2011/06/25

コキンバイト


コキンバイト Coquimbite
Javier Mine, Lucanas Province, Ayacucho, Peru



謎の存在かもしれない。
珍しいものに反応する人なら、知っているかもしれない。
2009年頃にペルーで綺麗な原石が多く出たらしい。
残念だが、無人島には持っていけない。
おそらくこの美しさは永遠ではないからだ。

石は人類の歴史とともにあった。
時代が変わっても、石は残り、当時の人々の暮らしや価値観を伝えてくれる。
私たちがこの世を去ったあとも、輝き続ける。
例外もある。
コキンバイトは、極端に水に弱い。
水に溶ける性質を持つ。
乾燥剤を入れても、湿気の影響で劣化が進み、輝きを失い、その形は崩れていくという。
最終的にどういった状態になるのかはわからないが、湿度の高い日本はこの石にとっては厳しいかもしれない。

パワーストーンを浄化する方は多いと思う。
水での浄化を避けるという表記を見て、「水で清めるとパワーがなくなってしまうのね!」と思う方はいないと思うのだが、念のため記すと、この鉱物は水で何らかの変化が生じるおそれがあるので要注意、という意味である。
コキンバイトの場合は水分が致命的であって、岩塩(ハーライト)と同等か、それ以上のダメージになるという。
ざっと見た感じだと、すでに何か別のモノに変わって絶望中だったり、気難しい子ね!と子供扱いされるなど、対応に困っている方が多い様子である。
こちらは購入から数ヶ月経っているが、今のところ変化はない…と思う。
写真はさきほど撮影したもの。

博物館並みの管理は、今の住宅環境では難しいので、いつまで持つかは微妙なところ。
むしろ無事なのが不思議なくらい。
ワンルームで狭い上、風呂の目の前にダンボールで保管している状態。

コキンバイトをリーディングした人がいるかどうかは定かでない。
日本人なら諸行無常とか言い出すのかもしれない。
この石にはいつか終わりが来る。
そう思うから大切にしたくなるだけだろうか。

人は変わる。
病いに倒れる人、年老いていく人、遠く離れゆく人、決別する人。
私は彼らの心の美しさを忘れない。
この石との出会いもまた同じ。
美しいと感じる心はきっと、永遠だと思うのだ。




30×22×18mm  7.1g

2011/06/21

プレセリブルーストーン


プレセリブルーストーン
Preseli Bluestone
Preseli Mountains, Pembrokeshire, Wales, UK



プレセリブルーストーンのタンブル。
2年前に購入したもの。
世界遺産にも指定された、ストーンヘンジの建築に用いられたとされる神秘の石。
今回はこの石にまつわる私自身の過去についてのお話です。
プレセリブルーストーンについてお調べの方、興味をお持ちの方は、ここから先は読み飛ばしていただきますよう、お願い申し上げます。

***

誰もやらないこと、やっていないことがしたい。
誰も知らないものを見つけ出したい。
私が石を扱い始めたのは、そうした好奇心からだった。
音楽やファッションから、社会的取り組みに至るまで、未知の世界には感動が隠れている。
そう、思い込んでいた。

何もかもがうまくいっていた。
周囲から注目されていることには、気づかないようにしていた。
思い上がってはいけないと肝に銘じた。
楽しみはいつの間にか、苦悩に代わった。
私ではない何かが一人歩きを始めていた。
毎回、完売させなければならない重圧と、無情なる非難の声。
この勢いを失速させてはならない。
ストレスから浪費に走り、ゲームに逃げた。


ふと、目に付いた荷物。
イギリスからだった。
注文していたプレセリブルーストーンのタンブルが、袋いっぱい詰め込まれていた。

美しいとは思わなかった。
まだ見ぬ世界を追い求めた挙句の果てが、世界遺産に使用された築材である。
その先に一体何があるというのか。
私はこれを一袋、いくらで手に入れたか。

世界遺産は、人類によって長い間、畏れ敬われてきたもの。
間接的であれ何であれ、人が踏み込んではいけない領域はある。

当時なら確実に売れただろう。
だが、もはや四面楚歌。
商品写真すら撮ることなく、私は手持ちのあらゆる石を封印した。
そして旅に出たまま、石の世界には戻らなかった。

