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2013/03/20

スペクトロライトキャッツアイ/スキャポライトキャッツアイ


スペクトロライトキャッツアイ
Cat’s Eye Spectorolite
from India



先日、不思議なものを見かけた。
スペクトロライトキャッツアイなる石があるという。
ラブラドライトの輝きをより強めたかのようなスペクトロライト(→記事)は、れっきとしたレアストーン。
まるで別物だ。
スペクトロライトほど高くなかったのは不可解である。
スキャポライトという文字が頭をよぎる。
スペクトロライトとして販売されていた写真の石、スキャポライトキャッツアイにそっくりなのだ。

産地は不明、加工はインドということだった。
スペクトロライトとスキャポライトはつづりが似ている。
インド人が読み違えたという推測が可能だ。
タンザニアやスリランカからは、赤味を帯びたスキャポライトが発見されているという。
写真の石とそっくりで見分けが付かない。
スキャポライトキャッツアイが誤ってスペクトロライトキャッツアイとなって流通しているということかもしれない。

しかしながら、スペクトロライトには知名度がない。
いっぽう、スキャポライトはインドからも大量に産出する。
インド人が読み違えるのは奇妙である。
そう思って引き続き調べてみた。
スペクトロライトの和名は曹灰長石、つまり長石の一種。
キャッツアイを示す長石をあたったところ、とんでもないものを見つけた。

参考)スペクトロライトキャッツアイ
http://www.a-original.co.jp/gem/gem/spectrolite/1091.htm

上記リンクでは鑑別書にフェルスパー(長石)の文字が見える。
鑑別はなんと、中央宝研。
日本で最も信頼のおける鑑定機関だから間違えるはずがない。
もっぱらパワーストーンの鑑別を行っている、例のアヤシゲな機関とは格が違う。
スペクトロライトかどうかまではわからないが、長石グループのいずれかにあたるブロンズカラーのキャッツアイが存在する。
スキャポライト(柱石)とは異なる鉱物ということになる。
写真の石も、まさかのスペクトロライトキャッツアイ?

参考)※英語サイト
http://www.dandennis.com/scapolite.htm

上記サイトでは、ラブラドライト(スペクトロライト)とスキャポライトは同じ場所から産出することがあり、しばしばスキャポライトと間違えられて流通する、と述べられている。
と、いうことは…
あっている。
それだけではない。
スキャポライトキャッツアイとして流通している石の中に、写真と同じ石、つまりスペクトロライトキャッツアイが混在している?


4.21ct

2013/02/15

マリアライト


マリアライト
Scapolite var. Marialite
Santa Maria do Jetibá, Espirito Santo, Brazil



以前ある方から、衝撃のリクエストをいただいた。
石はマリアライト、色はパープル、予算は千円だという。
聞いたことはある。
確か、中国・内モンゴルで外国人調査団によって紫のマリアライトが発見された。
持ち帰ったものの、珍しすぎて値段が付かなかったという話。

マリアライトといえば有名なレアストーン。
極めて特殊な条件を揃えたスキャポライト(柱石)で、滅多に発見されない希少石と聞いている。
写真は純粋なマリアライトの結晶で、透明感のあるインペリアルカラーを示している。
これでもかなりの額だ。
紫のマリアライトなど、世界中の収集家の憧れである。
日本に入ってきたことがあるとしたら、ほんの数回程度だろう。
ヒーリングストーンを中心にコレクションされている彼女が、どうしてそんな通好みな石をご所望なのかと不思議に思った。
そんなものが千円で手に入るという噂を流した人間がいるのだとしたら、えちごやのたくらみが疑われる。

調べてみたら、大変なことになっていた。
紫のマリアライトが大量に流通しているのである。
なんと、ビーズにまでなっている。
製品化されるほどに相当量の放出があったとは聞いていない。
マリアライトの名を語るアメジストやガーネットのように見えたりもする。
それにしても安い。
驚くべき解説まで添えられているではないか。

