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2011/11/20

アメジストエレスチャル(カボション)


アメジストエレスチャル
Amethyst Elestial Quartz
Karur, Tamil Nadu, India



淡いスモーキークォーツに浮かぶアメジストの色合い。
ゲーサイトの細い針状インクルージョン、レピドクロサイトの欠片が漂い、ひとつの宇宙を創り出す。

カポジョンカットされた南インド、カルールのエレスチャルアメジスト。
時にスーパーセブン(セイクリッドセブン)の偽物という汚名を着せられ、南インド産スーパーセブンの名で販売されている気の毒な存在。
市場に登場したのは2004年頃だといわれている。
私が石に興味を抱いた2006年頃には、既に南インド産スーパーセブンとして販売されていたと記憶している。

カルール産のエレスチャルアメジストは、ブラジル・エスピリトサント産のいわゆるホンモノのスーパーセブンよりも透明度が高く、アメジストの色が濃い。
カットするとよりいっそう輝きが増す。
むしろ聖なるインドの水晶として、単体で評価されて然るべき存在である。
実際、欧米にはインド産アメジスト・エレスチャルとして評価、販売しているヒーリング系のショップも存在する。
しかし、スーパーセブンとしてそれらを販売する業者が現れたという噂も聞こえる。

カルールはバンガロールの南、白檀の産地として有名なマイソールの近く。
私はインドでは、ゴアからバンガロールを経由してチェンナイ(マドラス)に出てしまったので、残念ながら立ち寄ることはなかった。
付近のローカルな街には滞在したから、だいたいの雰囲気は想像できる。

南インドの乾いた鉄道の駅。
色鮮やかな衣服を身にまとった女性たち。
生活する人々の中に溶け込む寺院。
おだやかに流れる時間。
真っ青な空。
至るところに神々が顔をのぞかせる。
南国の植物、ココナッツ、遥か彼方に広がる畑。
もう12年も前になるとは思えないほど、生き生きと浮かんでくる光景。

長い間使っていなかったバッグから、コロリと出てきたカポジョン。
初めて行った新宿のミネラルショーで、インド人ディーラーから購入した。
つい先日、仕事中に見つけて和んだ。
来年の終わり、インドへ行く。
12年前に決めたこと。
流れに任せる、それだけだ。


25×20×7mm  75.76ct

2011/10/19

アレキキャッツ


アレキサンドライト キャッツアイ
Alexandrite Cats Eye
産地不明



実家にて、面白い石を見つけた。
私が初めて買ったルース。
なぜかアレキサンドライト・キャッツアイ(アレキキャッツ)。
際どいチョイス。
当時無一文に近かった私がこんなモノを購入できたのは、キャッツアイが角度によって右寄りになること、色変化の弱さ、また裏面に僅かなカケがあるためではないかと思われる。

キャッツアイとは、石の中央に、猫の目のような一条の線が浮かび上がってみえるさま。
シャトヤンシー効果とも呼ばれる。
キャッツアイがみられるのは、他にトルマリン、ガーネット、エンスタタイト、アパタイト、ベリル(エメラルド等)、スキャポライト、水晶など。
表記がキャッツアイだけの場合、クリソベリル・キャッツアイのことを指す。
原石からキャッツアイの有無を判断するのは至難の業で、熟練された職人にしかわからないらしい。
なお、キャッツアイが1本ならず、2本、3本と出るものはさらに希少価値が増す。

カット石、ルースの需要はさまざま。
宝飾業界ではダイヤモンドなどの貴石、収集家向けにはコレクション用の希少石がそれぞれカットされる。
相反する世界にあって、宝飾業界からも収集家からも愛されているカット石が存在する。
このアレキサンドライト・キャッツアイもそのひとつ。
カラーチェンジとシャトヤンシー効果を併せ持つこの石は、高価でありながらもファンが多い。
アレキサンドライトは、自然光で青、人工光で赤~薄紫に色変化を起こす。
その上、キャッツアイが浮かび上がるのだから、業界に関係なく、誰もが注目するのも無理はない。
なお、ハニーカラーのキャッツアイをアレキサンドライト・キャッツアイとして販売しているショップを見かけたが、クリソベリルであろう。
アレキサンドライトは、クリソベリルの変種である。

このルースには産地の記載がなかったので、産地不明とした。
集めたての頃は、後で何が必要になるかわからないもの。
どうも、スリランカ産ではないかと思う。
色変化が弱い。
これはスリランカ産のアレキサンドライト・キャッツアイの特徴でもあった。
ちなみにこれ、キャッツアイが2本ある。


1.39ct

2011/08/28

サファーリン


サファーリン Sapphirine
Kolonne, Sabaragamuwa Province, Sri Lanka



サファーリン、サファリン。
知る人ぞ知る希少石のひとつ。
主にスリランカ、タンザニアから発見される、ジェムクオリティ(宝石質)の原石がカットされ、流通している。
発見から200年近く経っているが、これまでに報告された最も大きなカットストーンは8ct(1.6g)程度であるといわれている。
多くは、落としたら二度と出てこないであろうミクロサイズ。
相場は1ctあたり一万円程度。
希少な割にお買い得だといえる。

