2013/02/26

ブルーターラクォーツ


ブルーターラクォーツ
Blue Phantom Quartz/Tara Quartz
Ippupiara, Bahia, Brazil



ブルーの濃淡を伴う幻想的な青水晶。
このブルーは、内包されたリーベカイトとオレナイト(ブルートルマリン)による発色とされている。
鉄分とみられる赤い不純物との対比が面白い。
ブラジルはバイア州イブピアーラとミナスジェライス州の二ヶ所から発見されている。
同じブラジル産出、針状インクルージョンを伴うインディゴブルーの水晶(俗にいうブルールチル)とは様子が異なる。

ターラとはチベット仏教の女神のこと。
ブラジルからずいぶん離れたチベットの女神が、なぜこの水晶の愛称となってしまっているのか。
解釈に戸惑うところである。
ニューエイジの世界では、ターラはよく知られた存在。
ドリーン・バーチュ氏によって、アセンデットマスターとして挙げられているのはホワイトターラ。
ブルーターラではない。
ブルーファントムクォーツと呼んでいるところもあるものの、一般にはブルーターラの名で親しまれ、ヒーリングストーンとしての人気は上昇を続けている。

私が最初にターラクォーツを手に入れたのは、4年以上前のこと。
色はどちらかというとグレーに近かった。
水晶内部に広がる風景は、曇り空に降り続く雨が大地を潤すさまを思わせた。
当時はものすごく、高かった。
ビニールの袋から出すのには勇気が必要だった。
このブルーターラは、このほどバイア州からまとまって発見されたもので、以前よりお求めやすくなっている。
どちらかというと小ぶりだが、ポイント状に結晶していて、変則的な結晶形と幻想的な青いファントムを楽しむことができる。

ターラは日本でいうところの多羅菩薩。
チベット仏教において重要な役割を担う観音菩薩にまつわる女神である。
一説によるとターラ(多羅菩薩)は、この世から絶えることのない苦しみを前に、観音菩薩が流した涙から生まれたという。
右目からは白いホワイトターラ、左目からは緑のグリーンターラが涙からそれぞれ菩薩に姿を変えた。
両者は対照的で、女性性と男性性、静と動、慈愛と救済、長寿と財運などに対応する。
ターラは七つの眼を持ち、この世のあらゆる苦しみや悲しみを見つけることができるとされ、チベットで広く信仰の対象となっているらしい。
中国政府から逃れ亡命するさい、人々に像を持ち出されたほどだったという。
遠きチベットの祈りを異国の地にもたらすターラ。
なんと永遠の18歳だというから羨ましい。

ところでブルーターラは何なの?
と思われた方もおられると思う。
実はターラには21の化身がいるという。
涙から生まれたという話と矛盾があるような気もするが…

参考:21のターラたちを描いたタンカ(サイト運営者さま
http://www.thangkacafe.com/21tarawithclothes.htm

青いターラさんは見つかっただろうか。
現在はターラというと白か緑が主流で、21すべてのターラが描かれることは滅多にないそうだ。
つまり、ブルーターラはチベットではあまり知られていない。
実際にブルーターラがどのような役目を担うのかについては、チベット仏教関連をあたっても見つからなかった。
では、どうしてブルーターラの名が出てきたのか。
欧米のニューエイジャーの中には、ブルーターラに導かれてしまったスピリチュアリストたちがいる。

参考:ブルーターラ(英語)
http://lightgrid.ning.com/group/tara/forum/topics/blue-tara

上記サイトにおいては、ブルーターラは海を象徴し、悲しみや障害を取り除き、幸せと喜びを運ぶと説明されている。
人々の霊的覚醒を促し、サマディ(悟り)へと導くのはブルーターラだったのである。
ブルーターラクォーツはスピリチュアルな目覚めを妨げるあらゆる困難を破壊し、すべての苦しみを癒すパワーを備える究極のヒーリングツールであり…
えっ?

ホワイトターラやグリーンターラより凄いんじゃないの?

思うに、ブルーターラクォーツには、欧米のクリスタルヒーラーたちの飛躍したスピリチュアリティが大いに関連している。
チベット仏教において信仰されているターラは、ホワイトとグリーン。
欧米のニューエイジ界隈で注目されているターラはブルー、ということらしい。
ブルーターラはホワイトターラとグリーンターラの融合であるとしているところもある。
自然界には「ホワイトターラクォーツ」や「グリーンターラクォーツ」と呼べる色合いの水晶のほうが多く、ブルーはむしろレアなはず。
いや、過去には「ターラクォーツ」という名前だったような気がするのだが…
単にブルーをくっつけただけ?

