2011/06/21

プレセリブルーストーン


プレセリブルーストーン
Preseli Bluestone
Preseli Mountains, Pembrokeshire, Wales, UK



プレセリブルーストーンのタンブル。
2年前に購入したもの。
世界遺産にも指定された、ストーンヘンジの建築に用いられたとされる神秘の石。
今回はこの石にまつわる私自身の過去についてのお話です。
プレセリブルーストーンについてお調べの方、興味をお持ちの方は、ここから先は読み飛ばしていただきますよう、お願い申し上げます。

***

誰もやらないこと、やっていないことがしたい。
誰も知らないものを見つけ出したい。
私が石を扱い始めたのは、そうした好奇心からだった。
音楽やファッションから、社会的取り組みに至るまで、未知の世界には感動が隠れている。
そう、思い込んでいた。

何もかもがうまくいっていた。
周囲から注目されていることには、気づかないようにしていた。
思い上がってはいけないと肝に銘じた。
楽しみはいつの間にか、苦悩に代わった。
私ではない何かが一人歩きを始めていた。
毎回、完売させなければならない重圧と、無情なる非難の声。
この勢いを失速させてはならない。
ストレスから浪費に走り、ゲームに逃げた。


ふと、目に付いた荷物。
イギリスからだった。
注文していたプレセリブルーストーンのタンブルが、袋いっぱい詰め込まれていた。

美しいとは思わなかった。
まだ見ぬ世界を追い求めた挙句の果てが、世界遺産に使用された築材である。
その先に一体何があるというのか。
私はこれを一袋、いくらで手に入れたか。

世界遺産は、人類によって長い間、畏れ敬われてきたもの。
間接的であれ何であれ、人が踏み込んではいけない領域はある。

当時なら確実に売れただろう。
だが、もはや四面楚歌。
商品写真すら撮ることなく、私は手持ちのあらゆる石を封印した。
そして旅に出たまま、石の世界には戻らなかった。

2年が経ち、友人との再会がてら赴いたミネラルショー。
会場に入ってすぐ、馴染みの業者さんに遭遇した。
棚にはプレセリブルーストーンがズラリ。
日本での販売独占権を得て、この石の卸に関わっているとおっしゃる。
2年間の間、世界が止まっていたものと錯覚し、すぐ我に返った。

2006年発行のSimon&Sue Lillyの著作に、プレセリブルーストーンが登場する。
この頃既に、この石を売り出す計画が進行していたようである。
現在、プレセリブルーストーンの取り扱いを政府から認められているのは、Preseli Bluestone Limited. 1社のみということだが、2006年の段階で、世界各地のクリスタルヒーラーに接触していたようだ。

ここでプレセリブルーストーンを購入すると、シリアルナンバー付きの証明書が付いてくるという。
付加価値も相当量付いてくるぞ。
ご存知かもしれないが、立派な公式サイトまである。

オフィシャルサイト
http://www.stonehenge.jp/

かつてはヒーラーの間でささやかにやりとりされた石だった。
英国政府公認のビジネスとして動き出した以上、不可抗力である。
無人島へ持っていくことも無いだろう。
私は石の販売を続けるべきだったかと、振り返る時もある。
今の状態には満足している。
石はこれからも集めるだろう。
個人的に取り扱うことも続けたい。
だが、必要以上にこの世界に関わってしまった代償を受け止める器を、私は持ち得なかった。
この石はその事実を私に教えたのである。


22×15×11mm (最大)15.37g

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