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2012/01/17

エイラットストーン


エイラットストーン
Eilat Stone
Eilat, Be'er Sheva, Israel



石は、霊的交流のしるしである。このような神の石、行動を表す石、示現や信仰の場所の部類は、容易に偶像崇拝の対象になっていた。そこで、モーセの命令でこれらは破壊されねばならなかった。( Lev. 26,1 ; Num. 33,52 )

イスラエルの青い涙、エイラットストーン。
ソロモン王が愛した石として、キングソロモンストーンとも呼ばれている。
銅の二次鉱物から成る混合鉱物で、クリソコラ、ターコイズ、マラカイト、テノライトなどから成り、アースカラー(ブルーグリーンの色合い)が強いほど高品質とされる。
イスラエルのナショナルストーン(注2)としてご存知の方も多いかもしれない。
紀元前から神聖視され、旧約聖書にも登場する歴史ある石である。

著名なクリスタルヒーラー、メロディ氏やジュディ・ホール氏が著書で取り上げたため、英米で盛り上がり、その後日本にも飛び火した。
ヒーラーには欠かせない石、超能力をもたらし、あらゆる問題を解決する奇跡の石として、高い人気がある。
ただし、イスラエル政府が輸出を制限しているため、入手は極めて困難。
そのため、コンゴやメキシコのクリソコーラ、マラカイトやターコイズなど外観の似た天然石をエイラットストーンと紹介していることが多い(注1:本文下に詳細及び参考写真を掲載)。
エイラットの土地の名を冠した由緒ある石だから、産地は問わないものとする売り方には違和感を覚える。

私がこのエイラットストーンを知ったのはいつだったか。
日本での流通はまだ無かった。
しかしながら日本からのオファーがイスラエルに殺到し、価格は跳ね上がり、ユダヤの民が富を得るのはもはや時間の問題と思われた。
写真のエイラットストーンは、先手を打って(?)現地の骨董商に連絡をとり、入手したもの。
イスラエルの民芸品として、エイラットストーンを入手しておきたいと思った。
使いみちがわからないのでお守りにしている。

写真のイスラエルからの民芸品と、欧米のヒーラーの間で数年前から流れているグレーの入った研磨品(注1)、恩師でもある鉱物店の社長さんがイスラエルの鉱山まで視察に行かれ、仕入れたという原石。
以上の3種類が、私の手持ちのエイラットストーンである。
この中で最も信頼性のあるのは、社長から直接譲っていただいた原石だが、衝撃的に地味だった。
「粉砕した白のチョーク10グラムに、ターコイズ粉末をひとつまみ入れてよくかき混ぜ、天日干しで固めた」ような感じ。
店頭に並ぶ箱詰めの段階でそれを知り、ひたすら選ばせてもらったにも関わらず、いわゆるアースカラーの石はひとつもなかった。
社長の話では、鉱山にはかすかに青緑をおびた岩と、その欠片が残るのみであったという。
樹脂加工しても色味が改善されるかどうかは微妙。
つまり、事実上絶産している。
消滅の危機に瀕しているナショナルストーンに、政府が規制をかけるのは当然のこと。

それから数年が経つにも関わらず、エイラットストーンが今なお絶賛販売中なのは如何なる現象か。
イスラエル産ではない旨、明記しているところもある。
しかし「イスラエルの鉱山で採掘を行う関係者から入手したもの」と明記している販売店を、かなりの頻度で見かける。
イスラエルに、積極的に国外へ輸出している奴らがおる…

参考:エイラットストーンの輸出販売
http://www.stoneageminerals.com/

真偽については触れないが、私はこの業者から仕入れる気にはなれぬ。
なぜなら「その他」の品揃えがヤバすぎる。

ユダヤの民はビジネスに熱心、かつぬかりない。
政府に目をつけられるようなことは裏でやる。
どうしても本物の、美しいエイラットストーンを手に入れたいなら、直接イスラエルまで行くことだ。
難しいなら、ブラックマーケットを通す覚悟で臨まれるべき。
そのような行為に、奇跡がもたらされるかどうかは抜きにして。

もうずいぶん前、イスラエル人コミュニティで過ごし、その質素な生活に驚かされた。
彼らの厳しさ、結束の固さ、そして残酷さも感じた。
アジアを旅しているラエリは平和的な人が多いけど、現実を生きている人にそれが当てはまるとは限らない。
私はこれからも、行方不明になったリオを探し続けるのだろう。

このエイラットストーンはおそらく本物では。かなり早い段階でお持ちだった様子。
はて、「イスラエルの青い涙」とは。





注1)写真左はコンゴ産のクリソコラ、マラカイト、テノライトの混合石。チーターストーンと呼ばれ、グリーンも存在するとのこと。写真右は、現在も入手可能な「エイラットストーン」。似た色合いの石はメキシコをはじめ、アフガニスタンや中国、台湾などからも産出する。