「透明感のあるバイオレット・カラーのマリアライトは、
聖母マリア様のエネルギーに繋がる石とされヒーラーからの人気が高いパワーストーンでございます。」

ええっ?
確かこれ、昔ネタとして流行しなかったか?
紫のスキャポライト=マリアライトではないし、マリアライトと聖母マリア様は無関係(詳細は以下)。
あたかも「紫のスキャポライトをマリアライトと呼ぶ」と誤解を与えるような解説文がコピペされ、広まっている。
マリアライト。
確かにいい名だ。
憧れる気持ちはわかる。
何年か前に自分もタンザニアのパープルスキャポライトを手に入れた。
もしかするとマリアライトかもしれない、とワクワクしながら調べたのを覚えている。
しかしタンザニアのパープルはどちらかというとメイオナイトらしい。
その一件以来、忘れていた。
いつの間にそんなことになっていたのだろう。
詳しいことは他の資料を参照していただくとして、ここでは大雑把にまとめる。


マリアライト(曹柱石)

  • スキャポライトのうち、ナトリウム(塩分)を多く含むものをマリアライト、カルシウム豊富なものをメイオナイト(灰柱石)と呼んでいる。
  • 色は一般的に白や灰色、クリーム色、無色透明など。稀に宝石質のゴールドやピンク、パープルが産出し、高額で取引される。
  • 通常はマリアライトとメイオナイトが混在した状態(固溶体)で発見される。両者の分類は困難で、表記はスキャポライトとするのが一般的である。
  • 紫外線照射で青、オレンジなどに色変化を起こす。
  • マリアライトの名の由来は聖母マリア様ではなく、発見者の奥さんの名前(クリスタルヒーラーではない)である。
  • マリアライト・ヒーリングとは関係ない。
  • 日本では紫のスキャポライト=マリアライトとして定着、マリアさまの愛に満ちた紫のクリスタルとして大量に流通している。デマなので注意してほしい。ネタには最適だが、パワーストーンの意味欄にはしばしば誤解や矛盾が見受けられる。
  • パープルカラーでないスキャポライトがマリアライトであるとは限らない。
  • マリアライト人気に反し、メイオナイトの意味については誰も言及していない。

アフガニスタンのパープル・スキャポライト(→写真)。
マリアライトかどうかは鑑定していないとのことだった。
詳細は下記、参考1より。
現在マリアライトとして流通している石の多くは、これと同じものか、他の安価な代用品を用いて作られたビーズではないかと思われる。


参考1)中央宝石研究所「テネブレッセント スカポライトについて」
http://www.cgl.co.jp/latest_jewel/gemmy/141/02.html

その方には、パープルのマリアライトを千円で入手するのは不可能であることをお伝えした。
そんなはずはないとおっしゃる。
私をえちごやと誤解されたのだろうか、連絡は途絶えてしまった。
マリアライトからマリア様のエネルギーを感じられていたのだとしたら、納得がいかないのであるが…

紫のスキャポライトといえばアフガニスタン産。
国内で多く流通している「マリアライト」はアフガニスタンのバダクシャンから産出したスキャポライト(→写真)で、ビーズにもなって登場している。
アフガニスタン産については、マリアライトとメイオナイトが混在していて、どちらともいえないらしい。
また、タンザニア産のパープルスキャポライトも同様とのこと。
いずれもスキャポライトとの表記が一般的で、マリアライトとメイオナイトを分けているケースは海外においては稀であった。
紫のマリアライトが千円で販売されていたとしたら、お店の人に実際の鉱物名を聞いてみよう。
もしかするとアメジストの類いかもしれない。

海外でもマリアライトはヒーリングストーンとして流通している。
色はくすんだ黄色、聖母マリア様との関連性についても触れられていない。
パープルの美しいマリアライトがお手頃価格で手に入るのは、どうも日本だけのようだ。


なお、無色やイエローのスキャポライトに放射線処理を施すと、見事なパープルに色変化を起こすらしい。
そして時が経つにつれて黒ずみ、濁った色合いへと変わっていくということである。


36×8×5mm 2.14g

2012/05/26

ハックマナイト(結晶化)


