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2012/12/18

幻のカコクセナイトアメジスト(パープルアンジェリン)

 
カコクセナイトアメジスト
Cacoxenite, Amethyst
Fundão, Espirito de Santo, Brazil



先日、見事なゴールドの針が入った、色濃いアメジストを見つけた。
カコクセナイトアメジストと呼ばれているらしい。
購入を迷っているうちに、あれよあれよと価格が上がっていく。
一見するとスーパーセブンなのだけれど、何かが違う。
購入可能なところを何件もあたってみたものの、世界的に品薄なのか、どこも在庫切れだった。

1995年、ブラジル・エスピリトサント州のある鉱山において、クリスタルヒーラーA.メロディ氏によって見出されたスーパーセブン。
もはや流通していない。
初期に流通したという美しいスーパーセブンは、既に掘りつくされてしまった。
現在入手可能な原石は、同じエスピリトサント州にいくつか存在する、別のアメジスト鉱山から採取されているもの。
宝石質のカット品は南インド産になる(→カット品の例)。
ビーズについては、中国やアフリカから産する類似のアメジストをスーパーセブンとして販売するのが一般的である。
いずれも定義上スーパーセブンではない(→スーパーセブンについての記事はこちら)から、スーパーセブンは既に絶産している。
だがこのアメジスト、元祖・エスピリトサント産にも関わらず、スーパーセブンではないとの明記がなされている。
面白いものを見つけた。
レアストーンハンター魂をフル稼働して、ようやく探し当てたのが写真の石。

程なくして待望のカコクセナイトアメジストがブラジルから届いた。
素晴らしい。
カコクセナイトとされる極太の金のインクルージョンが、ぎっしり詰め込まれている。
アメジストの色が濃すぎてよく見えないのもまた、嬉しい。
ロットの中には完全結晶も混じっていた。
結晶は細やかで繊細、しかしながら大きく重厚な紫の色合いを示し、かつ金色の針が至るところに詰め込まれた、堂々たるカテドラル・アメジストであった。
スーパーセブンの原石とは明らかに異なるものである。
どちらかというと、カコクセナイト入りアメジストとして流通している研磨品に思えるのだが、断定はできない。
なんせ、紫の色が濃すぎる。
ブラックアメジストといっても過言ではないほどだから、研磨しても紫の色合いは残るはずだ。
いや、もしかすると長い間暗い倉庫に眠っていたために、退色を免れたのではないか。
アメジストには太陽光で色褪せてしまう性質がある。
多少古びた感じがしたのは、アメジストの色があまりに濃すぎること、切断面が滑らかになっていること。
もしや、採取/カットされてからかなりの時間が経っている?

実際、調べてみるとこのアメジスト、本当に古いものだった。
ブラジルのエスピリトサント州南東に位置するフンダンに、かつて世界に名の知れた鉱山があった。
発見から十年余り、採掘中の事故で、たくさんの宝石もろとも鉱山は水没してしまった。
現在、採りに入ることはできない。
独特の金のインクルージョンの入ったこのアメジストは、この鉱山からしか見つかっていないらしい。
また、C軸に対して垂直にカットしないと、放射状に広がるカコクセナイトの様子は見えないという。
つまり、この謎のアメジストは、1960年代初期~70年代半ばにフンダンのとある鉱山から産し、その魅力を最大限に秘めたまま倉庫の暗闇に眠っていた。
鉱山主の自宅倉庫から発見された伝説の在庫が、このほど一斉に流出したということらしい。

世界的に有名なアメジストだというから、閉山までの十年間に採取されたストックも存在するはずだ。
前述したカコクセナイト入りアメジストの研磨品がそうではないかと疑いたくなる。
昨日、金の太針が模様を成すかのような内包物に彩られた水晶が、小さなカット品となって僅かに流通しているとのお話を伺った。
フンダン・アメジストのカット品に非常によく似ている。
ただ、肝心の中身が何なのかについては、まだわかっていないそうだ(注1)
或いは、H&E社の製品一覧にカコクセナイト(注2)がある。
紫の色がほとんどみえないが、これも退色によって色が抜けてしまったためではないだろうか。

注1)フンダン産アメジストに関しては、スーパーセブン同様、カコクセナイト以外の複数の鉱物インクルージョンの可能性が示唆されている。ただ、独特の金のインクルージョンについては、カコクセナイトではなく、ゲーサイトの混入との説がある。詳しくは、虚空座標さんのサイトを参照していただきたい。フンダン産については世界的にカコクセナイトと断言されているが、水晶に関する情報においては、日本が突出していることをここに明記する。ヘマタイトの混在の可能性については注3に記。KUROさん、いつもありがとうございます。

