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2011/12/06

ゴールデンセラフィナイト


ゴールデンセラフィナイト
Clinochlore/Seraphinaite
Lake Baikal Region, Eastern Siberia, Russia



クリノクロア(斜緑泥石)の一種。
ロシアから産出するクリノクロアは、天使の羽根を思わせる美しい絹状光沢から、セラフィナイトと呼ばれ、人気がある。
通常はグリーンだが、稀にブラウン/ゴールドを示す石が存在するという。

先日の秋のミネラルショーで購入した。
煌くゴールドに、わずかにグリーンが溶け込んでいる。
お店の人の話では、正真正銘のセラフィナイトで、加工はいっさい施されていない天然の色合い、セラフィナイトと同じ場所から産出するという。
ただ、具体的な産地や成分などについてはわからないとのこと。
売り手として無責任ではあるまいか。

クリノクロアにはグリーンのほか、ラベンダー、赤、黄、白などがある。
中でも有名なのは、ラベンダーカラーのケンメレライト(菫泥石)。
透明感のある明るいパープルを特徴とする希少石で、豊富に含まれたクロムが発色の原因とされている。

こちらのゴールデンセラフィナイトについては、わからない。
取り扱いのあるショップはいくつかあり、"珍しい色合い" と紹介されてはいるものの、発色の原因については触れられていなかった。
他にも疑問に思っている方はおられるようで、熱処理によって変色させた説、セラフィナイトと共生したチタナイト(チタン石/スフェーン)である説、などを見かけた。
加熱処理や酸化については私も考えたが、お店の方は否定された。
ロシア産ならばアストロフィライトではないかとも考えたが、同じロシアでも産地が離れすぎている。

セラフィナイトはロシアのバイカル湖付近が唯一の産地といわれている。
アストロフィライトの産出するコラ半島と、セラフィナイトの産地とされるバイカル湖には相当の距離がある。
コラ半島は北欧フィンランドの東、バイカル湖は中国・モンゴル自治区の北。
気候や環境もまるで違うと思われる。
疑惑のチタナイトとセラフィナイトが共生して発見されることは稀にあるらしい。
ただし、ロシア産のチタナイトは希少品で、果たして製品化されることがあるのだろうか、という疑問が残る。
チタナイトはその名の通り、チタンを含む鉱物。
アストロフィライトもチタンを含むという点で共通している。

おそらくこれまでジャンク扱いされてきた茶色のクリノクロアを、ゴールデンセラフィナイトと言い換え、価値を付けたものだろう。
そう思っていたら、先日実家でアヤシゲなモノを発見した。
本文下の写真がそれ。
ロシア・コラ半島のアストロフィライトなのだが、絹状光沢を示す緑色の鉱物が共生している。
同じ面持ちの標本が3つあり、いずれもEveslochorr Mountain産。
色合いといい光沢といい…
まるでセラフィナイトのように見えるのは、私だけか。

ロシアのコラ半島からは、アストロフィライト以外にも、ゴールデンセラフィナイトを思わせる鉱物が幾つか産出する。
いずれも希少石であり、加工されるとは考えにくい。
ゴールデンセラフィナイトの正体は、依然としてよくわからない。
池袋ショーでリサーチするつもりでいたのだけれど、今朝間違えてアップしてしまったので、このままにしておこうと思う。
それにしてもロシアは広い。
一杯のボルシチに列を作るイメージしかないのだけれど、昔は強かったんだろう。
豊富な資源とも関係あるのかもしれない。

ゴールデンセラフィナイト。
強い光沢とゴールドカラーには、一度見たら忘れられないインパクトがあり、柔らかな印象のセラフィナイトとはまた違った魅力がある。




30×21×5mm  25.60ct

2011/10/08

ザギマウンテンクォーツ


ザギマウンテンクォーツ
Zagi Mountain Quartz
Zagi Mountain, Mulla Ghori, Khyber Agency, FATA, Pakistan



ザギマウンテンクォーツ。
パキスタンのザギ・マウンテンから産出する水晶である。
さまざまな呼び名があるようだが、ここではザギマウンテンクォーツと呼ぶことにする。
ヒーリングストーンとして名高い石で、その存在は以前から知っていた。
ピンと来ないというのが正直な感想だった。

