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2013/02/24

マルチカラーアンバー


アンバー/琥珀
Blue Amber
Jambi, Sumatra, Indonesia



魅力的な鉱物が続々登場するインドネシアから、またもや面白い鉱物が見つかった。
数多くの島から成るインドネシア。
中でもジャワ島、スマトラ島、ボルネオ島は有名なアンバー(琥珀)の産地として知られている。
いずれも紫外線に反応して青く蛍光する。
色変化は顕著で、太陽光にすぐに反応し、青くなる。
そのため赤、紫、青、黄色といった多彩な色合いが現れるのが特徴で、その質や産出量はドミニカ産ブルーアンバーを超えるとの声も。

写真はスマトラ島から届いた上質のブルーアンバー。
太陽光で青く蛍光しているのがわかる。
まるでロジャリー産フローライトのような高貴なお姿だ(蛍光の様子は本文下)。
この産地のアンバーは、若干グリーンの入ったブルーに蛍光するようだ。

実は、全く期待していなかった。
祖父が戦争で行ってきたのがスマトラ島だったという理由でつい、購入した。
スマトラは第二次世界大戦において、戦争とは異なる闘いが繰り広げられた土地と聞く。
現地に向かった人々は、もっぱら大自然でのサバイバルライフに明け暮れたという。
つまり、戦争でスマトラに行った人々は、殺し合いとは無縁だったらしいのだが、南国でのサバイバルライフはひ弱な祖父には堪えたようだった。
このアンバーがみせる常識を揺るがす驚きの数々に、スマトラ島で祖父のが目の当たりにした現実と、その後の悲しい人生が凝縮されている。
いったいどんなところだったんだろう。
祖父が誰も殺さずに済んだのは私にとっては誇りだが、病んでしまうほどに過酷な生活だったのだから、気の毒である。

ブルーアンバーといえばこれまでドミニカ産がその代表格だった。
価格は恐ろしいことになっていた。
インドネシアからはドミニカ産を凌ぐといわれる質の良いブルーアンバーが数多く産出し、比較的安価で手に入るとあって、世界中の愛好家たちの注目を浴びている。
クリスタルヒーリングの分野でも取り上げられている。
今後価格は高騰するはずなので、今のうちに手にされておくことをおすすめする。
多くの原石が研磨加工用にまわされてしまっているのは非常に残念。
インドネシアという場所柄、ビーズにもなって流通を始めているのも確認しているが、見た感じは微妙。
原石ならではの美しさを存分に楽しむなら、早めのご購入をお奨めする。

なお、ボルネオ島のブルーアンバーは鮮烈なレッドの輝きが特徴で、ダイナミックな色変化が楽しめる。
興味のある方は是非手にしていただきたい。




30×23×14mm  6.26g

2012/08/30

ブラックマトリックスオパール


ホンデュラス マトリックス オパール
Honduran Matrix Opal
Erandique Region, Honduras



このところ頻繁にみかける石がある。
ホンデュラス・マトリックスオパール(ブラックマトリックスオパール)という、なんとも強烈な名前がついている。
写真はそのカット品。
黒い地に虹色の輝きが炎のように浮かぶさまは、世界的に一定の傾向を示すオパールの中にあって、一見珍しく思える。

オパールは遊色(多彩な輝きが浮かんでみえる様子)の有無によって二つに分類される。
遊色のみられるオパールを一般にプレシャスオパール、遊色のないオパールをコモンオパールと呼んでいる。
コモンオパールの代表的な例としては、ペルーのピンクオパールやオレゴンのブルーオパールなど。
これらがパワーストーンとして親しまれているのは、原価が安いためである。
宝石としては専ら遊色のみられるオパールが好まれ、中でも赤やオレンジの遊色が浮かぶものは最も価値が高いとされている。
これはどうも赤が入っている…から高級品なのかもしれない。
だが実際のところ、非常に安かった。
先日参考までに購入した。