ハックマナイト Hackmanite
Sar-e-Sang, Koksha Valley, Badakhshan Province, Afghanistan



アメジスト?
フローライト?
いいえ、うさこふさんです。
春のミネラルショーで見つけて、何の石か訊ねようと店主を探していると、どこからか私の名を呼ぶ声がした。
いつも興味深い鉱物を届けてくださる馴染みの業者さんだった。
覚えていてくださって、うれしい。
しかし、いつもながら難解なものを届けてくださる。

一見しただけではわからなかった。
優しいラベンダーカラーと絹状光沢、結晶形から、フローライトやレピドライトを連想した。
価格は1,000円。
いつもながらの良心価格。
ハックマナイト、とのことだった。
紫の透明石は初めて見る。
よくハックマナイトとわかったものだ。
ブラックライトでオレンジに蛍光するさまは、まさにハックマナイトのそれ(本文下に写真を掲載、共生の青紫は不明
)。

結晶し、さらに侵食を受けた姿が興味深い、宝石質のこの標本は、ラピスラズリが採取されることで有名なアフガニスタン某所(※注1)からやってきた。
過去にソーダライトの考察において、ハックマナイトとラピスラズリとの混同が見受けられるとした(→ソーダライト/ハックマナイト及びアフガナイトに記)。
現在もこの件については意見がわかれる模様。
宝石として流通しているアフガンからのハックマナイトの多くはブルーの透明石。
ソーダライトと呼ぶほうが自然なのでは。
ハックマナイトはソーダライトの変種にあたる。

※注1)この標本の産地について、鉱山までは確認できていない。有名な産地は以下:Lajur Madan; Lapis-lazuli Mine, Sar-e-Sang District, Koksha Valley, Badakhshan Province, Afghanistan.


参考:さまざまな産地のハックマナイト
http://www.cgl.co.jp/latest_jewel/gemmy/135/02.html

ここではハックマナイトを産地別に分け、産地に拠って異なる特徴を示す原因について報告されている。
ミャンマー・パキスタン・アフガニスタン・ロシア・カナダ・グリーンランドからそれぞれ採取されたサンプルを用いている。
私がセットと思い込んでいたミャンマー産とアフガニスタン産だが、それらが異なるグループに属するという部分は非常に興味深い。
またパキスタンからは、どのハックマナイトとも違う特徴を示す石が出ているらしい。

さて、パキスタンのハックマナイトを探す旅が始まった。
しかしながら、アフガニスタン産のスキャポライト(マリアライトに分類されることが多い模様)にたどりついてしまった。
紫の色といい、質感といい、そっくりである。
カットしてしまうと全く見分けがつかない。
表記の産地は同じ(注1)。
無色透明~アクアブルー、濃紫色に至るまで、さまざまな色合いの結晶が出ているようだ。
いずれも蛍光し、イエローまたはブルー、レッド、ピンクなど、テネブレッセンスの色は石によって異なっている。
興味深いのは、ラピスラズリやアフガナイト同様、ピンクに蛍光する場合があるということ(→アフガナイト参照。アフガナイトはレッド~ピンク、ソーダライトやハックマナイトはオレンジ~レッドに蛍光するようだが、それらは持ち主によって異なるとみられる)。
同じ産地の同じ鉱物であっても、石によってテネブレッセンスの色合いが異なる、という現象は起こり得るのだろうか。
成分が著しく異なるのでないなら、違和感を感じずにいられぬ。
そんな素人がここにいる。

まとめよう。
同地からは無色透明~アクアブルー~濃紫色を示す蛍光鉱物が多数発見されている。
つまり、アフガニスタンのラピスラズリ鉱山からは、アフガナイト、ソーダライト、ハックマナイト、スキャポライト(マリアライト)、またダイオプサイドが産出し、しばしば混同されている?

蛍光鉱物について研究されている方に詳しく伺いたい。
何処におられるだろうか。
なお、異例の特徴を示すとされるパキスタン産ハックマナイトについては、入手できる可能性は極めて低い(Balochistanから産した例が一件のみ。以下ソース省略)。
またパキスタンに隣接する中国某所から、紫のスキャポライトが産出、産地を偽って市場に流れているということであった。




30×22×19mm  9.35g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?