以上から、ブルーターラクォーツは、誤解や発想の飛躍の結果生まれた特殊なクリスタルと結論づけられる。
本来のチベット仏教とは切り離して楽しむのがよさそう。
このブルーターラは小枝のようなポイントが飛び出した形状が面白い。
両端は一度折れてしまったとみられ、そこから新しい結晶がすくすくと成長している。
淡いブルーのインクルージョンが奥ゆかしい模様をおり成すさまは、ブルールチルとはまた違った魅力にあふれている。




63×23×16mm  21.74g

2013/02/24

マルチカラーアンバー


アンバー/琥珀
Blue Amber
Jambi, Sumatra, Indonesia



魅力的な鉱物が続々登場するインドネシアから、またもや面白い鉱物が見つかった。
数多くの島から成るインドネシア。
中でもジャワ島、スマトラ島、ボルネオ島は有名なアンバー(琥珀)の産地として知られている。
いずれも紫外線に反応して青く蛍光する。
色変化は顕著で、太陽光にすぐに反応し、青くなる。
そのため赤、紫、青、黄色といった多彩な色合いが現れるのが特徴で、その質や産出量はドミニカ産ブルーアンバーを超えるとの声も。

写真はスマトラ島から届いた上質のブルーアンバー。
太陽光で青く蛍光しているのがわかる。
まるでロジャリー産フローライトのような高貴なお姿だ(蛍光の様子は本文下)。
この産地のアンバーは、若干グリーンの入ったブルーに蛍光するようだ。

実は、全く期待していなかった。
祖父が戦争で行ってきたのがスマトラ島だったという理由でつい、購入した。
スマトラは第二次世界大戦において、戦争とは異なる闘いが繰り広げられた土地と聞く。
現地に向かった人々は、もっぱら大自然でのサバイバルライフに明け暮れたという。
つまり、戦争でスマトラに行った人々は、殺し合いとは無縁だったらしいのだが、南国でのサバイバルライフはひ弱な祖父には堪えたようだった。
このアンバーがみせる常識を揺るがす驚きの数々に、スマトラ島で祖父のが目の当たりにした現実と、その後の悲しい人生が凝縮されている。
いったいどんなところだったんだろう。
祖父が誰も殺さずに済んだのは私にとっては誇りだが、病んでしまうほどに過酷な生活だったのだから、気の毒である。

ブルーアンバーといえばこれまでドミニカ産がその代表格だった。
価格は恐ろしいことになっていた。
インドネシアからはドミニカ産を凌ぐといわれる質の良いブルーアンバーが数多く産出し、比較的安価で手に入るとあって、世界中の愛好家たちの注目を浴びている。
クリスタルヒーリングの分野でも取り上げられている。
今後価格は高騰するはずなので、今のうちに手にされておくことをおすすめする。
多くの原石が研磨加工用にまわされてしまっているのは非常に残念。
インドネシアという場所柄、ビーズにもなって流通を始めているのも確認しているが、見た感じは微妙。
原石ならではの美しさを存分に楽しむなら、早めのご購入をお奨めする。

なお、ボルネオ島のブルーアンバーは鮮烈なレッドの輝きが特徴で、ダイナミックな色変化が楽しめる。
興味のある方は是非手にしていただきたい。




30×23×14mm  6.26g

2013/02/22

リチウムクォーツ


リチウムクォーツ
Lithium Quartz
Cigano Mine, Bahia, Brazil



以前から大好きでたまらない石ががある。
リチウムクォーツという。
色はあずき色~ピンク。
赤や白の衣をまとっていることが多い。
リチウム成分が水晶内部に入り込んだもの、付着物として認められるものなど、その外観はさまざま。
ヒーリングストーンとしては有名で、リラクゼーションの石として人気は高い。

写真の石は赤色のインクルージョンを内包し、ファントムを呈している。
複雑な結晶形はブラジル産水晶ならでは。
研磨され、ビーズやタンブルとして売られていることも多いが、ポイント状の原石は実に見ごたえがあって変化に富んでおり、いくら集めても飽きないほど。

実はこの石、謎が多い。
リチウムは鉱物名ではない。
鉱物の成分のひとつである。
レピドライトなど、リチウムを豊富に含む鉱物が関与しているという説もあるという。
実際にどんな成分が内包されているかどうかは、分析してみないとわからないのに、色合いでリチウムクォーツと呼ばれてしまっている向きもあるようだ。