注2)イスラエルは誕生石の起源となる重要な土地でもあるが、Wikipediaの国家の石一覧にエイラットストーンの掲載は無い。またロシアはアレキサンドライト、中国はアンデシンのほうが有名。すべて絶産した模様。


30×5mm  3.81g

2011/09/04

ハウライト/マグネサイト


ハウライト Howlite
マグネサイト Magnesite
Zimbabwe



ハウライト(ハウ石)。
純粋・崇高・目覚めを象徴するといわれている。
発見者であるカナダの鉱物学者、ヘンリー・ハウ(ヘンリー・カウと一字違いですネ)に因んで命名された。
誰もが知っている、ありふれたパワーストーン。
トルコ石やラピスラズリの偽物として知られる、やっかいで紛らわしい石。

常識は、時に覆される。
もし、実際にハウライトを持っておられるなら、大いに自慢していただきたい。
なぜなら、本物のハウライトは現段階で、容易には入手できない貴重品だからである。
数万する標本も珍しくない。
いったいどういうことか。

実は、ハウライトとして現在流通しているのは、マグネサイト。
見た目はそっくりだが全く違う鉱物である。
どちらも染色が容易く、加工しやすい。
イミテーションの代表格としてきらわれるハウライト・トルコも、マグネサイトを染色したもので、ハウライトやトルコ石とは無関係。
戦後、ハウライトを染色加工した模造品が "亜トルコ石" として流通した名残りなんだそうだ。
ハウライトが次第に入手困難になってきたため、その代用として、安価なマグネサイトが使用されるようになった。

これまでハウライトとされていたビーズやアクセサリーまでもが、イミテーションだったのである。
「真犯人は違うところに隠れていたのね!してやられたわ!」
少しニヤニヤしてしまう衝撃の展開。

先日、大先輩でもあるショップのオーナーさんから、ハウライトを購入した。
この件についてはご存じなかったとのこと、驚きのご様子だった。
さっそく受け取ったのが写真のお品。
つるつるの綺麗なタンブル。
産地はジンバブエ。
ジンバブエからハウライトが出るかどうかを調べていくうちに、ジンバブエ産のマグネサイトにたどりついてしまった。
素人判断で申し訳ないのだが、他の情報と比較・検討した結果、マグネサイトで間違いなさそう。

参考)ハウライトとの混同、類似についての指摘
http://www.purestone.com/index.php?main_page=product_info&products_id=3367

本物のハウライトを確実に手に入れるのであれば、原産地であるアメリカ・カリフォルニア産を探すしかなさそう(→現物と記事はこちら)。
ただしかなり大きく、高価。
今後、加工品も出回るようになるかもしれないので、少し待ってみるのもいいかもしれない。
アメリカ以外にも、カナダから上記のような結晶体として発見される。
カナダ産はダークブラウンの小さな結晶体で、私たちが見慣れたハウライトとは似ても似つかない。

※他にメキシコ、ロシア、トルコなどからも産出がある様子。また、マグネサイトとハウライトが共生して発見されるケースがあるとのこと。(以上、オーナー談)

模造品の問題は深刻だった。
ターコイズ、ラピスラズリのほか、スギライトなどの高価な石が、入荷後に偽物だと判明し、騒ぎが相次いだ。
業者のほうがむしろ大変で、卸元に返品できず在庫を抱えてしまったり、買っていったお客さんに無償で返金を申し出るなど、後始末に追われた。
それが元々なんの石であったかなど、気に留めている余裕すらなかったのかもしれない。
実際に鑑定でハウライトが出たケースは稀だったはず。

オーナーには申し訳ないことをしてしまった。
半ば営業妨害、お世話になった大先輩に対して、やってはいけないことだった。
にも拘らず、オーナーは、私の疑問に対し、さまざまな角度からご見解を示してくださった。
また、ハウライトとマグネサイトの見分け方に関する素晴らしい情報も頂戴している。
さまざまな方のご意見を参照しながら、今後も考察を続けて行きたい。

写真右は、オーナーから譲っていただいた、アメリカ産ターコイズ。
ハウライトは、ホワイト・ターコイズと呼ばれることがある。
これは、現地の先住民に珍重された、滅多に見つかることのない白いターコイズ、つまりハウライトを指しているのだと、どこかで聞いた。
仲良く並ぶこれらの石に、何の罪があろうか。

ビーズなどの販売にあたって、ハウライト=マグネサイトであると明記するショップが増えている。
知名度の都合上、致し方ないのかもしれないが、 "別名マグネサイト" という表記はいかがなものか。
ハウライト/ハウ石 Ca2B5SiO9(OH)5 はケイ酸塩鉱物にして、だいたいカルシウム。
マグネサイト/菱苦土石 MgCO3 のほうは炭酸塩鉱物にして、だいたいマグネシウム。
パワーストーンブーム初期の段階で、既にハウライトは出回っていなかったようなので、見分けがつかないというより、誰もホンモノを見ていないのでわからないということ?


28×20×13mm 10.85g


ご協力いただいた鉱物店オーナー、B様に心より感謝申し上げます。
情報提供有難うございました。

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?