ホンデュラスの名は、南米にあるホンジュラス共和国(正式にはホンジュラスの表記が正しいらしい)からこのオパールが産出することに由来するという。
全く聞いたことがない国である。
実際、アフリカと混同している人も見受けられる。
調べてみたが南米のどこかにあるらしいこと、「バナナ共和国」と揶揄されていることくらいしかわからない。
折角、鉱物で世界一周しているのに、こんなレアな国を素通りしてしまうとは残念である。
国名が付くことで誤解を受けそうな国としては、他にリヒテンシュタインが挙げられよう。
リヒテンシュタインからの若い観光客が、たまたま当時お手伝いしていたお店に寄ってくださったことがある。
その時はいったい何を意味するのか判らず、申し訳ないことをしてしまった(バンドをやっている人かと思った。たぶんノイバウテンとごっちゃになっている)。
特に違和感のない普遍的なイケメンであった。
世界は広い。

さて、ホンジュラスに戻ろう。
どうやらこのホンデュラス・マトリックスオパール、加工して作られるものらしい。
もともとブラウンであった母岩を、人工的に黒い色合いに変え、樹脂加工をもって輝きを安定させているようである。
オパールをアクセサリーにする場合、樹脂加工で強度を高める必要があるから、とりたてて騒ぐ必要はない。
ホンデュラス・マトリックス・オパールの真相に関しては、世界中で激しい論争が展開されている。
地の色をブラウンからブラックに改良していることが問題ということのようだ。
砂糖を加えて加熱する、とある。
加工前のマトリックスオパールを見た感じ、特に黒くする必要性は感じない。
ホンジュラスの人々が何ゆえ砂糖にこだわるのかについては、よくわからない。

オパールというと、高価な宝石というイメージがある。
実際に価値あるものは非常に高額になる。
大きさにもよるが、ホンデュラス・マトリックスオパールの相場は、遊色のないコモンオパールと同程度。
原価を考慮するとビーズになる可能性もあるとみて調べたら、既にビーズになって流通していた。
国内ではブラックマトリックスオパールと呼ばれており、気づかなかった(本来はオーストラリア産)。
どうも大量に出回っている。
ブラックマトリックスオパールについては、未加工の状態である旨明記され、紹介しているところが圧倒的。
天然オパールという鑑別を出している鑑定機関もある。
ここは確かギベオン隕石においても不可解な鑑定結果が出ていたのだが、大丈夫なんだろうか。

参考:鑑別書、鑑定書、保証書の違いとオパールへの適用について
http://www.gemstory.com/howtoPart2.html

つまり、鑑別書からは、石の名前(と、処理の有無を書くべきであり、パワーストーンに関しては書かなくてもよいとは聞かない。鑑定機関そのものが詐欺行為に及んでいる可能性が高い)しかわからない。
万が一、ダイヤモンドにしか付かないはずの鑑定書が付いてきた場合は、深刻な犯罪に巻き込まれたとみていいだろう。
鑑定書や鑑別書は「安心」の基準にはなり得ないことを忘れないでほしい。
本来は、いずれも宝石を第三者に託すさい(質入や相続など)に必要となるものである。

ブラックマトリックスオパールについては "処理を前提とする天然石" としての購入を検討されるほうがよさそう。
最も価値の高いとされるブラックオパールと混同し、とんでもない高額で販売しているケースもある。
オパールとパワーストーンのあやうい関係については、以下の資料から読み取れるので、参照していただきたい。
砂糖じゃ相手にされない。
宝石の価値というのは甘くない。


参考:オパールの価値
http://gemopal.info/free_ohanashi/free.html

参考:オーストラリアのオパールマスターによる、動画で楽しむブラックオパールの世界




やはり赤が良いようだがブルーにピンクがお好きな様子


18×13mm  7.39ct

2012/08/16

コサム・マーブル(ストロマトライト)


コサムマーブル Cotham Marble
Cotham, Bristol, England



パワーストーンブームに象徴される現在の日本において、鉱物や岩石のもつ絵画のような模様が重視されることは少ない。
鉱物収集の醍醐味ともいえる、アゲートやめのうに抵抗を示す人々が多いのは非常に残念なこと。
アゲートやめのうに関しては、中国製造の加工品、模造品が国内市場を圧倒している。
まがい物を出来る限り回避したいと考えるのは当然のこと。
しかし、美しい加工品を望む限り偽物は避けらず、世界市場において我々がもっぱらその標的になっているのもまた、現実である。