サファイアのようにみえることがその名の由来だそうだが、カラーチェンジ・ガーネット(注1)に似た、ややグリーンを帯びたダーク・ブルーの色合いが一般的。
ずっとガーネットの一種だと思い込んでいた。
実際、成分はカラーチェンジ・ガーネット(正確にはパイロープ)に近いらしい。

注1)白熱光により青から赤紫に色変化を起こす、代表的なカラーチェンジ・ガーネット。かつてスリランカからも産出した。現在はマダガスカル産が中心。アレキサンドライトの色変化に似ていることから、アレキ・タイプとも呼ばれる。

初めてこのカットストーンを見たときには、なんじゃこりゃと思った。
色合いが明るすぎる。
明らかにガーネットではない…ことにようやく気づいた。
写真は、直射日光の下で撮影。
サファイアのようなブルーが美しい。
タンザニア産にはみられる色で、最近になって、スリランカからもこうした質の高い原石が出るようになったそうだ。
以前より見かける機会が増えたので、産出も増えたのかもしれない。
ネットでは、皆が皆「ほとんどの人は知らない石」として、紹介している。
それだけが取り得ではなかろうに。

サファーリンには多色性があり、写真にもイエローやパープルが映り込んでいた。
実際、イエローやパープル、また赤いサファーリンも存在するらしい。
産地も多様。
標本クラスの原石は主にマダガスカルやグリーンランド、そして南極大陸からも発見されている。
南極では、ダイヤモンド入りの隕石をはじめ、レアストーンが多く出ているようなので、勇敢なレアストーンハンターは、是非とも訪れていただきたい。
適当に岩石を拾い、ゴンドワナイト、ローラシアイト、パンゲアイトなどと名づけ、隠された神秘のハイエナジー・ストーンとして売り出すのもオススメ。
いいや、もう既にあったりするかもしれない。


0.18ct

2011/08/11

ピンクファイヤークォーツ


ピンクファイヤークォーツ
Pink Fire Quartz
Minas Gerais, Brazil



透明、もしくはスモーキークォーツ。
しかし突然、ネオンピンクの閃光が石から浮かび上がる。
飛び出す、と言ったほうがいいかも。

あるとき、ブラジルの牧場で、家主が偶然見つけたらしい。
その発見は高く評価され、いつしかピンクファイヤークォーツという名で世界中に流通するようになった。
コヴェライトクォーツ、ティンカーベルクォーツとも呼ばれている。
流通し始めたのは2005年とごく最近のことだが、既に絶産している。
産出そのものが30kg程度しかなかったらしい。
後にも先にも見つかっていない。
大半はカットされ、ルースなどで出回っているが、概ね高価である。

なにがいいのかわからなかった。
写真を見てもピンと来ず、名前も気に入らなかったので、たいして興味はなかった。
2009年、アリゾナのツーソン・ミネラルショーで偶然知り合った台湾人ディーラー。
まだ持っていないと言ったら、「コレは絶対買っとけ!」と迫られた。
日本では一万円近くするピンクファイヤークォーツ。
3000円で12.95ctだからと、騙されたと思って買った。

すぐに、誰もが絶賛する理由がわかった。
ネットなどで画像を見ただけでは、安物のラメ入りマニキュア程度にしか見えない。
どうすごいのか知りたい方は、ショップなどへ出向き、ご自身の目で確かめていただきたい。

ちなみにその台湾人に薦められて、半ば無理矢理、ロシアのサンムーンストーンを買った。
日本に戻ってから、とんでもないレアストーンだと知った。
さすが石の聖地、ツーソン。
ツワモノどもが集まるので、人の話はちゃんと聞いておいたほうがいい。

写真は、ピンクファイヤークォーツの原石。
格安だったので、先日参考に購入。
写真を見ても、なにが面白いのかわからないだろうと思う。
わざとピンボケさせて躍動感を表現したつもりだが、やはり安物のマニキュア(ラメ入り)にしか見えない。

さて、ネオンピンクの閃光が浮かび上がるメカニズムは、いかなるものか。
以前は、「コヴェライト/コベリンという希少鉱物が、水晶に内包されることにより起きる特殊な現象」であるといわれていた。
その後、どうも違うということになっているようである。

藍色のコヴェライトが、なぜピンクに光るのだろうか。
ざっとネットで見た感じだと、プロも含め、誰もが悩んでいるようだ。
コヴェライトは和名を銅藍といい、銅を含んでいる。
銅が水晶に混入すると、赤くなる。
チャルコパイライト(黄銅鉱)を酸化させ、人工的にコヴェライトを作ることがあるそうだが、どちらかというとその色に近いような気がする。

珍しい説を唱えているサイトを見つけた。
興味深いのでコピペ。

・針鉄鋼(ゲータイト)=針状の内包物:紅色
・赤鉄鉱(ヘマタイト)=粒状小結晶の内包物:赤色透明
・緑泥石(クローライト)=六角薄板状の内包物
:透過光…緑色
:反射光…紅紫色