注2)カコクセナイトは鉱物名。原石はドイツから産出するものが有名。カコクセナイト/カコクセン石の標本は極めて地味なため、水晶に内包された美しいゴールドカラーのインクルージョンが、カコクセナイトとして定着してしまった可能性がある。



さて、後日気づいたのだが、今回私が在庫の確保をお願いした方は、鉱山主さんご本人であった。
倉庫から出てきたばかりのブツの写真があちこちに転載されているので、興味のある方は探していただきたい。
アメリカではすぐに評判になり、奪い合いになったようで、市場にはほとんど残っていない。
小売店ではひとつ120ドルなんて言われた。
H&E社代表のロバート・シモンズ氏もこのフンダン・アメジストに惚れこみ、新たなるヒーリングストーンとして紹介している。
その名もパープルアンジェリン。
シモンズ氏はこのアメジストに、深遠なる女神を見たという。
不思議だった。
私もその女神を見たような気がするのだ。
半世紀もの間眠っていたこのクリスタルには、スーパーセブンとは異なる眩い光が宿っている(注3)
まるで、新しい時代の幕開けを喜ぶかのように。

注3)フンダン・アメジストの研磨品からは、リアルにピンクのファイヤが出る(→写真
)。ならばピンクファイヤークォーツ同様、ヘマタイトが関与している可能性がある。水晶に内包されたゲーサイトとヘマタイト、レピドクロサイトの違いについても、現時点では明らかになっていない。


残念ながらこのカコクセナイトアメジスト、日本での評判はいまいち。
スーパーセブンと混同されてしまっている。
むしろ、スーパーセブンよりも以前から知られていたのに、スーパーセブン以下とみなされてしまっている感がある。
確かにもうウンザリな方も多いはず。
もっとも、メロディ氏によって見出された、リアル・スーパーセブンをお持ちの方はほんの一握りであろう。

早速とばかりに、このカコクセナイトアメジストを池袋ショーに持ち込み、この石の魅力を伝えに参った…
のであるが、やはりというか評判はよくなかった。
付着物を取るために使ったクレンジングオイル(鉄分などを取り除くのに便利です。プロは劇薬を使います)が残っていたために、コレは天然石ではない!というお叱りまで受けてしまった。
今回の池袋ショーに、フンダン・アメジストをお持ちの業者さんは見当たらなかった。

池袋ショーでは、オークションでお世話になった方々とお会いし、直接買ご購入いただく機会を頂戴した。
お忙しい中遠方からお越しいただいた皆さま、関係者様には深く感謝申し上げる(自分がブースをお留守にしている時にお越しくださったために、ご迷惑をおかけした確率は100%です!ごめんなさい。大先輩であるKさんはさすがの直観力、ジャストでお越しになりました。みなさま、ありがとうございました)。

さて、数あるパワーストーンの中から、このフンダン・アメジストを見出してくださったのは、三名様。
最初にお買い上げいただいたのはショー前日、オークションをきっかけに公私共にお世話になっている心優しい殿方である。
まだ評判すらわからない段階で、快く購入してくださった。
そして池袋ショー本番。
この石を手にとって購入されたのはお二人。
いずれもクリスタルヒーリングをお仕事にされ、日々学びを深めておられる人物だった。
お一人はなんと、ロシレムを世に紹介した世界的クリスタルヒーラー、デヴィッド・ガイガー氏のアシスタントさん。
ガイガー氏の信頼を得て、第一線で活躍されていらっしゃった。
もうお一人は(個人的な思いで申し訳ないのだけれど)今は連絡を取ることのできない、私にとってかけがえのない友人によく似ておられた。
魔女繋がりで、今回のオークションを支えてくださった方でもあった。
この御三方にこそ、フンダンのカコクセナイトアメジストがふさわしい。
私のような者がそのご案内を許されたことに感謝し、この場を借りてお礼申し上げる。

半世紀もの間、倉庫に眠っていた類い稀なるアメジスト。
アメトリンと見紛うような金のインクルージョンは、時に強く光を放つ。
この光はしばしば「セントエルモの火」と呼ばれているという。
悪天候のさい船のマストの先端が光るのが元々の由来で、それを鉱物に擬えたようだ。
もしかすると「セントエルモの火」は上に示した研磨品に見える、鮮烈なファイヤのことを指しているのかもしれない。
濃厚なアメジストの色合いと輝きは、荒れ狂う海に浮かぶ船を導く光と喩えられよう。
なお、クリスタルヒーリングにおいては、この石を霊的に高く位置づけ、現在急速に進行している地球の変化に関わる人々のもとを訪れることになるだろうと述べられている。




57×33×23mm  43.03g(本文下の写真右)


ただいまおすそわけ中です!消えてしまう前に是非どうぞ。


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