いっぽう、古い収集家の中には、アゲートやめのうの創り出す芸術的な模様を愛でる人々が少なからず存在している。
ヴィクトリアストーンの項で私が手紙を書いた、大先輩の目に留まった類い稀なる石をご紹介したい。
写真にあるのは私のコレクションではなく、近々その方のもとへ旅立つ石であることをここに明記する。

先日オリンピックで注目を集めたロンドンから100kmほど西に位置する、海に面した街、ブリストル。
彼の地より採取される、一風変わったストロマトライト。
およそ2億年前の石灰岩質の地層から僅かに発見されるという。
研磨することにより、絵画のような模様が現れるため、現地ではランドスケープ・マーブル、また産地に因んでコサム・マーブルと呼ばれ、愛されてきた。
ストロマトライトの化石がこうした模様を示すのは英国産に特異な現象とされる。
一般的なストロマトライト(→記事はこちら)と比較すると、その差は明らかである。
史料としても実に興味深い存在といえよう。

英国の鉱物が英国から出ることは滅多にない、という現状を考慮すると、これは非常に貴重であり、限りある芸術品であることを再認識させられる。
上空にUFOらしき飛行物が確認できるのも微笑ましい。
それはともかくこの "絵画"、日本における「禅」に似た美意識を感じさせる。
西洋人が日本の文化を指して禅、と表現することは少なくない。
行き過ぎた解釈による誤解もしばしば見受けられる。
禅のもつシンプルさに対する西洋人の憧れ、或いは東洋回帰の志向を反映しているのだろう。
こうした素朴な石に価値が置かれるのもまた、西洋人の東洋への憧れが少なからず関係しているのかもしれない。
しかしながら、日本においては西洋文化への憧憬から、禅という美意識が忘れられようとしている。

禅に関しては、私自身誤解している部分が多いと自覚している。
大半の人にとって禅は、わかるようでわからない難解な世界という認識であろうことと思う。
外国人に禅について訊ねられ、面食らった人も多いのでは。

昨年惜しまれながらも死去した、米・アップル社のスティーブ・ジョブズ氏。
氏の遺した名言に、その価値観が見事に表れている。
私自身、かのロイターでこの言葉が紹介されているのを見て、驚きは隠せなかった。
西洋人の発言とは到底思えない、極めて東洋的な内容だったからである。
氏が禅に傾倒していたという背景を知り、ようやく合点がいった。
いっときは窮地に陥った米・アップル社の再建に尽力され、アップルの復活を見届けられた。
世界中からの賞賛と期待の絶頂期にあって、不治の病に倒れ、この世を去ったジョブズ氏。
氏の言葉もまた、失われつつある禅の美意識を我々に再認識させた、ひとつの快挙であったと私は考えている。


自分が近く死ぬだろうという意識が、人生における大きな選択を促す最も重要な要因となっている。外部のあらゆる見方、あらゆるプライド、あらゆる恐怖や困惑もしくは失敗など、ほとんどすべてのことが死の前では消え失せ、真に大切なものだけが残ることになる。やがて死ぬと考えることが、自分が何かを失うという考えにとらわれるのを避ける最善の方法だ。自分の心に従わない理由はない。

(スティーブ・ジョブズ/ロイタージャパン)

http://jp.reuters.com/article/wtInvesting/idJPnTK052018720111006


38×23mm  41.65ct

2012/08/03

ヘマタイト/エジプトの星になった貝の化石


エジプトの星(貝化石仮晶)
Hematite after Sea Shell
White Desert, Farafra Oasis, Matruh Governorate, Egypt



太古の昔生息していた貝類が化石となり、さらにヘマタイトに置き換わったとされる珍品。
一目で貝とわかる造形と質感は、レプリカと見紛うほど。
かつての貝が、銅像(鉄だけど)のように忠実に再現されたさまは、大自然による芸術作品といって差し支えないと思っている。

この標本には他にも興味深い特徴がある。
以前、サハラ砂漠から発見されるエジプトの星(Zストーン)という鉱物を取り上げた。
サハラ砂漠がまだ海の底だった頃に形成されたという、ユニークな特徴を持つヘマタイトであった。
あたかも星のように見えるため、その名が充てられたと思うのだが、実は星のような形をしていない石もわりあい流通がある。
勇敢なミネラルハンターや専門家が、サハラ砂漠の奥地にあるホワイト・デザートで様々な形状のヘマタイトを採取しているそうだ。

