt



エジプトのサハラ砂漠の奥地から産出する、「エジプトの星」と呼ばれる鉱物。
その名から、希望の星になぞらえて語られることもある。
正体はゲーサイト(針鉄鉱)若しくはヘマタイト。
マーカサイトという鉱物が、長い時間をかけてゲーサイトに変化した。
つまり、マーカサイトの仮晶ということになる。
比較的よくみかけるが、他所からは発見されておらず、産出には限りがある。
エジプトがまだ海の底だった頃に形成されたといわれる、太古の石である。

ゲーサイトといえば、水晶の内包物としてご存知の方も多いと思う。
ストロベリークォーツやスーパーセブンに含まれる、赤やピンクのインクルージョンの本体がコレ。
鉄の一種であるからして、メタリックブラックの重厚な質感を持つ。
針状、塊状で産出することが多いゲーサイトだが、大自然が生み出した彫刻のようなものも存在する。
こちらの「エジプトの星」もそのひとつ。
松ぼっくりのような外観からは意外なほど頑丈、かつ繊細な結晶形を示す。
こうしたユニークな形状は仮晶ならでは。

産地はリビアとの国境にほど近い、ホワイトデザートと呼ばれるエリア。
現地にたどりつくにはサハラ砂漠の険しい道のりを辿らねばならず、採取には危険や困難が伴うとされている。
しかし、「エジプトの星」に関しては、産出も比較的安定しており、流通も多い。
その不思議な構造や神秘性から、内外を問わず人気は高い。
ホワイトデザートからは、他にもドーナツのような形を示すゲーサイトなど、興味深い石が多数発見されている。プロフェシーストーンが見つかるのもこの一帯らしい。
中にはこんなものもある(→エジプトの星になった貝化石)。

余談だが、H&E社(注1)から最近発表されたという「Zストーン」は、これと全く同じものらしい。
なぜZなのかは不明である。
なんでも、パワーが非常に強く、酔ってハイになることから、ミネラル・マリファナとの異名を与えられたという。
この石を持って車の運転をしてはいけないというから本格的だ。

確かに見た目はマリファナに似ている。
ここはいっそ「エジプトの星」をやめて、「秘境のマリファナ」とし、大麻愛好家向けに紹介してみてはどうだろうか。
大麻開放運動関係者の方から聞くところでは、決して好ましいとはいえない状況が続いている様子。
この石がマリファナ・ファンの希望の星となることも十分考えられる。
そこのフリークのあなたも、おひとついかが?
すべての人の心に、平和が訪れることを祈って。


注1)Heaven&Earth社の略。アゼツライトなど、ニューエイジストーンの発掘・普及に貢献してきたアメリカの企業で、業界のリーダー的存在。名も無き石に独自のネーミングを与えることも多く、その反響の大きさゆえ、著名人からの反発の声も聞かれるほどであった。代表でクリスタルヒーラーでもあるロバート・シモンズ氏は親日家として知られる。

余談だが、シモンズ氏はイケメンである。ウインクされ戸惑った経験から考えて、若い頃ヤンチャだった可能性があるが、現在は強力な奥方によって支えられている様子である。


35×28×20mm

2011/09/17

オトゥーナイト/燐灰ウラン鉱


オトゥーナイト/燐灰ウラン鉱
Autunite
Apex mine, Lander Co., Nevada, USA



ウランと聞いて、びっくりされる方もおられると思う。
鉱物であり、天然石/パワーストーンでもあるからして、当然コレクションの対象になる。
欧米には放射性鉱物の愛好家は多い。
こちらもアメリカの放射性鉱物専門コレクター(!)からの流出品。
放射性鉱物の愛好家は、長寿の方が多いらしい。

このように比較的大きさのある雲母状の結晶が密集している標本は珍しい。
母岩とのコントラストも見事である。
ベストクオリティとまではいかないが、大きさといい、インパクトといい、面倒な客を追い返すための最終兵器としての活躍が期待される。

燐灰ウラン鉱は、イエローまたはイエローグリーンの鮮烈な色彩を特徴とし、紫外線で蛍光するため、ウラン系鉱物の中で最も人気が高い。
しかし、その多くはハッキリ言って岩である。
よく見ると、黄色っぽい粒々がくっついている程度。
放射能をきらう日本でも、福島原発の事故以降、放射性鉱物に注目が集まっているが、ほとんどは鑑賞に耐えないものばかり。

放射能による諸問題については全く知識がない。
皆さまのほうがよくご存知かと思うので省略する。

原子力発電や核兵器に使用されるのは、天然のウラン鉱石に含まれる、「ウラン235」という物質らしいが、ウラン全体の10%に満たないという。
残りは劣化ウラン。
数ミリの結晶からわずかに採れるだけというから、枯渇するのは時間の問題か。
ちなみに、「ウラン235」による大爆発は、天然の状態では無い、らしい。

世界一の燐灰ウラン鉱といえばフランス産。
その美しさに惹かれるのも無理はなく、グリーンの燐銅ウラン鉱と並んで、ファンは多い。
ウランそのものの産出も多く、ウラン資源の供給元として知られているだけに、先日のフランスにおける原子力発電所事故発生のニュースは衝撃的だった。

ちなみにこの燐灰ウラン鉱、日本からも産出する。
岡山県苫田郡の人形峠が最も有名。
他に岐阜県土岐市、福岡県福岡市、茨城県霞ヶ浦、山口県柳井市、宮城県伊具郡など。
放射性鉱物としては、前述の人形峠から産出する人形石、岐阜県中津川市のジルコンや秋田県仙北市の北投石などが有名。

東京電力福島第一原発にほど近い、福島県石川町からは閃ウラン鉱が産出する。
皮肉にも戦時中、原子爆弾を作るため、学生らにより採掘が行われていたという。
詳細は下記サイトが詳しい。

http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201106080281.html

自然界とは不思議で、美しすぎるものに毒性があることが少なくない。
大自然からの警告であるといわれているくらい。
放射性鉱物も、例外ではない。
従って、乳幼児が興味を持ち、触れてしまうことも多い。
最悪の事態に備えるのは当然のこと。
収集に当たっては、ご家族の意向も確認し、同意を得てからにしたい。
私の場合は、家族が医学的研究にあたり放射性物質を扱っていた関係で、「今更どうでもいい」ということなので、やりたい放題やらせてもらっている。
ただ、子供の頃から原水爆の恐怖を植えつけられてきた我々日本人は、どうしても感情的になってしまいがち。
大切な標本を、ゴミの日に捨てられてしまうようなことになれば、どうなるか。
役目が終わったからと、パワーストーン感覚で土に埋めるなどの行為は絶対にしてはならない。

なお、パワーストーンとして知られている(?)「ラジウム石」なるものは、閃ウラン鉱や燐灰ウラン鉱を意味するらしいが、本当か。
なにやら超能力者のお墨付きで、「ラジウムストーンを肺へ吸い込んだり、飲用すると効果的」とある。
こうした行為には、死期を早める作用がある。
ホルミシス効果(→ウランガラス参照)のほうも否定されつつある。
自分だけでなく、他人を巻き込むことも考えられるので、知らない間に殺人犯にならぬよう、思い残すことなく成仏していただきたい。


45×33×21mm  46.31g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?