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2012/05/08

ブルークンツァイト


ブルー クンツァイト
Spodumene var. Blue Kunzite
Paprok, Kamdesh, Nuristan Province, Afghanistan



クンツ博士が最初に発見したカリフォルニア・アイリスを覚えておられる方はおられるだろうか。
もともとクンツァイトは、クンツ博士が副顧問を務めた米・ティファニー社から世界に紹介された鉱物。
パワーストーンとして絶大な人気を誇るこのライラックピンクの宝石は、将来を約束された輝ける存在だった。
残念ながら、良質のクンツァイトの産出は減るいっぽう。
多くは放射線処理を施され、お馴染みのライラックピンクの色合いに改良されているという。
産出の激減に伴い、その出処はカリフォルニアからブラジル、ブラジルからアフガニスタンへと移行している。

より見事な研磨品を、心ある方からお譲りいただいた。
感謝の気持ちを込め、新しくわかったことなども含めて、改めて紹介させていただこうと思う。
この石を譲ってくださったパキスタン人ディーラーには大変お世話になった。
彼らの置かれている状況を考慮し、ご迷惑にならぬよう心掛けたい。

まずは前回記したクンツァイトの概要から。
鉱物としてはスポデューメン(リチア輝石)の一種になる。
名称は色合いにより異なっている。
発見年代順に並べると以下のようになる。

スポデューメン Spodumen ー 無色または白 1800年/スウェーデン
トリフェーン Triphane ー イエロー 1877年/ブラジル
ヒデナイト Hiddenite ー グリーン 1879年/ノースカロライナ州
クンツァイト Kunzite ー ピンク~バイオレット 1902年/カリフォルニア州

ブルークンツァイトが登場したのはごく最近。
それまではヒデナイトとして扱われていたようで、正式な名前はなかった。
いつどこで誰が目をつけたのかわからないが、2009年頃からブルークンツァイトの名で頻繁に見かけるようになった。
本来ならブルー・スポデューメンと呼ぶべきところ。
その呼び名について問題視する声はあったが、新しい呼称が確定することなく、ブルークンツァイトの名で定着している。
確かに、新しく名前がつくとややこしい。
上記のように、クンツァイトの発見は1902年と最も新しい。
しかし、知名度、人気ともにずば抜けて高い。
ブレスなどの販売にあたっては、誰もがわかるようクンツァイトの呼称を用いる。
スポデューメンはホワイト・クンツァイト、トリフェーンはイエロー・クンツァイトといった具合に、クンツァイトの変種として扱われているのが現状。
宝石の場合は正式な名称での販売が一般的だが、いずれ何らかの動きはあるかも。

流通名を、最も親しまれているクンツァイトで統一したのは、賢明な判断であったかもしれない。
以前も記したが、この石には多色性という性質がある。
同じ石でも角度によって色が変わって見えることがあり、その色変化の幅が大きい場合は混乱の原因となる(例:バイカラークンツァイト)。
クンツァイトの名をピンク・スポデューメンに変更するのは事実上不可能。

ここ数年、よく見かけるようになった青いスポデューメン。
当初はルース/カット石として、ごくたまに見かける程度だった。
鉱物に再び関わるようになって、ブルークンツァイトが以前よりもずっと身近なものとなっていることを知る。
池袋ショーでは、巨大な水色の結晶を、自慢げに披露してくださるベテラン収集家の男性も。
もはやヒデナイトではなくなった。
ブルークンツァイトは業界を超えて注目され、高い評価を得ている。
以前から産出があったのか、アフガニスタンから特に産出が目立つのか、それとも改良技術が格段に進歩したためなのか。

写真の研磨品は、どこから見てもブルーそのもの。
お世話になっているパキスタン人ディーラーが、奥からわざわざ出してきてくださったもの。
クラックはあるものの、クンツァイトに特有の条線(チューブ状インクルージョン)のみられないクリアな結晶。
宝石質にしてこの大きさ。
直射日光下での撮影にも関わらず、色濃いブルーのままである。
こんなもの、見たことが無い。
一瞬処理を疑ったが、これを譲ってくださった方を私は知っている。
良心価格で譲っていただいたことを今でも申し訳なく思うほど、お世話になっている。

以前ご紹介したのは、ほんのりブルーなスポデューメン。
特定の角度から見るとブルーをおびて見える程度だった。
また、不透明なブルークンツァイトのビーズについては、アクアマリンもしくはアクアマリンカラーの何かであろう。
クンツァイトの処理の如何については、現段階では判定できないそうである。
この石の発色の原因が、マンガンやクロムといった着色成分だけではないためで、それゆえに退色が起きるということらしい。
ビーズなど格安で入手できるクンツァイトは、特別な理由がない限り、処理石だという。
このブルークンツァイトについても、一瞬処理を疑ったが、今のところ色合いに変化は無い。
譲ってくださったのは信頼のおける数少ないパキスタン人ディーラー。
のどかにみえて実はシリアスなパキスタンの鉱物業界。
ルートや間に入る人間は限られている。
狭い世界だから苦労も多いことだろう。

私がこれを手に取った瞬間、彼の表情が青ざめたのは、奥様には内緒である。
まさにブルークンツァイト。
先日のミネラルショーではお会いできなかった。
いつか、謝りにいこう。