写真の化石標本も、日本語で表現するなら「エジプトの星」と同じものということになる。
本文下にこの石の裏面を掲載した。
エジプトの星と見分けがつかないほど似ているのがわかると思う。
前回紹介したエジプトの星は、マーカサイトという鉱物の仮晶だった。
化石が置換される例としては、パイライト化したアンモナイトが有名だが、多くはスライスされてその特徴がわかるようデザインされている。
カットされずとも貝とわかるなんて不思議。
化石の世界は奥が深いのだな。

サハラ砂漠はかつて、海の底であった。
エジプトの星とよばれる石は、その頃に形成されたといわれている。
この標本は、サハラ砂漠が海であったことを証明する、貴重な資料になるのだろう。
化石はどちらかというと苦手。
見事な貝殻のオブジェなら、喜んで飾らせてもらおうと思う。
ただし、ヘマタイトはいわば金属。
錆びやすいため、湿気の多いところに飾らないほうがよさそう。

古来から、人々は生まれ変わったのちの自分の姿を想像した。
「大空を羽ばたく鳥になりたい」
「また人間になって、妻と出会いたい」
そんな叙情的な文脈で語られることもある。
私は欲張りだから、エジプトの星になりたい。
どれくらい時間がかかるのか、見当もつかないが、頑張ればなれるかもしれない。

いっぽう「私は貝になりたい」と言った人もいる。
私は漠然としか知らないが、有名な言葉だからご存知の方のほうが多いと思う。
戦争において理不尽な運命に翻弄され、苦難を強いられた加藤哲太郎氏は、遺書にこう書き残しているという。


けれど、こんど生まれかわるならば、私は日本人にはなりたくありません。二度と兵隊にはなりません。いや、私は人間になりたくありません。牛や馬にも生まれません、人間にいじめられますから。どうしても生まれかわらねばならないのなら、私は貝になりたいと思います。貝ならば海の深い岩にへばりついて何の心配もありませんから。何も知らないから、悲しくも嬉しくもないし、痛くも痒くもありません。頭が痛くなることもないし、兵隊にとられることもない。妻や子供を心配することもないし、どうしても生まれかわらねばならいのなら、私は貝に生まれるつもりです。

(『狂える戦犯死刑囚』より)





35×24×15mm  14.60g

2012/07/25

ストロマトライト


ストロマトライト
Stromatolite
Sevaruyo, Eduardo Avaroa, Oruro department, Bolivia



太古の昔、地球の大気は二酸化炭素で占められていた。
ストロマトライトとは、30億年もの昔に生息していたシアノバクテリアと呼ばれる藍藻類の一種。
地球上に初めて酸素を供給した生物として知られている。
この石の独特の模様は、シアノバクテリアと海中の蓄積物が化石化し、層を成したもの。
厳密には、化石ではなく岩石の扱いとなる。
化石類についてはまだわかっていないことが多いが、ストロマトライトも例外ではない。
30億年前のそれとは異なる、27億年前に登場したシアノバクテリアが地球環境に変化をもたらしたという説が有力となっている。
1億年違うというだけで相当な時間が宙に浮く。
まさに気の遠くなるような話。

ストロマトライトはいわば生命の起源となる存在。
シアノバクテリアの光合成によって増加した酸素により、オゾン層が形成され、生命が陸へ上がる条件が整っていったと考えられている。
生命の創造主としてストロマトライトを神聖視するのは、西洋におけるキリスト教の価値観の影響によるものだろう。
キリスト教においては、神が生命を創り、人々を高みへと導き、時に厳しく裁きを下すということになっている。
日本人の考える神様とは少し事情が異なる点、押さえておきたい。

