2012/03/25

ロードクロサイト/インカローズ(結晶)


ロードクロサイト/インカローズ
Rhodochrosite
Uchucchachua Mine, Lima, Peru



ロードクロサイトは「赤い薔薇色の石」という意味。
南米アルゼンチン・ペルーから産するロードクロサイトを、インカ帝国に因んでインカローズと呼んでいる。

数あるパワーストーンのなかでも、インカローズの人気はひときわ高い。
アルゼンチンの土産物屋では、インカローズが飛ぶように売れているという(アルゼンチン在住の知人情報)。
南米以外から出たものにインカはおかしいから、ロードクロサイトの名で呼ぶべき!などといった、よくわからない議論で盛り上がったのも、記憶に新しい。
要は、インカローズの知名度が上がりすぎたために、ロードクロサイトとインカローズを区別しようとする動きがみられたわけである。
現在は、むしろロードクロサイトと呼ぶほうが、「お洒落な石の達人」ということになっている。

この標本はペルーから来たものなので、インカローズと呼んでもよさそう。
ただ、外観が違いすぎるので、混乱される方もおられるかもしれない。
インカローズといわれてまっさきに想像するのは、アルゼンチン産出の、サーモンピンクに白い縞模様の入った石。

春先に見かけた、宝石質の赤いロードクロサイト。
ここまで赤く、透明感のある大きな結晶は初めて見た。
今年のツーソンショーで出回ったものらしい。
格安だったので即決。
黒い母岩に深紅の結晶が映える見事なクラスターで、ところどころに無色透明の結晶が入っている。
この標本では殆どわからないのだが、中には、透明結晶が多すぎるだろ!とツッコミたくなる標本も。
無色?
なんだろう。
カルサイトの仲間だけに、カルサイト?
それとも、インカローズの白い部分にあたる何か?
まさか、染めたのか?
わからない。
母岩が黒いのは、赤い結晶だけに、鉄か何かだろう(適当)。

ロードクロサイトの産地としては、ペルー、アルゼンチンのほか、アメリカ・コロラド州、南アフリカ、中国などが知られている。
コロラド州・スウィートホーム鉱山からの標本は、世界一の美しさと称されるが、産出は既に無い。
ロードクロサイトそのものは世界各地から発見されており、かつては日本からも多くの産出があった(稲倉石等々)。
いずれもピンク~ピンキッシュレッド~ブラウンの色合いを示す。
この標本が、なぜここまで赤いのかについては、資料がみあたらず。

南米からのロードクロサイトの産出は激減しており、枯渇は時間の問題とされていた。
しかし、流通が減ることも、質が落ちることもなく、現在も絶賛販売中である。
いまだにこんな標本が出てくるのだから、まだ出てくるんだろう。
煽りに合ったようで腑に落ちない。
そのいっぽうで、人知れず消えていく石がある。

その名の由来である、赤い薔薇と呼ぶにふさわしい外観。
こんなものがまだ眠っていたとは、南米おそるべし。
世界で最も質の高いとされる、コロラド・スウィートホーム鉱山のロードクロサイトとは、また違った魅力を感じる。
パワーストーンをこよなく愛するあの人への贈り物に、一束いかがでしょう。
お安くしますぜ、パッションローズ。




40×21×18mm  約20g

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