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2012/09/14

ウィッチズフィンガークォーツ


ウィッチズフィンガークォーツ
Witches Finger Quartz
Kitwe, Copperbelt Province, Zambia



ルチル、マイカ(雲母)、ヘマタイトなどを含む珍しい水晶。
時に赤いヘマタイトに覆われていることもある。
本来は細長いポイント状で産出したものを指すが、こちらは塊状の原石を磨いたタンブル。
このウィッチズフィンガークォーツ、欧米ではヒーリングストーンとして安定した人気がある。
アフリカのザンビアから産出するというのも面白い。
ただ、日本での人気はいまひとつ。

ウィッチズフィンガークォーツを直訳すると、魔女の指の水晶。
魔女の指というと、鋭く伸びた爪がギラリと光る、それはそれは不気味なイメージ。
魔女、特に年老いた魔女は、必ずと言っていいほど悪役として登場する。
クリスタルヒーリングの盛んな英米では、魔女はさほど恐ろしい存在ではないようである。
世界は広い。
ある時、ドイツ人女性に「アナタは魔女?」と真顔で聞かれたことがある。
ドイツは確か、魔女狩りが最も盛んだった国。
生粋の日本人ゆえ、いまだその真意についてはわからない。

ウィッチズフィンガークォーツのポイントは、いかにも指、である。
それも、ゴツゴツした老婆の白い指を想起させる。
抵抗を覚える人も多いだろうからと、タンブルを中心に揃えた。
「魔女の指」を「魔法の指」と言い換えるなど、試行錯誤してもみた。
しかしながら現在も、私の中のレアストーンリストに残ってしまっている。

世界を放浪していた頃、たまたま東京のゲストハウスで働くことになった。
新店長の名前は「魔女」と定められた。
最終学歴は魔法学校ということになっていた。
どういういきさつだったか忘れたが、勝手にそうなっていた。
"魔女的な人" として扱われるのは今に始まったことではない(子供の頃は宇宙人だったが、成長に伴い魔女になったような気がする)。
私が知らぬ間に人々を脅えさせているのではないかと悩んだ。
或いは、どこか浮いているだろう、と。
この石を大切にしているのは、ウィッチズフィンガークォーツとの出会いがきっかけで、魔女のイメージが変わったからだ。

ウィッチズフィンガークォーツには、二面性があるといわれている。
煽るかのような強力なエネルギーを引き出す一方、持ち主に深い安らぎへと導くという。
また、波瀾万丈な運命に苦しむひとを癒し、自らの生まれ持った使命を悟らせる力もあるそうだ。
これから歩んでいく、まだ見ぬ道を照らすというこの石が、どうして怖いだろう。
そう、日本にあっても、魔女は必ずしも悪い意味とは限らないのだ。

何事も、頼りすぎはよくない。
だけど、石に少なからず関心を持つあなたなら、パワーストーンの魔法に憧れたことだって、一度はあるはず。
私も同じ。
理由はなんだっていい。
教科書に載っているパワーストーンの意味とは、少し違っていたとしても。


34×28×12mm  15.21g

2012/06/26

カイヤナイト/ガーネット/バイオタイト


カイヤナイト・ガーネット・バイオタイト
Kyanite–Garnet–Biotite
Khit Ostrov, Karelia Republic, Russia



カイヤナイトの藍色の結晶に、バイオタイト(黒雲母)、ピンクのアルマンディンガーネットのキラキラの粒がちりばめられた表情豊かな標本。
白い石英が三つの色合いを引き立てている。
宝石質のカイヤナイトとしては、ネパール産に匹敵する美しさ。
色合いはより深く、味わいがある。
ガーネットの色彩や透明感、バイトタイトの漆のような光沢、雪のように真っ白な石英など、見どころが満載となっている。
話題のシュンガイトと同じ、カレリア共和国からの産出とのこと。

カイヤナイトと共生して発見される鉱物といえばルビー。
タンザニア産のルビー・イン・カイヤナイトは、これまでパワーストーンの定番商品だったルビー・イン・ゾイサイドを圧倒する人気ぶり。
カイヤナイトの深い青とルビーの赤い輝きの美しさは驚きに満ちていた。
ロシアからのカイヤナイト・ガーネット・バイオタイトはそれにまさる素晴らしさ。
鉱物標本として、またヒーリングストーンとしても密かな人気があるようだ。
新しく発見された鉱物というわけではなく、以前から流通はあり、むしろ減ってきているようである。
価格としてはブラジル産の水色のカイヤナイトと変わらない。
もっと注目されてもよさそうな気がする。

見どころはやはり、深い藍色の煌きを持つシャープなカイヤナイトの結晶。
透明感、ガラス光沢などの見られるノンダメージの二つの結晶が、バイオタイトと石英をまっすぐに貫いているのがわかる。
ロシアのカイヤナイトは神々しい。