ストロマトライトがヒーリングストーンとして注目を集めたのもその流れ。
スーパーセブンでお馴染みの、メロディ氏が著書で取り上げた。
化石全般に言えることだが、ストロマトライトは外観としては地味であり、どちらかというと不気味である。
そんな岩石が、パワーストーンを支持する女性層の心をつかんだ理由は、生命の誕生というキーワードとクリスタルヒーラーの声、そして形状ではないかと私は考えている。
小さくカットされ、タンブルになったストロマトライトは、かわいい。
ポーチに入れて持ち歩きたくなる。
しかし、化石標本として並べられているストロマトライトにかわいさは微塵も無い。
かわいさが功を奏して、小さなストロマトライトが太古のメッセージを宿したクリスタルとして大流行…したような気がするのである。

さて、Wikipediaのストロマトライトの項では、非常に地味な泥の塊としてのありのままのストロマトライトを存分に参照することができる。
これは一体何事か(→写真

参考資料:

1)オーストラリアの西オーストラリア州ハメリンプールに発達するストロマトライト
2)同じくハメリンプール・シャークベイのストロマトライト群がまるで地蔵群
3)群馬県立自然史博物館のストロマトライトの模型にロマンをかきたてられている様子の筆者
4)ストロマトライトの唄



生きた化石として現代に君臨するストロマトライト。
生物が陸に上がったのち、高等生命の餌食となりながらも、たくましく生き延びている。
そんなストロマトライトと生命の起源については、目下研究が進められている段階。
素人が論ずるのは憚られるから、詳細については上記のサイトや論文などを参考にしていただきたい。
ロマンを愛でる男性方には魅力的な存在に違いない。
しかしながら西オーストラリアでその雄姿を見届けるのは、私には難しい。
できることなら、写真にあるようなかわいいストロマトライトに神秘を準え、太古のメッセージに酔いしれたいものである。

なお、今年80歳になる私の父親は、ストロマトライトを見て、怖ろしい殺人蜂の巣が脳裏をよぎったという。
以降、当家において、この石を居間に放置することは固く禁じられている。


22×15×14mm  11.02g

2011/12/04

ティファニーストーン



ティファニーストーン
Tiffany Stone
Spor Mountain, Juab Co., Utah, USA



今となってはほとんど見かけない、黒/茶系を含まないティファニーストーン。
ベルトランダイトとして販売されていた。
鉱物を集め始めた頃、余りの美しさに衝動買い。
もう一枚売って欲しいとお願いしたが、「もうないです」と言われてしまった。
その後二度と見ることはなかった。

ラベルには、オパール・フローライト(Opal, Fluorite)とも記されている。
以前はフローライトがオパール化したもの、もしくはフローライトとオパールが化石になったもの、といわれていた。
しかし実際は、火山活動に由来する堆積物から成るカルセドニーのようである。
堆積物であるからして、その中には数え切れないほどの鉱物が含まれている。

約20億年前の火山活動により発生した、フッ素ガス(いわば気化したフローライト)と火山灰、堆積物が混ざり合い、長い時を経て化石となり、さらに珪化したのがティファニーストーン。
複雑で変化に富む模様は、たくさんの鉱物がごちゃ混ぜとなり、凝縮されたためにできたもの。
独特の紫の色合いは、フッ素ガスに由来するという。

もともとはベリリウム鉱山の副産物であったため、ベルトランダイトという鉱物を多く含んでいる。
そのため、ベルトランダイトの標本として取引されることも多い。
ベリリウム鉱山からのティファニーストーンは絶産している。
こちらは2004年、新たに愛好家が発見した鉱脈から初期に得られた標本。
この鉱脈からは当初、質の高いティファニーストーンが次々に発見され、期待が寄せられた。
しかし、質は低下する一方で、4年後には事実上絶産した。
現地には売り物にならない岩片が残るのみとのこと。
品質については以下。

・高品質 - 紫~青~ホワイトの明るい色合いが混在し、模様となっているもの
・中程度 - 上記に黒/茶系が入り、コントラストがより際立つもの
・低品質 - 紫のみなど、色数が少なく変化に乏しいもの。赤茶色、グレー、オレンジなど不純物の入ったもの
・偽物 - 他所の無関係な鉱物。オパールやフローライトなどを使っていることもあるらしい

現在入手可能なティファニーストーンには、黒または茶系の模様が入ってしまっている。
小さくカポジョンカットされ販売されているが、とんでもなく高価である。
十年以上前なら、可愛らしいノジュール仕立てのティファニーストーンが、お手ごろ価格で手に入ったんだそうだ。
高品質とされる大きな板状標本は、日本では2006年頃、海外からは少なくとも2009年頃まで手に入ったが、このところ見ていない。