2年が経ち、友人との再会がてら赴いたミネラルショー。
会場に入ってすぐ、馴染みの業者さんに遭遇した。
棚にはプレセリブルーストーンがズラリ。
日本での販売独占権を得て、この石の卸に関わっているとおっしゃる。
2年間の間、世界が止まっていたものと錯覚し、すぐ我に返った。

2006年発行のSimon&Sue Lillyの著作に、プレセリブルーストーンが登場する。
この頃既に、この石を売り出す計画が進行していたようである。
現在、プレセリブルーストーンの取り扱いを政府から認められているのは、Preseli Bluestone Limited. 1社のみということだが、2006年の段階で、世界各地のクリスタルヒーラーに接触していたようだ。

ここでプレセリブルーストーンを購入すると、シリアルナンバー付きの証明書が付いてくるという。
付加価値も相当量付いてくるぞ。
ご存知かもしれないが、立派な公式サイトまである。

オフィシャルサイト
http://www.stonehenge.jp/

かつてはヒーラーの間でささやかにやりとりされた石だった。
英国政府公認のビジネスとして動き出した以上、不可抗力である。
無人島へ持っていくことも無いだろう。
私は石の販売を続けるべきだったかと、振り返る時もある。
今の状態には満足している。
石はこれからも集めるだろう。
個人的に取り扱うことも続けたい。
だが、必要以上にこの世界に関わってしまった代償を受け止める器を、私は持ち得なかった。
この石はその事実を私に教えたのである。


22×15×11mm (最大)15.37g

2011/06/16

ムーンクォーツ


ムーンクォーツ Moon Quartz
Skardu District, Gilgit-Baltistan, Pakistan



満月で月蝕ということで、月にまつわる鉱物を。
ムーンストーン?いいえ、ムーンクォーツです。
正式には、ミルキークォーツ(乳石英)。
ブルーをおびた美しい輝きが、ムーンストーンを想起させることから、その名がついたという。

2年ぶりに鉱物の世界に戻り、すぐに目に留まったのがコレ。
ヒマラヤ山脈はK2で産出するという、ヒマラヤブルームーンクォーツと呼ばれる神秘的な水晶である。

K2は標高8,611m、世界第2位であるが、その難易度はエベレストを上回るといわれている。
大好きなヒマラヤ山脈。
これは絶対に欲しい。
しかし、販売されているのはビーズばかり。
原石の存在について何件か問い合わせてみたが、「わからない」とのこと。
奇妙なことに、誰も原石を見たことがないという。

4月の時点では、原石の存在は確認できず、その正体は謎に包まれていた。
幸い、良心的なディーラーさんのおかげで、いくつか手がかりが得られた。
産出はK2のふもと。
これが重大なヒントとなった。
それらしきパキスタンのディーラーにアタック、一発目でヒット。

写真にあるのが探し当てたヒマラヤムーンクォーツの原石。
実際に採取したオッサン(社長?)から直接譲っていただいた、産地直送品である。
ところどころブルーをおび、あちこちに虹が輝いている。
ジラソルよりは不透明、メタモルフォシスよりは透明といったところ。
その美しさは、ビーズとは比較にならない。
2キロあるという原石のほうも見せていただいた(写真は本文下に掲載)。
一見、巨大な石英の塊。
ビーズに磨けば青く光るなど、これだけでは判断できない。

では、いつ誰がどのように広めたのか。
似たような石が、世界各地で見つかっているという。
ビーズのみ流通しているということは、ほぼ間違いなく中国人が関わっている。

※中華以外も関わっているとの情報をいただいた。詳細については不明であり、言及は控えたい。(2011/6/22追記)

中華は産地を隠蔽するのが大好き。
買い占め、産地偽造、模造品の製作などにことのほか熱心に取り組んでいる。
また、原石は中華式ではつまらないものとされており、どんな珍しい石も輸出用に加工を施す習慣がある。
欧米ではあまり相手にされないので、もっぱら流行に敏感な日本人をターゲットにしている。

気になって調べてみた。
どうやらこの石は、パキスタンの業者の間では知られた存在らしい。
ただ、あまりにムーンストーンそっくりなため、長石として取引されることもあった模様。
欧米の一部でもヒーリングストーンとして扱われていて、Moon Quartz の名で流通があるようだ。