つまるところよくわかっていない。
リチウムクォーツの名は誤りであるとする向きもある。

リチウムクォーツは感情の高ぶりをおさえ、不安やストレスを軽減し、こころの平穏を取り戻すことができるといわれている。
リチウムといえば、向精神薬。
炭酸リチウムは気分性障害(そう病)の治療薬として知られているから、効能といいなんといい、リチウムのイメージで語られているのかもしれない。




××mm  g

2013/02/19

【豆知識】ダイヤモンドの選び方


ダイヤモンドを賢く選ぶには
How To Choose The Best Diamond



大好きなパワーストーンは?と聞かれたら、私はダイヤモンドと答えます。
古くから世界中で愛されてきたダイヤモンド。
パワーストーンとしては一般的ではありません。
なぜでしょうか。
そう聞かれたら
多くの人は次のように答えるかもしれません。

高いから。
興味がないから。
贅沢品だから。
似合わないから。
なにか恐ろしい感じがするから。

いずれも、ダイヤモンドそのものに興味を持つことそのものを避けておられる気がします。
興味を持って、調べて、よく見る習慣をつけていると、

実は、ダイヤモンドは500円くらいで購入できます。
必ずしも贅沢品というわけではないんです。
ダイヤモンドが贅沢品かどうかについては、私には判断しかねるところです。
写真のダイヤモンドはプラチナで三万円台ですから、パワーストーンのブレスのほうがかえって高いこともありそうです。

恐ろしい感じがする。

ある方から伺った言葉です。
実はこれ、うさこふも感じておりました。
昔々、五千円程度のチビダイヤの入ったペンダントを買ったんです。
どうも気分が悪い。
苦しい。
嫌な予感がする。
翌日には近所の神社に埋めにいきました。
パワーストーンなんて、まだ知らなかった頃ですが、本能的に神社に向かったのを覚えています。
いわくつきのダイヤを買ってしまったのかというと、おそらくそうではありません。
ただ、ダイヤモンドが恐くて買えずにいるという方はこうした体験をされたかもしれませんね。
さっそく考察してみましょう。

恐いダイヤモンドといえば、ホープ・ダイヤモンド。
インドから発見された青いダイヤで、その後持ち主が次々と悲惨な死を遂げたために、呪われたダイヤモンドとして有名になりました。
それから、ブラッディ・ダイヤモンド。
貧しい国では採掘されたダイヤモンドが戦争資金に変わっている。
戦争が血を思わせることからその名が付いたと聞いています。
こうしたいわくつきのダイヤモンドがブラックマーケットを通り、日本に入ってきている。
貧しい国々の人の悲しみや恐怖に共感し、良心からダイヤモンドを避けている方も多いかもしれません。
結論からいうと、呪われたダイヤモンドというのはある程度見分けられます。
そうです、安いものには訳があるんです。

冒頭のダイヤモンドが安かったのにも、訳があります。
では、みなさんはダイヤモンドを買うとしたら、何を基準にしますか?

1位:値段
2位:本物かどうか
3位:大きさ
4位:VVS2とか一般にいわれている基準をなんとなく
5位:いわれるがまま

※うさこふの脳内アンケート(修正あり)より

さて、値段ですが、これは重要です。
相場がある程度決まっているからです。
あまりにも高いのは問題ですが、あまりに安いものにも注意が必要です。
また、合計1ctと一粒1ctでは価値が全く異なりますから、合計のほうが安上がりです。
資産価値があるのは後者のみですね。

偽物を心配している方は多いかもしれません。
ダイヤモンドについては、古くから厳しい基準があり、鑑定書が付くのが一般的です。
鑑定書にある鑑定機関を見れば判断できますので、問題ありません。
わからなければ聞いてみましょう。
ただし、パワーストーンに鑑定書がついてきたら、詐欺を疑ってみたほうがよさそうです。
こんな手口が横行しています(→参考:ブラックマトリックスオパール)。