いっぽう、ティファニーストーンと、オパール、フローライトは、直接は関係ないようだ。
あのティファニー一族(のご先祖様)の作品に因んで命名された石が、堆積物の成れの果て、というのはどうも違うような気がする。
わざとオパール、フローライトの名前を残したのかも。
オパールとフローライトの組み合わせには夢がある。





※ビーズに関しては全く異なる石が流通している。上記は信頼のおけるティファニーストーンの6mmブレスで、小さいながら模様がはっきり現れているのでご参考に。
オパールのイメージからか、透明感のある石が好まれているようだが、本来ティファニーストーンはジャスパーであり、透明部分はジャンクになる。また、アメジストやフローライト、パープルのオパールがティファニーストーンと混同されて流通しているので要注意。さらに、成分の近いと思われる、オパール化(珪化)したフローライトが中国から産出している。シューファストーンという紫の石で、ビーズに関しては特に疑わしい。(2012/12/18追記)


41×25×8mm  10.48g

2011/11/01

エクリプス/マスタードジャスパー


エクリプス Eclipse Stone
The Voccanic Areas, Java, Indonesia



エクリプスとは皆既日食の意味。
不思議な模様と珍しさに惹かれ購入したものの、正体がわからない。
購入元に詳細を問い合わせてから、どれくらい経つだろう。
いまだ返事がない。

2009年7月22日、日本では46年ぶりとなる皆既日食が観測された。
のりぴー夫妻が逮捕される直前、それを見るべく奄美大島に渡っていたことが話題になった。
私も危うく踊りに行くところだったので、大雨で中止になったことは今でも覚えている。
あの頃、アメリカのヒーラーの間では、このエクリプス・ストーンが話題になっていたそうだ。
日本のショップでも取り扱いがあり、現在も入手可能である。
ただ、この石に関する情報が少ないせいか、どこも同じ説明をしている。
まとめると以下のようになる。

  • 2009年7月の皆既日食のさい、海外のヒーラーの間で話題になった
  • 皆既日食にちなんで、著名なヒーラーがエクリプスと命名 
  • アメリカの鉱物誌の表紙になった
  • カボション・カットが一般的(ビーズや原石は無し) 
  • インドネシア産
  • 非常に珍しく、入手困難

2009年夏、自分はもう石の世界にはいなかった。
エクリプス・ストーンが盛り上がっていたかどうかは分からない。
現在も多くの流通があり、入手困難とは言い難く、命名したヒーラーも特定できない。
また、エクリプス・ストーンが表紙を飾ったというアメリカの雑誌というのは、どうも米・ツーソンショーで配られたフリーペーパーのようである。
つまるところ、よくわからん。

出会いは忘れた頃にやってくる。
2011年、秋の京都ミネラルショー。
石の模様に並々ならぬこだわりを発揮する連れが、ある石に反応した。
黄色にダークブラウン、産地はインドネシア。
怪しい。
模様が違うが、絶対に怪しい。
そう思って探したら、エクリプス・ストーンと全く同じ模様の石が出てきた。

ところが、店の人は、これはあくまで「マスタードジャスパー」という石だという。
初めて聞く名前。
連れは手を止めて、不思議そうな顔をしている。



マスタードジャスパー
Mustard Jasper
The Voccanic Areas, Java, Indonesia



こちらは今回参考に購入したマスタードジャスパー。
微妙である。
危険区域に立ち入るみたいな、心穏やかでない配色が特徴だ。
連れがいなかったら、確実に通り過ぎていた。
ただでさえ節約志向の連れが、気に入って2つも購入していたのが不思議でならない。

お店の人はヨーロピアンで、"Eclipse" が通じなかった。
太陽と宇宙の説明をしたらわかってもらえた。
「ああ、同じだよ」とのこと。
千歳飴の原理で、縦方向にスライスしたのがマスタードジャスパー、横方向にスライスするとエクリプス、要は切断方向が違うだけ。
閑散としたブース。
ヨコにスライスしておけば、売れただろうに。