70×27×18mm  45.78g

2011/11/15

幻のアイオライト


幻のアイオライト
Hematite & Pinite in Cordierite
Akland, Aust-Agder, Norway



長い間正体のわからなかった石。
アイオライト×サンストーン×フェルドスパーの名前で売られていた。
オレンジ、レッド、パープル、ブルーグリーンの鮮やかな色合いが混在し、ヘマタイトのインクルージョンがキラキラ輝くさまは、スペイシー&サイケデリック。
同じ頃に登場した、ヘマタイトのインクルージョンを含む "アイオライトサンストーン" のほうはパワーストーンとして認知されるに至ったが、こちらのほうは消えてしまった。

産地はノルウェー。
高速道路の工事中に発見され、その完成とともに姿を消した幻の石。
アイオライト、サンストーン、フェルドスパーの3つの鉱物から成り、3つの鉱物の相乗効果で、サードアイとクラウンチャクラを活性化させ、シャーマニックな感性を刺激する。
どこかで聞いたことのある謳い文句である。

フェルドスパーとは長石のこと。
サンストーンは、大雑把にいうと、長石に含まれた微細なヘマタイトが光の反射を受けて輝く(アベンチュレッセンス)ものをいう。
しかしこの石の場合、アイオライトに含まれたヘマタイトのアベンチュレッセンス。
主役はフェルドスパーではなく、アイオライトではないか。
素人ゆえ、それ以上の追求は避けた。

このさい、折角の機会なので調べてみた。
もしかすると正体はコレ?
http://www.mindat.org/photo-264888.html

文中ではコーディアライト(アイオライトの鉱物学名)の一種として紹介されている。
ノルウェーからは美しいコーディアライトが産出する。
2002年、道路工事の際に、コーディアライトの変種とみられる鉱脈が何箇所か発見された。
その中にレッド、バイオレットブルー、グリーンの組み合わせを持つ岩石があり、研磨品となって流通した、とある。

この石の正体についてまとめると、ベースはアイオライト・サンストーン。
グリーンの部分はピナイト(Pinite/ピニ雲母)。
ピナイトのインクルージョンによる淡いシラーが、この石の輝きをよりいっそう引き立てていると考えられる。

ピナイトとは、アイオライトの仮晶にあたる鉱物。
アイオライトはしばしばピナイトに変化する。
聞きなれない名前だが、実は国産鉱物にその姿を見ることが出来る。
京都府から産出する桜石がまさにそれ。
桜石とは、京都府亀岡市(及び京都府南部など)の岩石中に生じる青緑色の結晶で、「菫青石(アイオライト)仮晶」として天然記念物に指定されている。
母岩から分離したものを千歳飴のようにスライスすると、石に咲いた桜の花のように見えるため、当地の郷土品として古くから知られている。
お世話になっている鉱物店のオーナーと昨日お話していて、桜石が話題となり、それがアイオライトに属することを知ったばかり。
私はあの石がどうしてもダメなのだ。
京都=桜とかマジ勘弁して欲しい。

「京都っぽさ」を求めて全国から人々が集まる。
住んでいる人間にまでそのイメージを当てはめようとする人たちがいる。
舞妓さん芸妓さん神社仏閣紅葉花見侘寂陰陽師殺人事件アカデミックアングラアヴァンギャルド一見さんお断り…
京都出身の自分には、違和感がある。
実は鉱物の聖地としても知られる京都。
お守りに桜石を持ち歩いている京都の人間を私は見たことが無い。

絶対に触れてなるものかと、心に決めていた。
おそらくもう手元にあって、私はそれをずっと大切にしていた。
他に見かける機会はなく、この石の正体がはっきりわかったわけではないが、遠くノルウェーから届いたこのアイオライトは、桜石の親戚にあたる鉱物だと考えられる。
灯台もと暗しとは、こういうことを言うのかもしれない。


40×36×22mm  37.01g

2011/10/04

チンカルコナイト


チンカルコナイト
Tincalconite after Borax
Boron Open Pit, Boron, Kern County, California, USA



チンカルコナイト(チンカルコ石)。
その名のとおり、珍石である。
もし持っておられるなら、余程のレアミネラル収集家か、ネタとして購入した方ではないだろうか。

チンカルコナイトは、透明なボラックス(硼砂)という鉱物が、空気に晒されることによってできる。
専ら工業用、産業用に用いられる。
その用途は多彩で、過去には放射能漏れ事故のさいの応急処置に活躍したこともあるそうだ。

標本としてはほとんど出回っていない。
地味な上に、取り扱いが難しいからだ。
うっかり水で浄化しようものなら、溶けて無くなるらしい。
乾燥が過ぎると崩れて粉末になる。
加えて、もろく破損しやすい。
非常に軽く、風に吹かれてどこかへいってしまうこともあるという。

同じタイプの名前の石に、チンワルド雲母がある。
こちらも雲母だけあって、取り扱いが難しく、撮影中にヒビが入ってしまった。
とてもデリケートな鉱物たちなのである。

ちなみに、チンワルド雲母の名の由来は、ツィンヴァルト・ゲオルゲンフェルトというドイツの街。
ツィンヴァルト・ゲオルゲンフェルト雲母と呼んだほうがかっこいいような気がする。



ツィンヴァルト・ゲオルゲンフェルト雲母

25×13×6mm

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?