産地は情勢が良いとはいえず、土地としてはあまり良くないと思うのだが、非常にすがすがしい清らかな印象の石で、メロディ氏でおなじみのメタモルフォシスより好きかもしれない(どっちかというとオーロベルディ好き)。
さほど高価な石ではないので、是非原石を手に入れていただきたい。
ムーンストーンやペリステライトとはまた違った魅力がある。




44×39×21mm  22.81g (最大)

2011/06/09

クンツァイト(原産)


クンツァイト Kunzite
Pala, San Diego, California, USA



オールドストックの結晶からのカット品。
1905年採取。
1902年にジョージ・フレデリック・クンツ博士により発見された鉱脈から得られた、正真正銘のカリフォルニア・アイリスである。
原石には内包物が多く少量しかカットできなかったとのこと、こちらも若干の内包物が確認される。
かろうじてチューブ状の空洞のないものを選んだ。
未処理だがこのピンク色。
アフガニスタン産のライラックピンクには及ばないとしても、ブラジル産に匹敵する輝きだ。

スポデューメン(リチア輝石)の中で、ピンク~バイオレットの色合いを示すものをクンツァイトと呼んでいるのはご存知のとおり。
自然の状態で美しいピンクを示す原石は年々少なくなっている。
カットされた宝石やビーズには、無色や白、茶色などの結晶に放射線処理を施し、変色させたものが多い。
処理石の場合、一定期間を過ぎると元の色合いに戻ってしまう。

ベースであるスポデューメンは無色透明。
だからクンツァイトはピンク・スポデューメン。
以前、白濁したスポデューメンのビーズが、ホワイト・クンツァイトの名で販売されているのを見かけた。
レアではなく、むしろ処理加工前の状態であり、希少価値がつくのは妙である。
同じくビーズとして販売されているクンツァイトより高額。
当社では加工前・加工後の商品をそれぞれ並べております、ということが言いたいんだろう。
賢い売り方だと思う。

クンツァイトには、長期間光や熱に晒されると退色してしまう性質があるそうだ。
1905年に出た原石が、100年以上経っても色あせることなく残っていたのは驚くべきことで、付属のラベルのほうはセピア色に変色しボロボロだったそうだ。
当時は「カリフォルニア・アイリス」の名で販売され、後にクンツ博士に因んでクンツァイトと命名されている。

ニューヨーク5番街にあるティファニー宝石店の副社長でもあったクンツ博士。
結婚適齢期の女性の人口比率を分析し、最多だった4月生まれの”誕生石”に、ティファニーの主力商品であるダイヤモンドを設定してしまったのは、実はこの人らしい。
新しい鉱物を求めて世界を旅してまわり、自ら宝石のカットも行うなど幅広い分野において活躍し、その生涯を宝石に捧げたという。


1.38ct

2011/06/02

ヘリオドール


ヘリオドール Heliodor
Volodarsk-Volynskii, Zitomir Oblast', Ukraine



イエローのベリル。
だがイエロー・ベリルとは呼ばない。
鉄による発色をイエロー・ベリル、ウランによる発色をヘリオドールと呼ぶのだそうだ。
ウランといえば、今話題の原発事故。
ウクライナといえばチェルノブイリ。
1980年代中ごろに鉱脈が発見され、90年代に入ってすぐ採掘が終了しているというから、考えてしまう。

独特のグリーンを帯びたイエロー。
これはチェルノブイリ原発事故の放射能の影響である、という記事をどこかで読んだ
改めて調べてみたら、無かった。
夢だったのかもしれない。

ヘリオドールの名の由来は「太陽の贈り物」から。
預言者の石ともいわれているそうだ。

石を集め始めた頃、先輩から教えてもらった怖い話。
ロシアのチェルノブイリ近くから、漆黒の水晶、モリオンなるものが大量に出るらしい。
今でも思い出してしまう。
が、ちとおかしい。
チェルノブイリ原子力発電所は旧ソビエト。
現ウクライナである。
被害が深刻だったのはウクライナ、ベラルーシのほう。
ちなみに、wikiの「石英」の項に、全くといっていいほど見かけない、ウクライナ産モリオンが掲載されている(→後日談)。
色合いも奇妙なので参照していただきたい。


23×15×14mm

今週、話題性が確認された10の鉱物

What Mineral Would You Take with You to A Deserted Island?