ザギマウンテンクォーツの特徴は、その多彩な内包物。
エジリン、アストロフィライトのほか、トルマリン(ブラックトルマリンなど)、アンフィボール類(アクチノライト、リーベカイトなど)を含む。
ベースはクリアクォーツ。
内包物によって、赤やオレンジ、グリーン、ブラウン~ダークブラウン、黒などの色合いを示す。
初期は大小さまざまな、シンプルなポイントが中心だった(本文下右側の写真)。
現在はエレスチャル状、ポイント状、塊状など、多様化が進んでいる。
スモーキークォーツやミルキークォーツ・ベースのザギマウンテンクォーツも見かけるようになった。
今やその存在の不透明さは加速するいっぽう。

写真の石は、プレゼントとして偶然に付けていただいたもの。
うわ、なんじゃこりゃと思った。
よくわからんが、すごい。
後日、ザギマウンテンクォーツであることが判明。
小粒にしてこの存在感、本物だ。

大好きな西アジア。
これは絶対にザギマウンテンに登らねばならない。
標高175メートルなら余裕だ

今はほとんど使っていない、バックパックの出番が来たようである

※聖地ザギマウンテン付近の様子はこちらからどうぞ

現実は甘くない。
調べてみると、そう簡単には行けない土地であることがわかった。
聖地により外国人立入禁止説、乱獲により規制が入った説、タリバン出現につき国際的に入山不可能説、などが推測されたが、いずれにせよ外国人が入るのは容易いことではないと感じた。
ネットショップでは、聖地である旨説明されていることが大半。
もし最後の説が本当だったとしたら、命を覚悟しなければならない。
パキスタンの情勢が極めて不安定なのは、ご存知の通り。

聖地に関しては思うところある。
外国人、特に日本人の海外での評判は、悪い。
現地の人々の感覚に合わせることをしないからだ。
意図的に遠ざけられた可能性はある。
パキスタンのように信仰が根付いている国においては、外国人が現地の人に打撃を与えることも少なくない。

パキスタンには好戦的な人が多いと思っている人が多いが、そうではない。
飾ることなく誠実で、温かな心をお持ちの方々だ。
宗教の異なる日本人に対しても、親切に接してくれることが多い。
我々日本人は、宗教と聞いただけで抵抗感を持ってしまいがちだが、現地での信仰心は、日本でいう法律であり、道徳であり、生活の一部でもある。
例外はある。
たとえば、戦争のあった地域で生まれ育った人々。
家や家族を失い、心に深い傷を負った彼らが、やむなく道を外れることもある。
詐欺や麻薬取引などの犯罪に関わっていたのは、私の知る限りでは、戦地など複雑な環境に育った人間だ。

ザギマウンテンについて、この石を譲ってくださった方に伺ってみた。
情勢が悪いというのは現実のよう。
ザギに登るのは厳しいと感じた。
私のような外国人が間違いを犯す(犯した)可能性も十分に考えられる。

ザギマウンテンからはバストネサイトのほか、ゼノタイム、イルメナイト、モナズ石などの希少石が産出することで知られている。
現地がレアアースの宝庫であることが判明したのは、ごく最近。
2001年頃だといわれている。
これも不思議な偶然で、近年においては最も危険だった時期である。
殺害されたテロリストが、アフガニスタンからパキスタンに逃亡したのは有名な話。
私がパキスタンを旅したのは11年前。
テロ発生の前年だが、空港は厳戒態勢が敷かれており、税関で厳しい検査があったのを鮮明に覚えている。

話を戻そう。
ザギマウンテンクォーツは、多彩な内包物を持つことで知られる。
中でも、アストロフィライト、エジリンが入ったものは人気があるようだ。
本文下、左は、手持ちのザギマウンテンクォーツの拡大写真。
最近入手したもので、アストロフィライトが内包されているということだった。

結晶中の太く黒い針がエジリンだという(→拡大写真)。
一本だけ確認できる太いオレンジの針は、なにか。
実は、過去のザギマウンテンクォーツに、このオレンジの針が高い確率で含まれていた(本文下の写真参照)。
エジリンではないし、ルチルにしては色が濃く太すぎる。

一般的に、アストロフィライトは繊細な繊維状のインクルージョンとなって、結晶全体をレッド~オレンジに染めるといわれているが、私にはオレンジの針が本来のそれではないかと思えてならならないのだ。
アストロフィライトとされる、オレンジの微細な毛状のインクルージョンは、私にはどうも、アンフィボール(角閃石)の類いにみえる。
マダガスカル産のアンフィボール入り水晶に、このような色合いを頻繁に見かける。
アストロフィライトのインクルージョンというのは他では聞かないから、相当珍しいはずだ。

なんとなく、気になる。
まあ、いいや。
この石にはきっと、危険を承知でザギへ入っていったパキスタンの人々の勇気、そして温かな心が、あふれんばかりに詰め込まれている。




14×11×6mm  7.78ct

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?