天然のアゲート、ジャスパーの収集が盛んな欧米市場とは異なり、日本では石になんらかのご利益を付けないと苦戦を強いられる。
ちなみにマスタードジャスパーのほうは千円でおつりが来る。
まさかと思うが、注意していただきたい。

詳しいお話を伺った。
マスタード・ジャスパーは、オーピメント(雌黄)、マンガン、シリカ、火山灰などから成るジャスパーの一種。
イエローの部分がオーピメントだと思われる。
エクリプスとはよくひらめいたものだ。
マスタードジャスパーであれば買わなかった。
産地がジャワ島であろうということは予測していたのだけど、火山灰が鉱物(おそらく化石の類いか)に変わるほどの火山地帯で、それが現在まで続いているとは。
火山性オブシディアンの産出国だけあって、インドネシアの火山は半端ないようである。

インドネシアの首都、ジャカルタのあるジャワ島には多くの人々が暮らしているが、現在も広い範囲で火山活動が盛んであり、付近は大地震多発地帯として知られている。
断続的に火山の噴火が起き、被害が出ている模様。
報道を全くみないので、具体的にどういう状況なのかはわからないが、現在も予断を許さない状態のようだ。

参考:世界中の天変地異を事細かにまとめたサイト
http://macroanomaly.blogspot.com/2010/04/blog-post_18.html

もし、エクリプス・ストーンが2009年以前に採取されたもので、もう採りに行けないのだとしたら、確かに貴重だといえるが、果たして真相は。
宇宙と地球、空と大地、蔭りゆく太陽、そして天変地異。
すべてがこの石に集約されている。
どこか暗示的な存在といえるかもしれない。


28×16×6mm  21.46ct

2011/10/21

恐竜のふんの化石


恐竜のふんの化石
Coprolite
Moab, Utah, USA



米ユタ州、中世代ジュラ紀の地層から発見される、恐竜の化石。
こちらはそのウンコの化石がジャスパーと化したもの。
もちろん天然色である。
臭いは無い。
鮮やかな色彩は、かつて排泄物であったなどとは思えないほどの美しさ。

化石は、生物や植物が、長い年月を経て石にかわったもの。
コプロライトは恐竜そのものではなく、恐竜が生活していた上で発生したエレメントである。
排泄物や足跡など、生命の活動の痕跡として残されたものは、生痕化石と呼んで区別している。
生痕化石の中で最も人気があるのがコプロライトだ。

人類が誕生する前に絶滅した、幻の恐竜。
恐竜たちはいったいどんな暮らしをしていたのか。
どんなものを食べていたのか。
便秘や下痢はあったのか。
想像は膨らむ。
実際、コプロライトは、その生物の活動の実態を知る上で、非常に重要な資料となる。
専門家により分析が進められ、太古の生命の秘密が明らかになっているという。

化石はどちらかというと男性に好まれる。
少年は化石に飛びつき、少女は水晶玉に見惚れるイメージ。
ときにグロテスクな姿をした化石に、抵抗感を示す女性は比較的多い。
私自身、アンモナイトをはじめ、貝類と虫系はすべてダメ。

コプロライトはかなり気に入って、いくつか集めた。
試しにと、コプロライトを販売してみたことがある。
ネタのつもりだったが、評判はすこぶる良かった。
興味を示された方のほとんどが女性だったのも意外。。

中にはめのう化していない、まんまウンコなコプロライトも存在する。
絵に書いたようなコプロライトも存在する。
興味のある方は、お食事を終えた上で、是非とも調べていただきたい。

写真ではわかりにくいかもしれないけれど、このコプロライト、かなりでかい。
アメリカのコプロライト専門コレクター(!)から譲り受ける際、サイズを誤認した。
米ではグラムでなくポンド表記。
計算が面倒なので、いつも直感で仕入れていた。
送料がどうも高いような気はしていた。
今も実家の床の間に飾ってあるはずだ。
少し派手だが、鑑賞石として違和感はないようで、今のところ誰も気づいていない様子である。