大きさです。
大きければ大きいほど良い、と思った人はさすがにいないと思います。
これが意外なポイントになるので、後ほどご説明します。

一般にいわれている基準というのは4Cのことです。
これは、ダイヤモンドの質を表す言葉です。
重要ですので、資料をあたってください。

参考:ダイヤモンドの鑑定書
http://www.nihongo.com/diamond/kantei/diamkans.htm

Cut(カット)Color(色)Clarity(質)Carat(カラット)、Cが4つで4Cです。
カラット(大きさ)とクラリティ(VVS1など)はわりと知られていますが、色とカットのほうも極めて重要です。
無色透明に近いダイヤモンドはD、不純物などで濁っていくに従って数値がup、遂にはZに至ります。
また、カットひとつで輝きが全く変わるといわれるのがダイヤモンドの世界。
高い技術は評価の対象になります。
ヨーロッパで職人たちが築き上げた技術を駆使し、美しいバランスを備えたカットを施され、ダイヤモンドの価値は決まるのです。
ハート&キューピッドと呼ばれるカットが最も高級品なんだそうです。
実は写真のダイヤモンド、カラーはD、カットも最高とされるハート&キューピッド。
実際の大きさより大きく見えるのは、輝きに優れているからです。
また、この上なく透明だというDの値は、ある目印になります。

このダイヤモンドが安い訳について説明します。
店員さんはよいことしか言いません。
パワーストーンと同じように、ある程度勉強して、後悔のないお買い物をしなければいけません。
安い理由はまず、小さいことです。
0.15ctしかありません。
しかし、カラーとカットが最高であるため、実際の大きさより大きく輝いて見えます。
ダイヤモンドは大きければ大きいほど不純物や欠損が目立ち、質は落ちます。
小さいほうが品質が良いものが多いというわけです。
大きさを追求すると、当然高額になりますから、ちょうどいいところで止めておくといいかもしれません。
最高級のダイヤモンドが1ctを越えると、桁が1、2桁変わるようです。
そして、このダイヤモンドが安かった第二の理由。
それは紫外線で蛍光するということです。

ブラックライトをあてると美しいブルーに輝きますから、レアストーンハンターにとっては嬉しいサプライズです。
蛍光性のあるダイヤモンドがきらわれるのは、太陽光で若干の色変化を起こすためです。
青に蛍光する場合は、ダイヤの輝きをより神秘的に見せることもあるのですが、黄色に蛍光する場合は失敗です。
石がくすんで見えるのです。
これは青ですから、私は折れました。
私が身につけているパワーストーンは、このダイヤモンドだけです。
このペンダントが来てから、不思議に良いことが続くんです。
以前購入し、神社に埋めたダイヤモンドとは何が違うのか…そんなことを考えていたある日のこと。

私はインターネットで見事なダイヤモンドを見かけました。
ある方の宝物ということだったのでお話を伺ってみると、どうもアヤシイ。
持つと幸せになれるダイヤモンドだとおっしゃいます。


そんなものは持ってみないとわかりません(現実)。

どうも、宝石カットの技術が世界一なんだそうです。
ある日本のカリスマが提唱した新技術だということですが、奇妙ですね。
中世から美しいダイヤモンドを極めるため、代々がんばってきたヨーロッパの宝石職人の技術に、たいしてキャリアもない日本人が勝てるというのは余程のことです。
宝石の世界でも名の知れた人物のはず。
しかし、聞いたことがありません。
ダイヤモンドの産地がしばしばわからなくなるのは、ヨーロッパで加工されているためなんです。
産地はアフリカだけではありません。
ロシアや中国からもダイヤモンドは産出しています。


さて、幸せになれるダイヤモンド。
大きさはなんと1ct超え。
価格は四十万程度とのこと。
内包物はみられませんから、かなりの質です。
おかしいですね。
安すぎるんです。

安いものにはわけがあります。
1ct超えで四十万は安すぎる。
問題は色です。

よくよく見ると色がくすんで見えます。
全体的に黄ばんでいるんです。
放射線処理で内包物を消し去ってしまった可能性があります。

参考:ためになる辛口宝石論
http://www.takara-kiho.co.jp/column/008.html

放射線処理という言葉はよく聞きますが、実際に何をどうするのか、意外に知らないものです。
原子炉にぶち込むそうです。
放射線処理というのは、いわば放射能で宝石を焼き殺してしてしまうことです。
ひときわ鮮やかな、青や赤、或いはブラックダイヤモンド。
現在入手できるこうした珍しい色目のダイヤモンドの大半は、放射線処理がなされています。
内包物を消し去って石のクオリティを上げ、たくさん売る必要があるんです。
どうも黄ばんでいると感じたら、放射線処理を疑ってみてください。
先ほどの幸せになれるダイヤモンドも、原子炉で被ばくしてしまった憐れな姿、ということになるのですね。