※2011年6月13日付けでアップした記事に加筆、訂正し、画像を入れ替えて再度アップしたものです。産地も確認の上、訂正しました。信憑性のある産地の一つですが、確証するものではありません。
なお、近年マダガスカルからの産出が急増しているという記事を見かけました。流通はあるようですが、加工品が中心です。品質は両極端、色合いの不自然さも気になるところです(中国産の白~灰色のスポデューメン同様、工業用に採掘された原石の一部を処理したものかも)。国内で原石標本として流通しているのを見たことが無いため、詳細はわかりません。現時点ではアフガニスタン産、ブラジル産の流通がメインであると考えられます。
また、オーストラリア産のマットな質感のクンツァイトがHEAVEN&EARTH社から発売され人気を博しましたが、こちらも宝石、原石標本としては一般的ではないようです。


58×34×5mm  20.1g

2012/02/24

クンツァイト(バイカラー)


バイカラークンツァイト
Bi-Color Spodumene, Kunzite
Mawi, Laghman Province, Afghanistan



まるでキャンディみたい。
パステルカラーが可愛らしいクンツァイトの原石。
ひとつの結晶に2色の色合いが出ているものを選んだ。
パープル~ブルー(クンツァイト)を2点、ピンク~ブルー(クンツァイト)、ピンク(クンツァイト)~イエロー(トリフェーン)、グリーン(ヒデナイト)~クリア(スポデューメン)を1点ずつ。
 
※この石の持つ多色性のため、光源によってはまた別の色合いになる。

スポデューメン/クンツァイトの呼び名とその論議についてはブルークンツァイトにまとめたのだけど、現在はどの色であってもクンツァイトと呼んでしまっていいような感じ。
なのでここではクンツァイトと総称することにする。

クンツァイトを無造作に並べ、何がしたかったのかというと、バイカラーのクンツァイトをひととおり揃えてみたかったのである。
手持ちのクンツァイトにたまたま、二色の色合いが出るバイカラーの石があった。
ここはひとつ、極めてみようと思った。
それだけ。
鉱物学上何の石かと言われたら、説明に困る。
色味によって名前が分れているのは、この石の特性からすると不便ではあると思う。

昨年末、池袋ショーでの購入品。
夜に宿にて撮影した。
世界中から訪れるディーラーの中で、いま最も勢いのあるパキスタン人業者。
奴らは魅力的なアフガニスタンの鉱物を多数ストックしておる。
当初このクンツァイト、3つで4,500円と言われた。
裏技を使ったら、5つで4,000円になった。

さて、売り手の青年に、産地を書いてくれとメモを渡したところ、彼の名前(サイン?)までていねいに記入されたものが返ってきた。
カタカナで書かれてあった。
日本語を喋れても、書ける外国人は少ない…はず。
そもそも、先程まで英語で会話していたアナタが、なぜに?
などとは聞かなかった。

改めてメモを見て気づいた。
「クソザイト」と書いてあった。
なんじゃそりゃ。
主力商品にその間違え方はまずいだろ。


30×15×12mm(最大) 27.78g

2011/06/09

クンツァイト(原産)


クンツァイト Kunzite
Pala, San Diego, California, USA



オールドストックの結晶からのカット品。
1905年採取。
1902年にジョージ・フレデリック・クンツ博士により発見された鉱脈から得られた、正真正銘のカリフォルニア・アイリスである。
原石には内包物が多く少量しかカットできなかったとのこと、こちらも若干の内包物が確認される。
かろうじてチューブ状の空洞のないものを選んだ。
未処理だがこのピンク色。
アフガニスタン産のライラックピンクには及ばないとしても、ブラジル産に匹敵する輝きだ。

スポデューメン(リチア輝石)の中で、ピンク~バイオレットの色合いを示すものをクンツァイトと呼んでいるのはご存知のとおり。
自然の状態で美しいピンクを示す原石は年々少なくなっている。
カットされた宝石やビーズには、無色や白、茶色などの結晶に放射線処理を施し、変色させたものが多い。
処理石の場合、一定期間を過ぎると元の色合いに戻ってしまう。

ベースであるスポデューメンは無色透明。
だからクンツァイトはピンク・スポデューメン。
以前、白濁したスポデューメンのビーズが、ホワイト・クンツァイトの名で販売されているのを見かけた。
レアではなく、むしろ処理加工前の状態であり、希少価値がつくのは妙である。
同じくビーズとして販売されているクンツァイトより高額。
当社では加工前・加工後の商品をそれぞれ並べております、ということが言いたいんだろう。
賢い売り方だと思う。

クンツァイトには、長期間光や熱に晒されると退色してしまう性質があるそうだ。
1905年に出た原石が、100年以上経っても色あせることなく残っていたのは驚くべきことで、付属のラベルのほうはセピア色に変色しボロボロだったそうだ。
当時は「カリフォルニア・アイリス」の名で販売され、後にクンツ博士に因んでクンツァイトと命名されている。

ニューヨーク5番街にあるティファニー宝石店の副社長でもあったクンツ博士。
結婚適齢期の女性の人口比率を分析し、最多だった4月生まれの”誕生石”に、ティファニーの主力商品であるダイヤモンドを設定してしまったのは、実はこの人らしい。
新しい鉱物を求めて世界を旅してまわり、自ら宝石のカットも行うなど幅広い分野において活躍し、その生涯を宝石に捧げたという。


1.38ct

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What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?