以前知り合った宝石ディーラーの台湾人女性に、「なぜ日本人はウンコを見て喜ぶのか?」と聞かれた。
私がコプロライトを買う様子を見て、不思議に思ったらしかった。
「日本では、犬のウンコを踏むと運がつくという言い伝えがある。幸せになれるのだから、喜ぶのは当たり前です。」
そう教えてあげた。
彼女は大喜び。
「これからは、ラッキーでハッピーになれるように、積極的に犬のウンコを踏むようにするわ!」
彼女の帰国後、旦那様はさぞ迷惑したことであろう。

コプロライトならそのような心配は不要。
そろそろクリスマスのネタづくりの季節、クリスマスプレゼントにコプロライトはいかがだろう。
お安いですぜ、プープ。


98×60×48mm  473g

2011/07/09

ウッドオパール


ウッド・オパール
Opalized Wood
Lightning Ridge, Finch Co., New South Wales, Australia



木の化石がオパールになったもの。
写真では判りづらいが、一見すると木片。
オパール化した部分を拡大して撮影した。
1cmのオパールができるのに約500万年かかるとされている。
この木片がかつて木であったとき、もしかしたら、恐竜が空を飛んでいたかもしれない。

オパールのほとんどは粘土から形成される。
化石がオパール化したものは貴重であり、概ね高額で取引される。
植物だけでなく貝や虫、動物や鳥の骨、或いは鉱物など、その種類はさまざま。
中には、恐竜の骨がオパール化したとされる標本も存在するが、一般人がそう簡単に手に出来るものではない。

ライトニング・リッヂは世界でも有名なオパールの産地。
ブラックオパールの産地としても知られている。
その希少価値が年々上昇しているのはご存知かと思う。
オパールの魅力に夢中になった人々が、世界中からこの地へ訪れるという。

ブラックオパールになった化石も存在する。
もしあなたが人生に絶望したときは、ひとまずそれを探してみてほしい。
それでも死の誘惑から逃れることができなかったなら、私にプレゼントするといいかもしれない。
他人を幸せにしてからでも、遅くないと思うぞ。


23x16x11mm

2011/07/07

シャーマナイト


シャーマナイト Shamanite
Mineral County, Colorado, USA



ヒーリングストーンの世界は奥が深い。
2006年頃、アメリカから日本に紹介された、シャーマナイトというヒーリングストーンをご存知だろうか。
見た目から判断してはいけない。
これは、単なる岩ではない。
鉱物としては、ブラック・カルサイトに分類されるそうだ。
4億年前に形成され、当時の生物の化石が含まれているというから、まさに神秘そのもの。

古くから北米ネイティブアメリカンのお守りや魔よけとして珍重されてきたという。
現在では、ビーズが主流になっているようで、真偽のほどを見分けるのは困難、可能であれば原石を手に入れていただきたい。

シャーマンの名の通り、そのスピリチュアル・パワーは計り知れないとされておる!
カルマをリセットし、ネガディヴなパワーをポジティヴなパワーへ導くとともに、その変化に伴う不安を軽減し、持ち主が道を踏み外さないよう導いてくれるといわれている。
ただし、生半可な気持ちで手を出すと、ニセモノをつかむらしい。

当初は非常に高価な石だった。
ミネラルショーにおいて、アメリカのシャーマナイト専門業者がその素晴らしさを紹介していたのは記憶に新しい。
ハンドコピーのパンフレットまで付いてきた。
ただし、人気は長くは続かない。
こちらは数年後、その業者がショーで大放出していたもの。

誤解しないでいただきたい。
私はシャーマナイトが気になって仕方が無いのである。
シュンガイトにも似た底知れない魅力を持つ石だと思っている。
あまりに大切にしすぎて、バッグの中に入れっぱなしにしていただめ、常に荷物が重いことに悩まされていたほどだ。

カルサイトは硬度3、非常に脆い鉱物なのはご存知の通り。
カバンに入れっぱなしだったにも関わらず、傷一つついていないのは、何らかのコーティングがなされているのだろうが、そんなの関係ねえ。
当該のネイディヴアメリカンの部族名と、産地が公開されない?そんなの関係ねえ。

常に目の届くところに置いて、大切にしている。
そればかりか、唯一つけているブレスもシャーマナイトとレムリアンシードだったりするので、決して悪く思わないでいただきたい。


57×38×30mm  82.13g

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