その方は原発事故を機にデモ活動に目覚め、熱心に原発廃止を訴えておられました。
よりによって被ばくダイヤをご自身の代わりにかかげるとは、皮肉なものです。
ご本人自慢のダイヤモンドは、原発がなければ作れません。
私が買ってすぐ埋めたダイヤモンドもおそらく放射線処理されていたのでしょう。
同じく放射能をあてて作られる人工モリオンで、気分が悪くなった時の感じに似ていたんです。
私だけではないようですから、本能的に危険を察知したということになるのかもしれません。
もし、気持ち悪いからダイヤモンドを避けていたという方は、質より色合いに注目してみてください。
もともとダイヤモンドは力の強い石です。
歴史がそれを物語っています。
放射能もまた、強いですから、不具合が起きてもおかしくありません。
放射線処理されていたかどうかは、素人の私には判断できません。
もし、被ばくダイヤを看板に、原発廃止を訴えようとされていたのだとしたら…
訳が気になります。

詳しいお話を伺いました。
どうも宝石を使った霊感商法の一種のようです。
「ダイヤモンドには全く興味がなかった」ような人をターゲットに、自社製品と低ランクのダイヤモンドを並べて買わせるという典型的な詐欺でした。
これまでにない素晴らしいカットがウリだといいますが、おかしいことは先ほど書きました。


ダイヤになど全く興味がなかった、というのがポイントです。


知識や比較対象など全くない状態ですから、このダイヤが最高だと信じ込んでしまいます。

カットだけが優れていても、石そのものが悪ければ、安く手に入ります。
放射線処理をすれば簡単、というわけですね。
ダイヤモンドだけに、安い買い物ではありません。

ルビーやサファイヤ、エメラルドなども人工処理を施して色合いを改善していきます。
放射線処理を行う宝石はダイヤモンドだけではありません。
パワーストーンの中にも紛れ込んでいます。
我々がいかに放射能に、原発に頼って生きてきたかということになります。
今や、あの騒ぎは忘れられてしまったかのようです。
世界は日本を恐れている。
被ばくダイヤがあやしく光輝きます。


宝石専門のみなさま、ツッコミをお待ちしております!

2013/02/15

マリアライト


マリアライト
Scapolite var. Marialite
Santa Maria do Jetibá, Espirito Santo, Brazil



以前ある方から、衝撃のリクエストをいただいた。
石はマリアライト、色はパープル、予算は千円だという。
聞いたことはある。
確か、中国・内モンゴルで外国人調査団によって紫のマリアライトが発見された。
持ち帰ったものの、珍しすぎて値段が付かなかったという話。

マリアライトといえば有名なレアストーン。
極めて特殊な条件を揃えたスキャポライト(柱石)で、滅多に発見されない希少石と聞いている。
写真は純粋なマリアライトの結晶で、透明感のあるインペリアルカラーを示している。
これでもかなりの額だ。
紫のマリアライトなど、世界中の収集家の憧れである。
日本に入ってきたことがあるとしたら、ほんの数回程度だろう。
ヒーリングストーンを中心にコレクションされている彼女が、どうしてそんな通好みな石をご所望なのかと不思議に思った。
そんなものが千円で手に入るという噂を流した人間がいるのだとしたら、えちごやのたくらみが疑われる。

調べてみたら、大変なことになっていた。
紫のマリアライトが大量に流通しているのである。
なんと、ビーズにまでなっている。
製品化されるほどに相当量の放出があったとは聞いていない。
マリアライトの名を語るアメジストやガーネットのように見えたりもする。
それにしても安い。
驚くべき解説まで添えられているではないか。

「透明感のあるバイオレット・カラーのマリアライトは、
聖母マリア様のエネルギーに繋がる石とされヒーラーからの人気が高いパワーストーンでございます。」

ええっ?
確かこれ、昔ネタとして流行しなかったか?
紫のスキャポライト=マリアライトではないし、マリアライトと聖母マリア様は無関係(詳細は以下)。
あたかも「紫のスキャポライトをマリアライトと呼ぶ」と誤解を与えるような解説文がコピペされ、広まっている。
マリアライト。
確かにいい名だ。
憧れる気持ちはわかる。
何年か前に自分もタンザニアのパープルスキャポライトを手に入れた。
もしかするとマリアライトかもしれない、とワクワクしながら調べたのを覚えている。
しかしタンザニアのパープルはどちらかというとメイオナイトらしい。
その一件以来、忘れていた。
いつの間にそんなことになっていたのだろう。
詳しいことは他の資料を参照していただくとして、ここでは大雑把にまとめる。


マリアライト(曹柱石)

