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2012/03/23

リビアングラス


リビアングラス
Libyan Desert Silicate Glass
Gilf Kebir, Libyan Desert, Egypt



私はホテルの一室に入っていった。
暗い室内の床に青いビニールシートが貼られている。
大量の黄色い物体が積んである。
部屋には臆病そうな青年が一人。
「選んでいいか?」と尋ねると、彼は頷いた。
砂まみれになりながら幾つか選び、交渉に入る。

リビアングラスは、1932年にリビア砂漠で発見されたテクタイト(インパクトグラス)の一種。
2500~3000万年前に形成されたといわれている。
テクタイトとは、隕石の衝突に伴う衝撃で地表の岩石が溶け、冷え固まることにより成形された天然ガラスのこと。
多くは不透明な黒い塊で発見される。
クリームイエローの色合いを示すリビアングラスは、グリーンのモルダバイトと並ぶ人気であるが、産出は圧倒的に少ない。
写真の石は、リビア砂漠の砂付きで盛られていた中から幾つか選んだもののうち、まだ手元にあったもの。

リビアングラスの正体は、長い間不明とされてきた。
2006年、産地付近に巨大なクレーターがあることが判明、リビアングラスが隕石の衝突に由来する事実が確認されつつある。
また、クリストバライトのほか、エンスタタイトなどの希少鉱物が含まれていることが明らかになっている。

産地はリビア砂漠の奥深く、エジプト、スーダン、リビアの国境付近に広がるギルフ・ケビールと呼ばれる岩山。
世界の果てとも称される、過酷な土地である。
かつてはこの地に人類が文明を築いていたことが明らかになっている。
エジプトのピラミッドやツタンカーメンの墓から、リビアングラスで作られた護符や装飾品が発見されているのはご存知の通り。
高価な宝石だと思われていたのは、大半がリビアングラス、つまり天然ガラスであったものと推測されている。

天然ガラスであるからして、偽物も出てくる。
現在ブレスの形で流通しているものは、淡い黄色に着色されたガラスだという。
天然のリビアングラスを使っている場合も、ビーズの場合はほとんどがシリカ成分で補整、強化してあるらしい。
販売価格は数万~数十万ほど。
処理によりいくら耐久性を高めても、ブレスにかかる負荷は他の装飾品の比ではなく、数年経てば使い物にならなくなる。
石の世界で成功している人物が、ブレスではなく、パテックフィリップやフローレスのダイヤモンドなどをお持ちだったとき、なにかしら説得力を感じた。
ブレスでなければ効果が期待できないということはないので、無理はしないでほしい。

なお、最近エジプト政府がリビアングラスの採取を禁止したとの噂が流れている。
詳しいことはわからない。
希少価値が増しているという煽り文句には注意したい。
リビアングラスは、カルマの深い人に縁があるといわれている。
古代の泥棒も宝石と間違えたほど。
もしあなたのカルマが本物なら、私のように、いずれきっと本物のリビアングラスが届けられるはず。
焦らなくても大丈夫?


53×28×25mm(左側) 43.52g

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