他にも、レピドクロサイト混入説などをみかけた。
本文下に原石の外観を載せたので、よろしければ参照していただきたい。
新手のルチルかと見紛うような、見事な針状インクルージョンが確認できる。
ピンクファイヤークォーツに内包されているのが上記の鉱物であれば、比較的産出は多いはずで、例えば光るガーデンクォーツがあってもおかしくない。
ここまでに希産であり、ブラジルのたった一箇所からしか発見されていないのは奇妙。

結論はもう少し待つべきかと思う。
通常は、結晶を破壊して中身を取り出し、成分を特定した上で市場に出す。
物自体が少なく、高価な石ゆえ採算が取れない。
だから誰も鑑定しようとしなかったのかもしれないが、今になって疑惑が浮上するなど、おかしな話である。
高級品ゆえに責任は重い。
そもそも最初にコヴェライトが入っている!と発言した人は誰だ。
場所的にメロディさんか?

コヴェライトの原石は美しい。
超能力を高めるという、なんだか凄い石でもあるらしいので、気に入って集めている
比較的よく見かけるが、パイライトもしくは前述のチャルコパイライトを酸処理して作られたものがほとんどで、天然のコヴェライトは希産。
自称霊能力者は、ニセモノをつかまされるといわれている。





【後日談】

内包物がコヴェライトでないことが確定しました。2011年12月15日付けで、ピンクファイヤーの浮かぶサンストーンについて取り上げ、ここで、銅ではなく鉄のほうではないかという推測をしました。
2012年3月18日、某デパートにてその事実を確認しました。
以下に、詳細を追記したいと思います。
右の写真はツーソンで半ば強引に購入させられた思い出のルースです。


18×14×11mm  2.2g




【速報】

親切な内田さんのおかげで、あのピンクファイヤークォーツの中身がわかりました。




ヘマタイトでした。
誰か発表した後だったとしたら、残念!



It's called Covellite in Quartz aka Pink Fire Quartz. The bright pink colored reflections have been believed as a effect of Covellite inclusions. but according to the connoisseur there are Hematite inside of. It's sure that "Covellite Quartz" no longer exists. People all over the world have no doubt what this sucker's brightness is, I never know what's true.

販売されていた内田さんは、ピンクファイヤークォーツについてはご存じなく、仕入れが高かったためこのような扱いになった模様。驚いておられました。鑑定した結果、ヘマタイトだったとのこと。海外でもコヴェライトクォーツと呼ばれているので、情報の共有がうやむやになったまま、石だけがあちこちに広まったものと思われます。この石が世界規模で誤解をうけたことが不思議でなりません。

(2012年3月18日 追記)

2011/06/09

クンツァイト(原産)


クンツァイト Kunzite
Pala, San Diego, California, USA



オールドストックの結晶からのカット品。
1905年採取。
1902年にジョージ・フレデリック・クンツ博士により発見された鉱脈から得られた、正真正銘のカリフォルニア・アイリスである。
原石には内包物が多く少量しかカットできなかったとのこと、こちらも若干の内包物が確認される。
かろうじてチューブ状の空洞のないものを選んだ。
未処理だがこのピンク色。
アフガニスタン産のライラックピンクには及ばないとしても、ブラジル産に匹敵する輝きだ。

スポデューメン(リチア輝石)の中で、ピンク~バイオレットの色合いを示すものをクンツァイトと呼んでいるのはご存知のとおり。
自然の状態で美しいピンクを示す原石は年々少なくなっている。
カットされた宝石やビーズには、無色や白、茶色などの結晶に放射線処理を施し、変色させたものが多い。
処理石の場合、一定期間を過ぎると元の色合いに戻ってしまう。

ベースであるスポデューメンは無色透明。
だからクンツァイトはピンク・スポデューメン。
以前、白濁したスポデューメンのビーズが、ホワイト・クンツァイトの名で販売されているのを見かけた。
レアではなく、むしろ処理加工前の状態であり、希少価値がつくのは妙である。
同じくビーズとして販売されているクンツァイトより高額。
当社では加工前・加工後の商品をそれぞれ並べております、ということが言いたいんだろう。
賢い売り方だと思う。

クンツァイトには、長期間光や熱に晒されると退色してしまう性質があるそうだ。
1905年に出た原石が、100年以上経っても色あせることなく残っていたのは驚くべきことで、付属のラベルのほうはセピア色に変色しボロボロだったそうだ。
当時は「カリフォルニア・アイリス」の名で販売され、後にクンツ博士に因んでクンツァイトと命名されている。

ニューヨーク5番街にあるティファニー宝石店の副社長でもあったクンツ博士。
結婚適齢期の女性の人口比率を分析し、最多だった4月生まれの”誕生石”に、ティファニーの主力商品であるダイヤモンドを設定してしまったのは、実はこの人らしい。
新しい鉱物を求めて世界を旅してまわり、自ら宝石のカットも行うなど幅広い分野において活躍し、その生涯を宝石に捧げたという。


1.38ct

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?