  • スキャポライトのうち、ナトリウム(塩分)を多く含むものをマリアライト、カルシウム豊富なものをメイオナイト(灰柱石)と呼んでいる。
  • 色は一般的に白や灰色、クリーム色、無色透明など。稀に宝石質のゴールドやピンク、パープルが産出し、高額で取引される。
  • 通常はマリアライトとメイオナイトが混在した状態(固溶体)で発見される。両者の分類は困難で、表記はスキャポライトとするのが一般的である。
  • 紫外線照射で青、オレンジなどに色変化を起こす。
  • マリアライトの名の由来は聖母マリア様ではなく、発見者の奥さんの名前(クリスタルヒーラーではない)である。
  • マリアライト・ヒーリングとは関係ない。
  • 日本では紫のスキャポライト=マリアライトとして定着、マリアさまの愛に満ちた紫のクリスタルとして大量に流通している。デマなので注意してほしい。ネタには最適だが、パワーストーンの意味欄にはしばしば誤解や矛盾が見受けられる。
  • パープルカラーでないスキャポライトがマリアライトであるとは限らない。
  • マリアライト人気に反し、メイオナイトの意味については誰も言及していない。

アフガニスタンのパープル・スキャポライト(→写真)。
マリアライトかどうかは鑑定していないとのことだった。
詳細は下記、参考1より。
現在マリアライトとして流通している石の多くは、これと同じものか、他の安価な代用品を用いて作られたビーズではないかと思われる。


参考1)中央宝石研究所「テネブレッセント スカポライトについて」
http://www.cgl.co.jp/latest_jewel/gemmy/141/02.html

その方には、パープルのマリアライトを千円で入手するのは不可能であることをお伝えした。
そんなはずはないとおっしゃる。
私をえちごやと誤解されたのだろうか、連絡は途絶えてしまった。
マリアライトからマリア様のエネルギーを感じられていたのだとしたら、納得がいかないのであるが…

紫のスキャポライトといえばアフガニスタン産。
国内で多く流通している「マリアライト」はアフガニスタンのバダクシャンから産出したスキャポライト(→写真)で、ビーズにもなって登場している。
アフガニスタン産については、マリアライトとメイオナイトが混在していて、どちらともいえないらしい。
また、タンザニア産のパープルスキャポライトも同様とのこと。
いずれもスキャポライトとの表記が一般的で、マリアライトとメイオナイトを分けているケースは海外においては稀であった。
紫のマリアライトが千円で販売されていたとしたら、お店の人に実際の鉱物名を聞いてみよう。
もしかするとアメジストの類いかもしれない。

海外でもマリアライトはヒーリングストーンとして流通している。
色はくすんだ黄色、聖母マリア様との関連性についても触れられていない。
パープルの美しいマリアライトがお手頃価格で手に入るのは、どうも日本だけのようだ。


なお、無色やイエローのスキャポライトに放射線処理を施すと、見事なパープルに色変化を起こすらしい。
そして時が経つにつれて黒ずみ、濁った色合いへと変わっていくということである。


36×8×5mm 2.14g

2013/02/08

アルベゾン閃石/ヌーマイト


アルベゾン閃石
Arfvedsonite
Kangerdluarsuk, Ilímaussaq Massif, Greenland



あのヌーマイトの「偽物」として有名になりつつあるアルベゾン閃石/アルベゾナイト。
無人島では今、最も話題の鉱物のひとつである(→詳細はヌーマイトにて)。
昨夜、突然にも大事件が発生した。
早速ご報告していきたい。

写真はたまたま倉庫から出てきた貴重品と思しき標本。
なんと、アルベゾナイトと書かれているではないか。
しかも産地はグリーンランド。
ラベルに書かれている産地はヌーマイトと全く同じだった。
不審に思い調べたところ、なんとアルベゾン閃石が最初に発見されたのはグリーンランドであることが判明。
写真の石は原産地標本ということになる。

面白いのは、この標本がかなりの珍品であるということ。
ある歴史的収集家の遺品を運よく手に入れた。
手書きのラベルは茶色に変色しており、相当の年月が経過していることを物語っている。
初期に採取された標本の可能性もある。
現在、グリーンランド産アルベゾン閃石は全くといっていいほど流通がなく、安価な中国産アルベゾン閃石がヌーマイトの偽物として話題に上っている。
中国・内モンゴル産アルベゾン閃石は細かなブルーグリーンの神秘的な閃光を放ち、なるほど宇宙を思わせる。
誰もがヌーマイトだと思い込んでしまったのも無理はない。

