2012/10/12

バライト(&セレスタイト)


ブルーバライト
Blue Baryte
Sterling, Weld Co., Colorado, USA



昨夜、自室2階の窓から、世界中で恐れられているとされる漆黒の虫が飛来した。
ゴキブリというやつである。
私は半ばパニックになり、その後の記憶がない。
朝になったら消えていたから、夢だったのかもしれない。
その直前、久しく連絡を取っていない知人から電話が入り喜んだのもつかの間、私が関連した極めて深刻なトラブルが起きていることがわかった。
前回の記事と関係があるのだとしたら、今日は天使の話題で反省する必要がある。

写真は見事に結晶した青いバライト(重晶石)。
まるでセレスタイト(天青石)のようだが、セレスタイトではない。
バライトは砂漠の薔薇/デザートローズ(※注)を形成する鉱物である。
砂漠の薔薇の赤褐色の色合いは、砂漠の砂に由来する。

※注)砂漠の薔薇には二種類ある。赤褐色の場合はバライト由来。デリケートなホワイトの結晶であれば、セレナイト由来。バライトとセレナイト、セレスタイトは混同される傾向にある。

バライトの結晶は珍しい。
なかなか見かける機会がなかったが、先日の春のミネラルショーでブルーバライトが販売されているのをみかけたので、いくらか流出があったのかもしれない。
色はブルーのほか、無色透明~白、イエロー、オレンジ、ブラウンなど。
冒頭にあげたセレスタイトは、バライトの成分バリウムがストロンチウムに置き換わったもの。
両者はしばしば混在し、混同されることも多いという。
また、バライトの青い色合いは、セレスタイトから生じる放射線に由来するといわれている。
つまり、処理石が作れてしまう。
現時点では需要と供給のバランスが取れているから、さほど問題にはなっていない。
私は未見であるが、グリーンのバライトは処理のおそれがあるという。

バライトは世界各地から発見され、工業用の素材として広く利用されている。
白い○○○が出ることで有名な検査用のバリウムは、バライトの粉末から出来ている。
いっぽう、結晶化したバライトの透明石は、その多彩な造形美に魅せられた収集家たちに古くから愛されてきた。
そのためオールドコレクションが数多く存在し、骨董品のような扱いを受けている。
この標本も、アメリカの有名なコレクターからの流出品で、運よく入手できた。
出処はスイス産/究極のエッチングクォーツを激安でお譲りいただいた世界的に有名な鉱物店。
代金を払っていないにも関わらず、ある日私のもとにやってきた。
驚いて問い合わせたが、どちらでもいいようなことを言われ、支払い方法を告げられることなく今に至る。
毎度のことながら、世界規模の鉱物店は太っ腹だ。
こんな見事なものに対価を支払わないというのは心が痛む。
かの収集家が天国から託してくださったのだろうと私は考えている。
非常に都合の良い解釈である。

バライトは見た目に反し、脆く破損しやすい。
そのため、加工には向かないとされている。
透明石はコレクション用にカットされることもあるが、数は少なく貴重品である。
パワーストーンとしての知名度がないのはそのためかもしれない。
このところ世界的に注目を集めている、水晶に載った美しいイエローバライト(中国産/写真1/写真2)。
春のオークションで紹介させていただいたところ、カルサイトやアパタイトとの混乱がおきている方が少なからずおられた。
知名度のなさも原因と思われるため、ここに改めて記させていただこうと思い立った。

バライトの仲間であるセレスタイトのほうは、パワーストーンとして広く認知されている。
硬度は3と、加工される鉱物の中では最ももろい部類に入る。
60年代にマダガスカルから大量に発見されてのち、高価だったセレスタイトの価値は下落、多くが加工にまわされたとみられる。

蛇足になるが、セレスタイトには硬度以外にも、様々な危険要素が含まれている。
アクセサリーとしてはおすすめできない。
当初はビーズなど考えられないという声も聞かれただけに、加工技術の進歩に危機感を抱いている。
セレスタイトのブレス愛用者のかたには、以下の要注意事項をお伝えしておかねばなるまい。
天使の石、セレスタイト。
トイレ掃除のさい天使がみえるようなことがあれば、それはあなたが天国に導かれているという警告のメッセージであるからして、すみやかに避難のうえ、換気を行っていただきたい。
セレスタイトは、天使のメッセージを運ぶ天国のクリスタルであるといわれている。




65×30×23mm  35.61g

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What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?