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2013/04/07

ウッシンジャイト/ツグツパイト


ウッシンジャイト Ussingite
Ilimaussaq complex, Narsaq, Kitaa Province, Greenland



ウッシンジャイト(アッセンガイト/ウッシンガイト/ウッシャンジャイト/ウッシング石/ウシン石)。
グリーンランドを代表する、名前に統一感の感じられない希少石である。

同様の印象を受ける石に、ツグツパイト(タグタパイト/タグツパイト/トゥグツパイト/ツグツープ石/ベリリウム方ソーダ石/トナカイ石など)が挙げられる。
両者はいずれもソーダライトの仲間で、グリーンランド、ロシアのコラ半島、カナダのモンサンチレールの3ヶ所から僅かに発見されている。
当初、私のこよなく愛するウッシンジャイトをメインに記す予定だったが、興味深いことがわかってきた。
ここでは現地から産する蛍光レアストーンについてまとめてみたい。

私とウッシンジャイトとの出会いは、米H&E社の研磨品。
独特のミルキーピンクにダークブラウンのエジリンが混在するさまは、まるで絵画のように美しかった。
決して安くはなかったのにリピートしてしまうこと数回。
手持ちのウッシンジャイトはというと、これまでH&E社製品に独特の三角形の研磨品だけ。
他所ではまったく見かけなかったのだ。
先日、思いがけずウッシンジャイトの原石が格安で出ているのを見かけた。
勢い余ってをようやっと手に入れたのが冒頭の写真の石。
瑞々しい桜色とカルセドニーのようなデリケートな質感に、春の訪れを感じる。
まるで桜餅のよう。

H&E社のウッシンジャイト、現在は産地がグリーンランドからロシアへ変更になっている。
質の低下は著しい。
ヒーリングストーンとして製品化されることもある石だが、ピンと来なかった方もいらっしゃるかもしれない。
ウッシンジャイトは世界的に稀産であり、美しい原石を大量に製品化するのには無理がある。

さて、改めて調べてみたところ、ウッシンジャイトはブラックライトで蛍光するとあった。
初耳だった。
ただ、グリーンランド産はグリーン、ロシア産はオレンジと、産地によって異なる色合いに発光するという。
全く蛍光しないこともあるらしい。
同じ鉱物に異なる特性が認められるというのは奇妙である。
ソーダライトの仲間だというのもまた、アヤシイ(参考3を参照のこと)。
ならばと早速、手持ちのブラックライトを引っ張り出して撮影したのが、本文下の写真。

不可解なことになった。
グリーンでもオレンジでも無蛍光でもない。
一部のみ、ピンク色に光っているのである。
部屋の明かりをつけて思った。
もしやコレ、蛍光性の無いウッシンジャイトにツグツパイトが共生しているのでは?
というのもこの標本、しばらく経っても一部が淡いローズピンクに蛍光したままなのだ。
照明をつけたのちも、暗所における蛍光時のピンクの色合いが依然として残るという特異な性質が、希少石ツグツパイトが愛されてやまない理由のひとつではなかったか。

実はウッシンジャイトとツグツパイトの産地は全く同じである。
ウッシンジャイトに共生する、ツグツパイトだけが蛍光したのだとしたら、実に興味深いではないか。
蛇足ながら現地からは、ヌーマイトやアルベゾン閃石、そしてソーダライトやハックマナイトも産出する。
これらの鉱物が共生して発見されることも珍しくないという。
まさに豪華絢爛、希少な蛍光鉱物の謎に迫る格好のチャンス到来である。

参考1)蛍光するウッシンジャイト(Ussingite)とツグツパイト(Tugtupite)の様子
http://www.minershop.com/html/ussingite_mindata.html


ソーダライトにまつわる蛍光鉱物についてまとめると以下のようになる。

(1)ウッシンジャイトグリーンまたはオレンジに蛍光する
(2)オレンジに蛍光するのはソーダライトである
(3)ソーダライトハックマナイトオレンジアフガナイトピンクスキャポライトイエローに蛍光する。
(4)ウッシンジャイトが必ずしも蛍光するとは限らない
(5)ウッシンジャイトツグツパイトと共生することがある
(6)ツグツパイトローズピンクに蛍光する
(7)産地は蛍光鉱物の宝庫である(グリーンランドはウランの産地としても知られている)

参考2)参考サイト(英語)
http://www.minershop.com/html/pg_4.html

参考3)ソーダライトの仲間たち(過去記事より)

以上から、この標本は、希少石ウッシンジャイトとツグツパイトの共生した、豪華レアストーンの可能性がある。
先月ヌーマイトとアルベゾン閃石の謎に迫ることができたのは幸運であった。
おかげでグリーンランド独特の産状が見えてきた。

蛍光ソーダライトの謎が未だ解明されていないのは事実のよう。
誰もが混乱を起こしている。
ソーダライトがその鍵を握っているのは明らか。
グリーンランドにはその手がかりであるソーダライトと、その仲間たちが眠っている。




ご縁あって手に取ったグリーンランドの鉱物たち。
写真左、右の石は、ツグツパイトに共生したウッッシンジャイト。
奥はソーダライトに共生したウッシンジャイトとみられる。
左はなんと、ハックマナイトと共生したウッシンジャイト。

写真右は非常にやっかいな例。
どちらもツグツパイトに見えるが、右側はおそらくハックマナイト。
蛍光したさいの色合いから判断した。
一見するとわからないため、誤ってツグツパイトとして流出した模様。
以上、資料提供にご協力いただいたT様に心から感謝申し上げる。

本文下の写真は、冒頭の写真にある標本の蛍光写真。
考察に従うと、わずかに見えるピンクの発光部分はツグツパイトとなろう。
このウッシンジャイト/ツグツパイトやヌーマイト/アルベゾン閃石の他にも、現地から産出する稀産鉱物は数知れない。
カコートカイト、グリーンランダイトなど、珍しいだけでなく純粋に美しいと感じさせる素晴らしい鉱物が産出している。

希少石ながらニューエイジストーンとして根強い人気のあるウッシンジャイト。
光沢のある、混ざりけのない色濃いピンクの石を見かけられたら、ぜひ手にしていただきたい。
美しさのみならず、なんと超能力の開発やテレパシーの強化に関与するというから驚きだ。
ただし、使いみちを誤ると取り返しのつかないことになるという。
或いは持つ人に主体性をもたらし、絶望を希望に変え、実りある人生へ導くということであった。




40×33×15mm  16.81g

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