アルベゾン閃石は単なる偽物ではなく、れっきとした鉱物である。
1823年、グリーンランドで発見された角閃石の一種で、現地からヌーマイトが発見されたのが1810年だから、その差わずか十年余り。
混同されずに報告されたのが不思議なほど、両者には深い縁がある。
データには放射状のイリデッセンスがみられるとあるが、ものの見事に真っ黒だ。
分厚い板状の塊に広がる繊維状の結晶構造は、ヌーマイトのそれとは異なっている。
やけに酸っぱい臭いが鼻につくのは、謎である。
漆黒の結晶を光にあてると薄っすらとシルバーの光沢が現れる。
ときにルチルと混同されて販売中(!)であるという、内モンゴルのアルベゾン閃石に見られる豪華な青系の輝きは見られない。

ここで気になるのは、グリーンランド産ヌーマイトと信じられている石。
実はアルベゾン閃石では?
…という疑問である。
おそらく、心配はいらない。
全体の質感やシーンの色味、形状を見ればその違いは一目瞭然(気になる方はファイナルセールをお待ちください)。
中国産アルベゾン閃石の放つ、繊細でシャープなブルーグリーンのシーンは、ヌーマイトには現れない。
一部に共生している可能性はある。
ただ、グリーンランドからアルベゾン閃石が産したのは、ほんの一時期だけだったようだ。
現在はヌーマイトよりも入手困難のよう。
写真の石もラベルを見た限りでは採取されてから少なくとも50年は経っている。
グリーンランドから産した幻の希少石、アルベゾナイト。
そんな折、中国から大量にアルベゾン閃石が発見され、グリーンランド産ヌーマイトとして流通した、という嘘のような本当の話。

では、どうしてヌーマイトとアルベゾン閃石の産地が被ってしまうのか。
実はこのグリーンランド・ヌーク地方は、希産鉱物の宝庫として知られる土地。
ロシアのコラ半島、カナダのモンサンチレールに並ぶ希少石の名産地で、他所からは見つからないレアストーンが、不思議なことにロシア・カナダ・グリーンランドの3ヶ所に共通して発見されている。
グリーンランドの知名度が低いのは、土地の規模だろうか。
ロシアやカナダの産出量には及ばない。
価格も高額になる。
グリーンランド名物のヌーマイト、ツグツパイト、蛍光ソーダライト、ハックマナイト、ユーディアライト、ウッシンジャイト、アナルシム、そしてこの悪名高きアルベゾン閃石。
実は、ロシアやカナダからも報告されている。
ヌーマイトとアルベゾン閃石の2つの鉱物には、どうも因縁めいた関連性があるようだ。
ただ、中国からはヌーマイトは発見されていない。
共生している様子も全く無い。

日本では、ヌーマイトの偽物としてのアルベゾン閃石がもっぱら問題視され、両者の関連性については明言を避けている。
確かに、グリーンランドからもアルベゾン閃石が出るという事実が明らかになれば、市場はさらなる混乱をきたすだろう。
グリーンランドの名を利用して、在庫を売り尽くそうとする業者も現れそうだ。
"稀少!グリーンランド産アルベゾン閃石" が製品化されることはあり得ないので、くれぐれも気をつけていただきたい。
そうした意図のもと、あえてこの標本を紹介させていただく。

グリーンランドから届けられる輝きは、ヌーマイトだけではなかった。
アルベゾン閃石も価値ある鉱物であることを、この歴史的標本は教えてくれた。
どうしてこんなものを購入したのかについては、全く覚えていない。
初めてこれを見た時の感想は、

なんて地味な石なんだ!

もちろん偽ヌーマイト騒動については全く知らなかった。
偶然にせよ、買っておいて良かったと心底思った。


80×38×12mm  89.03g

2013/02/07

非加熱タンザナイト


タンザナイト Tanzanite
Merelani Hills, Arusha, Tanzania



今や宝石の枠を超え、広く知られるようになったタンザナイト。
目下休止中のブログに突然記事をアップするのはどうかと思うが、気がかりなことがあるので報告したい。

タンザナイトと聞いて私たちはあの深いブルーをイメージする。
加熱処理を前提とした宝石であることをご存知の方も多いはず。
以前、非加熱タンザナイトってどんな感じなのだろう?という疑問を抱いている方がおられた。
石には非常に詳しいのに、ご存じないとは意外だった。
どうも、未処理のタンザナイトは滅多に流通せず、かえって入手困難であるようだ。

