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2012/03/17

雷水晶


ライトニングクォーツ/雷水晶
Lightning Strike Quartz
Diamantina, Minas Gerais, Brazil



世界には、雷に打たれ崩壊の危機に晒されながらも、奇跡的にその存在をとどめた水晶があるという。
それらはライトニングクォーツといわれている。
ライトニングとは、雷の意味。
雷水晶と呼ばれることも多い。
現地では "Pedra de Raio" (雷水晶と同意)と呼ばれており、欧米での呼称であるライトニング・ストライク・クォーツは、メロディ氏による命名と聞いている。

ライトニングクォーツは世界中から発見されているというが、主な産地はブラジルのディアマンティーナ。
水晶の名産地として知られる土地である。
ディアマンティーナ産のライトニングクォーツは、雷との相互作用を語る上で、非常に重要な特徴を備えているという。
また、土地の特性なのか産出も多いようで、現在も安定した流通がある。

私が鉱物にすこしばかりディープに関わるようになった頃、話題になっていたのがライトニングクォーツだった。
なんじゃそりゃ。
そう思ってさっそく手にしたライトニングクォーツは、透明感にあふれ、とても崩壊の危機に晒されたようには見えなかった。
確かに、結晶の所々に破損やデコボコがあるのだけれど、本当に雷に打たれたのか。

ライトニングクォーツには一応の基準がある。

  • 電流が流れた形跡があること。
  • 結晶の柱面の少なくとも半分に、巻きつくように水晶が成長していること。
  • 落雷時の熱により、一部がクリストバライト(白い付着物)に変化していること。

このライトニングクォーツは、たまたま収集品の中から出てきた。
写真の水晶ポイントはその拡大写真。
巻き巻きとはいい難いが、小さな結晶が貼りつくような格好でポイントを覆っているのが見えるかと思う。
意外に気づかないものだが、重要事項なので、押さえておきたい。
写真にある激しい侵蝕が、電流の流れた痕?

ここまで激しい浸食が刻まれているものは珍しいようだ。
ただ、落雷の衝撃で折れてしまうことはある。
トップのないライトニングクォーツも倉庫のどこかにあったはず。
ディアマンティーナから産する水晶は、透明度が極めて高く、採掘も丁寧なのか、もともときれい。
雷に打たれても、きれい。
かえって雷の痕が映えるというわけ。

ところで、先日某オークションを見ていたら、ライトニングクォーツのブレスレットなるものを発見した。
色合いから察するに、放射線処理を施したスモーキーシトリンであった。
販売者が、ライトニングクォーツに放射能を浴びせ、売れ筋商品にしたかったという可能性もある。
しかし、これでは全くわからない。
クラックひとつないきれいな珠が、ふんだんに使用されている(本文下に写真を掲載。後日さらなる衝撃的物体を確認)。
売れ残りのブレスを、むりやりライトニングクォーツと名づけ、さばこうとしたように見えてならない。
いろんな意味で有名な、中華系の業者だった気がするのだが、まだ居るのか。
かれらは金を積んでオークションのトップに商品を並べているため、マトモな人々がドン引きして立ち去ってしまう。
これでは新しい人が入ってこない。

中華系の業者は、欧米においては、鉱物市場を襲った類い稀なる脅威とみなされ、恐れられているという。
市場はまさにライトニングクォーツ、といった状況。
彼らをとめる者はいないのかと、不思議になってくる。

ライトニングクォーツ。
激しい衝撃に打たれ、崩壊の危機にさらされながらも、その存在を打ち消されない。
人間は、そうなり得るだろうか。
この美しい水晶は、私に人間とは何かを、深く考えさせるものである。




60×15×12mm  15.58g

2012/02/09

クリストバライト


クリストバル石中の鉄かんらん石
Fayalite, Cristobalite
Cougar Butte, Siskiyou Co., California, USA



鉱物の魅力を知った翌年、私は東京にいた。
初めて入った有名鉱物店で、最初に買った標本がコレだった。
どうしてこんな変わったものを選んだんだろう。
壮絶なインパクトを感じて手に取ったとしか思えない。

ざっと見たところ、この産地のクリストバライトは世界的に有名なようだが、鉱物標本としての取り扱いは意外に少なく、調べなければ出てこない。
忘れていてもおかしくない。
購入から5年経つにも関らず、手元にコレがあることははっきり覚えていて、先日ようやく見つけ出した。

説明しよう。
中央に見える白い塊が、クリストバライト(クリストバル石/方珪石)。
鉄かんらん石(ファヤライト)はこの塊のどこかにある…はず。
黒い部分はオブシディアン(黒耀石)で、今回はオマケである。
パワーストーンとしては、スノーフレークオブシディアンと呼ばれるものがこれにあたる。

オブシディアンは、溶岩が地表で急速に冷え固まって出来る天然ガラスの一種。
それに加え、溶岩に含まれるシリカ成分がクリストバライトとなり分離した結果、このような物体が生成されるらしい。
クリストバライトと水晶は同じ成分でできている。
運命を分けるのは、冷却される速度や圧力など、複雑な環境条件に因り、必ずしもクリストバライトが生成されるとは限らない。
まだわかっていないこともあるそうだ。
一部にクリストバライトが確認できる例としては、オブシディアンの他にライトニングクォーツ(雷水晶)、リビアングラス(インパクトグラス/テクタイト)など。

本来の主役は、クリストバライト中の鉄かんらん石。
その名の通り8月の誕生石、ペリドットの仲間にあたる。
クリストバライトのどこかに微細な結晶体がみられるということだが、見えない。
ルーペがあれば見えるのかもしれないが、見えない。
マグマや隕石由来のペリドットは有名だから、その類いなのかもしれない。
素人ゆえこれ以上の言及は控える。

なお、クリストバライトに発がん性があるとして、国際的に問題視され、我が国でも厚生省により使用に制限が設けられている。
アスベスト同様、建築現場から粉塵となって生じることがあり、結晶構造もアスベストに似ているために、肺がんのリスクが指摘されているという。
クリストバライトは危険な化学物質であるとして、神経質になっている方が多く見受けられる。
いつものように注意を喚起しておきたい。

写真にあるように、クリストバライトは天然石である。
また、成分はSiO2、水晶やめのう、石英と同じ。
長期にわたって吸い込むことによる健康被害が指摘されているもの、と捉えるべきか。
しかしながら、クリストバライトへの恐怖が飛躍した結果、石英(※)さえ危険物質に含めている団体もあるようだ。

※代表的な石英に、ローズクォーツがある。

粉塵には概ね発がんのリスクが伴う。
建築現場においては、木材の粉塵さえも、発がん性物質に認定されている。
たとえ美しい天然水晶であっても、粉末にし長期に渡って吸引すれば、肺がんになるおそれがある。
死は人を選ばない。
本人の心がけとは無関係に、すべての人に平等に訪れる。
危険を避けるために、常にマスクをしていたとしても何れ、死ぬ。
クリストバライトは、妄信を諭し、真実を見極める力を授けるため、人類に与えられたパワーストーンなのかもしれない。


67×60×34mm  152.1g

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?