宝石質の非加熱タンザナイトを一時期集めていたことがある。
私がむしろ、人工石のほうを好んで集めているのはご存知の通り。
なぜタンザナイトに限って未処理なのかというと、単にひねくれ者だから?
鉱物を知ってすぐに購入した安価な破片状原石。
写真は室内にて、ライトをあてて撮影した(実際の色は本文下、右側の写真に近い)。
シルバー、ゴールド、ブルーの輝きが同時に見えるのは、タンザナイトの持つ多色性に因る。
太陽光では褐色に近いイエローに見える。
室内光ではどちらかというと赤みを帯びて見える。
なんとかして青い輝きをとらえようと試行錯誤した成果が冒頭の写真。

透明度に富み、強い輝きと光沢を示すゴールデン・タンザナイト。
悪くないと私は思う。
非加熱未処理タンザナイトといわれて私がイメージするのは、このゴールドの色合い。
だが、意外なほど流通がない。
非加熱未処理というタンザナイトの原石は紫に近いブルーが一般的なよう。
初めから青いタンザナイトというのは存在しないと思い込んでいたが、大量にある。
青い原石というのも実はあって、数が少ないために高額で流通しているのかもしれない。
いや、原石の段階で加熱処理されているように見えるのだが…

まずいことになった。
人工石は日本人にとってまがいものに他ならない。
大自然の恵みである鉱物に手を加えることは許されないはずである。
少しでも人工処理を施せば、パワーストーンのパワーがたちまちのうちになくなってしまうという説もあるほどだ(→ゴールデンダンビュライト)。
なんと、タンザナイトを加熱せずに青くする技術まであるというではないか。
タンザナイトはしょせん偽物。
日本から消える日は近いのかもしれない。

参考)コーティングを施した非加熱タンザナイトが増加中
http://weblog.gem-land.com/?p=112

参考)ヴィクトリアストーンに見る人工石と日本人の価値観
http://usakoff.blogspot.com/2012/12/blog-post_27.html

最初に示したサイトさまより引用させていただく。
記事では、コバルトのコーティング処理によって、褐色のタンザナイトが青く生まれ変わると説明されている。
非加熱未処理に加熱未処理石。
ならば非加熱処理石もありということらしい。
非加熱という言葉を利用して売り出そうとする思惑が見え隠れする。
結晶表面にイリデッセンス(虹が輝いて見えるさま)が多く確認できる、多色性の乏しさなどがその特徴として挙げられている。
気になる方はチェックしていただきたい。

これはまさに、私が抱いていた違和感そのもの。
手持ちのゴールデン・タンザナイトには、著しい多色性が認められる。
いっぽうで、非加熱タンザナイトとされる青い石には、青以外の色は認められない。
コーティング処理によって多色性が失われているというなら納得がいく。
多色性を持つ鉱物といえば、アイオライト。
アイオライトは光の角度によって青からイエローに変化する。
未処理のタンザナイトの本来の輝きは、その逆である。

未処理のタンザナイトが滅多に流通せず、かえって入手困難なのは事実のようだ。
おそらくイメージの問題で、青くしなければ売れないのだろう。
天然石の魔法にかかって、石の意味に夢を抱くのは自由だ。
だが、天然か人工かで石の価値が決まるのであれば、処理や加工が前提のビーズや宝石がパワーストーンブームを支えているという現状には矛盾がある。
天然石を処理したものは天然石という意見もあるが、世界的には通用しない。
日本には欧米以上に人工石が定着している。
天然という言葉が名もなき石に価値を与え、人工という言葉が真の価値を遠ざける。

1966年にタンザニアで発見され、1969年にティファニー社によって世界に紹介されたタンザナイト。
クンツァイトを見出したティファニー社副顧問、ジョージ・フレデリック・クンツ博士によってその名が与えられた。
もともとの鉱物名であるゾイサイドの名がスーサイド(自殺)を想起させるために、クンツ博士が機転をきかせたというエピソードも有名。
加熱処理によって色濃い青に変えられ、より透明感と輝きを増したタンザナイトは、カットされて宝石となる。
希産鉱物の宝庫、タンザニアのメレラニ鉱山からしか見つかっていないとされている。
タンザニアを代表する宝石として、むしろタンザニアの名を有名にした存在といえよう。
国名に由来する鉱物は、このタンザナイトの他にブラジリアナイトアフガナイト、シンハライト(現スリランカ)など。
逆に鉱物が国名の由来となったのはアルゼンチンで、ラテン語で銀の意味であるという。




14×11×7mm

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?